2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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小安美和氏(以下、小安):私の場合は、管理職になったのは37歳なんですが、なりたいと思ってなったんじゃないんです。
私はずっとメディアを作ってきたんですけれど、メディアを作ることが大好きで、一生懸命やっていました。メディアづくりを、海外マーケットでもやってみたい。中国、上海のマーケットで『ゼクシィ』という雑誌を出していたんですが、それを「やってみたい!」と思って、37歳の時に上海に駐在させていただきました。
行ってみたら、中国人の部下が40人いたという(笑)。なので、「管理職になりたい!」と思って、そのポジションを取りにいったわけではなくて、「やりたい仕事をやりたい」と言って、赴任してみたら目の前に部下が40人。しかも、言葉が通じない中国人のメンバーが40人いたというのが、私が管理職になったきっかけです。
40人のメンバーに対して、どこに向かってどうしていくのかを、リードしていかなければならないので、そこからリーダーとはどうあるべきかということを考え始めたのが、私のリーダー経験です。
私自身がリーダーになってとても楽しかったことは、一人ひとりのメンバーのWill、一人ひとりがどうありたいかということを、しっかりと聞いて寄り添って、Willを実現すること。その総和が組織の成長や事業の成長につながる。
私自身は、その瞬間がとても楽しい、醍醐味だなと思ってやっていました。なので、課長だとか部長だとかやっている時は、それがただ楽しくて、かつ、男女の差というのを実はあまり感じずにやらせていただいていました。
一方で管理職になってもっとも苦しんだことがなにかというと、「私らしいリーダーシップのあり方」というものがよくわからなかったことです。
ポジションが上がれば上がるほど、やはり女性比率が下がっていくわけです。男性のなかに、女性が少数いるという状態。
みなさんそういう経験ってどこかであるかなと思うんですけど、どうですか? 「ぜんぜん平気よ」と思いますか? しかも、私、ふだんこんな感じなんですよ(笑)。
(会場笑)
休みになると世界各地に行って民族衣装を着るのが好きなんですけれど、ふだん、こんな格好をしている人が、まずこれぐらい(当日の服装を示して)の感じになって、そこから男性の多い集団に入っていくので、すごく切り替えが大変です。
そもそも、どういう格好をすればいいのか。あと、どう振る舞えばいいのか。どんな言葉を使えばいいのか。今思えば、そういったことが当時はわからずに戸惑いました。
なんとなく「居心地が悪いな」と思っていて。私らしくこんな感じで、「どうも!」と行くと浮いちゃう感じ。これは今もだと思うんですけど(笑)、極端な例ですけど、イメージとして、これぐらいのギャップがあるということです。
「なんだかうまくいかないな」ということを日々感じながら悶々として、「これはなんなんだ?」「私がぶつかっている壁ってなんなんだろう?」ということを言語化したいなと、ずっと思っていました。
実は、いろんな女性リーダーシップ研修みたいなものは、日本でいろいろ受けたんですね。そのなかで、自分の課題感、壁がなかなか解決されなかったものですから、「そうだ、スイス行こう」と。
(会場笑)
ということで、唐突なんですけれど(笑)。もう少しステップをお話すると、グローバルで女性のリーダーシップはどうあるべきだと言われているのかを学びたくて、「女性 グローバル リーダーシップ プログラム」でGoogle検索をしたら、スイスIMDが出てきました、と(笑)。
(会場笑)
「スイスか! 遠いぞ……」と思ったんですけど、管理職になってから何年か日本でやってきたわけですけれど、日本では解答が得られなかったので、スイスまで飛びました。
ローザンヌという湖のあるすごく美しい町にあるビジネススクールIMDに行き、グローバルの女性リーダー育成の権威であられるギンカ・トーゲル先生が主催する「Strategies for Leadership」というプログラムに参加してまいりました。
4日間のプログラムのためだけにスイスまで行くということに、躊躇はしました。それなりに投資もかかるんですが、「それでもいいから、私のモヤモヤを解決したい!」と思いました。
エントリーする際には、すでに会社を卒業していました。普通は大手のグローバル企業から派遣されて行くプログラムなんですけれど、「私は日本の女性リーダーが抱える壁、これを突破したいです。会社には勤めていないんですが、私をプログラムに入れてください」というメールをお送りして、快諾いただいて、そして、ギンカ先生のプログラムを受けてまいりました。
このプログラムには、世界中から女性エグゼクティブが集まります。私が行った時には参加者はアメリカ、ヨーロッパ、あと日本だったんですけれど、中東やアフリカから来られるときもあるようです。
