2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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鈴木義幸氏:こんにちは、コーチ・エィの鈴木です。今日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。「組織のパフォーマンスはこれで大きく変わる ~『承認』が人を動かす~」というテーマでお話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。
今日のウェビナーの副題にもなっている『「承認(アクノレッジ)」が人を動かす』というテーマで、最近本を出版させていただきました。最近と言いましても、実は2009年に日本実業出版から初版を出版しているんですが、今年あらためてディスカヴァー・トゥエンティワンという出版社から、少し新章を書き加えて新しく再出版しています。
例えば、「最近オンラインで部下と関わることが多いけれども、対面で会っていない部下に対して、どうやって承認をすることができるのか?」とか、「承認をすることが大事なのはわかっているけれども、最近は『ハラスメントじゃないか』なんて言われることもある。ハラスメントと言われるリスクを避けて、承認を伝えるにはどうしたらいいのか?」とか。
非常にいろんな価値観を持っていたり、海外労働者の方もいたり、いわゆるダイバーシティが目の前に展開している中で、どうすればいろいろなバックグラウンドを持っている方に対して承認をすることができるのか。こういったニーズに対して対応できるような章を書き加えて、再出版しています。
この本自体は10数年かけて、10万部を超えて出版されています。多くの方に長きにわって本を読んでいただいていて、大変うれしく思っています。
同時に、部下をいかに効果的に承認していくことができるのかということについて悩んでいたり、迷っていたり、そのことについてもっと自分の技術、技量、マインドセットを高めたい。そんな思いを持っている方が多いと感じています。
今日はこの本の内容もありますが、本の内容に加えて、そもそも承認(アクノレッジ)がいったいどういうもので、どんなふうに現場で実践し、チームのエネルギーを高め、組織を変えていくことができるのかということについて、お話をしたいと思っています。
まずは承認について、みなさんに少し問いを投げかけさせていただきますので、ぜひ一緒に考えてみてください。
先ほどから承認というふうにお伝えしているんですが、あらためて考えますと、そもそも承認とは何でしょうか? 「褒める」とはどう違うでしょうか? 承認という言葉は、どういう言葉・発言・発信をもって承認と言うのか、どんなふうに思われているでしょうか?
今日の副題にも「『承認』が人を動かす」とついていますし、本のタイトルにもさせていただいているんですが、承認が人を動かすという考え方については、どんなふうに思われるでしょうか?
昔、私が2000年に『コーチングが人を活かす』という初めてのコーチングの本を出版させていただいた時、同時期に『上司が「鬼」とならねば部下は動かず』という本も出版されて、すごく売れていました。
「承認が人を動かす」と「鬼とならないとダメだ」、対局にある考え方ですよね。承認が人を動かすという考え方について、正直なところ、ご自分ではどんなふうに思われているでしょうか。みなさん自身は、承認を受けて動いてきたと思われていますか?
