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Film Keynote: Gareth Edwards(全5記事)

「途中の道のりのほうが、ゴールよりもはるかに実りが多い」ハリウッド監督が夢とキャリアの描き方を語る

3月10~19日にかけて米国・テキサス州オースティンで開催された、音楽・映画・メディアなどをテーマにした一大イベント「SXSW 2017(サウス・バイ・サウスウェスト)」。キーノートでは、映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの監督を務めたギャレス・エドワーズ氏が登壇。セッションの最後には会場のファンからの質問に答えました。

あきらめなければデス・スターを破壊できる

ギャレス・エドワーズ氏(以下、エドワーズ):さて、今日デジタルテクノロジーがもたらしてくれた前途とは、宇宙船や恐竜、ロボットを創作できるようになったことだけではなく、誰にでも映画制作が可能になったことだと思います。テクノロジーのおかげで、誰でも物語る声を持てるようになりました。

超大作と低予算映画とのギャップが無くなりつつあります。20年、10年前でさえ制作費2億ドルの作品と、100万ドルの作品の見栄えの差は、少なくなってきました。

デジタルテクノロジーのおかげで、若者がYoutubeなどを使って、自宅ですばらしい仕事をできるようになりました。ですから、この狭間について、なんとかしてあげなくてはなりません。それがなにかは、僕にも、誰にもまだわかりません。

いずれにせよ、映画を製作したい人にとっては、最良の時代になったと思います。70年代の人には、この時代の人がうらやましいでしょう。映画制作に携わる者にとって、これほどいい時代はあってありません。

僕の人生は、スピルバーグの本に載っていたとおりにはいきませんでしたが、子どもの頃にどれほど憧れたとしても、僕はスピルバーグではないのです。僕は僕、あなたはあなたなのです。すべの人の物語はそれぞれ、違うのです。これは喜ぶべきことです。それぞれの物語が、どのような結末を迎えるかは誰にもわからないからです。

この物語のしめくくりとして、僕が『ローグ・ワン』にカメオ出演を果たしたお話をさせていただきます。映画をご覧になった方であれば、終盤でダース・ベイダーがレイア姫を追うシーンで、反乱軍が船の離脱を図る際に、廊下を走り抜け、船を発射させるレバーを作動させて反乱軍を救った人物をご覧になったことでしょう。その人物を演じたのは、僕です。

(会場拍手)

つまり、誰かにそれは実現不可能だと言われたとしても、決して鵜呑みにしてはいけません。決してあきらめなければ、大きくなって、反乱軍に加わりデス・スターを破壊することができるのです。ありがとうございました。

(会場拍手)

僕は少々長く話し過ぎたようですね。1つだけ質問をお受けできるようです。どうぞ。

『ローグ・ワン』のダース・ベイダー名シーンについて

質問者1:スター・ウォーズで私の好きなキャラクターはK-2(K-2SO)なのですが、彼をまったく別の感情的なキャラクターにするという案があったというのは本当ですか。

エドワーズ:はい、そのとおりです。CGIかガイダンススーツを使うかで迷い、ガイダンススーツでは「ロボット三原則」で彼の動きに制限が生じたので……(会場に向かって)はいみなさん、この作品はおもしろいですよ。エンディングも最高です。

(会場笑)

彼は黒いC―3P0のような外見になりました。CGIを使用することに決まり、モーションキャプチャで主にアラン・テュディックがK-2のキャラクターを演じました。

彼はたいへん愉快な人で、セットではジョークばかり飛ばしていました。映画で使うことができなかった一番おもしろいネタは2匹の犬の話だと思います。どうやらこの話もここではしてはいけないようですね。彼にはとてもユーモアがあります。K-2は、モーションキャプチャ・スーツを着たアランそのままです。

ラルフ・マクウォーリー(オリジナルのスター・ウォーズのデザイナー)のデザインを主に据え、コンセプトにしました。みんな、彼のデザインを愛していましたから。スター・ウォーズに必要不可欠ではありませんでしたが、アイザック・アシモフの本なども参考にしました。

