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人事部&『WWDジャパン』がジャッジ! 良い面接&悪い面接(全4記事)

面接に“自分らしい”服装で来てと言われたら? アパレル人事担当者の本音

ファッション業界で働くことを目指す人たちを対象に開催された「WWDファッションカレッジ」。レクチャー5は、「人事部&『WWDジャパン』がジャッジ! 良い面接&悪い面接」をテーマに、壇上で擬似面接を実施しました。WWDジャパンの記者が人気アパレル企業の人事担当者と面接。「自分らしい服装で来てください」と言われた時にはどんな格好をしていけばいいのか? 面接官の本音が話されています。

アパレル企業の就職面接ではなにを見られている?

村上要氏(以下、村上):わかりました。ありがとうございます。では次。今度はもう一人別の受験生を呼んでみたいと思います。スズキさん、どうぞ。

スズキ氏:失礼します。

村上:おっと! この帽子はどこかで見かけた感じがする帽子かもしれませんが、先ほどのスミタに比べるとだいぶ変わった印象の服装ですね。では、向さん。どうしてスズキさんはこの格好になっているのでしょうか。ぜひ、彼女の心の内を教えてください。

向千鶴氏:私はファッションが大好きだし、今、新しいものについても詳しいし、やっぱり今日この場では自分のスタイルをしっかり伝えたい、と思っているということ。あと、ジバンシィのTシャツ、胸元にはアンブッシュのアクセサリー、スニーカーはオニツカタイガーとアンドレアポンピリオのコラボレーションのラインで、ラクジュアリーストリートと呼ばれるような新しいスタイルとか、ジェンダーレスという新しい考え方とか、そんな思想を感じ取れるファッションになっています。

村上:なるほど。ストリートのスタイルなんだけど、すごく品質にこだわっているスタイルのことを、我々はラクジュアリーストリートと呼んでいて、今日着ているTシャツはジバンシィのものではストリートライクなんだけどクオリティにこだわったものになっていて。あともう1つ、ノージェンダーみたいに言いますけれど、このTシャツ、実はこれ僕の私物なんですけれど、ようは男物のアイテムをこうやって着ちゃうという(笑)。性別にとらわれないスタイルというのがノージェンダーという、今注目のスタイルです。

ちょっとびっくりする格好かもしれませんけれども、スズキはスズキなりに「最先端のファッションで面接にトライしてやろう」という心意気で、今日はこんな恰好で面接に臨んだということになっているので、ぜひそんな感じで見守っていただければと思います。

では、長谷部さん。先ほどのスミタとだいぶ印象が違っていますし、「オンワード樫山だと、さすがにこれはまずいよね」という気がしたりしなかったりするのですが、いかがでしょうか(笑)。

個性的な服装もアリ ただしTPOを念頭に

長谷部彰氏(以下、長谷部) :はい。先ほどもお話したとおり、服装は自由で、その方の個性を見たいというのがあるので、正直言ってアリです。

村上:そうですか!

長谷部:当社としてはありなんですけれど、あえて良い例、悪い例ということを考えると、これは悪い例になるのかもしれませんけれど。帽子をかぶられていて、実際座る時には取るかもしれませんが、面接をするときには帽子を取ったほうが相手に対して敬意は払っているかなと思います。あとは、面接が最終に近づくと、さすがに注意をする方というのもいらっしゃるのかな(笑)。

村上:社長に会うときはさすがにちょっとね。

長谷部:一次、二次くらいなら全然ありなんですけどね。

村上:なるほど。わかりました。田中さんの企業では、このスタイルはどうなんですかね。

田中春菜氏(以下、田中):そうですね。本当に長谷部さんとほぼ同意見なんですけれども、弊社としてもこの感じのいでたちで一次選考、二次選考にいらっしゃってもありです。