「いや、別に承認なんて関係ない」と、勝手に自分で動いてきたと思われているのか。逆に「承認を受けるとなんかこそばゆくて、気持ち悪くて、あんまり関係ないな」と思われているか。みなさんの中には、このことに対してどういうお気持ち・考え方があるでしょうか。
みなさんの会社や部門には、承認と言われるものがどのくらいありますか? 承認であふれているでしょうか。「いや、承認はないな。誰か承認してよ」という感じでしょうか(笑)。どんなふうにご覧になりますか。
みなさんご自身が「承認は足りていますか?」と聞かれたら、正直どうでしょうか。「もういっぱい受けてるよ」なのか、「いや、誰か承認してくれないかな」なのか。どうでしょう。
みなさんの部下は承認が足りているでしょうか。上司はどうでしょうか。上司も承認されたい存在だとすると、十分に承認を受けているように見えるでしょうか。
もし承認と言われるものが、みなさんの組織、チーム、部門、会社で増えると、組織の未来はどんなふうに変わるでしょうか。そもそも変わるのか、変わらないのか、変わるとしたらどのように変化をするでしょうか。どんなイメージが浮かんだり、言葉が浮かんだりしたでしょうか。今、内側に起こったものをベースにして、このあと聞いていただけたら幸いです。
さて、私自身のアクノレッジメントとの出会いですが、1996年より以前にアクノレッジメント・承認という言葉を明確に意識して認識したことは、たぶんなかっただろうと思います。ですから、1996年にアクノレッジメントと出会っています。
アメリカで出されている、英語版の本家本元のニューズウィークという雑誌があります。そこで1996年に、おそらく世界でコーチングの特集が初めて組まれました。
今でもよく覚えていますが、ニューズウィークの見開きのページの左上にヘッドタイトルで「Need a life?」。人生を取り戻したいか、というような意味でしょうかね。「Get a coach」は、それならばコーチを雇え。こういう、非常に刺激的なヘッドタイトルがあって。
道がまっすぐに未来に向かって伸びている。その道の真ん中に、ロングコートを着た1人の男性が立っていて、腕組みをして、じっとこちらを見据えている。非常に素敵な、かっこいい写真でした。この男性はトマス・レナードと言います。
コーチ・ユニバーシティという、アメリカで最もトラディショナルな……この会社がなかったら、コーチングと言われるものが今の世の中に存在してなかったのではないかという会社ですね。このコーチ・ユニバーシティという、コーチングの会社を1992年に創業したトマス・レナードがその写真に載っていて、コーチについて語っていました。
この雑誌を弊社のファウンダーである伊藤(守)が読みまして、非常に興味を持って「君のやっていることに大変興味がある。いろいろ教えてくれないか?」と、トマスにメールを書きました。そうしたら、トマスからすぐにメールで返信が来て。
「それならば彼を日本に送るので、いろいろ彼から聞いてほしい」ということで、自分が作ったコーチ・ユニバーシティの当時のプレジデントであった、デービッド・ゴールドスミスさんが1997年に日本に来ます。日本に4日間滞在したんですが、彼は奥さまと一緒に来ていて。ホテルオークラに泊まっていただいて、私がホテルオークラまで迎えに行ったんですね。
私の中では初めて出会うエグゼクティブコーチなので、「どれだけかっこいいのか」と、マンハッタンあたりを闊歩している肩幅の広い、背の高いスッとしたジェントルマンを想像して迎えに行ったんです。
出てきたデービッドは、ちょっとイントロバートというか、内向きっぽい雰囲気がある人で、「あれ? 自分が想像していたエグゼクティブコーチの雰囲気とちょっと違うな」と、そんなふうに思って会ったのが初めてでした。
デービッドさんに来てもらって、4日間「コーチングとはいったい何なのか」「コーチングをビジネスにするということはどういうことなのか」というのを、全部教えてもらいました。
最終日、10人ぐらいでデービッドを囲んでミーティングをしていました。ある程度話が終わって、「これで終わりだね」と、もう立ち上がって帰ろうかという雰囲気の時に、最後にデービッドが「Please give me some time」、もう少し時間をくれないかと。
「I’d like to acknowledge you all」、あなたたち全員をアクノレッジしたいんだ、と言いました。おそらくその瞬間が、アクノレッジという言葉について、明確に「そういう言葉があるんだ」と認識した初めてのことだったかもしれません。
そのあとデービッドは10人に対して、それぞれの人がこの期間にどんなことをやってくれたのか、そのことについて自分はどんなことを思っていたのか、これから日本でコーチングを発展させていくにあたってどんなことを期待しているのか、非常に丁寧に一人ひとりに向かって伝えてくれました。これが、私の初めてのアクノレッジとの出会いでした。
