2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
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新年度がスタートし、新たなチーム結成から1ヶ月が経過した5月。リーダーやマネージャーにとって、チーム管理の課題が浮き彫りになる時期です。この重要な時期に、ログミーBizのアンバサダーでありチームビルディングに詳しい仲山進也氏に、効果的なチーム作りのポイントをお聞きしました。後編は、心理的安全性を高める3つのヒントや、新しいリーダーシップとチームづくりについて語られました。
――具体的に、心理的安全性を高めるためのアプローチやヒントがあれば教えていただけますか?
仲山進也氏(以下、仲山):僕は心理的安全性を、「成し遂げようとする仕事に対して、考えやアイデアを言うのに恐れや不安がないこと」と捉えています。心理的安全性がないと、次のような思考が生まれます。
「こんなことを言ったら変な人だと思われるかもしれないから、言うのやめておこう」「こんな質問をしたら仕事ができないやつだと思われて、評価が下がるとイヤだから、言うのをやめておこう」「他人の仕事に“こうしたほうがいいんじゃないか”と言うと関係がこじれて、そのあとやりにくくなったら困るから、言うのをやめておこう」とか。こういうことが起こるので、パフォーマンスがなかなか上がりにくいわけです。
心理的安全性の重要性は知っていても、具体的にどうすればいいのかわからないという人が多いのが現状だと思いますが、ヒントが3つほどあります。
1つ目は「OBラインを共有する」こと。ゴルフのOBラインの外側に地雷が埋まっているとイメージすると、よりわかりやすいでしょう。相互理解がないために、「思っていることを言って、誰かの地雷を踏んだら大変なことになるから言うのはやめておこう」というのが、心理的安全性がない状態です。
逆に考えると、メンバー全員の地雷の場所が共有されていれば、「この意見を言っても誰の地雷も踏まないから言えるな」と思えるのが、心理的安全性のある状態です。そこで、「まずはみんなで地雷を共有すると良いのでは?」というのがポイントです。地雷にあたる「絶対に譲れない価値観」を共有するわけです。
仲山:それにおすすめなのが、アンガーマネジメント協会が作っている「アンガーマネジメントゲーム」です。(スライドの)「怒りのできごとカード」にいろんなシチュエーションが書いてあります。
「幹事を頼まれたので店を手配したら、『この店ぜんぜんよくねえじゃん』と文句を言われた」とか、「目の前を歩いている人が、突然ごみをポイ捨てした」とか、「しゃべると必ずマウンティングしてくる人がいる」とか。
親の人がカードを引いて、そのシチュエーションで自分がどのくらい怒りを感じるかを、0から10までの怒り度数カードを選んで伏せて置き、一緒にやっている人たち(子)が親の人の怒り度数や理由を当てるというゲームなんですけど。
これを繰り返してやると、人によって地雷の場所がぜんぜん違うことがわかります。例えばAの件でめっちゃ怒る人が、Bの件では0みたいなこともありますし、逆にAは0なのに、Bではめっちゃ怒る人もいる。
一通り遊んだ相手と「じゃあ、このできごとカードの中で、自分が地雷だと思うのはどれ?」と、山札をオープンにして探していくと地雷の共有も進みます。また、「このカードの中にないけど、仕事で“自分はここが地雷なんだよね”ということって何?」みたいな話をしてみると「OBライン」がはっきり見えてくるので、いろんな人におすすめしています。
2つ目は「凹をさらす」こと。弱みの共有です。
僕はジグソーパズルでチームビルディングを考えると、いろいろ腹落ちしやすいと思っています。パズルのピースが人だとして、凸と凹がありますよね。
凸が強みで凹が弱みだとすると、全員が凹を隠し合っている集団では、1個も組み合わさりようがない。また、チームメンバーに対して凹を隠すのに何らかのリソースを使っているとすると、「そのリソースは仕事に回したほうが良くない?」と思うわけです(笑)。
