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年代別経営哲学論バトル(全5記事)

迫り来る“親の介護問題”--多様化する働き方を、ベンチャー経営者らはどう考える?

2016年12月7日に開催された「IVS 2016 Fall Kyoto」のなかで、各年代を代表する経営者たちによる「年代別経営哲学論バトル」が行われました。登壇したのはBASE・鶴岡氏とグリー・田中氏、ヤフー・川邊氏、KLab・真田氏。モデレーターを務めたのは夏野氏。30代後半から徐々に増え始めたという「親の介護問題」。多様化する働き方について、ベンチャー経営者らは組織の在り方をどう考えているのでしょうか。

経営陣のベストな年代構成

夏野剛氏(以下、夏野):さて、1問だけ会場から質問をお受けしたいと思います。

(会場挙手)

はい、手が挙がりました。お願いします。

質問者1:株式会社マイネットで副社長してます、嶺井と申します。みなさん「年代別にそれぞれ経営哲学がある」「いい面悪い面がある」といったお話をうかがいましたが、それを踏まえて、みなさんの会社の、経営陣の年代構成がどうなっているのかをぜひ聞かせていただけないでしょうか。

「こういう強みがこの年代にあるから」など、それぞれ世代によって強みがあるから、あえて分けているのか。または、「いやいや、同じ世代で合わせたほうが、哲学一緒だから進めやすくていい」など。どういう構成になってるのか、ぜひ聞かせていただきたいです。

夏野:じゃあ、鶴岡さん。

鶴岡裕太氏(以下、鶴岡):はい。うちは常勤は3人ですが、37歳から43歳の間で、僕よりみんなひと回り上の方々に取締役になってもらっています。どちらかというと、「サービスをどう作るかをサポートしてもらう」という観点のほうが大きい気はしています。

夏野:次は、田中さん。

田中良和氏(以下、田中):うちの会社は、別に年齢で区切っているわけじゃないのですが。夏野さんもそうですが、社外役員の方は自分より年上の方が多いですね。そのほかは自分と同い年か、30ちょっとぐらいの人たちに分かれてますね。30代前半の人と40歳近い人、50〜60の方々、みたいな感じです。

夏野:では、次は川邊さん。

川邊健太郎氏(以下、川邊):Yahoo! JAPANの場合は、「なるべく若い世代に執行役員を担ってほしいよね」ということで、若い世代にも任せてすね。CTOは36歳ですし、上級執行役員も34歳ですね。

取締役に孫さんや、百戦錬磨の経験値の高い方々がいますので、執行役員クラスは若い世代に任せられればと。

夏野:はい。最後に真田さん。

真田哲弥氏(以下、真田):うちは、まず常勤の社員全員の中で、僕が最年長です。役員は30〜40代、僕1人が50代。社外役員の方々は、基本的に僕より上という構成ですね。

夏野:ということでした。参考になりますか?

質問者1:ありがとうございます。真田さんにうかがいたいんですけど、その役員構成にしている背景を、ぜひ教えてください。

真田:いや、別に意識してしたわけではなく、自然にそうなっていただけですね。

質問者1:今はちょうど落ち着きがいい、すごいいい体制になってるってことですね?

真田:そうですね。そのへんが落ち着きがいいのかな、と。はい。

質問者1:ありがとうございます。

年上社員の気の使い方「敬語は使う」

夏野:すいません。僕、時間を間違えてて。もう10分あるので、会場からの質問をもっと受けられるんです。みなさん、質問ある方はいらっしゃいますか? ……ない。おとなしいですね。では、あえて僕から……。あ、挙がった?

質問者2:SmartHRというサービスを作っている、株式会社KUFUの宮田と申します。質問なんですけど、僕は32歳で、会社には10歳くらい離れた人が入ってきていたりします。そこで、年上の方の扱い方として、なにか気にされていることがあれば教えてください。

夏野:はい。じゃあ、年上がいっぱいいる鶴岡さん。

鶴岡:僕はほとんど年上なんで、もう気にしないようになりましたね。ぜんぜん気にせず、ガンガンいろいろお願いする感じですね。

夏野:年上に関して一番気にするのは、川邊さんかな? 

川邊:人として気を使ってるだけですよ。先ほど夏野さんが説明されていた通り、基本的には年齢を聞かないですから出身大学も聞かない。むしろ、前職の経験はよく聞きます。だから、仕事のうえでは、なにも気を使わないです。ただ、明らかに年齢が上だと思う人は、人としては敬語を使うなどの気を使います。

真田:僕ね、23歳くらいに東京で会社を始めたとき、40代の方を採用したんです。20代の自分からすると「仕事ができるだろう」と思うじゃないですか。ところが、だいたい40代で23歳の小僧がやっている会社に入社してくるような人は、仕事ができなかった。

でも、当時の自分は総務や経理、人事などをやってもらうために40代の人を採用していくんです。相手に対して敬語で話すけど、仕事ができない自分より20歳上の人を叱らないといけないわけです。これ、難しかったですね。

だから、僕は当時「年上の人を雇うのはやめよう」という結論になり、雇わなくなりましたね。

夏野:すさまじい経験が。活かせそうな経験がありました。はい、他の質問ありますでしょうか? ……大丈夫ですか? では、なにかあれば言ってくださいね。ちょっと若者礼賛みたいに、このIVSはいつもなりがちなので(笑)。

30代後半〜40代社員の「親の介護問題」

やはり日本は人口が縮小していて、マクロで見たとき、労働力は来年から一気に不足し始めます。みなさんご存知のように、今、日本は完全雇用状態です。

そこで来年からどうなるかというと、いわゆる団塊世代の人たちの年金受給が一気に始まります。もちろん、その中でも65歳を超えても働く人はいると思いますが、圧倒的に働かなくていい人は増え、労働人口は一気に不足します。