村上:なるほど。アパレル企業だと「自分らしい服装でお越しください」とか「カジュアルダウンしていただいてもかまいません」と言われることが本当に多くて、たぶんみんなにとっては「とはいえ、どこまで!?」というのがすごくあると思うんです。お二人の企業は本当に「大丈夫」なんでしょうか……?(笑)。長谷部さんいかがですか。

長谷部:はい。みなさんご存知のように、弊社は総合アパレルメーカーなので、さまざまなテイストのブランドを扱っています。ですので、「オンワードというのはこういうテイスト」というものはないんですけれど、尖ったところでオープニングセレモニーがやっていたり、もっとミセスなブランドもあります。

なので、その方のテイストに合ったブランドがあるかもとイメージしながらできるんですが、他社の人事仲間に聞いた話ですと、社名を言うとそのブランドがイメージできる会社ってありますよね。そういう会社さんとまったく正反対のテイストの服を着ていくと、「君はわかっていないね」ということで判断されるということを聞いています。

村上:ケースバイケース、企業バイ企業という感じなんですね。田中さんのところはカジュアルなブランドを多く扱っていますので、比較的カジュアルに対しては、カジュアルもOKという感じなんですかね。

田中:そうですね。いくつか服装で見ているポイントがあります。まず第一に似合っているかどうかという部分を見ているんですね。ファッションが好きなんだなという部分。おしゃれが好きかなという部分。「先っぽで見る」というんですが、髪型だったり、靴だったり、指先だったりというポイントをけっこうチェックしています。

あとは、今、気になるポイントだと思うんですけれど、TPOというのも実はちゃんと見ているんですね。弊社では、本当にこの服装でも一次選考は大丈夫というところで、かなりゆるいというか寛容な部分はあるんですけれど。なぜTPOが大事かというと、面接の場はテストではなくて、「このあと自社に入って4月から活躍してもらえるかな」ということだったり、「会社で働く」ということをイメージしていくなかで、TPO、その場に合った服装であるかどうかというのをきちんとイメージできている人というのは見ているポイントだと思います。

受け答えで見られているポイントは

村上:なるほど。わかりました。ありがとうございます。じゃあ、お待たせしました。スズキさん、自己紹介してご着席ください。

スズキ:学習院大学文学部から来ましたスズキと申します。よろしくお願いいたします。

村上:ありがとうございます。じゃあ、今度は田中さん。先ほどの長谷部さんと同じように、スズキに対して御社の質問の時によくみなさんが質問されることを2つほどお願いできますでしょうか。

田中:先ほどお答えいただいたのですが、今日のコーディネートについて、自分なりのテーマ、PRポイントについて教えていただきたいと思います。できれば、立ってお答えください。

スズキ:やっぱり今すごくラクジュアリーストリートが気分なので、ジバンシーのTシャツにアンブッシュのごつめのアクセサリーで合わせました。

村上:はい。じゃあもう1つお願いできますか?

田中:もう1つですけれど、今鈴木さんが興味があったり好きなブランドだったりと、あとはよく行くショップを教えていただきたいのと、それが気になっている理由も合わせて教えてください。

スズキ:ちょっと正式名称はわからないのですが、オフホワイトとかは女性のスタイリストさんとかヘアメイクさんとかも着てると聞いたりなんかしたので、ちょっと気になっています。

田中:そうなんですね。オフホワイトというのは正式名称ではない?

スズキ:すみません。すみません、ちょっとわかんないです。

田中:そうなんですね。普段はどういう雑誌を読まれるんですか?

スズキ:雑誌はいろいろ読みます。

田中:そうですか。具体的には?