じゃあ、いきなり弱みをさらせばいいのかというと、例えば新卒が「私はそういうのは苦手なのでやりたくないです」と言ったとします。そうしたら、「とりあえずできるまでやってみようか」となりますよね。
なので順番としては、まず凸を共有して「あの人はこれが得意だね」と周りの人が自分の凸を理解してくれたタイミングで、「これは得意だから言ってくれればいくらでもやりますけど、代わりにこういうのはめっちゃ苦手なんですよね」と凹を言う。この順番が大事です。凸を共有して、そのあと凹を共有するというコミュニケーションができると、お互い受け入れやすくなると思います。
仲山:3つ目は、倉貫(義人)さんの提唱する「ザッソウ」です。ホウレンソウ(報告・連絡・相談)からザッソウ(雑談・相談)へ、ということですね。
報告・連絡については、ITが普及した今の時代、例えば「ミーティングの議事録はここに置く」といった情報共有のルールさえしっかり決めておけば、「俺は聞いてない問題」は起こらずに済みますよね。「いや、あなたが見ていないだけですよ」と言えるので。
それに比べて、相談はいまだに大事。ただ、相談は意外とハードルが高いという問題があります。上司が「気軽に相談してね」と言っても、いざ相談しようとしたら、めっちゃ忙しそうだったり、不機嫌そうなので今はやめたほうがいいかなとか。忙しい上司の時間をもらうなら、もうちょっと作り込んでから持っていくほうがいいかなと思っているうちに、タイミングを逃してしまうとか。
そこで、ザッソウ(雑談+相談)という2段階のステップを作って、雑談している流れから「そういえばあの案件、この前こんなやり方はどうかなって思いついたんですけど、どうですかね?」みたいに相談ができるようになるとハードルが下がる。
相談を受ける側からしても、めちゃめちゃ時間をかけたのはわかるけど、見た瞬間に2秒で「これはちょっとないな」と思うような内容だったら困りますよね。もっと早い段階で1回相談してくれたら、「そっちの方向じゃなくてこっちのほうがいいんじゃない?」みたいなアドバイスができて、無駄な時間を使わなくて済んだのに、となるわけです。だから、早い段階で「雑に相談」することが大事だよね、というのがザッソウです。
このザッソウという言葉を職場の共通言語にして、「ちょっとザッソウいいですか?」「あ、いいよ」みたいなコミュニケーションが取れるようになると、だいぶ心理的安全性が生まれやすくなるんじゃないかなと思います。
仲山:ちなみに、SNSなどを見ていると、最近は心理的安全性という言葉がひとり歩きして、誤解して使う人が増えているようです。例えば、「こんなレベルで妥協したら、うちのチームらしくないよね」と言った人に、「そんなこと言われたら、もう心理的安全性がなくなって何も言えなくなります」みたいな使い方をする人を時々見かけたりするんですけど。
波風立てずに仲良くやることが心理的安全性だと思っているようですが、それは違います。みんなを安全な状態に置いて、しんどい思いをさせないことが心理的安全性ではないんです。この心理的安全性というワーディング自体が、ちょっと誤解を生みやすいのも問題だなと思っていて。
もう1個、あまり知られていないんですけど、「心理的柔軟性」というキーワードがあります。僕は、これをベースに心理的安全性を理解するほうが間違えにくいのかなと思っているんですよね。
心理的柔軟性を平たく言うと、誰かが何かを言った時に、その言動を柔軟性を持って受け入れられる姿勢や構えができている状態です。どっちかというと、「心理的柔軟性がない人」を考えたほうがわかりやすいと思います。
例えば、自分が正しくて相手が間違っているから1ミリも譲る気はないみたいな状態とか、過去の成功体験を普遍的な正解だと思っているとか。あと、別にそれが絶対ではなさそうな案件でも「しなければならない」とか「すべき」というmust表現・should表現を使いがちとか、話し始めが「でも」から始まりがちとか。他にも、経験がないのに知識ベースだけで、「こうすべきなのでは」と言って議論の余地があまりないとか。
こういう人を僕は、「心理的ガッチガチ」と呼んでいます。今の話を絵で描いたものがこれ(スライド)です。
