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パネルディスカッション(全4記事)

「Will Can Mustシート」で従業員の“未来”と向き合え リクルート流ダイバーシティ・マネジメント

2016年10月5日、株式会社チェンジウェーブ主催のセミナー「Why Diversity2」が開催されました。今回は、セミナーにて行われた講演やパネルディスカッションのうち、「企業事例 多様な変革リーダー人材を生み出す企業の施策とは」をお届けします。本パートでは、社員の自己実現と企業の利益追求のバランスについて議論が行われ、リクルートで行われている「Will Can Mustシート」や、ソフトバンクとの異業種交流などについて語りました。

社員の「Will」と向き合う

佐々木裕子氏(以下、佐々木):それで言うと、ユニットで顔が見えているということだったり、一人ひとりの「Will」を認識したうえで、そうは言ってもこの組織のミッションとかやらなきゃいけないこととそれぞれのストーリーで、ある意味きちっと接続をしてコミュニケーションをすると。

ダイバーシティ・マネジメントという高度なマネジメントを、かなり多くの中間管理職の方々がやらなければいけないということなんだと思うんです。これはむずかしさもあるような気がするんですが、どのようにそのむずかしさを乗り越えていらっしゃいますか?

伊藤綾氏(以下、伊藤):まず前提としてその人の「Will」があって、それを組織として大事にするということをしっかり宣言して、認識し合うということがとても大事です。「Will」を聞いているけど、結局「Must」…いわゆる会社のミッションだけをコミュニケーションしてしまうケースになりがちかもしれません。

佐々木:ですね。

伊藤:会社や組織のミッションをそのまま伝えるのではなく、あなたの「Will」をしっかり認識・理解しているんですと。そのうえで「Will」についてけっこうじっくり話すんです。もちろん言いたくない「Will」もありますよ。

でも、「こういうこと考えてるんだ」「こういうことやりたいんだ、なるほど」と。それで、「あなたの強み・弱みがこうだよね」「だったら、こうしよう」ということもできる。そんな会話が当たり前にできるようになることに時間をかけるということを、みんな大事にしています。そうするとやはりそこはマネジメントの妙で。しかし、時にその「Will」と「Must」がぜんぜん関係ないこともあるわけです。

伊藤:もちろん、関係ある時もありますよね。でも、例えば「将来こうなりたいけど、今はこの仕事をやっている」。それで「この仕事の目標がない」。けれど、きっとその中で得たものが「Can」の1個を活かすことにつながる。つまり、強みをのばすことにきっとつながる。例えば「半年後、このぐらい強みが伸びるはずだ」「だから、これをやることによって『Will』につながる」というような、「Can」との接続がなされる。

あとは、上司がその「Will」「Can」「Must」をどうふまえて、本人と会話しながらつないでいけるか。最後は本人が決めますが、接続の感覚、それは大事な気がします。

Willを知った上でどうマネジメントするか

佐々木:今の話を聞かれていて、ほかの人はどう見えるのかというのはぜひうかがいたいんですけど、小嶋さんはどうですか?

小嶋美代子氏:リクルートさんの「Will」の話は何回か聞いたことがあるんですけれど、うちも似たような目標管理プラスアルファみたいな感じで、3年後とか5年後「自分のキャリアをどう考えるか」ということを上司と面談するんですね。だいたい半年に1回ぐらい。きっとシートも似ているだろうし(笑)。

(会場笑)

「Can」「Must」までは書いていないです。だけど、どうありたいかということは書く欄があったり。そして直属の上長と話すんです。

やはり今のお話をうかがっていて、その面談をどう進めていくか、なんのために「Will」を聞くのか、そして「Will」を知ったうえでマネージャーがそれをマネジメント上どう使ったり、あるいは本人から聞き出したり、モチベートしていくのかというところ、そこがやはりつながらないと、機能する・機能しないというところにギャップが出るのかなというのは感じました。

「Will」が生まれる瞬間を見逃すな

佐々木:源田さんどうでしょう?

源田泰之氏(以下、源田):本当すごいなと思いました。

伊藤:できない時もあります……。

(会場笑)

源田:いや、純粋にすごいなと思いました。私たちのソフトバンクでも、もちろんどういう自分になりたいか、1年後、3年後、5年後みたいなことを書いたり、それをベースに上長と話すということがあるんですけれど、そこはやはり業務ベースに近いんですよね。仕事への向き合い方とか。仕事とまったく関係ないところで、どういう自分になりたいかではないんですよ。

すごいなと思ったのが、ある程度経験を積んだ、例えばシニアの方で50歳以降とか、55歳以降とか、60歳以降で次の働き方を見つける時に、経験をかけ合わせて自分が本当になりたかったもの、なりたいものはなんだろうと。それと経験のかけ合わせで、なにか新しい仕事をアサインするとか。

ソフトバンクグループは携帯(電話)事業の会社だと思われていますけど、いろんな事業分野があるので、意外とそこはできるのかなという気がするんですけど、若い人の「Will」とやらないといけないことみたいなことは、けっこう一致しない気がするんですね。

それを上長がどう今の仕事に落とし込んで、というか腹落ちさせて、本人が「そうか。じゃあ、まずはここからがんばっていこう。これがこうつながっていくんだ」という、未来へのつながり感をどうやって引き出すというか、導いてあげるのかということが、めちゃくちゃ高度な気がするんです。

伊藤:いやいや、そんな……。

(会場笑)

