2024.10.10
将来は卵1パックの価格が2倍に? 多くの日本人が知らない世界の新潮流、「動物福祉」とは
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西野亮廣氏(以下、西野):雷を作っちゃうアートって、おもしろいですね。雲かなんかありましたよね。雲を作っちゃう人っていなかったですか?
落合陽一氏(以下、落合):雲を作る人もいますね。
西野:いましたよね。
落合:いました。あれは雲用の煙マシンみたいものを作って、展示するみたいな。ああいうのけっこういいと思うんですよ、僕。だってそれも刹那的じゃないですか。あの雲もパッてやったら消えちゃうし。彼は、だからそれを写真に撮ることで芸術作品にしてたんですけど。
そういうような、一瞬で消えちゃうみたいなものも芸術として扱えるようになってきたのは、コンピュータならびに科学技術の発展もあると思うので。それを使って今しかできない表現がやりたいと思うから、メディアアーティストをやっています。
西野:生々しい話ですけど、そういうのをやろうと思ったときに、お金がかかったりするじゃないですか?
落合:かかります。
西野:例えば人が見たことあるようなものとかは、企画も通しやすかったり、上のおじちゃん連中とかも「あ、それね」「じゃあ、売れてるからやろうか」みたいなあったりするじゃないですか。
例えばですけど、「雷でなにかアート作りたいんだよね」と言ったときに、前例がないから「なに言ってるの?」というところで、お金は落ちにくいし企画も通りにくいと思うんですけど、そこはどうしているんですか?
落合:それはね、最初の頃は大変で。僕が頭のなかに浮かんでいるビジュアルが、写真とかで出してもぜんぜん説明がついてないみたいな。イメージつかない。だいたい最後、ものになるとみんなわかるんですけど。そんなことが続いてたら、最近は意外と大丈夫になってきて。
西野:信用ができたんじゃないですか。やっぱ。
落合:そうそう。イメージは伝わらないけれど、とりあえず、「コイツがやたら興奮しているってことは、なにかある」みたいな感じで、作らせてくれてることは多いです。
西野:そうなったらいいですね。最初はどうやったんですか?
落合:最初は、とりあえずもう作ってみるしかないですね。
西野:なるほど。そして、1回見せて。
落合:1回見せて「ああ、ああ」みたいな。だから「ああ」ってなるぐらいの小さいプロトタイプをどうやって作るかってことをやってたんですけど。
西野:なるほど。増田さんもあるんですか? 「企画通しにくいな」みたいな。とにかく、新しいものは通しにくいじゃないですか。
増田薫氏(以下、増田):うちの場合、そういった意味ではスマホなので、けっこう最初から形がありますから。みんなもスマホ知ってるし。そういった意味ではわかりやすいほうだと思うんですよ。
西野:なるほど。説明しやすい。
増田:だから、やっぱり聞いてて気持ちいいですもんね。雷みたいなアート。「やっべえ、おもしれえ」と思って(笑)。
西野:(笑)。
落合:あれ、きれいなんですよね。たまんない。
西野:なるほど。だから、スマホの場合は、けっこう企画を通しやすいってことですか?
増田:この間も「1週間電池が保つスマホ」を作ったんですけど。そうすると、「1週間電池保つんですか!? すごいですね」となる。予想の範囲というか、だいたいイメージが湧くじゃないですか。
でも、今の雷のアートと聞いた瞬間に、「どんなアートなんだろう?」といろいろなイメージ湧いてきて、なかなかこれってわからないですよね。
西野:確かに。
増田:そういったものを作るって、だからアーティスティックな感じも聞いてて楽しくて。
西野:あれないですか。腹立つことないですか?
僕とかでも、わかんないですけど、5年ぐらい前にクラウドファンディングをやったときにむちゃくちゃ叩かれたんですよ。「なにしてんの?」みたいな。
義援金みたいな文化はあったけれど、人の夢に、やりたいことに支援するというのはあまり根付いていなくて。5年前クラウドファンディングしたとき、世間からバチバチに叩かれたんですよ。「なにしてんの?」みたいな。
去年あたりから、『この世界の片隅に』とか、SMAPさんのファンの方が新聞の紙面をクラウドファンディングで。ああいうことになってだいぶ市民権を得て。最近は「クラウドファンディングってどうやるんですか?」みたいなことを番組で取材を受ける側になったんですね。
そのときに「この手のひら返し感なんなんだ?」「だから、俺、言ってたじゃん」みたいなってないんですか? もう「謝ってくれ」みたいな。
落合:まあ……謝ってくれとは思わない。
西野:思わないですか。俺、それ……「わかったから、1回謝って」ってないんですか?