ここにいるチームメンバーは、「自分が何か言っても、ちゃんと柔軟性を持って話を聞いてくれるから、話しやすいな」とお互いに思い合えているんですね。この「お互いに」というのがポイントです。そういう状態が心理的安全性だと僕は捉えています。
ここにガッチガチな人が入った瞬間、「自分が何か言ったら、あの人がどんなリアクションをするかわからないから、言うのはやめておこう」と全員が思うようになるわけですね。なので、誰か1人でもガッチガチな人がいると、その集団はストーミング(第2ステージ)に入れないのでチームにはなれないと僕は思っています。
全員が「今、自分はちゃんと心理的柔軟性を持ってこのチームに存在できているか?」という問いかけを、それぞれがセルフでできているかどうかが大事です。
仲山:ちなみにチーム内の心理的安全性は、常に一定ではなく、状況によって変化します。一緒に仕事をしてきた仲間でも、まったく違う仕事をすることになると、相手のリアクションがわからず、不安を感じることがあります。
例えば、利益を等分で分け合う仕事を続けてきたチームが、まったく違う仕事をする際、これまでは等分で良かったけれど、「この仕事ならCさんはあんまり働かなくてもよさそうだな」とか、「Aさんに負担がいきそうだな」となったとします。そうすると、お金の分け方についてみんなのリアクションがわからず、「Cさんは少なくていいんじゃない」と言ったら怒られるかもしれないと不安に感じて話せなくなるとか。
なので、「このチームやメンバーに心理的安全性があるかないか?」を問うことに、あまり意味はありません。一緒にいくつか仕事をしたメンバーでも、未経験のことをする時は誰かが「えっ?」と言う可能性が常にあり、心理的安全性がない状態が生まれるのです。
そうやって、今までに誰も言ったことがないことを言う時にはリスクがあります。でも、そういうリスクを気にしないタイプの人が発言することで、「あ、これを言っても大丈夫なんだ」とみんなが理解し、安心して話せるようになったりします。「え、そんなこと言うの?」と思うことを言ってしまう空気を読まないタイプの人が、心理的安全性の範囲を広げるとも言えるかもしれません。
――新年度から新しくリーダー・マネージャーになり、1ヶ月が経過して少しずつ課題が見えてきたという人もいると思います。最後にこれからのチームを担う人たちへのメッセージをお願いします。
仲山:今までのリーダーの学び方は、リーダー自身が勉強して、知識や経験をたくさん積み、正しい判断ができるようになって、みんながついていきたくなるような人間力を磨くことでした。リーダーがセミナーを受けて地図をゲットし、「良いものもらった」と言って、みんなに「次は右だ」「左だ」と指示すればうまくいったのが今までのやり方だとすると、今の時代は違います。リーダーだけが学んでいてはいけない。
全員が同じ地図を見ながら、「今このへんに来ましたよね」と確認し、「ってことは、こういうのどうですか?」と思いついた人が言えるような状態を作れるかどうかが大事なんです。持っている情報をなるべくみんなでシェアして共通言語を作ったり、見えているものや価値基準を揃えたりすることが重要だと思います。それが、「これ言っても大丈夫かな?」という心理的安全性にもつながっていくんですよね。
情報量が違いすぎると、「自分が思っていることを言っても、すぐに『違う』って言われるんだろうな」「自分は何も知らなすぎるからな」みたいな状態が起こりやすいですよね。部下のコントロールがうまくできた時代は、それでやってきたし、それで良かったんです。
今までは、仕事をすることは「フォーミングで100点を取りに行く」ようなものだったと位置づけられます。でも、もう1つぜんぜん別の、みんなで試行錯誤をしてうまくいく方法を編み出すという仕事の仕方があることを、まずは全員で共有することが大切だと思います。
――本日は貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。
仲山:ありがとうございました。
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