4日間のコースが年間2回あるのですが、私は5月末から6月のコースに、参加してまいりました。IMDが大切にしているものが、徹底したリサーチに基づく理論。それから、体験から学ぶということ。日本にはないユニークな体験型のプログラムだったんですけれど、中身はあまりお伝えいたしませんが(笑)、少し全体像をお話します。
オーセンティック・リーダーシップを学ぶ、身につけるということをテーマにしたプログラムでした。オーセンティックとはなにかというと、直訳すると「真正の」とか、「まがい物でない」という意味になります。この場では「自分らしいリーダーシップ」と訳しています。
「自分らしいリーダーシップ」ってちょっと勘違いするかなとも思ったので、補足すると自分のわがままなスタイルということではなくて、さっきの私の素のままの民族衣装みたいなことでもなくて(笑)。
まがい物ではない、本物の、その人がどうありたいのか、どうしていきたいのかということを、徹底的に追求したうえでのリーダーシップのことを言っているのかなと、私個人は理解しています。
4日間、本当に濃密なプログラムで、まず「自分を知る」パートが1日目にあります。そして、2日目に「オーセンティック・リーダーシップとは」というギンカ先生の講義があります。
その後が、私にとって財産になっているグループワーク。30人参加する女性を5つのグループに分けて、6人1組のチームを作ります。各グループにコーチが1人ついて、この6人とコーチ、合わせて7人でグループワークがこのDay2、Day3、Day4と続いていくんです。
この人たちと徹底的に、「私は何者なのか?」ということを話し合うんですね。徹底的な自己開示、「私は何者なのか?」。実は、「あなたは何者で、どこから来て、どこへ向かうのか?」という事前のレポートがありまして、……私、それがまた書けなくて、またホテルに1人で泊まって、1人合宿をして真剣に書いたんです(笑)。
(会場笑)
簡単なようで、「あなたはどこへ向かうんですか?」って聞かれたら意外と困りますよね?
でも、それを持っているか持ってないかということは、やっぱり大きいのかなと思うんです。そのことを徹底的に共有して、「なぜそう思うのか?」「どうしてなのか?」ということを、みんなでフィードバックし合いながら過ごしました。
Day3にはちょっとおもしろいセッションがありました。もしみなさんが向こうに行かれれば、サプライズなプログラムが待っていますので(笑)、具体的な中身はお伝えできないんですけれど。
自己認知、メタ認知、他者から見て自分はどういう振る舞いをしているのか、自分がどんなリーダーシップスタイルなのかということ、これって実はなかなかわからないですよね。自分ではこうしていると思っていても、まったくそうではないケースがあるんだということを、私はここで学びました。
あるセッションで、自分の振る舞いを全部ビデオに撮られているんです。そのビデオを全員で見て、「あなたはなぜあのとき、こういう振る舞いをした?」というようなことを、みんなでディスカッションするセッションがありました。
最後の日は、そういうセッションを通して1on1でコーチング。コーチと「あなたはどうしていきたいのか?」「この3日間見てきたけど、あなたってこういう人に見えるけど、あなた自身はどう思う?」といったことを細かくお話をしていただけました。
あと、この2つはスキル装着なんですけれど、どのように相手に影響力を与えるか。相手をどう説得するか。自分と価値観が異なる人をどう巻き込んで合意形成をしていくか、というようなスキルのセッション。
それから、「ヴォイス・ワークショップ」といって、話し方ですね。多くの人を説得できる話し方とは何か。自分のスピーチプレゼンの音声を分析していただいて、どこがどう弱いかということをレーダーチャートで渡していただくんです。
都市伝説みたいな感じで、「低く話せば、男性は言うことを聞いてくれる」みたいな話もあるんですけれど(笑)。
そのレベルではなく、人を説得する、納得していただくための言葉の使い方、ピッチ、イントネーションなどをデータ分析、リサーチをもとにていねいに指導いただく場がありました。
最後、「このセッションを通じて、結局あなたはどこに向かうんですか?」ということを、自分に対して手紙を書いて終わります。
私自身がこのプログラムでなにを得たか。6人プラスコーチ1名で徹底的に自己開示をして、相互フィードバックをしながら、自分自身のこと、自分も知らない自分を徹底的に認識をしました。正直言って、見たくない自分の姿もあるんです。泣く人もいます。
大手のグローバル企業の事業部長クラス以上の方々が集まるような場なので、私だけがか弱い感じで、ほかの女性がみなさん強そうだなと思って、すごくヒヨっていたんですけれど。
(会場笑)
