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「ブレない自分のつくり方」 ~上司は教えてくれないキャリアアップ術~(全7記事)

自分の“譲れない価値観”はなにか? 元甲子園球児の起業家が振り返る人生の決断

『人生のパイセンTV』を手掛け、当初29歳でフジテレビ史上最年少演出家となったマイアミ・ケータ氏。元甲子園球児、サイバーエージェント子会社の取締役を務めたのちに20代で起業した株式会社レーザービーム代表・福山敦士氏。高校・大学の先輩後輩の間柄でもある2人が語る、仕事との向き合い方。

進路における決断には譲れない価値観がにじみ出る

福山敦士氏(以下、福山):(仕事との向き合い方についての質問に対して)2点ありまして、1点目が「ごちゃごちゃ言わずにぐちゃぐちゃやる」という話、もう1つは、感情的な決断をするというところですかね。

まず1点目、「ごちゃごちゃ言わずにぐちゃぐちゃやる」というのは、僕がサイバーエージェントに入って内定者の時に一番最初に言われた言葉でした。会社に入る前は、いろんな不安があって。サイバーエージェントはとくに部署が多岐にわたっていて、子会社配属だったり、本体でも広告の部署とかAmebaの部署とかいろいろあったんですけども、いろいろな情報が入ってきて。

最初のキャリアはどれにすると出世しやすいとか、どの先輩がいいかみたいな話がけっこうあるんですけど、まず、外部情報よりは「自分になにができるか」とか、「福山といえば○○」というタグ付け、これをきちんと作っていかないと、本質的なキャリアアップはできないんじゃないかと思います。

例えば、僕の場合は「サイバーエージェントにいました。次、独立しました」なんですけど、それが、転職してこの会社行って、(さらに転職して)この会社行ってというのも、見た目はキャリアアップなんですけれども、できることが増えてない限りキャリアは積み上がりません。ずっと同じ高さのまま移動するだけになってしまいます。

まずは「自分になにができるか」とか、「福山といえば○○」というタグ付けをするために、目の前の仕事と徹底的に向き合うこと、とくにこれから社会人になられる方に関しては、ごちゃごちゃ言わずにぐちゃぐちゃやるのをおすすめします。

2点目が「感情的な決断」なんですけれども、これは僕もマイアミさん同様に、就職活動でそんなに数を受けなかったんですね。OB訪問はたくさん行ったんですけど、結局4社しか受けませんでした。

そのなかでリクルートの方に教えてもらったやり方なんですけれども、自分が小学校、中学校、高校、大学、もしくはそのなかの部活やサークル、あるいはアルバイトでも、決断する時にどういう気持ちで決断をしたかというところを振り返って、言語化する。これをやるといいと言われました。

なぜかというと、自分の進路における決断は、自分がどうしても譲れない価値観がにじみ出てくる、ということをアドバイスいただいたんです。やってみたら、まさにそうでした。

例えば、僕の場合、小学校、中学校、高校、大学、すべて野球を続けてきました。その全部で、全国大会に出場してきたんですけども。

まず、小学校。小学校は正直あんまり意識なかったんですけれども、中学校に進む時に中学校の野球部を選ぶか、シニアリーグというクラブチームに入るかどうかを迷った時がありました。その時は、私が小学校の頃に体験した、ある出来事が強烈に影響しております。

「勝ちたい」という気持ちで決断してきた

3人兄弟だったんですね。兄が2人いて、三男なんですけど。兄は5歳上と4歳上で、兄の部屋に当時エロ本がありまして。そのエロ本に興奮してしまって(笑)。「おいおい、うちにエロ本あるから来いよ」みたいな感じで、仲間を家に呼んでは盛り上がってたんですけど、そんなことを繰り返してるうちに、小学校でだんだんちょっとうわさがたってしまいまして。

私、福山敦士といいまして、当時「あっちゃん」と呼ばれてたんですけど、「あっちゃんがどうやら変態らしい」と……。

(会場笑)

というのが、クラス中で出回ってしまいまして、だんだん居場所がなくなりました。今は変態とか言われると、もうぜんぜん気持ちいいんですけども(笑)。

(会場笑)

当時11歳とか12歳の時はすごく傷ついて、やばいなと思って。「生きてく自信ないかも」みたいな。中学校に上がってくると、だんだんこうカップルができるというか、付き合うとかあると思うんですけども、僕はその市場では戦っていけないなと判断して、「別の道で突き抜けないとこの先、人生がない」と勝手に追い込まれて(笑)。それで、「野球で絶対結果出そう」と狂ったように決めました。

