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スペシャル対談 都倉賢×玉乃淳(全1記事)

「結局、地味な作業の積み重ねでしかない」慶應卒Jリーガー都倉、華やかな経歴の裏にある“挫折人生”

サッカー解説者の玉乃淳がスポーツ・ビジネス界の第一線で活躍するキーマンの半生をたどる「スペシャル対談」。今回は、北海道コンサドーレ札幌所属のセンターフォワード、都倉賢氏のインタビューを紹介します。※このログはTAMAJUN Journalの記事を転載したものに、ログミー編集部で見出し等を追加して作成しています。

コンサドーレ札幌、J1凱旋

都倉賢氏(以下、都倉):淳ちゃん、久しぶり。

玉乃淳氏(以下、玉乃):トクのSNSをたまに見ているから全然久しぶりの感じがしないよ。スペインで会った時以来? それは言い過ぎか!?

都倉:伝説のスペインね。淳ちゃんが僕のプロポーズを散々邪魔してくれた(笑)。

玉乃:ほんとごめん。あのとき、全然気が付かなった。結局マドリードの川沿いでプロポーズしたんだっけ?

都倉:そうそう淳ちゃんが寝ている朝方にね。淳ちゃんが24時間僕たちに付きまとってきたからほんと2人になるチャンスが無くてさ。「マジなんだよ、こいつ」って心の中で思ってたよ(笑)。

玉乃:だってトクはラブラブで僕は1人で寂しかったんだもん。

都倉:そんな淳ちゃんもついに結婚しちゃって。おめでとう! 奇跡だね。しかもバルセロナでプロポーズしたんでしょ!? 僕らクラシコじゃん!

玉乃:色々やかましいわ(笑)。それより待ってましたのトックンJ1凱旋! しかも得点王で!

都倉:2位ね。

玉乃:あ、また2位か。草津の時も香川君に15点差ぐらいつけられて2位だったよね。

都倉:そんなには離れてないわ(笑)。でもなによりチームの絶対使命だった昇格を果たせて本当に良かった。

現代のチームにおいて今一番重要なのは「広報部」

玉乃:相当に盛り上がってるんじゃない北海道全体で?

都倉:東京にいる人にはあまり知られてないと思うけれど、テレビも地上波で大きく取り上げてくれるし、新聞も一面で報道してくれて。野球も含めて北海道ではスポーツの価値がとても大事にされていてすごく嬉しい。

玉乃:確かに、メディア戦略がうまくいっている印象があるかも。試合当日のロッカールーム内から試合終了後までのインサイドの映像をSNSとかで公開しているよね。試合前の緊張感とか試合直後の熱量ムンムンの選手の声や表情ってやっぱり伝わってくるものがあるし、選手達が身近に感じて応援したくなるもん。やっぱりそういうメディア戦略の先陣をきっているのはノノさん(現 北海道コンサドーレ札幌社長)なの?

都倉:そうだと思う。北海道中を走り回って外部で専門的なスキルを持った人とかも巻き込んで、「一体感」を作ってくれているんだと思う。今海外では動画展開もすごいもんね。特にNBAとか。こんなクオリティ高いやつを無料で見られていいの? っていうのがFacebookとかでバンバン上がってくる。いくらでも情報発信できる時代だから。

玉乃:そういえば、この間、日本に初めて来た外国人監督さんの話を聞いたんだけど、現代のチームにおいて、今一番重要な役割を担っているのは「広報部」だって言っていた。確かにチームのブランドを作る上で、広報部の戦略はチームの人気や興行収入までをも大きく左右しちゃうよね。トクも個人での情報発信を通じて北海道親善大使みたいな役割を担っているから偉いなと思っていつも見ているよ。全国区レジェンドの稲本さん・小野伸二さんを多く登場させながらさ(笑)。

倉都 ほんと、コンサドーレというか、北海道を全国に発信していきたくて。事実、超が付くほど寒いけど、めっちゃ住みやすくて。今札幌で土地を探してる。永住路線(笑)。早く遊びに来てよ。本当最高だから。

