2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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孫泰蔵氏:みなさん、こんにちは。東京にお越しいただきありがとうございます。本日のテーマは「SusHiの真髄」です。「なぜSusHiか」という質問があると思いますが、それは「SusHi Tech Tokyo」だからです。
みなさんの中にはお寿司について詳しい方もいると思いますが、知らない方もいるかもしれませんので、まずはお寿司についてお話ししたいと思います。私は金沢でお寿司のレストランを経営しており、ローカルコミュニティと共に活動しています。お寿司が大好きで、寿司の世界を探究し始め、いろいろな質問をしてきました。
お寿司についての最新の考えをお話しさせていただきます。お寿司は、芸術と科学が交差するものだと考えています。シンプルな食品ですが、その裏には深い芸術と科学が隠れています。
ご存じかもしれませんが、現代の寿司は華屋与兵衛が発明しました。彼は近代寿司の発明者とされています。実は20世紀まで彼のレストランは東京で運営されていました。彼のやり方は東京だけでなく、世界中で受け継がれています。
(スライドの)この絵は、非常に有名な日本の浮世絵画家・安藤広重(歌川広重)の作品です。彼は寿司をテーマにした絵をたくさん描いています。つまり、近代の初期から現在の寿司の形が形成されていたということです。寿司は非常に歴史のある食べ物で、日本人にとっても大変重要な文化的遺産です。
寿司は大きく分けて2つの部分から構成されています。
いわゆるミニマリズムの芸術と呼べるかもしれません。ネタ、つまり魚の部分とシャリ、お米の部分です。まずはシャリについてお話ししたいと思います。
シャリは単にお米を固めたものではなく、塩、砂糖、酢を混ぜたものです。この酢が非常に重要です。寿司屋さんに行くと、白いシャリが出てくることもありますが、場合によっては少し茶色っぽい、あるいは黄色っぽいシャリが出てくることがあります。これは、酢の種類によるものです。赤酢は赤く、黒酢は黒く、米酢は黄色っぽい色をしています。
日本には多くの酢の醸造所があり、寿司屋さんによってはオリジナルの酢を作ったり、ミックスしたりして独自のシャリを作っています。ですので、寿司屋さんに行く時には、ネタだけでなくシャリの味も楽しんでいただきたいと思います。まさにシャリの部分がその寿司屋さんのシグネチャー、特徴です。寿司屋さんごとの努力がこのシャリに込められています。お寿司を味わう時には、このシャリの微妙な味わいをぜひ楽しんでください。
それからネタ。これもお寿司において非常に重要な部分です。いわゆるネタの王様と言われるのがマグロで、その中でもトロや赤身などさまざまな部位があります。
「大トロが一番良い」と言う人もいますが、そうとも限りません。大トロは少量しか取れないため高価ですが、それだけが味の頂点ではありません。中トロや赤身もぜひ味わっていただきたいと思います。
さらに、味は包丁の入れ方によっても大きく変わります。寿司職人の包丁の使い方は非常に自然に見えますが、その背後には細かいテクニックが隠されています。
寿司職人の包丁使いを真似しようとすると、やはり包丁自体が重要になります。私たちが普段使う包丁とはまったく異なるものです。
例を挙げると、最高の包丁メーカーは京都にあり、1560年、つまり16世紀から包丁を作り続けています。世界で最も古い包丁メーカーかもしれません。
この包丁は、従来の侍の刀と同じような形で作られており、他の包丁とはまったく異なります。
寿司職人は包丁を「切る」のではなく「引く」と言います。この引く技術があることで、刺身をうまく切ることができます。包丁使いの技を見せるために飾り包丁を入れることがあります。コハダという小さな青魚の包丁の入れ方には多くの種類があります。
伝統的な飾り包丁や、独自に発明された飾り包丁もあります。
同じ魚、同じシャリでも、飾り包丁の入れ方によって味やテクスチャがまったく異なります。この包丁の入れ方が非常に重要で、一般の人には真似しにくい技術です。寿司職人たちは10年、時にはそれ以上の時間をかけてスキルを磨き、すばらしいお寿司を作るために努力しています。その結果として、このような寿司が生まれるのです。
私もみなさんと同じようにお寿司が大好きです。おそらくほとんどの方がお寿司を愛していると思います。そこで、ぜひおすすめしたいのは、キッチンでお寿司を作ってみることです。実際に作ってみると、その難しさがわかると思います。
実は私も挑戦しました。(スライドの)左端にあるのが私が初めて作ったお寿司です。
見た目はあまりおいしそうではありませんね。300回ほど練習して、次第に上達しました。真ん中の写真が一番うまく握れたものです。かなり良くなりましたが、私の夢は右側にあるものです。これはプロの寿司職人が握ったものです。同じお米、同じ魚を使っても、まったく違う結果が生まれます。そして味は見た目以上に違います。
では、なぜ私はこの話をしているのか。寿司の作り方やその美しさについて話している理由は、みなさんに問いかけたいことがあるからです。
AIはお寿司を作れるでしょうか。イエス・ノー、両方の意見があると思います。なぜこの質問をするのかと言いますと、現在、驚くべきことが起こっているからです。AIの開発と展開が急速に進んでいます。