そこで、野球で中学の頃は全国大会で優勝する。たまたま結果がついてきたんですけど、結果がなくても、そこで決断したことがある種、その後の決断に全部影響しています。

高校を選ぶ時は男子校を選ぶというか、もう「僕は恋愛なんかできない」と決め込んでいたという話と、あとは中学校の頃に同じように一緒のチームで野球をやってた仲間、今、プロ野球選手が2人いるんですけれども、彼らに勝ちたいなという感情的な気持ち。

全国大会で優勝した時は、僕エースピッチャーだったんですけど、10対11で勝つみたいなチームだったんですね。ピッチャーの僕はめっちゃ打たれるんですけど、その分僕もめっちゃ打つみたいな感じで(笑)。ボコボコにしながら勝ち続けたみたいなかたちだったので、なかなか自分の力で勝ち上がったみたいなことが自信を持って言えなかったんです。

彼らが横浜高校とか東海大相模とかに進むなかで、僕はあえて違う道を選ばなきゃ彼らに勝てないと、単純に「勝ちたい」という気持ちで違う高校を選んだ。それがたまたま慶應(義塾)高校だった。この順番でした。

高校では横浜高校に勝ち、甲子園に行くことができました。その後、慶應高校だと慶應大学に進み、六大学野球を目指すというのが一般的なルートで、ちょうど今ぐらいの時期に早慶戦というのがあるんですけど。早慶戦で活躍するというのが1つの大学野球のステータスなんです。

そこで戦うか、野球を辞めるか、はたまた違うところで野球をやるかという選択の時も、感情的な決断でした。高校時代に親が離婚しまして、家計が火の車でした。兄は大学を辞めて働きに出てくれて、私立に通う僕の学費を工面してくれて。そんな背景もあり、経済的に野球を続けるのはむずかしいという選択で、華の早慶戦の道(硬式野球部)を諦めました。

当時、斎藤佑樹くんとかがいたので、ちょうど早慶戦がムチャクチャ盛り上がっていました。それでもそっちの道は行かないということは、自分の気持ちだけでなく、環境がそうさせてしまったというのがありました。

弱いチームを優勝に導いた成功体験

そんななかで、絶対彼らに野球じゃない道でもいいから勝ちたいという気持ちがあったので、それを虎視眈々と考えた時に、これまで続けてきた野球の経験を活かして、マネジメントの力は社会に出ても通用するんじゃないかなと思って。

(自分は)ピッチャーだったんですけど、140キロ投げる力というのはビジネスで力を発揮することはないんですけども(笑)。マネジメントだったり、自分を高める、成果を出すというのはたぶんなくならないんじゃないかなと。それが社会で活躍する力なんじゃないかと。

そういう仮説を持って、当時準硬式野球部という、一応体育会だったんですけど硬式じゃない、弱いチームに入って、そのチームを立て直すというところで成果を出そうと心に決めました。自分がマウンドに立つのではなく、学生コーチ(監督)という立場でチームを強くしようと決めました。

そこで、ありとあらゆる試行錯誤をし、見事27年ぶりに優勝することができて、全日本大会に出場しました。それが成功体験になり、明確に自信を持つことができました。すべての決断を正解にするべく、感情的になったという言い方がいいかもしれませんが。

社会に出た時も、やっぱり慶應の体育会だとみなさん丸の内とかそのへんに行くんですね。商社、金融、それこそテレビ局とか電通、博報堂が多いんですけども、彼らに対しても「勝ちたい」という気持ちがずっとあったんですね。コンプレックスもあったんですけども。

当時、高校時代に野球部の仲間で試合終わった後、飯に行くんですけども、外食するお金がなかったんですね。財布に1,000円札が1枚も入ってないみたいな状況がずっと続いてたので、「飯、行こうよ」と言われても「俺は飯、家にあるからいいや」みたいな感じで、ことあるごとにどんどんフラストレーションとかコンプレックスがたまって。

それが溜まりに溜まって、絶対自分で爆発的に稼ごうと思うようになりました。値段を気にせず外食できるようになりたいなという気持ちがあって、「めっちゃ稼いでやろう」という気持ちに昇華しました。そうなったら、普通に就職するんじゃなくて、やっぱり起業しちゃったほうがいいんじゃないかなというのは、その時に考えました。

ただ、小学校から大学まで16年間野球しかやってなかったので、僕には野球しかないなと思ったんです。ビジネスを練習しなければと思って、一番チャンスがあるというか、自分が経営経験を積めそうなところを探した結果、サイバーエージェントと、ガイアックス、Sansan、フューチャーアーキテクトというコンサルの会社の4社に絞られました。

その4社に絞って、全部受けて「社長になりたいです」みたいな話をして。そこで「ああ、いいよ。僕も社長だから」という面接だったのが、サイバーエージェントでした。それで「じゃあ、サイバーエージェント入ろう」と決めたという背景がありました。