強そうな女性が意外なシーンで、悔しくて泣いてしまったり。だいたい、女性は悔しくて泣きますよね。悔しくて思いどおりにならなくて泣いたり。自分の根っこの、自分を支配しているものに気づいて泣いたり。そんな深いセッションがありました。
グループで過ごす時間は3日間だったんですけれど、この時の仲間とは今もWhatsAppでつながっていて、いろんなメッセージが来ます。例えば、ある参加者が、「私こうで、ああで、こうで~!」という(抑揚の多い)しゃべり方をする人なんですが(笑)。
ここ(スライド)に書いていますけれど、「ヴォイス・トレーニングで習ったように、落ち着いて、クリアな話し方で上司とコミュニケーションを取ったら、なんと私がほしかったポジションを手に入れました!」と。
(会場驚)
そんなメッセージが来て、みんなで「いいね!」と盛り上がって。アメリカとヨーロッパと日本に散らばっていますが、たった3日間一緒に過ごしただけなのに、この人たちと一緒にがんばっているんだな、と心強く感じます。
なんらかの壁はあるんだけれどより上のポジションだったり、より影響力のある仕事をできる人間に、みんなで励まし合いながらなっていくというような関係性を構築できたということが、私にとっては一番の財産だったかなと思っています。
このグローバルの最先端のプログラムにおいて、なにを大事にしているかというと。
まず、徹底的なる自己認知、Self Awarenessです。おそらくこれって、本には書いてあったり、言ってくれる上司もいたりするかもしれないですけど、どうやってやるのかという、HOWの部分がわからない人が多いんじゃないかな、と思います。
私自身も、自己流でホテルにこもって30年ビジョンを書いてみたり、いろんなことをやってきてはいるんですけれど、「それでも足りなかったな」と思うぐらいの自己認知ですね。見たくないものを見せる・見るということを、徹底的にやらせていただくプログラムで、そのことは非常に大事だなと、今回感じました。
2つ目は自分はどうありたいかということ。Willというのは、自分はどうしたい、だと思っているんですが、それに加えて、さらに先のVisionですね。10年後、20年後、30年後、あなたはどこへ向かうのか。
「今、こうしたい」ということに加えて、「10年後、20年後、30年後に向けて、あなたはどうしたいのか?」。Visionは、Willがないと書けません。「自分がどんな人間で、どこから来たのか?」を言語化できていないと、「どこへ向かうか?」は書けないので、Will&Visionはセットだと思っています。
最後に、Self AwarenessとWill&Visionだけでも自分らしいリーダーシップを維持するのは非常に難しいなと思います。女性のリーダーの数がが非常に少ない中で、孤独なんですよね、実は。
日本の管理的職業に従事する人が12.5パーセントということは、今日の会場にこれだけ女性がいて、男性の方が3人しかいませんが、男性のみなさんが今感じている、その感覚です(笑)。
(会場笑)
ふだん私たち女性が、会議室だったり、ビジネス界において感じている感覚って、こんな感じです。例えば、怖いと感じるときもありました、正直。
私が言うことが「女性代表のコメントだ」と思われてしまうんじゃないか、とか。これは私個人の意見なんだけれど、私が言ってしまうと、「女性はみんなそうだね」って言われちゃうんじゃないか、みたいな怖さがありました。
そういうことが、実は私がぶつかった壁だったんだなというのがわかりまして、そのことを乗り越えるためにどうするかというと、やっぱりこれが必要なんですね。Networkです。
同じような環境にいてがんばっている仲間、励まし合い、切磋琢磨する仲間がいるということが男性の真似をするんではなくて、自分らしいリーダーシップを編み出していくために必要なんじゃないかな、と思っております。
最後に、私自身はいろんなキャリアの機会をいただいて、キャリア断絶も経験する中で、乗り越えたり、乗り越えられなかったりして、やってきているんですけれど。
それでも、管理職、リーダーという役割にチャレンジしてやってよかったなと心から思っています。これから先はもっと日本全体に、影響を与えられるようなリーダーになりたいなと思っていまして、そういうリーダーの仲間をもっと増やしたいなと思っています。
今後、私は「女性×はたらく」にフォーカスして、女性のリーダーを増やしていくような事業を作って、起業していきたいと思っております。なので、みなさん、ここで今日出会ってしまったからには仲間なので(笑)。
(会場笑)
ここでネットワークができたということで、ぜひ一緒にがんばっていきましょう。ありがとうございました。
(会場拍手)
田中美和氏(以下、田中):小安さん、本当にありがとうございました。ご自身の経験を踏まえたうえで、リーダーシップ、それをたどるご自身のご変遷をつまびらかにお話しいただいて、私自身も大変勉強になりました。
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