落合:いや、僕あまり人に腹立たないタイプなんですけど、確かにそれはありますね。2011年の頃って、僕、クラウドファンディングのサービスを自分で作ってたんですよ。ちょうど。
(一同笑)
落合:友達の米良ちゃんという人が「Readyfor」というサービスをやってて。僕がそこでデザイナーをやってたんですけど。
結局のところその当時は、本当に人が「痛い」「つらい」「苦しい」とか、そういうことをイメージできるプロジェクトしかお金が集まらなかったんです。つまり「それってひどい話だよね」って話にしか集まらなかった。
そこは善意で集まってくるけど、もっとワクワクすることにお金を使うとか、普通のことのはずなんだけど、そこで調子乗ってると見られるとすぐ叩かれるみたいな。それってずいぶん心が狭い社会だなと当時は思っていて。
しかも、そのあとすごい現象が起こって。「つらい」「痛い」「苦しい」プロジェクトをいっぱいやってたら、なんかね、どこかのアジアの子かアフリカの子か忘れちゃったんですけど、その子たちの村に文房具を届けるプロジェクトがあって。それはお金が80万円ぐらいしか集まってなかったんですよ。
一方、その横でやっていた「コアラがエサ代がかかるからお金を集める」ってプロジェクトがドーンっと成功して。
西野:なるほど。
落合:リターンというか、チケット買ったらもらえるお金が、片方は「子供たちが、リターンくれた人に「支援してくれてありがとう」の手紙を書いたりとか「工芸品作って送ります」。片方は「コアラのうんちを紙にしたやつを送ります。ユーカリの匂いがします」って書いてあって。「あ、人間はコアラのうんこよりも下の立場なのか」と。
(一同笑)
落合:俺はそのとき、なにかちょっと気づいた(笑)。だから、その人の善意が商品価値になって並んでいる状態じゃ、まだダメだなと思って。
最近はやっと市民権を得たから、支援のつなぎ方というのは、別にどういうプロセスでもいいわけじゃないですか。叩くのは間違ってるし、そうなんだけど。でも昔は……だからそこがひどく経済的に見えてしまってたというのはあるでしょうね。
西野:なるほど。
落合:そうっすねえ。まあ最初に出てくるときにムカつかれるのは、人間の性なので。ムカつかれてもいいんですけど。べつにそのまま勝手にやっていれば、いつの間にか、逆にいうと、切り離したがるじゃないですか。「あの人と俺は違うんで」と言われたり。そうなっちゃったら、勝ちですよね。
「同じにしないでください」みたいな。「そんなめんどくさい世界に俺を連れてかないでください」みたいな感じにされたら、すごくいいですね。
西野:なるほどね。強いなあ、落合さん、本当に。
落合:いやいや、強くない(笑)。
西野:強いと思うよ。やっぱ。
落合:いや、寂しがりやなんですよ。
西野:寂しがりやなんですか?
落合:そう。だから大学で研究室なんてやってるんですよ、きっと。自分の学生を育てれば、そこに一派ができるわけで。
西野:そういう意味合いもあるんですか。
落合:それもあると思います。昨日歩いてて考えて、「ああそっか、俺なんで研究室やってるのかと思ったら、俺たぶん寂しいから研究室やってんだろう」と。
西野:なるほど。
落合:「誰に話しても言葉通じないから、とりあえず言葉通じる人50人は育てようとか思ってるんだろうな」とか思って。この間ちょっと気がついたんですよね。
西野:むっちゃ寂しいときあったんですか? ようは1人で「うわ、もうぜんぜん通じひんやん」みたいなときあったんですか?
落合:そうそう。たぶんなにかに耐えられなくなったから、大学で研究室を始めようと思ったんですよ。そんなこと思ったこともなかったけど、今日歩いてて「ひょっとしたらそうなのかもしれないな」と思ったの。
西野:なるほど、おもしろいっすね(笑)。というわけでそろそろお時間ということですけれども、落合さんはこれからどんなFUTUREを作っていきたいですか?
落合:そうですね……デジタルネイチャーと言ってるんですけど、なんつったらいいかな……。僕の理想は、働かなくていい人はそんなに働かなくてもお金になる世界で。働きたい人はすっげえ働くけど、その分だけお金もらえる。でも、インセンティブのところはお金じゃなくて、すっげえ働きたい人が働くみたいな感じ。
西野:わかる!