2週間前にベイエリアに行き、最も先進的なスタートアップ約20社と会ってきました。本当に驚くべき体験でした。一昨日、OpenAIがGPT-4を発表したのをご覧になったかもしれませんが、これにも驚かれたと思います。
覚えていますか? ChatGPTがリリースされたのは昨年のことです。たった1年で、もともとのChatGPTからGPT-4への進化が実現しました。このように、AIの進展は非常に速いペースで進んでいます。
ここで、AIのアーキテクチャについて簡単にお話ししたいと思います。OpenAIのGPTシリーズ、GoogleのGemini、MetaのLlama 3、AnthropicのClaude 3など、多くの企業が大規模言語モデル(LLM)を開発しています。これらはジェネラルLLMです。
しかし、これらのジェネラルLLMはお寿司を作るには十分ではありません。最前線のイノベーションは、ドメインスペシフィックなLLMやRAG(Retrieval-Augmented Generation)の分野で進んでいます。ドメインスペシフィックとは、特定の業界やカテゴリーに特化したモデルのことです。
例えば、医療、金融、製造業など、それぞれの業界に特化したLLMが開発されています。これにより、特定の専門知識やスキルを持つAIが登場しつつあります。寿司を作るためには、寿司職人の技術や知識を学習し、それを再現する能力が求められます。このようなドメインスペシフィックなAIの進化が、将来的には寿司を作るAIの実現につながるかもしれません。
このように、AIの可能性は広がっており、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えています。みなさんのご意見をお聞かせください。AIが寿司を作ることについて、どのように考えますか? そして、どのような他の分野でAIが活躍する可能性があると思いますか?
例えば、Tempusという会社があります。医療分野の医師向けのAIを開発しています。Perplexityは検索エンジンに特化したAIを提供していますし、You.Comも同様です。これらの企業はドメイン固有、つまり特定の分野に特化したドメインスペシフィックLLMを開発しています。
一方で、汎用のLLM(ジェネラルLLM)は、これまでの努力のおかげで非常に優れたものとなっています。しかし、これらのジェネラルLLMは寿司を作るためにはまだ十分ではありません。寿司を作るには、特定の技術や知識が必要であり、それにはドメインスペシフィックな要素が欠かせません。
世界中には多くのカテゴリーが存在し、それぞれに特化したすばらしいAIスタートアップがたくさんあります。私は投資家でもありますので、こうした分野に注力しています。ジェネラルLLMの分野はすでに多くの企業が進出しており、私たち投資家が新たに参入するのは難しい状況です。しかし、ドメインスペシフィックな分野は今最もホットな分野の1つです。
もしみなさんがこれから創業したいと考えている場合、AIの研究で特定の分野にフォーカスしてAIを開発することを検討してみてください。また、投資家であれば、このようなユニークなドメインスペシフィックなLLMを開発している企業をサポートすることをぜひお勧めします。
このように、AIの発展は驚くべき速さで進んでおり、その応用範囲も広がっています。みなさんがこの分野でどのような役割を果たすことができるのか、一緒に考えていきましょう。
なぜ寿司の話をしているのかというと、寿司の各要素がAIの各要素と類似しているからです。
シャリはお米ですが、それだけでは寿司にはなりません。寿司の定義は、ネタ、つまりさまざまな具材によって決まります。寿司を楽しむ時、いろいろなネタを楽しみます。フルコースとして、または順番に食べて、とても満足感を得ることができます。この満足感は、お任せのお寿司を食べることで得られるものです。
ネタはローカルな材料であり、地元の知識に基づいて作られています。特別な職人のテクニックや伝統があります。伝統とは、寿司職人が積み重ねてきた歴史です。地元の材料と知識を使うことで、非常に良い寿司を作り、楽しむことができます。
この考え方をAIに応用します。2つの基本レイヤーの上にアプリケーションが乗るイメージです。これがAIのアプリケーション、つまりAIエージェントと呼ばれるものです。ユーザーはこのアプリケーションと接しますが、これはちょうど寿司のトッピングのようなものです。
3つの層が一緒になって、お寿司として楽しむことができるように、AIの3つのレイヤーを組み合わせて使うことができます。この3つのレイヤーとは、基盤となる技術(シャリ)、特定の知識やスキル(ネタ)、そしてそれを結びつけるアプリケーション(トッピング)です。
AIエージェントは、この3つの層を組み合わせることで、ユーザーに最適なサービスを提供します。これにより、寿司と同様に、AIも多様で満足のいく体験を提供できるのです。みなさんには、ぜひこのようなアプローチを考えてみてほしいと思います。どのようにしてAIを活用し、どの分野でどのような価値を提供できるのか、ぜひ考えてみてください。
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