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PremiumSeminar」(全5記事)

「会社にではなく、仕事に向き合え」 DeNA南場智子氏が語る、生き残れる人材の条件とは?

DeNAが開催するビジネス向けサマーインターンシップ「StuDIG」の説明会にて行なわれた、南場智子氏によるスピーチを書き起こし。成功する新規事業の判断基準から、最強の組織を産み出す人材観まで、DeNAを成長させてきた氏の仕事論を余すところなく語った。

ゲームからDNA検査まで!

石倉:皆さんお待たせしました。株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)に来ていただきありがとうございます。このあと、弊社ファウンダーの南場、そして去年のStuDIG参加者でもあるDeNAの内定者メンバーが来ておりまして、そのメンバーでのパネルディスカッションを含めたプレミアム・セミナーを開始したいと思います。

私、DeNAで新卒採用の責任者をしております石倉と申します。改めてよろしくお願いします。今日、お話させていただくことは4つ。

まずひとつめは、DeNAの事業と組織についてお話しさせていただきます。今、ソーシャルゲーム以外にもDeNAは幅広い領域で、インターネットであったり、スポーツであったり、さまざまな事業を展開しています。それらがどんな事業で、どんな組織なのかをお話します。

その後、南場と内定者によるパネルディスカッションを行いまして、みなさんからQ&Aを受け付ける時間にしたいと思います。

南場智子(以下、南場):お疲れ様です。ではまず私の方からお話しさせていただきます。DeNAの事業についてですが、みなさんモバゲーと野球はご存知だと思います。他にもいろいろとやってます。カテゴリーでいうと、ゲーム・エンターティメント系と、スポーツ系と、Eコマース系、その他コミュニティー系など、幅広いジャンルのサービスを提供しています。

新規事業も複数手がけています。例えばみんなが知っている、間違いなくみんながDLしている、マンガボックス。

400万人以上が登録しています。よもやこの段階でこの400万人の中に入っていない人は、この中にはいないと思いますけど大丈夫ですか? 万が一DLしていなければ、こっそりDLしてください。

人気漫画家の描き下ろしがウィークリーで読めるんです。描き下ろしです。ポイントは、全部無料なのに、全部人気漫画家ということです。『神の雫』の原作:亜樹直、作画:オキモト・シュウの樹林さんが編集長で、ご自身もいくつか描いてらっしゃいます。海外でも展開しています。

最近、インディーズにも広げました。人気漫画家のものは一作品だいたい100万人くらい読者がいるわけですが、インディーズでも5~6万人の読者を持つ人も多く出てきています。

この中のみなさんで漫画の才能がある方はStuDIGなんか狙わないで、漫画描いた方がいいですね。ただ、ここでは無料なので、人気作品を描いて単行本を出してください。そこではじめて収益を得ます。これがマンガボックスですね。

チラシル。首都圏で展開しています。

新聞にたくさん入っているチラシ、生鮮食料品とドラッグストアのものが多いでしょ? それを毎朝全部スマホで見れちゃう。

似てるサービスでShufoo!(シュフー!)というのがありますが、Shufoo!は画像情報を上げていますけど、こちらはデータですから、好きにピックアップして自分のマイページとかにできます。これがどうしてできるのかというと、百数十人のアルバイトが鬼のようにタイピングしています。だから、StuDIGなんかに合格しなくても、内職はありますよ。これ本当にいいサービスです。使ってみてください。お母さんにいってみてください。

NHKエデュケーショナルと組んで、わが社が提供しているアプリゼミ、教育系サービスに参入しました。

これは小学校1年生からやっています。私は初等教育から日本を変えないといけないと思っています。初等教育に関心ある人いますか? めっちゃ重要です。

あと、肝入りのDNA検査ですね。マイコードです。

東京大学医科学研究所と組んで、先日発表しました。 これは遺伝子検査サービスですが、これをきっかけにヘルスケアサービスにわが社は参入します。今年のDeNAは、今までのイメージとはうんと違う会社になっていく、非常に大きな取り組みの開始ですね。