アクノレッジは、名詞で「Acknowledgement」です。アクノレッジメントとは何か、もう少し明解に定義をしてみたいと思います。まず英和辞典で調べると、ただ「承認」と出てきます。承認だけだとやはりちょっとよくわからないので、『Collins Dictionary』という英英辞典を調べるとこう書いてありました。
「An Acknowledgement is a statement or action which recognizes that something exists or is true」。つまり日本語に直すと、「アクノレッジメントとは、何かが存在していること、あるいはそれが真実であることを認識する言葉や行動」ということになるんですね。
もう少しこれを意訳しますと、目の前の人や周りの人がそこに確かに存在していることに、自分は気がついている。それを、その目の前の人や周りの人に伝えること。これが、アクノレッジメントと言われるものの定義ではないかと思っています。
つまり「存在承認」なんですね。ですから、このあともう少し詳しく話しますが、「褒める」とは違う。褒めるというのは結果に対する承認なので「結果承認」と言われます。なので、存在承認と結果承認は違うものだと考えています。
よく英語の本を読まれると……よく読まれるかはわかりませんが(笑)。もし英語の本を持ってらっしゃったら見ていただくと、ページをめくると必ず最初に「Acknowledgement」と出てきます。そこに書かれている内容としては、要するに「この本を書けたのは、こういう方がいたから……」ということがずらっと書かれています。
アカデミー賞の受賞式をご覧になったことはありますか? だいたい3月ぐらいにやりますよね。私は映画が好きなのでよく見るんですが、受賞した方がスピーチをするんです。
何を言ってるのかというと、「Thank you for my director, my friends, my parents……」というふうに、お世話になった人について、時に名前を言い忘れないようにメモに書いて持ってきて、全員の名前をひたすら言っていく。あれがAcknowledgementですね。
つまり、「自分がこうしてここにいられることは、この人たちがいたからなんだ」という、まさに存在に対して「認識をしてますよ」ということを伝えていく行為なんですね。あれがアクノレッジメントです。
アメリカという、おそらくいろいろなバックグラウンドを抱えた人たちが集まっている社会の中では、関係性を作るためにお互いの存在に対してしっかりと認識しあう。
だから、街ですれ違って「Hi」「Hello」と言うのは、アクノレッジメントとも言えますよね。「そこにいるね」「いるね」というのをお互いに確認しあっていくことによって、関係性と言われるものを作り出していく。
そもそも日本なんかは同民族の社会なので、一緒にそこにいてやるのが当たり前。ベースには、ことさらに存在承認しあわないところがあるのかもしれませんが、ある意味でそこが(アメリカと)非常に違うところかもしれません。
とはいっても、そもそも人はアメリカ人であろうが、日本人であろうが、どこの国の人であろうが、根底では存在承認を絶対に必要としているであろうと思うんですね。
お子さんがいる方は本当によくわかると思いますが、お子さんが「見て見て!」と言っている時は、指の先にある何かを本当に見てほしいというよりも、「指をさしている私を見て」というところがどうもありますね。
だから、「見て見て、あれを見ている私を見て」というほうが、どうも正解に近いというか。そういうことなのではないかと思います。
例えば、かくれんぼってよくやりますよね。かくれんぼは何が醍醐味かというと、子どもとかくれんぼするとわかるのは、本当に完全に隠れようと思ったら、完璧な隠れ方があると思うんです。でも、だいたい子どもって完璧に隠れてなくて、ちょこちょこ出てくるわけですよ。それで「いた!」なんてやると、もうめちゃめちゃ喜ぶわけですよね。
「見つかったら鬼なんだよ」と思うんですが、見つかりたいんですよね。「いた!」って言われたい。自分も「あ、いた!」って、ここにいるということを実感したい。
ですから、どうも人間というのは……今さらの話ですが、この地球上で人類は、お互いに協力関係を作ることによって生き延びてきた種ですよね。ライオンは筋肉の強さや牙によって生き残ってきたり、ゾウは重さによって、亀は甲羅で生き残ってきたりとかあるわけです。
ただ、人間は協力関係を作ることによって、マンモスにも勝てたり、多くの種に対してアドバンテージをとってきた。ということは、一緒に力を合わせて何かをやる社会的な存在ですし、自分の存在が周りの人間から認識をされて認められないと、社会的な死を意味しかねないのでまずい。
だから、どういうかたちかはわからないんですが、「人から存在をちゃんと承認されたい」というのが、DNAになんらかのかたちでインストールされていると思うわけなんですね。
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