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ベンチャーにおける女性のキャリア〜サイバーエージェントを創業期から支えた広報責任者・上村嗣美氏(全4記事)

「任せる勇気×新しい挑戦」が自己の成長につながる--サイバーエージェント上村嗣美氏

11月6日、「女性が野心を持って、挑戦することができる社会」の実現を理念に活動する「Lean In Tokyo」が開催したProfessional Woman マンスリースピーカーイベント。今回のゲストは、サイバーエージェントにて広報責任者を務める上村嗣美氏です。16年前、社員30名の時代にサイバーエージェントに入社し、同社の急成長に貢献。現在は一児の母となり、時短マネジメント職として働く上村氏からオリジナルキャリアの作り方を学びます。本パートでは、参加者からの質問に答えました。

幅広い視点での広報活動が必要

司会者:それでは、会場のみなさまから上村さんにご質問がございましたら挙手をお願いします。

質問者1:◯◯と申します。逆に私は育児がちょっと落ち着いたので、キャリアチェンジをして、先月からITのベンチャーの広報になったんですけれど、まず1つ目は、ベンチャーの広報って少し独特ってお話を聞いたので、「それってなにかありますか?」ということ。

2つ目は、育児という制限がある中で、広報という新しいキャリアを作るにあたって、心構えとか方法論みたいなものをお聞かせいただけたらありがたいです。

上村嗣美氏(以下、上村):1個目の「ITベンチャーの広報が独特」って、どういったことでしょう?

質問者1:社員が何人もいるわけじゃないので、1人でイチからやっていかなきゃいけないとか、前任がいないということと。あと「横のつながりが強い」という話も聞いて、どうやって有機的につながっていくのかということを。

上村:なるほど。おそらくほかの業界より、ITとかネットベンチャーの広報って、横のつながりがものすごく強いと思います。つなげるのが好きな団体があったり、呼ばれて交流会に参加してみたいな感じでつながっていくんですね。

横のつながりがあるとなにがいいかと言うと、普通だったら「競合他社の広報と仲良くなるなんて」と思うかもしれないんですけど、例えば一緒に考えて企画を提案したりということができるようになるので、そこはものすごく強いかなと思います。

あと、育児で時間が短いなかでの広報活動ですね。今、ご勤務先がITベンチャーということなので、スタートアップだと(目指すところが)「会社の信頼性を上げる」とか、「知名度を上げる」ということだと思います。そうなると「信頼性のあるメディアに載せてもらう」とか、そういうところが、先にはなると思うんですけど。

ただ、今ものすごく私が感じているのが、「みんながこのメディアを見る」というふうにはなっていなくてSNSのフィードとか、そういったもので記事が拡散していくので、特定のメディアだけとか、メディアリレーションズだけに寄りすぎず、幅広い視点で広報活動をしたほうがいいのかなと思っています。私たちも「自社発信でいかに読まれるものを作れるか」とか、そういったことにも気を配っていたり、そのために「どういうタイトルにすればいいのか」「どういう時間帯がいいのか」、そういったところも気を配っていますね。

枠を越えた仕事を少しづつ増やしていった

質問者2:お話ありがとうございました。私たちのチームから質問させていただきたいところは、つらい時期をどうやって乗り越えたのか。モチベーションコントロールをもっと詳しくおうかがいしたいなと思っています。

特に、「広報になりたい」という大きなゴールが先にあったとして、そのときにそれが見えない状態だと、5年間を耐え忍ぶのはすごくつらいと思うんですね。そのときに、小さなゴールとして「ここができたらいいんじゃない?」というようなアドバイスをくれる人がいたのか、とか。

あと、ロールモデルという方は明確にはいらっしゃらなかったと思うんですけれど、インスピレーションを受けられた方が、社内外問わずいらっしゃったのか? これもおうかがいしたいです。

上村:ありがとうございます。まず、あとのご質問からお答えすると、当時、私が秘書をしていて「広報になりたい」という目標があって、そのときの社長室長の方にものすごく助けられたのは大きいですね。