スズキ:具体的にはわからないんですが、いろんなジャンルの本を読んで吸収するようにしています。

田中:はい。わかりました。ありがとうございます。

村上:ありがとうございます。会場の聞いているみんなからも「大丈夫か!?」みたいな、どよめきがありましたが、スズキはこんなんじゃないんですよ。普段はできる子です。それは名誉のためにきちんと言っておきたいと思います(笑)。ありがとうございます。

面接官の質問の意図は

じゃあ田中さん。長谷部さんと同じですが、今の質問にはどういった意図があって、そこからどのように判断されたかというところを教えてください。

田中:はい。まず1つ目の質問。「今日のコーディネートについて教えてください」ということに関しては、ポイントが2つあります。1つ目はこの質問はだいたい最初に聞く質問なんですね。まずはみなさんの緊張をほぐしたいというところと、あと「立ってお答えください」という部分に関しても、ちょっと動きがあるほうがほぐれるかなという思いがあります。より緊張するという意見もあるんですが(笑)。

本当に、素が見たいなと思っているんですね。「素が見たいというのはなんで?」と思われるかもしれないんですけど、一緒に働く仲間を見たい、仲間と出会いたいという場が面接ですので、より緊張をほぐした、リラックスしたかたちで臨んでいただきたいなというのが1つ目のポイントです。

もう1つは、ファッションが好きなのかなというところですね。自分のコーディネート、おそらく昨日の夜すごく悩んで考えてきた部分だと思うんですけど、「自分のコーディネートについて楽しそうに話している姿が見たいな」「どこをこだわってきたんだろうな」というところを見たいというところがあります。

村上:なるほど。それに対しての答えですが、スズキの言動はどのような印象を田中さんに与えていますでしょうか?

田中:そうですね。正直なところ、実際に話されている内容よりも立ち方。右足が少しだけ曲がってゆるい立ち方をして、「やっぱり~」というようにお友達に話されているような感じでリラックスはされていたのかなと思いますけれども、もう少しきちんと答えていただきたいなというところ。

先ほど長谷部さんのおっしゃった年上の方と話す経験だったり、社会人の方と話す経験というのをもう少し意識してやられると、ご自身のよさが伝わるんじゃないかなと思いました。

自信を持って誠実に答えること

村上:ありがとうございました。長谷部さん、今の受け答えにはどのような印象を持たれますか?

長谷部:本当にスズキさんは熱演されていたなと思います(笑)。田中さんがおっしゃられたことと学生さんが思うことと、まったく同じだと思うんですけど、あとプラスで言うならもう少し自信を持って話した方がいいかなというところがありました。わからなくても、「すみません。わかりません」ということを爽やかに言ってもらえれば、逆に「そうなんだ!」となります。そこらへんが少し。

村上:なるほど。わかりました。ブランドの正式名称がなかなか出てこないというのは、緊張している場面では仕方ないと思うんですが、具体的にどんな雑誌を読んでいるかというところですぐに雑誌の名前が出てこないというのは、僕が聞いていて「この子、本当に雑誌を読んでいるのかな」という印象を受けました。そんなところでも具体的な名前がもう少し、1つでも2つでも出てくるといいのかなと思いましたね。ありがとうございました。

とはいえ、このスズキほどではないとは思いますが、オンワード樫山とかエイ・ネットというみなさんが憧れるような企業の面接に臨む時って、みんなだいぶ緊張するし、回答がしどろもどろになることが当然あると思います。お二人は人事のプロでいらっしゃるから、その本質を見極めてきちんと見てくれて、「緊張するのは当たり前だから気にしなくてもいいよ」というスタンスでいらっしゃるんでしょうか。じゃあ、長谷部さんお願いします。

長谷部:はい。緊張するのは当たり前ですので、緊張していても一生懸命話そうとしているという姿勢を評価させていただきます。緊張しているからダメということはまったくないですね。

村上:なるほど。田中さんはいかがですか。

田中:はい。本当におっしゃるとおりで、緊張していても、誠実に一生懸命答えられる、答えようとする。その場でのベストを尽くそうとすることはすごくいいなと思います。でも、1個だけ、緊張していてまったく笑顔が出ない方というのがいらっしゃるんですけれど、やっぱり緊張していても、“ごまかす”という意味ではなく、笑顔が見たいと思っています。

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