伊藤:私自身、完璧にはできていなくて...失敗して落ち込んだりします。

ただ1つあるのは、やっているうちに「Will」が出てくるメンバーも多くて。最初から全員にもりもり「Will」があるわけじゃないです。やっているその時に「Will」が出てきたらマネジメントとしても、その「Will」の発現を見逃さないことがとても重要です。「それ、あなたがやりたいことなのかもね」というようなことを見つけてあげたり、シェアし合うことでもだいぶ違います。

また、リーダーを育成する際に、まさに佐々木さんにお願いしているような「Will」を見つけていく研修も大事にしているので。そんな、常にすばらしいというわけではないんです。

(会場笑)

佐々木:でも、私がすごいなと思うのは、「Will」を見つける研修にものすごく時間をかけてらっしゃるんですよね。半年ぐらいの時間をかけられて、役員全員、社長も総出で、選抜人材に対して伴走をするということをやられていて。

そこに対する経営のコミットというか、「自分たちがやりたいことを実現すること=企業成長なのである」というメッセージが強烈に、たぶん組織に伝わっているのかなということが、拝見していて思ったことではあります。

縦割り組織と多様性の両立

佐々木:一方で、そうは言ってもさっきおっしゃった「マッチングがなかなかむずかしい」とか、「中間管理職層が自分自身でも『Will』を持っていくというチャレンジもけっこうある」という世界もあると思うんですが、もしこれからそういうチャレンジがブレイクするとしたら、どんな方向性があり得ると思うかを、ぜひブレストしてみてもらいたいんですけど、いかがでしょうか?

源田:ソフトバンクには今、だいたい1万7,700人ぐらいの社員がいます。その1万7,700人の会社で、ある程度、携帯事業も成熟してきて、大企業の中でどうやって利益を生むかというと、当たり前ですけどやっぱり効率化。

とくに「ICTを使って効率化をはかって、利益の幅を広げましょう」という当たり前の話になるんですけど、そうすると組織は縦割りになります。先ほどユニットの話もあったんですけども、携帯事業でユニットができるかというと、もう無理なわけですよ。

佐々木:なるほど。

源田:そうすると必ず縦割りになって、そのなかでの効率化をはかっていくので、俗に言う大企業病のようなものは出てくるかもしれない。そのなかで個の働きかたとか、そことどう向き合うかという話なんですけど。僕らは、そこはそこで今の既存事業はしっかり効率化をして利益を上げるというのは第1に置いて、やっていこうと。

それで、やはりそれとは別の道で、社内で別の自分の能力発揮の仕方とか、やりたいことを実現する道を用意して、そこからちゃんと自分の道を自分でつかんでいけるという、そっち側にシフトしていますね。

佐々木:日立さんの方向に近いですね。

源田:近いですね。

佐々木:いろんな逃げ道と、いろんな選択肢を。

源田:そうですね。いろんな選択肢を用意して、今の仕事をしっかりやりながらも選択肢のなかで自己実現をはかっていくし、当事者意識を持ってしっかり業務にも挑んでもらえるマインドを作っていくという。そういう感覚ですね。答えはないですね。

佐々木:そうだと思います。

多様性の目指すべき道は

佐々木:では、会場からもぜひ質問とかをいただければと思うんですけれど、「これ、聞いてみたい」という方、いらっしゃいますでしょうか? 前野先生、いかがですか? 聞いてみたいことがあれば、ぜひ。

前野隆司氏(以下、前野):今の源田さんの(話について)。僕もキヤノンという大企業にいたからわかるんだけど、巨大な仕事を分化してやると、やる気出ない仕事があるんですよね。それをどうしていくか。答えがないとおっしゃったけど、「どなたか教えてください」みたいな。

(会場笑)

なにかヒントでもあったら、ちょっとずつ目指すと変わるじゃないですか、キャリアチェンジだけじゃなくて。リクルートさんみたいに一つひとつがキラキラした仕事ばかりで、わりと少人数でやれると、やっぱり業種としても幸せになりやすい会社なんじゃないかなと思ったんですよ。そこで大企業で工夫している例とか、例えばリクルートさんのやり方をうまく、こんな分業体制でもやるにはどうすればいいかと、それが知りたいです。

佐々木:最近、私がよく聞くのは、異業種で交流していくとか、人材として還流していくとか、ぜんぜん違うところで何年か経験を積んできて「何年か後に帰ってきていいよ」とか。すごくダイナミックに人材の育成を考えてらっしゃるし、モチベーションの作りかたも考えてらっしゃるのかなというのが、すごく最近感じるところです。

本当の意味で多様性とリーダーシップをつかもうと思うと、自社だけで完結するのがけっこうむずかしくなってきているので、もう社会システムみたいに作っていくという流れができているのかなという気がしないでもないですけれども、どうですか?

源田:私ばっかり話しているみたいですけど……。

佐々木:いいですよ、どうぞどうぞ。

源田:佐々木さんにアレンジしていただいて、異業種研修を少し前からやっていたんですけが、それはそれですごくよかったですね。なにがいいかというと文化も違う、生い立ちも違う、でもものすごく優秀な人たち同士が1つのチームになって、なにかを作り上げなければいけない。この経験はすごくいいみたいです。

リクルートさんとも一緒にさせていただきました。リクルートさんと一緒にやると「けっこう似てるじゃん」という感じで、ダイバーシティというより、社内の人たちみたいだったみたいな、そんな節がありましたけどね(笑)。研修はやっています。

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