その方は今、独立して上場企業の社長になっている方なんですけれど、私が「今の仕事でいいのか」と不安を抱いているということと、「広報をやりたい」ということを理解してくれて、秘書の枠を超えた機会を与えてくれたんですよ。

例えば、取締役会の運営をするとか、実際に広報活動で「こういったプレスリリースやってみる?」とか、「こういうことをやってみる?」というふうに、声を掛けてくれて。そのなかで私も社長の秘書をやっているので、「今度、社長の取材が入るときに、そこに入らせてください」とか「その対応をさせてください」というふうに、少しずつ広げていきました。

悩みから脱する効果的な方法「もっとがんばっている人を見る」

完全に「広報になれる」というゴールが私には見えなかったんですけれど、それがつらいということではなくて、周りとの比較で「自分ができていない」「ぜんぜん会社に貢献できていない」とか、そういったところがものすごくつらい時期だったんですね。

「つらいな」と思って、同期に話をしようかなと、誘って飲みに行ったりすると、同期がもっとがんばっている話しか出てこなくて(笑)。「私がこんな泣き言を言っているのは馬鹿らしいな」「そんなことは言えないな」と思うことを、繰り返し、繰り返し、繰り返し。

私が秘書をしているときに、たまたま同期が子会社を立ち上げて社長に就任することがあって。その取締役会の運営を私がやってるときに、「秘書ってなんの仕事をしてるのか、正直わからなかったんだけど、こんな重要な仕事をしてたんだね」って言われたり、そういう言葉に私は救われました。

子会社社長を、新卒で任されるのは彼が初めてだったんですけれど、そういった同期がそういうふうに声をかけてくれたこともうれしかったですし。「彼にはもっともっともっと苦労や努力があるはず」ということを想像したら、自分がそうやって、うじうじしていることが本当に馬鹿らしいなと思って。

おすすめの方法としては(笑)、「もっとがんばっている人を見る」こと。もしかしたら悩んでいる自分を脱する1つのポイントかもしれないなと思っています。

あとは、私もマネージャーという立場になって、ちょっと気を使っていることが……もちろん忙しすぎてもダメなんですけれど、暇だと人って悩み出しちゃったりするんですよ。考える余裕があるので、「このままでいいのか」とか「この人はこんなふうにしている」とか。逆に忙しすぎても疲弊してしまうんですけど。

なので今は、その調度いいバランスの仕事を考えるようにしています。逆に自分がそういう経験をしたからこそ、気を付けているということはあります。こんな感じで大丈夫ですか。

できることだけをやっていても成長はない

司会者:ほかにご質問のある方、いらっしゃいますか?

質問者3:◯◯と申します。本日はありがとうございます。上村さんが広報になられて、そのあと「オリジナルの存在になる」と決められたと思うんですけど。そのあとのアクションと、自分にとってターニングポイントになったと思われるエピソードがあったらぜひ。「オリジナルな存在になったな」と思えたような出来事があれば、ぜひ教えてください。

上村:そうですね。まず最初に広報担当になったときの話なんですが、「どういう広報担当がいいか」ということを、いろんな記者に聞きまくったということがありました。

「記者にとっていい広報になれ」というより、それは外の目なので。あとは経営者の言葉を自分の言葉にできるようにしました。外の目と中の声と、その間で「うまく仕事ができる広報になろう」ということを、まず最初に思いました。

あと、「オリジナルの存在になろう」と決めたときには、「自分のできる仕事だけを続けないようにした」ということですね。自分ができる仕事をずっとやっていたら、やっぱり私の成長はないので。

私ができる仕事で、誰かに任せることで、その人も成長できるかもしれないというような仕事は、どんどん任せていって、自分は新しいことにチャレンジするようにしました。

その1つがAmebaというブログサービス。立ち上げ当初、それの広報に力を入れようという話になったときに、広報予算もつけられるようになって。

私はそれまでお金を使わない広報活動ばっかりしていたので、「なにをすればいいんだろう」と思ったんですけれど、「まずは“ブログの日”というものを作ってみましょうか」とか、「芸能人を表彰するブログ・オブ・ザ・イヤーというのをやりましょうか」と提案して、初回はほぼ一人で担当したり。難易度が高いからといって尻込みするのではなく、はじめてのことでも自分の頭で考え抜いて、やりきる経験が必要だなと思います。