新規事業のGO判断は、経営陣ではなく"ユーザー"が決める

そもそもこういう新規事業はどのような取り組みで生まれるのかというと、3つのパターンがあります。まず一番目。これが普通のフローですね。

企画して、corporate decision(コーポレートディシジョン)、つまり、経営会議などの会社としての意思決定を行います。今朝も経営会議で一本新規事業のアイデアが出てきました。これは普通のフローですね。

うちの会社は誰でも企画して、経営会議で「アジェンダありますか?」て時に手を挙げれば、入っていけます。企画を披露すれば「いいんじゃないの?」「全然だめだよ!」「もう少し情報を集めないと分からないな」などの意見を経て、最終的にやろうという決定を行い、開発などの準備をし、サービスができると、go / no goの判定会議というのが行なわれます。そこで、「良いんじゃないの」「イケるんじゃないの」となると、会社で責任もってサービス開始する、というのが普通の流れです。

最近はこの普通のフローだけでなく、別のフローが出てきた。それは、このコーポレートディシジョンなんか要らない、スタートしちゃえ、というパターンです。経営会議のメンバーのディシジョン、審判を受けず、いきなり市場に出してユーザーの審判を受けるわけです。

ユーザーの数はそんなに大きくはないです。だけど、リピート率とか、入ったユーザーがどのくらい長い間使い続けているか、あるいは友達を紹介するかとか、あるいは一回どれだけの時間を使っているか、全部数字で出てくる。

ユーザーの審判で、これイケる、すごいじゃん!となったら、次は「スケール」です。

「スケール」とは、このサービスはイケるとなると、10億円以上の財布を持ったコーポレートが出てくるわけです。全国でCMキャンペーンやろうとか、全世界同時展開やろうとか、一気に拡大に向けてアクセルを踏みます。

これがないと、君たちのベンチャーと同じなんだよね。逆に言えば、ベンチャーがこのアイデアを持ってきて、「DeNAでやりたい、KPI超いいし」と見せてくれたら私達が大きい財布でスケールさせることもあり得るわけです。

会社のパーミッションなんか要らない

南場:コレが我々の新しいやり方です。コレに合った新規事業と、コレに合わなかった新規事業があります。アプリ系のサービスは、コレでどんどん行ってます。我々はコレを「パーミッション・レス型」と呼んでいます。会社のパーミッションなんか要らない、市場で勝負しよう。勝手にやっていいよ、と。

唯一、法務のチェックは入ります。DeNAという看板でやるので、公序良俗に反したもの、違法なものはやらないということで、そのチェックだけです。市場で勝負です。わが社の若い、君たちとプラス1プラス2くらいしか歳の変わらないメンバーが好きにやっている。良い結果を出したものだけ持ってきて、10億出せとかいう話をしています。

私や他の経営陣が絶対使わないというサービスでも、市場で上手くいくサービスがあります。それは市場でテストしてみないと。ユーザーの言うことを信じようというやり方です。わが社に非常に合ったやり方です。

アライアンスファースト型

南場:もうひとつは、アライアンスファースト型。

これも我が社の若いメンバーがやっています。優良企業の事業部長とか副社長とか、企画本部長とか社長と毎日毎日会います。とにかくまずは互いに信頼し合う良い関係を作ろうとするんですね。

一緒にご飯を食べたりもします。その中で情報交換やアイデアを話し合います。ケミストリーのチェックですね。そのうちお互いが好きになる。誠実で一生懸命で、なんかいろいろワケ分かった人たちだな、と思えたら、必ず「なにか」を一緒にやることを前提に共同プロジェクトチームを組み、事業検討して、企画が出来上がったらそれぞれの会社でコーポレートディシジョン行って準備・開発に入る、というものです。こういった3つのパターンがあります。