質問者2:劇中で、「ここは絶対に撮らなくては後悔する」といったシーンはありましたか。例えば最後のダース・ベイダーや、宇宙船のシーンなど、絶対に撮りたいとこだわったシーンや瞬間はありますか。

エドワーズ:すべてです。もし撮っていなかったら、すべてのシーンについて後悔していたと思います。映画を制作していてとくにつらいと思うのは、撮影開始前は、すべてのシーンを外せないと思ってかかりますが、映画を撮影し終わった時に、タイムマシーンに乗って撮影開始前に戻り「ここは撮る必要はない、ここも撮るな」と教えてあげたくなることです。

すべてのシーンをいとおしく思います。

ダース・ベイダーのシーンは、とても大きな反響を呼びましたが、撮影当時は、それほど特別なシーンだとは思っていませんでした。単に映画の中で必要なシーンを撮っている、という認識でした。ストーリーの中の1シーンに過ぎなかったのです。

プレミアでの上映以来、反響が大きく、多くの人の話題になって「ああ、あのシーンは成功だったんだな」と思ったのです。

しかし撮影当時は、実は「観客の反感を買ってしまったらどうしよう」と不安でした。しかし廊下(コライダー)でのダース・ベイダーのシーンは、最大の「ヒット」の1つでした。多くの人に愛されました。ありがとうございました。

質問者2:このシーンは、ダース・ベイダー史上最高のものだと思います。

(会場拍手)

エドワーズ:実はこれは嘘です。僕は、このスピーチの冒頭で「嘘つきになりたい」と言いましたよね。こんなことは僕の身の上に起こっていません。僕の名前はギャレスではなく、一介の俳優です。近所のレストランでアルバイトをしています。

(会場笑)

夢を実現させたのなら、どんな結果であろうとも成功している

質問者3:僕は映画制作のVFXを学ぶ大学院生です。故郷のピッツバーグに戻って、映画を作りたいと思っているのですが、友人にアイデアやストーリーを話し、出演を依頼しても、誰も応じてくれません。カメラのクオリティの話などをしても、誰も興味を持ってくれません。そこでお願いなのですが、どのように自分のアイデアを実行し実現できるか、アドバイスをいただけないでしょうか。

エドワーズ:そんなにすばらしいアドバイスができるわけではないですが、2つほどお話ししようと思います。1つは、あなたがそれを実践しないのは、実はそのアイデアをそんなにすばらしいと思ってはいないからではないでしょうか。でも、それでいいのです。ぜひくだらない作品を作ってください。

僕の作品は、すべて駄作です。これまで僕の話に出てきた作品をお見せする勇気がないのは、すべてがひどいからです。到底人さまにお見せできる代物ではありません。ぜったいインターネットに掲載されてほしくはありません。駄作なんです。

そこで、もし駄作を作って、さらにそれを超える作品を作り出せたのなら、誰も見ていない間に、その駄作をそっと捨ててしまえばよいのです。駄作に情熱を消させてはいけません。駄作は排除してしまうのです。

第2のアドバイスは、誰にでも起こることで、僕もそうなのですが、いろいろ言い訳をして、行動に移すことを後回しにしてしまう場合、ある時点で、挑戦しなかったことに対する後悔の衝撃がやってきます。低予算映画を作っている人に対する批評はたくさんありますよね。レビューや反響を読むことができ、批判めいたことを言われますが、実際に実行して、映画を作れば、あなたは成功者なのです。

映画製作は、つらいものです。辞めてほかのことをやりたくなります。しかし、夢見ていたことを実現させたのなら、どんな結果であろうとも、なにもせず批判する人よりも、はるかにあなたは成功しているのです。

ですから、真に失敗するということはありえません。あなたは、行動に移したのですから。映画を製作した瞬間、あなたは勝者になるのです。人生において、なにかを達成したのです。

(会場拍手)

