2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
芳子ビューエル氏会見(全1記事)
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芳子ビューエル:それでは、自己紹介からさせていただきます。私は、カナダに留学して学生結婚しまして、8年半カナダに滞在しておりました。
帰国してから、輸入商社の株式会社アペックスを立ち上げて、長女と長男と次男の3人の子供がいるんですけれども。そのまま会社を立ち上げまして、2012年に上場企業のティーライフとのM&Aを実現いたしました。
現在は、同社の経営に取締役社長として携わりながら、2006年に起業した株式会社アルトの代表も務めております。
株式会社アルトの一部門として、軽井沢にインテリアショップの「リゾートスタイル」というお店をオープンしておりまして、より豊かなライフスタイルを提案させていただいております。
輸入業で培った目利きの力といいますか、それで新素材を見つけてきまして、それを大手メーカー、また小売チェーンに提供するというビジネスもしております。これでさらに幅を広げたチャレンジというのを日々しております。
カナダはわりと「実家に帰る」という考えがないんですね。ですから日本だと、スウェーデンとかデンマークとかの福祉の進んだ国の有給制度が取り上げられることが非常に多くて、日本はなかなか男性が有給休暇を取得できないという点だけがクローズアップされる気がするんですけれども。日本の子育て世代が北欧に比べて恵まれないということではないんじゃないかなと思うんですね。
北米では、ほとんどの場合が出産したから実家に帰るという選択はないわけです。産休も日本より短いし、アメリカだと出産後は1日で退院させられてしまいますし、カナダでもだいたい出産後3〜4日で退院させられてしまって、自宅に戻るということになるんですね。
私は長女はカナダで出産し、長男と次男は日本で出産していて、両方の母親学級に出たときに大きく違うなと思ったのが、カナダのほうが教育の幅がすごく広いなと思いました。
1つ教わったことで思ったのが、食事の作り置きをしておきなさいよと。臨月に入ったら、子供を産んでからの2週間はすごく大変だから、冷凍食品ばかり買ってないで、自分で作ったものを冷凍しておきなさいというのを教わりました。こういうことは日本では教わった記憶がないんですね。
あと洗濯とかお掃除というのは、なるべく夫と年上の子供に任せて、自分の希望どおりのことができなくても、ちょっとやってもらったらほめて感謝するというふうにしなきゃダメですよ、ということも教わりました。
あと授乳は3ヶ月がんばりなさいと。抗体を子供にあげるためにも、3ヶ月は授乳をがんばってねと。その際に、ここがちょっと日本と違うなと思ったんですけれども。市販のミルクを5回に1回はあげなさいと。
市販のミルクを5回に1回あげなさいというのは、そうすると赤ちゃんが、誰かに預けたときに、お母さんのおっぱいじゃなきゃダメだということがなくなるので、それはすごくいい考えですからやってくださいと言われました。
また1回母乳をぬくと、お母さんのおっぱいも張ってしまうので、搾乳機を使うようになる。そうなると、仕事にすごく復帰しやすいということもあって、このへんはずいぶん日本と違うんだなということを体験しました。
あとは教わったことの1つとして、「自分のことをかわいそうだと思わない」ということも教わりました。
日本の場合、わりと実家に戻るのが当たり前のようになっていますので、そのへんも、戻れないからといって、あんまりそういうふうに思わないようにとうちのスタッフには伝えています。
アペックスはスタッフが総勢32名おります。そのうち20名が女性です。その20名のうち13名がママさんスタッフになります。
私の考え方としては、女性にはキャリアを持ってもらいたいですし、結婚もしてもらいたい。やはり、将来の日本のことを考えれば、子供を持ってもらいたいと思っています。
また、仕事をする以上、幸せな環境で男女ともにキャリアを積んでもらいたいと思っていますので、出産復帰率は100パーセント、離職率も0パーセントを目指しております。
経営者として、ワーキングマザーを部下にもったときにどうするかということも1つなんですけれども。やはりワーキングマザーを部下にもったときには、復帰後のママなんですけれども、簡単に言うと、お味噌汁にお豆腐を入れるような感じでやさしく扱います。
あまりスパルタなことを言わないで、ならし保育だとか、病気による呼び出しだとか、そういったことに関しては理解を示しつつ、時々ガス抜きをしてあげるということを努めています。
あと保育園とか学校の授業参観にも気兼ねなく行けるように、有給は1時間単位で取れるようにしていて、これは新米パパも同じです。