DeNAは"球体型"組織

さて、わが社の考え方をクイックに話しておきます。

まずStuDIGの位置づけ。このStuDIGがきっかけでDeNAに入社した人が大活躍しているので、私達にとってはとても大事なプログラムです。未来の経営幹部を見つけるつもりで学生と勝負したい、というのが私たちのホンネです。

みんなの中の位置づけとしては、腕試しとか、DeNAの中をのぞきたいとか、それに賞金が目当てとか、いろいろあると思います。それは問わない、私たちは優秀な学生と接点を持ちたいと思っています。

さて、DeNAってどういう会社か。組織のイメージって普通の会社はピラミッド型ですよね? 右向け右と言ったら右を向く。私たちの場合は、"球体"のイメージをみんなが持って、それを大事にしています。

DeNAは守安さんの会社でも南場さんの会社でもない。「DeNAは私の会社だ」とみんなに思って欲しいし、そういうアクションが取れる人材だけでやっていきたいと思っています。

球体のイメージで意味するのは、好むと好まざるとにかかわらず、みんなに一定の表面積を担ってもらうということです。自分が担当する領域で世の中に対して自分の固有名詞でDeNAを代表してもらう。

表面積の大小はあります。まだまだ仕事ができない人は小さい表面積、仕事ができれば、社歴に関係なく大きい表面積になります。それはだんだん大きくなっていくものですね。面積の大小の差はあれども、みなさんには好むと好まざるとにかかわらず担ってもらいます。それをとっても大事している会社です。球というのは見る角度によって無数の真正面があるので、自分の対峙している相手には、DeNAの代表、看板になってください。

上司や会社にではなく、仕事に向き合え

あと、大事にしている考え方です。

一番これだ、というのは人材の質です。これが生命線です。我が社の事業は良いときもあれば、悪いときもあります。今は減収減益で厳しいときですが、人材の質に自信があるので、慌てません。

この業界は極めてスピーディーに環境が変わります。昨日まで成功の鍵と思われていた要素が、今日はもう通用しなくなる。決まった方程式がない業界です。この歯車にさえ乗っかっていれば、あるいは、この方程式さえ守っていれば、というのはひとつもないです。

そこでは人材の質だけが頼りです。それさえあれば、どんなにめまぐるしく変わる業界の変動にも必ずついていけるし、半歩先を行って牽引できる、変化を先んじることができると信じていますので、恐ろしいほどこだわっています。

あと、誰が言ったかでなく、何を言ったか。それだけ優秀な人材が集まっても、みんながトップの顔見てたらしょうがないんです。

そうじゃなくってサブスタンス力で勝負なんだ、と。社長が言ったから、事業部長がいったから、といって動く人間は、わが社では尊敬されないというか、いないですね。聞いたことがないです。

これはDeNAが大事にしているところ、サブスタンスです。ヒエラルキーや人に向かうんじゃなくて、仕事に向かおう。だから、昨日入ったメンバーであっても、正しいことを言ってたら十分に耳を傾ける。そういう組織を常に心がけている。

あと、人は仕事でしか育たないということも大事にしています。研修や説教とかも大事かもしれないけど、人が大きく育つのは仕事でしか育たない。これは割り切っています。できるかできないか、50:50な仕事を提供するのもわが社のルールにしています。それだけに失敗も起こります。穴が開きます。その穴が開くリスクはとろうよ、でも人が育たないリスクはとるまい、という考えですね。

常識の先に、新しい価値はない

最後、「良質な非常識」。挙動が非常識な人っているじゃない? 対人インターフェイスで奇をてらう人、あんまり好きじゃないですね。面倒くさいじゃないですか。やっぱり20才を過ぎたら、社会人として普通の行ないができないとダメです。ところが、思考までそれに支配されると、その人は無価値になります。常識の延長線上には新しい事業や新しい価値はないです。だから必ず、常識を疑え、と。そういう考え方。

私達が特に重視しているこの4つの考え方を紹介しました。

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