玉乃:あの「得点」にしか興味がない都倉がそんなに「北海道」を愛しているなんて。

都倉:うーん。確かに神戸に在籍していた時も草津時代でたくさん点を取った名残で、自分が活躍できればいいというところが確かにあったかも。結果が伴えばよかったのかもしれないけど、当時エゴだけ通そうとしていたから監督からすると使いにくかったかも。コンサドーレに来て初めて、「チームを勝たせたい、負けたら自分のせい」という責任感がどんどん大きくなっていって。今は、勝利にはなにが必要かというところを逆算してプレイできるようになった。

世間のイメージとは裏腹の挫折人生

玉乃:自分の得点よりもチームの勝利?

都倉:うーん。チームとしてはそれでオーケーなんだけど、自分の心の中では実はこう言う葛藤が……。本当に恐怖心に苛まれるの、点を取れないと。1試合でも点を取れないと一生このまま点が取れないんじゃないかと不安になる。

玉乃:すごい話だね、それ。キーパーとストライカーは特別というか、他のポジションの人からするとトクたちのその気持ちを完全に理解するのは難しいかも。それとももしかして、トク自身、得点ということについて何かトラウマでもあるの?

都倉:なんだろうね。まー挫折の人生というか、中2の時とかは、身長が劇的に伸びた人たちにわっと抜かれたり、中3のときには、中2にスタメンを取られるようになったり。ユースに上がれなかったり、高3でもまったく試合に出られずだったし。点を取ることで自分の存在意義みたいなものを感じているのかも。大学(慶應義塾大学)に行きながら、フロンターレに入ってからも、またどえらい壁にぶつかったり(注:当時川崎フロンターレでは、同じポジションにジュニーニョやフッキが在籍)。

玉乃:点を取らなければ、それが挫折に直結する。本当に厳しいポジションだなー。

都倉:でも挫折を挫折として認識できるのがスポーツのいいところ。もちろん時として残酷ではあるけれど。幼い時から、親父が超スパルタで、毎日小学校までの2キロを走って通っていた6年間もそうだし、継続は力なりで、ジョギングなんて地味だけれど、地味な作業の積み重ねでしか物事ないからさ結局。点が取れない時や、何か物事が上手くいかないというのは、何かしら悪い習慣があるんだろうし。

玉乃:本当にいつもストイックだよね。ちなみに僕は認めないけど、トクは、イケメンで幼稚舎から慶應ボーイで華麗なる都倉一族の末裔っていう世間のイメージがあるもんね。僕は絶対認めないけど。

都倉:ははは。自分がサラブレッドだと思ったことは一度もないけど、周りはそう思っているんだろうなと感じることは確かにあるかも。完全に誤解なんだけどね。得なのは、直接会うと、意外と人間臭いと思ってくれて、いい印象になることがあるからいいんだけれど。

玉乃:今シーズンの目標はどお? やっぱりJ1得点ランキング2位?

都倉:ちゃうわ(笑)。目標はあくまでも残留になるかな。J2で優勝するよりJ1残留がはるかに難しいと思うし。自分の数字としては2桁得点を目指したい。もちろん厳しい戦いになることは覚悟しているけど、壁にぶつかるときほど成長できると信じているし、J1の舞台を楽しまない手はないよ。

玉乃:ところでさ、トク僕より2歳年下だよね?

都倉:あれ? そうだっけ? 淳ちゃんだからついついいつもため口に。これ、Jリーガーあるあるでしょ(笑)。

【都倉賢プロフィール】北海道コンサドーレ札幌所属のセンターフォワード。時折見せる規格外のゴールやゴールパフォーマンスで、世界的なニュースになることも。慶應幼稚舎出身のJリーグ界きっての慶應ボーイ。しかし泥臭いプレーや、人間味溢れる素顔とのギャップに、多くの人が魅了され続けている。

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