ありがとうございます。水を飲む物まねなどより、ずっとスティーブ・ジョブスらしくなってきましたね。

質問者3:ここでもっと悪態をつくと、それらしくなりますよ。

エドワーズ:Fのつく言葉を、イギリスのアクセントで言うのは構わないでしょうか。

(会場笑)

質問者3:大丈夫です。『ローグ・ワン』について、どうしてメインのキャラクターをほぼ殺してしまうことを決断したのでしょうか。僕にはとてもヒロイックに感じました。

エドワーズ:決断というより、宇宙の法則で自然にそうなりました。

(会場笑)

物語を語るにあたり、できごとをコントロールできなかったのです。

質問者3:この会場の、映画を見た地球人の我々には衝撃でした。ごめんなさい。

エドワーズ:公平に言って、この決断はストーリーを書いたキャスリーン・ケネディのおかげです。最初のドラフトを書いた時には、死ぬキャラクターはいますが、主要なキャラクターは、許容できる限り死なせないことになっていました。しかし、僕の声は十分に大きくなかったようです。

第一稿では生き残っていたはずなのですが、読み合わせの時にキャシーが「死んだほうがいいですよね」と言い、みんなも賛成しました。「やりたいようにやってみましょう」。

僕は、原案に戻って全編がひっくり返るのをずっと待っていました。実は、最後の週まで待っていたのです。僕の小さなノーを。「ねえ、全員死んじゃったら、かっこいいとは思うよ。でも……」しかし、僕がそんな発言はしなかったかのように、実現されませんでした。それで、こうなりました。結末は気に入ってます。

質問者3:ありがとうございました。

エドワーズ:僕に彼女を止めてほしいと思ったら、言ってください。僕は午後はひまですから。

(会場笑)

途中の道のりのほうが、到達するよりもはるかに実りが多い

質問者4:監督ではなく一ファンとして、『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』以降に使われた実物に接して、どのように感じましたか。

エドワーズ:アーカイブのある大きなビルディング、スカイウォーカー・レンチには、ダース・ベイダーのヘルメットやライトセーバー、カーボンナイト、すべてが収納されています。すばらしいところで、ファンとしては夢のような場所です。

僕たちはなかを案内してもらい、帰り際にフィルムのケースが山のようにあるセクションを見つけました。僕が「あれは一体なんですか」と聞くと「あ、スター・ウォーズですよ」と言われました。「どういう意味ですか」と聞くと、「スター・ウォーズを撮影した全編のネガです」とのことでした。「全部なんですか? 見せていただいてもよいですか」「もちろん結構ですよ。どれを見たいのですか」。

僕はぞくぞくしてきました。スター・ウォーズのカットされたシーンを見ることができるなんて、なんという栄誉でしょう。鑑賞させてもらえるなら、お金を払いたいくらいです。

質問者4:そう思う人は大勢いると思います。

エドワーズ;一番すばらしかったのは、ダース・ベイダーのカットシーンでした。大宇宙のフォースの力に次いで意義深いものでした。

(会場笑)

そして、スター・ウォーズの脚本です。ファンとしては、夢が現実になったようでした。あの経験はどのように言葉にしたらよいか、わかりません。

質問者5:こんにちは、ギャレスさん。私の名前はマイコです。今日は甥のギャレットに頼まれて来ました。彼はあなたのファンですが、今日は来ることができなかったのです。

あなたは、スティーブン・スピルバーグ・ブックやレザボア・ドッグスのポスターと共にあり、オビ=ワン・ケノービの家へ行ったりして、いつも未来を心に描いていらっしゃいますよね。今後、夢見ていらっしゃることはありますか。もしくは、過去の作品を、もう一度制作したいと思うことはありますか。

エドワーズ:なんだか物語みたいですね。過去に戻り、なにかを修正して帰って来るって。人生を45分間くらいで表現するのは難しいです。関連のあることを、かいつまんでお話しさせていただきますね。

映画を製作するということは、とてもきついことなんです。僕の人生の幸福度を測るグラフがあって、キャリアを線で表すとすれば、その2本の線は、重ならないんです。なにを言いたいかというと、途中の道のりのほうが、到達することよりも、はるかに実りが多いのです。