小・中・高・大、野球の決断と部活の決断と就職の決断、それぞれあったんですけれども、振り返るとすべて感情的なところに頼っていった結果、自分に言いわけをする必要がありませんでした。もともと頭で考えた「こう行くといいんじゃないか」という打算的な話ではなく、自分がゆずれない価値観をずっと大事にしてやってきました。

その結果、今のところ、ぜんぜん満足というわけじゃないですけども、キャリアについてああすればよかった・こうすればよかったという迷いはなく、自分らしく生きていけてるなという感覚はあります。話を戻すと、ごちゃごちゃ言わずにぐちゃぐちゃやるという話と、感情に判断をゆだねるといいんじゃないかなという2つでした。

司会者:ありがとうございます。冒頭からめちゃくちゃ熱い話が(笑)。マイアミさんから僕が得たのは、人生設計という大前提があってそれをやりきるということ。福山さんは、ぐちゃぐちゃ言わずに……。なんでしたっけ?

(会場笑)

なんですけども、いずれにしてもやっぱりいろんな背景があって、みなさん今にいたっているのかなと思いました。

「『パイセンTV』で働きたい」という人があふれかえってる

せっかくなので、なんか一つひとつ質問を受けながらみたいな感じで。今の話でなにかみなさんご質問のある方いらっしゃったら。全員受け付けられないんですけど。挙手をお願いします。

じゃあ、指してもいいですか? と言った瞬間に、だいたいみんな下向くんですけど(笑)。せっかくなので。お1人でさみしいでしょうから、ぜひここで。

(会場挙手)

質問者1:1人で参加してます、ヤマモトケンイチロウと申します。よろしくお願いします。自分は高校を卒業してすぐ就職して、5年目の社会人なんですけども、後輩もできてきて、今リーダーという立場でやっているんですね。人に教えるということを、いろいろ自分が今まで学んできた経験を活かしてやっています。

そのなかで、やっぱり言葉の選び方だとか、相手の性格とかそういうのを配慮しながら言うのが大事だと思うんですけど、そういった相手に伝わるような伝え方というところでなにか意識している点はございますでしょうか?

マイアミ・ケータ氏(以下、マイアミ):僕はすぐ感情的になるタイプだったんですね。もう、瞬間湯沸かし器です(笑)。チーフADの時とか、もうやっぱ下のADくんがミスしたら「おまえ、なんでこんなこともできねーんだよ!」というタイプだったんです。下の人の気持ちがわからないというか。「なんでおまえ、もっとこうしないの?」「俺だったらこうするよ!」と、自分のことを押し付けるタイプだったんですけど。

『パイセンTV』とかを始めて、いろんなパイセン方と会ううちに「俺のやり方、違うな」と。俺がこう思っていても、それを一方的に押し付けるのは違うんだなと。できないことを「なんでできない?」じゃなくて、「なんでできなかったんだろう?」という発想に変えたんですね。「もしかしたら、俺がこういうことをやってあげたらこの子はできたのかな」とか。できなかった原因がすべて俺にあると思って、今はやってます。

番組、それから仕事以外のこともそうですけど、今までは「なんであの人、ここまでの期限に上げてこないんだよ」とか、「なんでこの人、頼んだことできないんだよ」とイライラしてたんですけど、その考え方をやめた途端にやっぱイライラすることもなくなったんですよ。

例えば、よくあるんですけど、僕らは編集の放送日が決まってるんで、やっぱり期限があるんですよ。(会場後方を指して)今日来てくれてるのが『パイセンTV』のディレクターなんですけど、ディレクターたちがそれぞれロケして、僕も一緒にロケして、こういうディレクターたちがオフラインといって、編集の作業をしてくれるんですよ。それを僕が「いついつまでにちょうだいね」と言って、(ディレクターが)くれるんですけど。

それもディレクターによってやっぱり遅れる人もいるんですよ。「いついつの何時までにちょうだいね」と言っても、くれない人もいるんです。前は「なんでこの時間までに送れないんだよ、ダメだな!」と、イライラしてたんですけど。もちろん今もそういう感情はあるんですよ。だけど、「なんで期限に間に合わなかったんだろう。もしかしたら、俺があの時点よりもっと前にお願いしてれば間に合ったのかな」とか。

できない理由を人のせいにするんじゃなくて、できない理由を自分のせいにする。すべてを自分の責任だと思って、かわいがってあげる。これですよね、やっぱり大事なのは。

上に立って、この人についていきたいなと思うかどうかは、やっぱり自分のことをどれだけ考えてくれるかだと思うんです。だから、上に立った人は下のことだけ考えてればいいと思います。

