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慶應義塾大学教授鈴木寛×DMM会長亀山敬司対談(全5記事)

DMM亀山会長が語る“孤独になれる強さ” 何万人からの喝采よりも大事なこと

元文部科学副大臣の鈴木寛氏が主宰する、慶応義塾大学の「すずかんゼミ」で、ゼミ生が対談を企画しました。スピーカーは鈴木寛氏とDMM.com 取締役会長の亀山敬司氏。2016年12月15日に行われた、この対談の内容を5回に分けてお届けします。今回は第4話。「知らないことを自覚し続けるには何が必要か?」という学生から寄せられた質問に対して、「孤独になれる強さ」と答えた亀山会長。その真意とは?

自分で壊さないと、世界が狭いままで終わってしまう

司会者:これから質疑応答の時間となります。なにか質問のある方は手を上げてください。

学生:ありがとうございました。お話の中で何度も、“自分から壊す”という言葉をおっしゃっていたのが印象的でした。そのようにいろんなことを考えるに至った体験はあったのでしょうか?

亀山敬司氏(以下、亀山):う~ん。体験かぁ、その体験ってやつが厄介でね。さっき「それが亀山哲学ですね」みたいなこと言われたけど。結局、俺もほっといたらどんどん哲学というか、信念みたいなのができていくわけ。

君たちのお父さんとか頑固親父になってない? 「人はこうあるべきだ」「こういう会社に行くべきだ」と、自分の経験から自分の考えを持ってくる。俺も含めみんな大した経験もしてないくせに、歳とともにだんだん考えが固まってくるんだよね。

君たちはまだ若いから、「自分たちが知らない」っていう謙虚なところからはじまっている。でも社会に出ると少しずつ世の中を味わって、そのうち年下に対して「お前はわかってない」とか自分たちの親みたいなこと言い出すのよ。「俺の方が経験があるから知ってる」って、人の意見を聞かなくなってくるわけ。

だから、業種だけでなく、自分の信じたものも常に否定して自分で壊さないと、世界が狭いままで終わってしまう。「知らない」っていう謙虚さを常に持ち続けると、相手の声も聞こうという気になるし、わからない考えを受け入れるっていうことにもつながると思うんだよ。

「亀チョク」にはいろんなプレゼンが来るけど、俺が理解できないこともいっぱいある。「DMM.make」もそうだし、ゲームの「艦これ」も「萌え萌えが戦艦なんですよ」とか、わけわかんないことを言われてもね。さっぱりだよ(笑)。

ただ、自分がトレンドをわかっていないって謙虚に思うと、「今後流行ります!」っていうプレゼンをしてきた若者の話にも耳を傾けられる。わからないものにも投資できたりね。話を聞いてくれる人には、「ちょっと話聞いてください」って人が集まって来て、新しいことが出来るんだ。

簡単に言うと、「人生いつまでもお勉強です」って言えることが、「自分から壊す」っていうことじゃないのかな。

法律とは別に、自分の中に掟がある

学生:その「知らない」ということを自覚し続けたり、何かを続けるには、すごい強さが必要だと思いますが、それはどこから来るのでしょうか?

亀山:強さというのでは、「孤独になれる強さ」かな。アダルトもそうだけど、非難を受けることは当然ある。

ただ、「これはやるけど、これはやらない」っていう俺の中にもルールがあるわけ。エロはやるけど、詐欺はやらないとかね。法律における合法・違法とは別に、自分の中で掟というものがあるんだよ。

今までも、自分なりの倫理の上で「アリだな」と感じたら、世間や社員と折り合いをつけながら仕事を進めてきた。「ついて行きます」っていう社員は多いけど、もちろん全員には理解されないよね。

わかってもらえないのは寂しいから、1人にはなりたくないし、仲間はほしいじゃない。だから、空気を読むし、世間から非難されそうなことはやらないってなる。でも、常に仲間外れになりたくないからと周りに合わせていたら、自分で考えることを忘れちゃうんだ。誰かに合わせるほうが楽かもしれないけど、やっぱり考え続けないといけないよね。

孤独が嫌で言いたいことも言わないと、周りに人はいっぱいいるのに実は孤独だったりしてね。逆に孤独を引き受けて、自分の考えで「これ、いいな」と感じることをやっていると、全く違うところから「それ、いいね」って言ってくれる仲間が出てくることもある。

俺なんかは何かを決断する時も、「自分はそもそも何をしたいんだ?」とか、「自分にとってどっちが大事?」とか、そんなことを考えるんだけどね。結局思うのは、何万人からの喝采よりも、死んだ時に5~6人だけでもすごく泣いてくれた方が嬉しいかなって。

「そばに誰がいてほしい?」とか考えたら、「この人がわかってくれたらいいかな」って思うわけよ(笑)。

学生:わかります。なんか自分の琴線にすごく刺さりました。

亀山:えっ、本当に? 刺さった? いいこと言っちゃったかな(笑)。じゃあ、ほかにありますか?

