CLOSE

ベンチャーにおける女性のキャリア〜サイバーエージェントを創業期から支えた広報責任者・上村嗣美氏(全4記事)

チームで最大の成果を出すために選んだ“時短×管理職”の道 サイバーエージェント広報の仕事術

11月6日、「Lean In Tokyo」がProfessional Woman マンスリースピーカーイベントを開催しました。今回のゲストはサイバーエージェントの上村嗣美氏です。時短マネジメント職として、同社の広報責任者を務める上村氏が働く上で気をつけていることを紹介しました。

時短で働くマネジメント職に挑戦中

上村嗣美氏(以下、上村):ありがたいことに、目の前のことを一生懸命頑張って続けてきた結果、産休・育休を経て復帰をしたら、たまたま「広報の本を書きませんか?」とお話をいただきました。それで、仕事復帰後、娘を寝かしつけた後に夜な夜な執筆して本を出すことにいたった、そういったこともありました。

成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術

先ほど、「ライフイベントを描き切れない」とお伝えしたんですけれど、自分でも36歳のときに出産して1年産休・育休を経て、昨年4月に仕事復帰して、やはり1年間仕事を休んでいたので、不安もありました。

当たり前のように広報に戻れると思ったし、同じポジションで仕事はできるだろうとは思っていたんです。とはいっても、1年間のブランクによって、自分の仕事のやり方とか、周りとのコミュニケーションとか、どこかに影響がでないかな、と思ったんです。結果、復帰して思ったことは、「あっ、大丈夫だった」でした。

なぜかというと、信頼残高をそれまでに作れたことが大きいなと思っています。選択肢を増やしたかったので、働けるとき、頑張れるときに頑張ったこと。

「頑張った」というと、ひと言になってしまうんですけれど、成果を出すこともそうですし、仕事のなかで新しいチャレンジをすることもそうです。あとは、周囲の人との関係づくりをきちんとしてきたことも大きかったです。

今は限られた時間で働いていますが、私が気を付けていることは、すべて「前倒しで仕事をする」とか、「結果にフォーカスする」ということです。

私は仕事に復帰したタイミングでは、プロフェッショナル職的な扱いで、いわゆるプレーヤーだったんですね。時短で仕事復帰して、プレーヤーとして仕事をしていたんです。

自分のなかでは「出産前と変わらぬ成果は出せている」とは思えていましたが、その一方で「時間に制限がなければもっと成果が出せるんじゃないか」「もっと新しいことができるんじゃないか」と思ってしまったんですね。そう思ったときに、「それだったらマネジメント職としてチームで出せる成果を大きくしよう」って思ったんです。

一度は、自分の意思でプロフェッショナル職になったんですけれど、プレーヤーとして自分が働ける時間が短いので、マネジメントとして、適切な目標設定と、戦略と、仕組み作りをして、チームで成果を出す。

そうすることで、例えば、自分がプレーヤーとして8時間会社にいることで出せる成果よりも、マネジメント職で出せる成果が絶対大きくなるはずだと思って、マネジメント職にスイッチしました。

とはいっても、「私、マネジメント職になりたいです」と言って、すぐなれるかというと、みんなが希望すればすぐなれるものではないと思うんですね。自分のなかで信頼残高を作ってきたことで、上司にもその意思は受け入れてもらえました。

育児と仕事を“両立”するための自分ルール

よく、「育児と仕事を両立」って言うんですけれど、私、両立なんかできるわけがないと思っていて。すべてを100パーセントなんて無理だなと。仕事と育児と家事と。保育園の送り迎えも自分でやるし。子供が急に熱を出したら自分が休むか、たまに私の母にヘルプを頼んだり。土日だって子供とみっちり遊ぶ時間を作りながら、家の中の片づけもやらないといけないし、一週間分の作り置きおかずを作って、合間に仕事のメールをチェックしたりとか。

そういった状況のなかで、すべて完璧になんかできてないです。全部が100パーセントにはできないかもしれないけど、それでもそれぞれしていて気を付けていることをご紹介できればと思います。

私は基本的には今、9時~17時という勤務時間で仕事をしていますが、緊急案件があるときやそこでしか調整できない予定が入ったとき以外は、無理して帰宅時間を延ばさないようにしています。

本当に周囲のおかげで成り立っていますが、「この人はこの時間までしかいない」となると、みんながそれに対応してくれるようになるし、自分で「何時までだったらギリギリお迎えに間に合うから」と無理してしまうと、いろんなことに、それは育児とか家事なんですけれど、しわ寄せがきてしまって、自分のなかでバランスが取れなくなってしまう。

今、私が2歳の娘を育てていて彼女の生活を考えたときに、今この勤務時間が適正と思ったら、その時間ピッタリで働くようにしてます。もちろんなにかあったら、「この日ばかりは少し遅れます」ということはあるんですけれど、まずは自分のなかで、ルールとして貫いていることです。

あとは「人の手は遠慮なく借りる」ということ。私、子供を産んで仕事復帰するまでは、育児に対して自分の親の手すら借りるのが申し訳ないというか、しちゃいけないと思ってたんですよ。それは自分が産休・育休中で家にいたということもあったんですけれど、そんなことをしていたら、いざ仕事復帰して、娘が熱を出して。

自分は仕事でどうにもならないし、急に人も見つからないし、私の母にお願いしたら、それまで頼らなさすぎたせいで娘が泣いて「うわぁーん」みたいになってしまって。正直、それまでに慣らしておけば、こんなことにもならなかったかもしれないな、と思いました。