「そうなれたな」と思ったエピソードというと、「まだまだ私は発展途上だな」と思うので、そうは思い切れてないんですけど、本のこともそうですが、自分が今まで得たものをアウトプットする機会をもらえたということは、自分の中で少し自信が持てました。でも、まだまだぜんぜんですね。

成長をかけ算にする サイバーエージェント 広報の仕事術

「いつまでも選択できる自分でいられるように」

司会者:では、次で最後の質問になります。

質問者4:このテーブルから3つ質問が出ました。1つ目は、同じ年代、あるいは少し年上の方の部下を持った場合、そのときの対処の仕方があればお話しいただきたいということ。

2つ目は、「時短で管理職」に自分から望んでなったということで、今マミートラックで悩んでいる方が多いと思うんですけれど、上層部の方に伝えたときの心構えとか、そのときに決心されたこととか、なんでもいいんですけど、そういう方が多いと思いますので、ぜひその辺のことを教えていただけたらと思います。

最後に、上村さんの今後のビジョンについて教えていただきたいです。よろしくお願いします。

上村:ありがとうございます。まず1つ目の、年上の部下・メンバーを持ったときの対応なんですけれど、あまり意識しすぎないことじゃないかなと個人的に思います。

もちろんリスペクトは持ちながらなんですけれど、いわゆる管理職って「だから偉い」というわけではなくて、チームをマネジメントする1つの役割にすぎないと思うので。なので、これは年齢関係なくですが、「全部私に確認を取らないと仕事が進められない」というようにはしないようにする。

2つ目、「管理職になりたい」「なろう」と伝えたときなんですけれど、世の中的に見ても、時短で管理職の人って役員の方とかでたまにいらっしゃいますけど、そんなに聞かないですよね。

私は、「時短でもちゃんと管理職ができる」「男性女性関係なく、時間に関係なく、成果を出せばそういった道もある」ということを提示する……と言うとすごく偉そうなんですけれど、そういう一例になれればいいなと思って言ったし、今そういう気持ちでいるということがありますね。だからこそ、単に「時短でも管理職になれた」ということに甘んじるのではなく、きちんと成果を出さなれけばいけないとは思っています。

最後のビジョンについてなんですけれど、正直、私はビジョンを明確に描きすぎないようにしてるんですね。例えば、「いくつのときにこうなりたい」とか。それはライフイベントが描ききれないことと一緒だと思うんですけれど。

数年後に子供が小学生になって、もしかしたら「子供の育児のためになにかしたい」ってなるかもしれない。けれど、いつになっても仕事はし続けたいし、やっぱり自分が「これをやってきた」と言えることって、やっぱり仕事で。ワクワクするのは仕事だと思ってるんです。

なので、どういうかたちであっても、仕事ができるようにする。世の中に少しでも、自分が「仕事をしてきた」「こういうことをしてきたんだよ」と、子供に胸を張って言えるような、そういった仕事をしたい、くらいがビジョンです。別に起業したいとか、出世したいとか、こうなりたいみたいなものは、正直ないんです。つまらなくてすみません、という感じなんですけれど。

ただ、私の中で1つあるのが、いつになっても選択肢を複数持ちたい。選択できる、そういう存在に自分はなりたいと思っていて。選択って自分の意思だけじゃなくて、家族のこととか、世の中のこととか、会社のこととか、いろんなことに左右されてくるんですね。

そのなかできちんと選択できるような自分の市場価値とか、自分の実力とか、できること、求めてくれる人、そういったものを少しでも増やしていきたいなと思っています。ありがとうございます。

質問者4:ありがとうございました。

司会者:お時間になりましたので、こちらで終わりとさせていただきます。上村さん、本日はありがとうございました。

(会場拍手)

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