フレックス制で、時短で、リモート勤務も可というので。ここにいる(社員の)岡本なんかもそうですが、彼女は都内で仕事をしています。私たちの本社は高崎にあるので、そこでフレックスで時短で仕事をしているわけですね。
やはり時間だけで管理するほうが、管理する側にとっては非常に楽なんですけれども、やはりそれではなくて、「人間性や仕事の質ということも考えましょう」と管理職にはいつも言っております。
それから、うちの会社の場合は有給というのは、入った順番に取るのではなくて、最初に言った人から取っていくことにしていますし、お茶出しなんかも役職に関係なく当番制としています。
結果、2008年から産後復帰率は100パーセントです。2012年から離職率も、一部の事情を除いて0パーセントとなっています。
岡本:うちの会社では1時間単位での有給休暇が取れるので、最近だと「※1小1の壁」というよりは「※2小4の壁」と言われていて、要は、具体的に実際に世の中の動きの変化がかなり激しくなってきているなかで、常に1時間の有給、すごくフレキシブルに対応できているというのが強みかなと思っています。
芳子ビューエル:(産休を)1年丸々取る人はほとんどいないですかね。長い人で10ヶ月ぐらい、短いのはナオミさんが一番短かったのかな。
直巳ビューエル:上の子のときに8週間お休みを取らせていただいて、次男に関しては3ヶ月お休みを取らせていただきました。復帰のときには、保育園に預けてというかたちで復帰しました。
岡本:8時間労働の実質240日、1,900時間という長い時間を丸々スコーンと抜けてしまうというよりは、有給として1時間ごとに取れるほうが、キャリアとして長く続けていくためにいいんじゃないかという実際の声としてできてきた。
芳子ビューエル:続けてもらうためにどうしたらいいかなというのと、こんなに実力がある人が辞めちゃうのはもったいないなと。
うちに入ってくるときは、みんなそんなに高い志はなくて、「結婚したら辞めます」とか「子供ができたら辞めます」ってみんな普通に言うんですよ。でも、仕事を一緒にしていくなかで少しずつ啓蒙するんですね。
そうすると結果的に、先輩がみんなわりと出産して戻ってくるから、「自分もできるかな」というところから普通にスタートしていくので。最初から高い志で「私は一生仕事します」なんていう人はあんまりいないです。
しかし、実際、会社のトップスリーの売上を作り出しているのは、ワーキングマザーです。会社の外では制度を作ったけれどもなかなかうまくいかないという声も聞きますが、制度を作るだけでなく、日々の仕事のなかで、啓蒙していくことが大事なのだと思います。
やっぱり仕事をして子育てしてというのはすごく大変だし。あとは周りの、義理のお母さんとかから言われるとそこまで仕事が続けられないとか、「子供が小さいんだから、保育園もないんだったら、自分で見るのが当然でしょ」と言われちゃうと、やっぱり負けちゃう部分というのも気持ちの部分ですごくあると思うんですよね。
だからやっぱり、そこの部分で強い志がすごく重要になってくるかなというのもあります。経営者もそうですし、復帰する人もそうだし、あとはやっぱり周りの人たちもそうだし。
職場にいて、例えば男の子のほうが熱を出しやすいんですよ。男の子のほうがお母さんの休みが多くて、女の子のお母さんのほうがわりと休まないんですけれども。
休む人の身になってみると本当に、気兼ねってしょうがないと思っていて。電話を受け取った人が「また今日もお休みですか」と思うのはもうわかるんですよね。
だからそこの部分を少しずつ、いつもそういうふうになってしまわないように、職場のみんなの考え方を戻すという作業もすごく必要なことです。
なにをどういうふうに大きく変えるかというと、啓蒙することが必要なんですけれども、そのほかに、やっぱり日々のそういうふうに思っちゃう部分をまた元に戻すという作業も必要なのかなと思うんですね。
知っている会社では、単純に戻ってきた人たち、役職だった人たちに「残業できますか?」と聞いて、「残業できない」と言うと、その場でヒラに戻すというのを聞いてるんですね。
残業できるか・できないかでヒラに戻されたら、キャリアをどうやって積んでいけばいいんだろうと思うんですけど、そういう制度がわりとあるみたいなんですよ。
残業できないんだったら1人前に仕事してないんじゃないかと思う企業がまだ日本のなかにはあると思うんですけど。
そもそも時短で仕事してるときって「申し訳ないな」という気持ちをみんな持っていて。「申し訳ないな」と。だから信頼してあげると、その分ちゃんと一生懸命仕事をしてくれるという相乗効果もあるという部分が、なかなか組織とか社会のなかに浸透しずらい。
私自身も経営者として、最初の女の子が妊娠して出産して、「戻ってくるまで休ませてください」と言って、その彼女が戻ってきて、「時短でスタートします」と言ったときに、「はたして大丈夫なのかな?」という不安は当然ありました。