僕は出世のことも一切考えてないし、下の子たちが今後、俺の下でどう活躍してくれるために育てようかなということしか考えてないです。やっぱりそこでリーダーの人が自分の出世のこととか、自分のことしか考えてない、それで下のミスは怒りつけるといったら、そんなリーダーに絶対ついていきたくないんですよ、下は。

だから下のやつのことを考えて、もしこっちから手を差しのべなきゃいけないやつがいたら、やっぱりそこで差しのべてあげるのも上の責任なんじゃないかなと思います。そうやっていくと、自然と……。

チーム『パイセンTV』は、今フジテレビの13階にバラエティセンターがあるんですけど、一番人気の番組なんですよ、スタッフのなかでも。「『パイセンTV』で働きたい」という人があふれかえってるんですよ。

これはすごくありがたいことですし、僕らとしては誇りなんですよね。やっぱりそれだけのチームワークがあると、ほかの人にも伝わってるわけだし。「あのチーム、すげぇ楽しそうでいいよね」と、みんなが口をそろえて言ってくれるんですよ。それはやっぱり、それぞれのスタッフが信頼してくれて、今日だってこのディレクターたちが無償で、僕が「お願いします」と言ったらついてきてくれるわけですよ。

そうやって人との信頼関係というか、「こいつのためだったらやるよ」とかいう、そういう仕事を超えた人間の信頼関係を築けると、もちろん「あの上司嫌いだ」とかにもならないでしょうし、自然と下が(ついてきてくれる)。「あれ、ちょっとこいつおかしいな」と思ったら、手を差しのべてあげるし。だからリーダーとしては、下を常に見てるということが大事なんじゃないかなと思います。

人は自分の言葉に一番説得される

質問者1:ありがとうございます。

福山:結論から言うと、「人は自分の言葉で一番説得される」ということを意識しています。なので、具体的にやってもらうことは2つで、1つは自分で自分のコーチングをしてもらう。セルフコーチングというんですけども、自分で自分に教えてもらうというか、僕に対してアドバイスをもらう(ことで、アドバイスした本人も問題に気付く)ということを、僕の会社のインターン生にはやってもらっています。

もう1つは、ブログを書くという。言語化することですね。それも最初の話のとおり、人は自分の言葉に一番説得されるので、書いているうちに血肉化されるということを信じています。これに気付いたのは、野球の学生コーチをやっている時でした。

僕が選手に対して一生懸命バッティングの指導をするんですね。タイミングはこうだとか、足の上げ方はこうだとか。アドバイスすればするほど、僕のバッティングがうまくなってくることに気付いたんですね(笑)。これはけっこう、最初の新任マネージャーとか新任トレーナーあるあるだと思うんですけども、人にアドバイスしまくるとどんどん自分が理解するという。これを使ってあげようというのが、アドバイスしたこと。

具体的に、例えば営業マンにやってもらってるのは、僕と打ち合わせに同行してもらって、後で僕に対してフィードバックをもらうという。だいたいもらうのが、「福山さん、早口でしたね」とか「野球の例えが多かったです」みたいな話が多いんですけど。そういうのをもらって、僕もハッとするんですけども。

(アドバイスしている営業マンも)自分自身が一番気付くんですね。「あっ、私も早口かも」とか、「例え話、逆にあったほうがいいな」とか。そういうことに気付いてもらえるので、人にアドバイスをしてもらうことで自分自身にコーチングしてもらうということをやってもらってます。

あとは、営業マンの育成だと(他社の)営業を受けてもらう。実際に営業マンは営業をいっぱいがんばったりとかすると、なんとなく自分のことが見えなくなるんですけど、いざ不動産会社とか保険会社の人に営業してもらうと、けっこう穴に気付けたりとか。「なんか自分の話ばっかりして、ぜんぜん頭に入ってこなかった」とか、「話聞いてて眠くなりました」みたいな。

じゃあそれ、自分が同じことやってないかというのを見つめ直す、きっかけになるというのはあるかなと思ってます。

なので、話を戻すと、人は自分の言葉に一番説得されるので、そこに従ってなるべくその人から言葉を発信してもらったり、ブログに書いてもらう。そういうことを、粘り強さが必要なんですけども、やっていくといいのかなと思っています。

質問者1:ありがとうございます。

司会者:ありがとうございます。1問目から約30分ほど時間をいただいて、ありがとうございます。このままのペースで行くと、4時ぐらいに終わるかな?

マイアミ:えっ!

司会者:(笑)。どんどんいきましょう。

マイアミ:すぐ熱くなっちゃうんだよね。

司会者:ぜんぜんいいじゃないですか(笑)。

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