学生:DMMはIT企業と呼ばれる前はアダルトの企業というイメージがすごく強かったと思いますが、なぜブランド名を変えずに「DMM FX」とか「DMM 英会話」という同一ブランドで展開したのかをお伺いしたいです。

亀山:それは、何かポリシーがあったわけではないんだ。「アダルトの次はFXだ」とは言ってはみたものの、実を言うと「あんまり、うまくいかねえだろうな」とも思っていたんだよね。初めてのことだしダメモトで始めたんだ。

「DMM FX」を数年がんばって、「CMも打ったけどうまくいかずにやめます」ってなった時に何も残らずに投資が失敗で終わるだけ。でも、同一ブランドでやれば、うまくいかなくてもCM代の元は取れると思った。

DMMのイメージはアダルトだったけど、FXや英会話もやっているとなればDMMは安心できると思われる。トラフィックも増えるし、大手がやっているアダルトってイメージになったら、失敗しても少しはエロで回収できるかなと。うまくいったら嬉しいし、失敗しても損を減らせるかなって。

それにDMMという名前を隠して、仮に「ホニャララFX」にしていたとしたら、おそらくどこかのタイミングで文春に載るよね。「ホニャララFXの裏側はDMMだった!」とか。「エロエロ資本がホニャララFXに流れてました」とかね(笑)。

結局大きくなって目立てば叩かれるんだから、まっすぐ「DMMはエロもFXもやってます!みなさん笑ってくださ~い!」って洒落でいこうとしたの(笑)。結構強引な感じだけど、コソコソするより「エロ出身だけど、とにかく頑張ってま~す!」みたいな。

あとは、ユーザー的にも使い勝手は良いよ。同じクレジットカードの情報で、そのまま英会話もできる。セキュリティ的にも効率よいしね。でも、思いのほかFXも英会話もうまくいったから、やっぱり変えとけば良かったかもね(笑)。

(会場笑)

大学生は旅に出よ

学生:経営者として、大学生に「これだけはやっておけ」「これは学んでおいたほうがいいぞ」ということを教えてください。

亀山:夏休みも結構取れるだろうし、うまくしたら休学もできるだろうから、いろんな国に行ったらいいんじゃないかな。さっきも言ったように、「自分が何も知らない」っていうことがよくわかるよ。もしも行くなら、なるべく情報のない国がいいね。アメリカとかヨーロッパとかじゃなくて、テレビとかで紹介されていないような国の方が良いと思うよ。

今でもそうなんだけど、俺は英語をしゃべれないから、旅は1人で座禅に行っているようなものなんだ。外国人とコミュニケーションをとれるわけじゃないから、自分と会話するか、持って行った本を読むしかない。「生きるとはなんだ」とか、空を見ながら自分と会話しながら哲学っぽいことをやってたわけ。

日本では味わえない世界をってことで、インドのスラム街をウロウロしたり、アメリカでも店に鉄格子が入っているような物騒な地帯に住んでみたりしたの。最終的には、「生と死の狭間に行かなきゃ」っていうことで、ボスニア・ヘルツェゴビナに行って、紛争地帯まで自転車を漕いだこともあった(笑)。

20代の時は11ヶ月休みなく働いて1ヶ月くらい海外に行ってたんだけど、結果的に旅していたことが仕事にも良かったのかなと思うところはある。そもそも「なんのために仕事をしてるのか?」ってことまで考えるからね。「とにかく稼ぐぜー!」って、目先の利益だけにとらわれてたら、限界もあったかと思う。

旅は社員との付き合い方とかも変えたかな。日常の中にいると、俺も社員に対して「なんでお前はこんなこともできないんだよ」って思ったりするのよ。「何回も同じこと言わせるな」とかね。でも、旅に出て1人で考えると、「1ヶ月もアフリカにいられるのは、あいつらのおかげだな」って感謝するようになる。だから、日本に帰ると社員にちょっと優しくなるんだ。まあ、2、3ヶ月経つとまた元に戻るんだけどね。

(会場笑)

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