SXSWに来て初長編作品を制作し、フェスティバルで上映した僕に言えることは、こうして壇上に上がり、自分の映画について語っている人を見れば、僕はその人に嫉妬すると思います。そして、僕が実際にその壇上の人となってみても、いまだに最初に壇上に見た人に嫉妬しているわけです。

それが、この先待ち受ける、わくわくするような冒険なのです。ただ安穏と過ぎるにまかせず、その過程を楽しんでください。なかなかできないことですし、ストレスもかかりますが、その道のりを楽しもうとしてください。

質問者5:ありがとうございました。

スター・ウォーズの制作プロセスはオーガニックであるべき

質問者6:CGI技術者という経歴をお持ちであるならば、ゲーム作成など他のクリエイティブな産業には興味はおありではなかったのでしょうか。

エドワーズ:ありえませんね。ごめんなさい。

質問者6:なんだか申し訳ありません。さて、再撮影についてお聞きしたいと思います。この映画は、あなたの作品である一方で、そうではない。大河作品であり、ディズニー作品でもある。

こういったことは、どのようなものなのでしょうか。例えば、最初のカットを撮っても、誰かに「気に入らない」と言われ、変更を余儀なくされたことなどはありますか。やむをえず行った小さな変更などはありますでしょうか。

エドワーズ:スター・ウォーズ制作のプロセスは、オーガニックであり、柔軟性に富んだものであるべきだと思っています。作品が僕たちに語り掛けるに任せ、あるべき姿を模索し、変更を加え、取り入れます。

もし、そのようなことが起きた場合は、決してそのようなリライトはあるべきではありません。かつて映画は、下請けプロダクション、プロダクション、ポスト・プロダクションと、完全分業でしたが、今ではデジタルテクノロジーが発達し、すべてが一緒に作られています。脚本にない改良も、僕たちの手で加えられます。自分たちで、共に作品を作り上げ、見直しを行い、ストーリーボードがうまく流れるかなどを確認できます。

僕たちが撮影している一方で、ポスト・プロダクションが脚本を書いていたりします。こういったことがすべて、完璧に柔軟性をもって機能するわけです。

例えば、あのダース・ベイダーのシーンが提言されたのは9月ですが、通常であれば9月にはもう音響のミックスなどが行われる時です。ところがあのシーンを撮影したのは9月で、たいへん遅かったのです。

そんな感じで、すべてが柔軟に行われました。映画の撮影としては異例ですし、たいへんな苦労を伴いますが、いい成果を伴うのであれば、街中で「俺の子ども時代を返せ!」などと怒鳴られずに済むのですから良いですよね。

(会場笑)

苦労は厭いません。

質問者6:マーケティングによる介入はなかったのでしょうか。例えばこの映画では、ライトセーバーを前面に出せ、といったようなものはなかったのですか。

エドワーズ:いいえ。

質問者6:つまり、これはあなたの作品、ということなのですね。

エドワーズ:僕はミュージシャンではありませんが、これは歌を作るようなものだと思います。ギターを弾くところを想像し、さまざまなコードを試しては「これはいい感じだ、これも素敵だ」というように、よりいいものを発見していくのです。「創造する」のではありません。感覚で探るのです。

映画製作にはたいへんな資金がかかります。1回もしくは2~3回くらいしか後戻りして試すチャンスはありません。映画にとってはいいことで、製作者にとっては苦悩です、大変ですから。でも映画にとってはいいことです。同じことをもう1回やって映画を撮ってくれと言われたら、きっとやると思います。

質問者6:ありがとうございます。なんとか聞き取ろうとしたのですが「むむむむむ」としか聞こえませんでした。

エドワーズ:(笑)。なかなかいいリアクションですね。さて、このあたりがキリがいいところでしょう。

スティーブン・スピルバーグ・ストーリーは、フロアAで9ドル95セントで販売中です。でも、お勧めしません。ありがとうございました。

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