落合:「働くのが気持ちいい。サウナ気持ちいい」みたいな。サウナに入ってて気持ちいいって、別に誰にも褒められないですけど、ただ自分が好きでやってるわけじゃないですか。あの感じがすごく社会に反映されているといいなと。
ものって動かすのにはエネルギーがいるんですよ。例えば重量のあるものを動かすにはトラックが必要だったりとか、人間も食べ物を食べて体を筋肉で動かす。でも、デジタルデータには重量がないから、地球上どこに動いていってもほぼタダなんですよね。電気代しかかからない。
そうなると、僕らが生み出すものがプログラムとかポリゴンとかデータになってきたときに、その価値というのは、もう好きなように人が払えばいいんですよ。タダでもいいわけで。だけど、払いたいものに払うわけ。
働きたいやつはひたすら働けばいいし、そうじゃない人はそうじゃなくても食えるぐらいのことを、頭のいい人が保証する世界がいいですね。
西野:なるほどね。
落合:早くそうしたいです。
西野:僕この間、もう本当に好きな居酒屋があって。沖縄にあるんですけど。そこってもう70歳ぐらい80歳ぐらいのおじいちゃんが1人でやってるんですよ。
僕が行ったら、だいたいそのおじいちゃんと2人で飲んで。接客しながら一緒に飲んでくれるんですけど。笑ったり泣いたりして。泣き上戸ですからすぐ泣いたりするんですね。
この店のすばらしいところは、この80歳ぐらいのじじいが最初に酔いつぶれちゃうんですよ。寝ちゃうんですよ。
増田:(笑)。
西野:「あー、寝ちゃった」と思って。このおじいちゃんを、1回僕、座敷に連れていって、座布団を折って枕にして、横に寝かしてあげて。1人で飲むんですけど、そこからお客さんが来るんですよ。
そうしたときに、このお客さんを返しちゃうと、この店つぶれちゃうじゃないですか。「どうしよう?」と思って、僕一生懸命このお客さんのところ行って、おしぼり出して、それで突き出しみたいのあったからこれ出して、お酒とか出して、接客してたんですね。
増田:(笑)。
西野:それで去年に行ったときは、ビールサーバーが、じじいがもうズボラですから、入れ替えてなくて。それでビールを頼んでも出なくて。結局、僕が近くのコンビニまで行ってオリオンビールを買って。それで「これでいいですか?」みたいに出して、接客するんですよ。
それでレジも適当に打って、僕は帰るんですけど。次、このお客さんが、その次のお客さんの接客をするんです。つまり、このじじいがズボラなもんだから、この店が回っちゃってるというのはすげーいいと思って。
落合:循環型社会(笑)。
西野:これはもうロボットには無理じゃないですか? この愛される結果みたいなことって。これなんか未来っぽいと思ったんですよ。
落合:それ、未来ですね。
西野:未来っすよね。
増田:新しいですね。
西野:このおじいちゃんが、わかんないですけど、20歳とか30歳とかバリバリ働いてたら、お客さんはそんな動いてなかっただろうし。ズボラで寝ちゃったら、「ああ、しゃあねえな」みたいなことで、「あいつはまあいっか」「じゃあその分、俺らがやるか」みたいなことをにならない。
ああいうのがすごい未来っぽいって思ったんです。それ来てほしいですけどね。そういう働く人が働いて。しかも、好きで。
落合:助け合い社会。
増田:助け合いですよね。確実に温かい未来だな
西野:なるほど(笑)。すいません、ありがとうございます。お付き合いいただきまして。
落合:いえいえ。
西野:さあ、「SA-CUS」FUTURE学、ゲスト講師、落合陽一さんでした。どうもありがとうございました。
落合:どうもありがとうございました。
(一同拍手)
西野:おもしろいな。落合さん。本当。
増田:いや、めちゃめちゃおもしろかったです。
西野:J-WAVE「SUNDAY SESSIONS」、ワクワクしたい大人のための学校「SA-CUS」、そろそろ下校のお時間でございます。増田さん、どうもありがとうございました。
増田:ありがとうございました。
西野:増田さんとも、いろいろなおもしろい話を聞けて。
増田:こちらこそ。本当めちゃめちゃ楽しかったです。
西野:なんかどんどん会社がおもしろくなっていきそうですね。
増田:やっぱり新しい常識は、うちの会社で作る。出る杭ばっかり集めて、みんなでおもしろいことやりたい。
西野:気持ちいい(笑)。出る杭ばっかり集める?
増田:そうです。
西野:それ、気持ちいいですね。
増田:だって「これやったらいいな」「あれやったらいいな」って実現できると思うんですよ。そこを信じてがんばれば。それってパワーはいることですけど、それを生み出す現場ってめちゃめちゃおもしろいですよ。
西野:それいい。本当に応援しています。
増田:がんばります。
西野:どうもありがとうございます。それでは本日の授業はここまで。「SA-CUS」校長、西野亮廣と……。
増田:FUTURE学学科長のプラスワン・マーケティング、増田薫でした。
西野:どうもありがとうございました。
増田:ありがとうございました。
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