2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
紀本千恵子氏(以下、紀本):中村さんはどうですか? (販売員のお仕事をしているときに)特に気をつけていることはありましたか?
中村朋美氏(以下、中村):私が販売員をしている時に憧れとしていた先輩像がありまして。入社した際の店長で、今回の『WWD』にも掲載されている西日本エリアの統括マネージャーをしている菊池なんですが、本当に顧客が多い先輩だったんですね。接客でお客様のお話を聞くことができる販売員で。
販売の仕事ってどうしてもこちらが話して商品の魅力を伝えたいとなって、こちらからの会話の量が多くなってしまいがちなんですけれど、先輩の接客は8割方お客様のお話を聞き出すこと、それができる方で。
私もそういう人になりたいなというのがあって、自分自身が6年間売り場にいた時は、お客様の話が聞き出せる、質問の引き出しをいかに多く持っているかということに気をつけて販売してました。
紀本:その人に対して、「私は興味あるんだよ」ということにもなりますよね。質問するということは、自分に感心を持ってくれてるということに繋がってきますね。
私も先日、広島に行って菊池さんにインタビューをしたんですけれど、「やはり自分自身が楽しまないとお客様も楽しんでくれないので、それはすごく心がけています」と、おっしゃっていたのが印象的でした。そういうところが共通するかなと思います。
続いて、販売員から店長になると、どういった仕事が具体的に増えるのかをお二人中心に聞いてみたいと思います。中瀬さん、どういった仕事が増えてくるんですか?
中瀬敬太氏(以下、中瀬):うちの会社でいうと、店長になると接客・ストック管理だけではなく、例えばシフト表を作るとか、ミーティングを仕切るとか、そういった事務的な仕事が増えます。ただ、店長って本質的には人をマネジメントして、そのお店というチームをどの方向に持って行くかというビジョンを示す人なので、そういうことを意識しながら僕はやってました。
紀本:例えば、毎朝朝礼をするとか、スタッフに方向性を話す機会は設けていたんですか?
中瀬:そうですね。朝礼はもちろん毎日やっていたのと。あとは半期に1回お店のスタッフ全員で話し合って、多分どのお店でもある話だと思うんですけれど、お店の目標とか、「うちのお店はこういうお店にしたいよね」というのをみんなで約束して。その後、「ちゃんとそこに近づけていますか?」という話はいつもしてました。
紀本:販売員さんがどう考えてるかみたいなこととか、細かなコミュニケーションを結構意識されるんですか?
中瀬:そうですね。店長はコミュニケーションができないとなかなか務まらない仕事なので。スタッフとのコミュニケートには一番気を使ってましたね。
紀本:中村さんはどうですか? いろんな店長をやってますよね。福山店、店長とか。
中村:既存店の店舗の店長をするのと、オープングの店長って全然仕事のレベルが違いまして。私にとっては6年目に、県外初出店した岡山のオープングの店長を任されたのが自分のターニングポイントになったと感じています。
その際は、各エリアからオープングのために招集されたスタッフと、私も岡山という初めてのエリアに引っ越しをしてオープングに携わったんですけれど。今まで通用していた成功事例がまったく通用しない。自分たちで新たに改革をしていくというか、岡山のお客様が喜んでいただくことを新しく自分たちで発見をして、日々進化させていかなきゃいけないというのがありました。
逆に、その際のスタッフですごく団結力が強まったなっていうのがありました。
紀本:やっぱりエリアによって来るお客様の雰囲気とか欲しいものとかもたいぶ異なってくるということですか? 今までやっていたことが通じないというのは。
中村:そうですね。岡山に出てみて、エリアによって特性がすごくあるんだなというのもわかりましたし、ターミナルの店舗になるので路面店でしていた「ゆったり時間をかけてお一人の方に提案してゆく」という接客ではなくて、ターミナルの急いでいる方にも短時間でどれだけ顧客満足を高めるかっていうことが求められました。そういう面ではすごく磨かれましたね。
紀本:短い時間に欲しいものが欲しいというお客様がいらっしゃるし、同時にゆっくり地方とかちょっと離れたところで買い物したいという方もいらっしゃる。そのニーズをどう捉えて対応できるかについて、また一から作り上げていかなきゃいけない難しさがあるということなんですね。
やはり店長になると、スタッフのケアとか、あとは売上を見たなかでどういう商品を増やしたらいいかとか、スタイリングをどう見せればいいかということも考えていくんですか?