あとは、たまにはベビーシッターさんも頼んでいます。金銭的な負担もありますが、今の一時的な金銭的な負担とか、出ていくものは将来的に自分の仕事で回収できると思うんですね。なので、無制限には無理なんですけれど、一時的には必要なのかな、と思っています。

こうやって仕事目線で話をしてきたんですけれど、やっぱり子供ってすごく可愛くて。私、出産するまでは「保育園さえ見つかれば早くに仕事復帰しよう」くらいに思ってたんですよ。でも産んでみたら、「こんな存在を預けて仕事復帰なんてまだ無理だな」と、結局1年間お休みしたんです。そう思えたくらい、子供は可愛いし、子供といる時間もすごく大事。ただ、そのうち子供は独立するんだから、自分のキャリアも築いていきたい。

でも、子供が小さいうち、「子供の母親は私だけ」と思ったときに、やっぱり「子供と過ごすときは完全に彼女だけに集中しよう」と決めました。帰宅後も仕事で急ぎの確認や相談があったときに、スマホとかを手元に置いてあるんですけれど、なにもないときにはうっかりスマホを見ないように、完全に娘と向き合うようにしています。

一人ひとりが強みをもって自走できるように

スライドで今の平均的な1日をざっとご紹介したんですが、だいたい朝5時くらいに起きて23時くらいに寝るという生活をしています。ちゃんと寝ています。ちゃんと寝ないと体が持たないというか、「ママが倒れたら本当に家庭が崩壊する」と思っているので、自分の体のコンディショニングはきちんとしています。

今、時短管理職として私はやっているんですけれど、「時間が短くて管理職ができるの?」と思う方もいると思うんですね。

私が気をつけていることとして、「メンバーと信頼関係を築く」ことと、「メンバーが自走できる環境を作る」ことに気を配っています。信頼関係を築くというのは本当に小さいことなんですけれど、きちんと個人個人で話をしたり、会社にいる時間はスピード重視で対応したり、なにか相談したいとか、なにか投げてるのに返事がないとか、捕まらないということが、多分1番周りの人にとってイライラすることだと思うのでそれをなくすようにしたり。

あとは非常に大きいかなと思っているのが、「メンバーが自走できる環境を作る」ことです。

広報って、専門的な仕事になってしまうので、ついつい相談を受けたり質問されると、やり方を伝えてしまう。ですけれど、やり方だけではなくて、できるだけ考え方を伝えるようにしてます。あと、私自身が上部から経営会議で話されていたことのフィードバックを受けているので、その共有もしています。なぜかというと、経営陣の考えを知ることで、自分の動き方・判断基準を広報メンバーが持てるからですね。

あとは、「仕組み化する」。これもすごく難しいんですけれど、今、私のテーマとして「広報を科学する」ことをしています。「こういうことをしたら広報活動が上手くいく」とか。それはソーシャルメディアの投稿かもしれないですし、プレスリリースの出し方とか、1日の業務とか。そういったものを科学して、それを仕組み化していくことで、よりみんなが自走できる環境をつくれたらいいなと思っています。

あとは、一番大事にしていて、私はこれをちゃんとやりたいと思っていることが、「xxだったらこの人」という強みを一人ひとりに作っていくことですね。

私ができることを、そのままできるようになってほしいとはまったく思っていません。私は誰かを目指すんじゃなくて、「オリジナルになろう」と思ったので、広報メンバーもみんなオリジナルになってほしいです。なので、このなかにも広報の業務に携わっている方もいらっしゃるかもしれませんが、「採用広報だったらこの人」とか、「事業と一緒にスタートアップを立ち上げていくならこの人」「ソーシャルメディアの運営だったらこの人」「技術広報だったらこの人」とか。一人ひとりの強みを作っていって、外で講演したり、本が書けるくらいに、みんなになってほしいと思っているんですね。

なぜかというと、今の広報メンバーはみんな女性で、ママ社員もいますが、今は独身だったり子供がいなくても、もしかしたら出産して仕事復帰するとなるかもしれない。そうなったときに、その人が「求められる人材になってほしい」「自分で選択肢を持てるようになってほしい」と思っているんですね。なので、一人ひとりの強みや特徴を伸ばしてそういう価値を高めてほしいし、みんなが同じことをできるより、個々人が強みを伸ばした方が広報チームが強くなると思っています。

最後に、私がキャリアについて考えることなんですけれど、「若いときこそ全力、回り道」。これは、サイバーエージェントの常務の言葉なのですが。私は秘書という、今のキャリアとは違うことも経験しましたけれど、そこがものすごく活きているなと感じます。あと、頑張れる時に頑張る。あとは「こうなりたい」ということは宣言すべき。それを周りが応援してくれたり、そういった話をもってきてくれると思うので。

あとは、自分に自分でストッパーをかけない。「私はここまでだろう」とか、「ここまでしかできない」とか。そうなってしまうと、それくらいの仕事しかこないので、ストッパーをかけちゃうのはもったいないですね。

あとは、自分が活きるポジションを見つける。私であれば、「インターネット業界で長くキャリアを築いている広報」ということですけれど、そこを見つけていくこと。あとは「社内での評価がどうか」ということだけではなく、市場的に見てどうなのか。そういうところも考えて、いろんなキャリアや価値を作っていければいいなと思っています。

ご清聴いただき、ありがとうございました。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
著者フォローや記事の保存機能など、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

会員の方はこちら

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

  • NTTドコモの社員でありながら6社で副業する山田崇氏 企業人材が紡ぐ地方創生と次世代キャリア形成の可能性

人気の記事

新着イベント

ログミーBusinessに
記事掲載しませんか?

イベント・インタビュー・対談 etc.

“編集しない編集”で、
スピーカーの「意図をそのまま」お届け!