ただそこで、私は学生結婚なんですけれども、自分が3人子供を生んでいて、ずっと仕事をしてきてというなかで、腹をくくるしかないなと思って。第1号の彼女のときには、経営者として腹をくくるというすごく大きな決断がありました。
だからたぶん、私が女性で子供を産んでいてそういうふうに感じるということは、男性がそういうスタッフが来たときに、そこまで腹をくくれるかなといったら、なかなかくくれないんじゃないかなと。わからないと思うんですよ。
中小企業だからできるんじゃないかと、よく言われますが、100人規模の企業でも可能だと思います。しかしそれは会社がそうあろうというコミットメントをしなくてはなりません。その上で、管理職の教育が必須です。気配りはできなくても、対応方法が変わることで、状況はドラスティックに変わると思います。段階を追って、まずはロールモデルを生み出すことからスタートだと思います。
どうしても管理職は男性のほうが多いというところが1つ大きな壁なのかなと思います。ほんのちょっとのことで続けられるんですけれども、そのほんのちょっとの余裕がないのかなと思います。
これからは起業する人に伝えたいこととしては、あんまり明確なビジョンがなくても大丈夫だと思うんですね。
やはり、起業するときには「ビジョンを持って起業しなさい」と言われると思うんですけれども、目の前の売上を立てないといけない時期など、ビジョンを描く余裕が持てないこともあるかと思います。ですので、「ああなったらいいな」「こうなったらいいな」という「いいな」を積み重ねていくと、結果ビジョンが明確になってくるという、それくらいでいいんではないかなと思います。
それともう1つ、いつもうちのスタッフにも言ってるんですけれども、目に見えないチャンスに気づくことということです。
これは私の造語なんですけれども「触感力」ということで。しょくは「触」る、感覚の「感」ですね、「力」というのを言ってます。
これはどういうことかといいますと、例えばみなさんも同じような経験をされてると思うんですけれども。
「〜さんに連絡を入れたほうがいいかな」とか「これをこういうふうにしたらいいな」とか「こういうことはあの人に伝えたら大きな取引になるな」ということが頭をよぎっても、だいたい「後でいいや」とか、「今、時間がない」とか、「めんどうくさい」とかいうことで、多くのことをパスしてしまっていると思うんですね。
ただ、私が振り返ったときに、やはりそういった、ちょっと頭に浮かんだことをなるべく実行するだけで、成功するとか大きなチャンスを掴むということが、非常に私のなかには多かったんですね。
それはいつもちょっと頭で思ったことなんですけれども。それがすごく「触感力」という言葉で、私としては自分のためになったなと思うので。
朝起きたときから寝るまでにずいぶんそういうことってあると思うんですが、実行していくように、うちのスタッフにも伝えています。
最後に、振り幅がある人はすごく強いと思うんですね。私もこれで会社を28年なんとか続けてきたんですが。会社を長く続けていくと、チャンスもあればピンチもあるんですね。でもやっぱり、無駄なことは1つもなかったなと思っています。
ですから、いろいろな経験が自分の振り幅になって、仕事も子育ても、自分の幅として大事にしていってもらえたらいいなと思っています。
※1 小1の壁:主に共働き家庭において、子供を保育園から小学校に上げる際、直面する社会的な問題。保育園は延長保育があるところも多く、ある程度遅い時間まで子供を預かってもらえるが、小学生児童を放課後や夏休みに預かる学童保育は、待機児童も多い上に通常18時で終わってしまうところも多く、保育園よりも預かり時間が短くなってしまう。また小学生になると時短勤務制がなくなる企業も多く、子供の小学校入学を機に働き方の変更を迫られるワーキングマザーが多くいるのが現状。
※2 小4の壁:学童保育の終了に関して直面する社会的な問題。自治体が運営する学童保育の多くが、小学4年生以上は対象にならないために、小学校4年生以上の放課後の預け先がなくなってしまう。せめて夏休みだけという声もあるが、まだ対応しきれていない自治体が多いのが現状。そのため、子供が小学校4年生になる時期に合わせて働き方の変更を迫られる場合がある。
【芳子ビューエル プロフィール︎】(株)アペックス取締役社長、(株)アルト代表取締役 北欧輸入の第一人者、通販コンサルタント 「産後復帰率 100%、希望退職率 0%」を目指す経営者。働きながら子育てをできる環境を整えることや、ワークライフバラン スの重要性を訴え、ワーキングマザーにとって働きやすい制度を推 進。自身も3人の子供を育てながら、2社を設立し、合計で年商20億円を実現する企業へと育て上げる。
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