となると、会社には60代の人はいないけれど、日本全体で人材の取り合いが起こります。同じ世代、女性でもだいぶ若い世代が増えているものの、どちらかというと、男性と同じような働き方をする女性のコミュニティや社長が増える。でも、これが永続しなくなる可能性もあります。

労働人口が不足するということは、従業員のほうがまず崩れ、バラバラのライフスタイルの人が入ってきたりと、いろんなものが出てきます。それをどう自分の会社に取り入れるか、これから重要になってくるんじゃないかと、僕は思っているんです。

そういったタイミングで、今までの経営のやり方と、これからの10年のための経営のやり方は、とくに年代を意識した人材登用という意味で「何か考えなきゃいけないな」と思っている人はいますか? それとも、「いや、このままやってりゃ大丈夫だ」って言うんだったら、それでもOKなんですけど。

川邊:現実問題、Yahoo! JAPANで起きているのは、親の介護の問題が出てきているんです。「親の介護をしなきゃいけないから辞める」という社員が増えてきていますね。

その中でも、ある日突然、エース社員が辞めなきゃいけないというのが、起きているんです。

夏野:それは何歳ぐらいの社員で出てきているんですか?

川邊:30代後半から40代ですかね。

夏野:もうそれくらいで出てくるんですね。今主力で働いている人の中でそういう事例が出てくる。

川邊:最近、Yahoo! JAPANでは働き方の多様化として週休3日の検討や新幹線通勤の導入などをしていますが、これには当然意図があるんです。

その1つが、そういった問題に対応するために、働き方の柔軟性を確保して、親の介護があっても働けるようにする。現実問題としての対処が始まっています。

夏野:ちなみに、Yahoo! JAPANさんは新卒一括採用もやめると宣言した初めての一部上場企業だと思うんですけど、そういうところも多様化の一環?

川邊:そうです、多様化の一環です。

パワーある会社だからできる、イノベーティブな働き方

夏野:IVSに集まってる方々も、ビジネスとしては新しいことをたくさんやっている方がいます。ですが、あまり働き方や就業規則など、そういうところでイノベーティブな感じにしているところはないような気がするんです。

どうですかね? 鶴岡さんは、これからの働き方についてどう思いますか。

鶴岡:スタートアップなんで、例えば遠隔を許可するなど、いろんなことやったほうが、採用にも有利になると思うんです。

うちの会社は、遠隔労働は禁止してます。基本的にはみんな10時に来て、夕方に帰る。いいサービスを作ろうとして、結果的にうちの会社はそういうやり方になっていますね。もともと、歴代として伝わってきた組織の在り方は、いわば1つの完成形なんだと、最近めちゃくちゃ痛感しています。

いい組織を作ろうとすると、社長がいて、その下になになにがいて……みたいなヒエラルキーになっていく。もちろん、それ以上の正解はあるかもしれないんですけど。うちの会社くらいの規模感で試行錯誤すると、結果、そこに行き着くのかなと思ったりします。

夏野:ただ、Googleなんかは明らかに違う組織マネジメントやっていますよね。あそこまで大きくなっても維持している感じですよね。

鶴岡:そうですよね。もう1歩先として、それがYahoo! JAPANさんなどで今やられているところだと思っています。そのレイヤーについては、僕らの会社の規模感だと、なかなかやっぱり築きづらいというか、パワーがあってこそしかできないところだったりするのと思っています。

夏野:では、田中さん。

田中:当然、どこにもない経営や人事がある。それができればそれに越したことはないんですが、やはり会社の規模が大きいからこそ、いろんなことできると思うんです。逆に、ある程度までスケールしようと思うと、世の中に準じたフォーマットにしたほうが、会社が運営しやすい。それが、120点、140点かは置いといて。

事業の中身では挑戦したいと思う。けれど、別に会社の運営の中身について、どこにもない革新的な経理のオペレーションを作りたいととは、別にないわけなんで。そういった意味では、そこは手堅くやりながら、事業そのもので勝負しいく。逆にいじっても大きなイノベーションが生まれないところは、一般的なやり方に準じていくのが、僕の思っているところですね。

夏野:真田さんはありますか?

真田:そうですね。人事面は、けっこういろいろやってみましたけど、難しいですよね。でも、在宅勤務など、うちではわりと初期からやっていますね。

ただ、誰にでもできるんじゃなくて、時間やミーティングに遅れない、約束したことができるなど、セルフコントロール能力が高い人が申請したら認められるようになっています。そういう制度をやったり、いろいろ挑戦していますね。

夏野:経営の在り方も、多様性が出てくると、もしかしたらもっとイノベーティブなことや新しい発見があるかもしれないという意味で、この質問をしたんです。ちなみに、僕が役員やってる会社(ドワンゴ)は、会長(川上量生氏)がジブリの見習いやってたり、なんかめちゃくちゃなんですよね。

川邊:多様ですね。

夏野:めちゃくちゃだから、めちゃくちゃなことが起こる。いい面もあるなというのもあって、僕なんかも、なんかいろいろやっていますしね。なにやってるんだか、よくわかんないんですけど。そういうことも、これからあってもいいのかと、少し感じるところですね。

ではみなさん、もうよろしいですかね? 大丈夫ですか? なんか狐につままれたような顔をしてらっしゃる方がけっこういらっしゃいますが(笑)。このパネルは、ここで終了とさせていただきたいと思います。素敵なパネラーの方々に、みなさん、ぜひ拍手をお願いいたします。

どうもありがとうございました。

(会場拍手)

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