中村:そうですね。当社の場合は「社員全員によるマーチャンダイジング」というのがモットーに掲げられてまして。店に配属されているスタッフ全員で店を作り上げていって、お客さまが喜んでいただけるものを、自主的に考えていこう。商品面だったり、売り場の面だったり、経営者から言われてトップダウンで考えていくのではなくて、自分たちで店を作り上げていくという考え方があります。
エリアによってお客様のニーズが違えば、自分たちで改革を起こしていくということが必要となりました。
紀本:自分たちが主体性を持ってアイディアを出し合って、一つひとつをクリアしていくかたちなんですね。それは大変だとは思いますが、やりがいがありますね。
中村:すごく大変ですけれど、そういった経験を経て、この状況をどうやってバイヤーに伝えたらバイヤーの方がわかってくださって、動いてくれるのかということを考えるようになりましたし。どういった商材をオリジナルの企画の方たちにどう提案するかとか、また販売とは違う楽しさも出てきました。
紀本:なるほど。お二人とも店長を経てから今のキャリアになっているんですけれど、中村さんはアシスタントバイヤーをしたり、オリジナルの企画のチームに配属されたり。中瀬さんはマーチャンダイザーとして「RAGEBLUE(レイジブルー)」のボトムスの企画をしたりとか。次のステップにいくわけですけれど。
これは、ご自身でこういうことをしたいと移動されたのか、それとも会社からこういうことやってくれないかって移動されたのか。キャリアパスってどうやって移動されてくんですか? 中瀬さん。
中瀬:僕の場合は新卒の面接を受けた段階から、「マーチャンダイザーになりたい」とずっといろんな人に言い続けてて。僕の場合はたまたま、レイジブルーというブランドで「1人マーチャンダイザー募集します」という機会があったので、その時社員だったんですけど、手をあげて。
その時は1回落ちちゃったんですけれど、1年大分で店長して、「やっぱりマーチャンダイザーやってくれないか」ということでたまたまというか、運良くマーチャンダイザーになったというかたちでした。
紀本:マーチャンダイザーというのは具体的にどういったお仕事なんですか?
中瀬:商品を企画するというのが1つと、企画した商品をどれぐらいいくらで売りますみたいな、そういう企画と発注の仕事をしてますね。
紀本:実際に企画した商品が売れたり、ヒットしたり、そういうのはすごくやりがいがありそうですね。
中瀬:それは非常にやりがいがありますね。
紀本:「どういった物が売れるか」「どういった商品を企画したらいいのか」には、今までお客様との接点で感じていたことが活かせられるんですか?
中瀬:それはすごく活かされてますね。
街中のトレンドだったり、道行く人が着てるものとか、そういったものも参考にするんですけれど。僕らが作らなきゃいけないのは、基本的にうちのお店に来ていただいているお客さまが欲しい商品を企画しないといけないので。
やっぱり僕が3年社員として店頭に立ってた経験が、今、すごく活きているんだなと感じます。逆にそれが無かったら、今マーチャンダイザーとしてまったく通用しなかっただろうと感じますね。
紀本:なるほど。
中村さんはアシスタントバイヤーとオリジナル企画チームに配属されていますが、それは希望だったんですか?
中村:そうですね。私が入社したきっかけは、弊社のレディースのバイヤーに憧れていたからです。いずれバイヤーという仕事をやってみたいというのは、なんとなくありました。
2、3年目の際に、広島にいながらも東京出張に行くバイヤーに同行して、アシスタントバイヤーのような仕事をさせていただいてまして。そういったバイヤーの仕事を直に見たり経験したことでさらに憧れが強まって。ファッション業界ってこんなに幅広い仕事があって、店頭を支えてくださってる方ってこんなに世のなかにいるんだなっていうのを感じて、やっぱりバイヤーがやりたいなと思いました。
紀本:希望通りになれたということですね。苦労だったりやりがいだったり、実際やってみてどうでしたか?
中村:バイヤーと商品企画のチームに入ると、販売だったり店長経験があってもまったく違う考えだったり、数値の分析であったり、今まで経験したことがない仕事がたくさん待っているので。今までの経験がリセットされるタイミングでもありましたので、すごく苦労もたくさんしました。
紀本:とは言え、販売をやっていた経験も、もちろん活かされているわけですよね?
中村:そうですね。
紀本:何が売れるとか、どういった顧客様なのかという想像がしやすかったりしますよね。
私もファッション業界に入る前は、こんなに職種があるんだとわからなかったんですけれど。西山さんは実際に入ってみて、会社のなかにいろんな部署があるわけですよね。それで「販売以外もこんな職業があるんだ」って、いろいろビックリしたりしませんでした?
西山睦美氏(以下、西山):そうですね。バイヤーだったりプレスだったりは入社前も想像してたんですけれど。例えば、今だと飲食もありますし、EC事業もありますし、たくさん自分の可能性がこの会社にはあるんだなということですごくびっくりしました。大きな会社なので、自分がずっと長く働いていって、ちょっとこれやりたいなといった時にそういう道があるのはすごくいいなと思いました。
紀本:西山さんはまだ2年目ですけれど、今後、3年後・5年後はどうしていきたいとかあるんですか?
西山:そうですね、まだなかなか想像がつきにくいですけれど、入社当時はバイヤーだったりプレスだったり、いろいろやってみたいというのはありました。
実際、店頭に立ってみて、お客様とお話できる楽しさだったりとか、難しいところもたくさんあって大変なお仕事だと思うんですけれど、やりがいをすごく感じていて。私も3年後、現場力を高めて店長として働いて、もっとお客様にワクワクした気持ちだったり、綺麗な可愛いお洋服着ていただいて楽しんでいただけたらと思います。
紀本:中瀬さんは念願のマーチャンダイザーになれましたが、今後の目標は何かありますか?
中瀬:今後の目標は、元々この会社に入ったきっかけとしては、僕は九州の長崎出身なんですけれども、なかなかおしゃれをする機会だとかおしゃれする場所が無くて。おしゃれって楽しいんだよというのをもっと地方、僕の地元にもっと還元したいなと思っていて。
それを実現するためには、今の会社のなかでもっと大きい仕事をしていくのか、はたまた、まったく別のことをやっちゃうのかそれはわからないですけれど、僕の思いとしてはもっと地元に還元していきたいなというのをすごくずっと昔から思っています。
紀本:長崎に還元していけたらと思ってるわけですね。中村さんはどうですか?
中村:そうですね、3年後となると……。わたし今年結婚してまして。
紀本:おめでとうございます
中村:ありがとうございます。今日の講義の前半の議題でも上がってましたけれど、ワークライフバランスをどう保ちながら、自分もずっと仕事も楽しんでいくかということも考えると。
自分が抜けたらその組織が成り立たないというのでは組織としてはちょっと弱いので、3年後・5年後と私に続くエリアマネージャーを目指したいというクラスまで部下を育てたいと思ってます。自分も仕事だけにならずに、うまく家庭と両立をさせながら、ずっと継続して会社に貢献できる人間になればいいなと思っています。
紀本:やっぱり女性は、出産・結婚というターニングポイントがありますから、そのなかでどうやって続けられるかというところは、自分の意思にかぎらず周りのサポート、会社のサポートが必要になってきますよね。
今日発売の『WWD』にも3社の記事が載ってますけれど、アダストリアさんもママアドバイザーが社内にいらっしゃるとか、役職もそのままでお二人のお子さんがいる先ほどのアクセの菊池さんだとか。やっぱり働きやすい環境になってきているんだなとすごく感じました。
お時間がそろそろ迫ってきました。あっという間ですね、3人で話してると。なので、まだまだ知りたいことがあるという方は、会場出たらブースがございますので、個々に質問をしていただければと思います。あと、今週号の『WWD』にも詳しく記事が載っていますので、合わせて見ていただければと思います。
本日は皆様お忙しいなか、お運びいただきましてありがとうございました。最後に温かい拍手をお願いします。ありがとうございました。
(会場拍手)
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには