2024.10.01
自社の社内情報を未来の“ゴミ”にしないための備え 「情報量が多すぎる」時代がもたらす課題とは?
リンクをコピー
記事をブックマーク
企業のDXの取り組みや組織設計、マーケター育成などをテーマにトップマーケターを招くグロースXのセミナーに、『なぜ「つい買ってしまう」のか? 「人を動かす隠れた心理」の見つけ方』の著者で、同社執行役員の松本健太郎氏が登壇。「調査を通じて顧客理解を深める具体論」をテーマに、文章完成法を使ったリサーチの結果や、定性調査の結果を定量調査で検証する方法について語りました。
松本健太郎氏(以下、松本):文章完成法は、なかなか自分でも気づきにくい、言語化ができない、でもなんかモヤモヤするというところを、書いた本人が無自覚にアウトプットできるアプローチかなと思っています。
これは実際にリサーチを行った結果です。文章完成法を用いて、「リスキリング」という表現が伝わりにくいことがわかっていたので、「仕事に必要なスキルの学習に取り組むきっかけは何だったんですか?」、あるいは「学習に取り組まないと決めた理由は何だったんですか?」という質問で、以下のような文章を用意しました。
「私が学習に取り組むきっかけ、あるいは取り組まないと決めたきっかけは、○○という状況に遭遇したことです。私はその時、どう感じましたか? そう感じた背景として、私は○○という価値観を持っています」。この文章をリサーチで使ってみました。実際の母数等々は後ほどお話しします。まず、参加者からどのような回答が得られたのかをお伝えします。
例えば、こんな回答がありました。
「私が学習に取り組むきっかけは、ムカつく先輩に上から目線でものを言われたという状況に遭遇したことです。その時、『脳も技術もない、ただ先に入社しただけで、なんでこんなに偉そうなの?』と感じました。そう感じた背景として、私は自分を見下す人を許さないし、『もっともっと上に行ってやる!』という価値観を持っています」。
これは調査の回答をそのまま貼り付けています。おそらく定性調査で、Freeasyという会社のインターネットリサーチを通じて行われたものです。定性調査や定量調査のご経験がある方で、インターネットを通じて行われた調査で、「え? こんな回答が返ってくるんだ」と驚かれる方も若干おられるかもしれません。
この回答者は何か嫌なことがあったのだろうと推測されます。それをエネルギーに変えて行動できるタイプの方なのでしょう。回答者は37歳の既婚女性です。このような回答は、定性調査や文章完成法を通じて、次々と得ることができます。今回の調査でも、そのような結果が得られました。
(スレイドのこれは)僕は「人は何のために学ぶのだろうか?」という疑問を抱いていました。
この疑問に関連する論文が2001年に発表され、2012年に中谷素之先生がその論文を引用するかたちで別の論文を書かれています。その中谷先生の論文から引用しています。
「人は何のために学ぶのか?」という理由については、「ポジティブかネガティブか」「内的か外的か」の2軸4象限に分かれるということを書かれています。「わかるようになりたい」「良い成績を取りたい」。これは事業で言うと、「良い結果を取りたい」ということですね。
かつ、「習得できないのが嫌だから」「無能だと思われたくないから」という理由もあります。この分類は、比較的応用が効くと僕は思っています。みなさんの事業に置き換えても、恐らくこの2軸4象限はだいたい当てはまるのではないかと思います。
この人の考え方は、ある種のモチベーションのフレームワークに該当すると僕は思うんですけれども。このモチベーションフレームワークに照らしながら、文章完成法で書かれた内容を一個一個読み込んで、「ふむふむ。これはおもしろいな」「ああ、これはなんか微妙かもな」というのをチェックしていきます。
文章完成法について、まともに回答してくれるのは5~10パーセントぐらいかなと僕は思っています。恐らく、今お話を聞かれているリサーチャーのみなさんの肌感にも合うのではないでしょうか。
今回は1万人を対象にスクリーニング調査を実施して、直近1年間で「仕事に必要なスキルを学習したことがある」という人は3,500人ぐらい、「仕事に必要なスキルを学習したことがない」という人が6,500人ぐらいいました。
3,500人の中で、「リスキリングをすでにやっている」「仕事に必要なスキルを学習している」という人に、先ほどの文章完成法を当てました。一方、「学習しないと決めた」という観点で、「仕事に必要なスキルを学習したことがない」という6,500人にも文章完成法を当てて、同じく回答を得ています。
その際、3,500人に聞いた中でまともに回答してくれたのは5パーセントぐらいでしたね。(回答してくれるのは5~10パーセントと考えると)ちょっとぎりぎりでしたが、多めの文字数で回答をいただけました。
その中で、先ほどのモチベーションフレームワークに当てはめた時に、「この回答おもしろい!」とか「この回答は納得性がある!」と、1つ1つフラグを付けていった結果、48人の回答が選ばれました。3,500人中の48人なので、1.38パーセントがきらりと光る回答だったわけです。恐らく、今日視聴いただいているみなさまが、インターネットリサーチを通じて文章完成法を行ったとしても、だいたいこれぐらいの割合になるのではないでしょうか。
僕自身、副業でよくインターネットリサーチを通じた定性調査・定量調査を行うんですが、1万人にスクリーニング調査を実施すると、きらっと光る回答は、100~150人ぐらい。多い時で300人程度です。
実は、インターネットリサーチを通じた定性調査では、アプローチさえ良ければ、きらっと光る、おもしろいと思える個々の投稿が、けっこう見つかることがあるんです。文章完成法を通じて、「リスキリングをしない理由を聞く」というのもやってみました。
特徴的な回答を1つ取り上げると、「私が学習に取り組まないと決断したきっかけは、『能力のない先輩がなぜか昇格した』という状況に遭遇したから」というものがありました。
なるほどと。「その時、私は『出世は上司からの好かれ具合で決まる』と感じました。そう感じた背景として、私は『学習よりも人間関係の構築が大切』という価値観を持っている」と。
(「『学習よりも人間関係の構築が大切』という価値観を持っている」という)3つ目の回答は、2つ目の文章に引っ張られていると思うところはありますが、いずれにしても、この44歳の既婚会社員の男性は、「やっても無駄だから、最初からリスキリングなんてしないよ」という考えを持っているんだろうなと、なんとなく判断できるわけです。
回答を大量に読み込んだ後に僕がすることは、「これとこれは一緒だよね」とか、「これとこれの考え方は似通っているよね」というグループ分けです。つまり、「リスキリングをしない理由」のグループを作った上で、それらを2軸4象限にプロットしていくのです。作ったものをみなさまにお見せします。
こんな感じで、合計10個のグループができました。
ウェビナーを視聴されているみなさまは、恐らく学びに熱心な側面があると思いますので、共感できる部分と共感できない部分があるかもしれません。
少なくとも、「直近1年間は、仕事のために学びをぜんぜんしてないですよ」と自己申告した方に「やらない」と決断したきっかけや理由を聞いた上で、「だいたい今回の回答内容であれば、この10個に収れんされるかな」と考えて、この2軸4象限の中に分類しました。
一つひとつ読んでいくと、先ほどの回答もそうでしたが「スキルを身に付けても評価とは無関係で、出世や昇進をぜんぜんしないじゃない」とか、「スキルを身に付けても、給料が上がらないですよね」とか、「業務時間外は仕事関係を一切したくない」とか。ちょっと厳しいのが、「今の会社で昇進したいと思わない」とか。これはけっこうありました。
そのほか、「そもそも会社からスキルを求められていない」「会社から具体的に『これをしてくれ』という指示もない」とか。これもつらいですね。「スキルを活かせる業務・仕事がない」「今のスキルで十分に通用すると私は思っている」「目の前の仕事に追われていて、スキルを学習する時間なんて確保できません」「スキルを学んで、仕事がうまくなった人が周りにいない」など、合計で10個のグループになりました。
ちなみに、リスキリングをしない理由としてグロースXがもともと把握していたのは、「スキルを活かせる業務・仕事がないから」と「時間が確保できないから」の2つでした。「給料が上がらない」というところも薄々気づいていた部分ですが、それ以外の観点は、「あー、なるほどね。こういう考え方をしている人がいるんだ」という、驚きにも近い感覚がありました。
説明を端折っているところもありますが、定性調査による顧客理解のアプローチについて、みなさんと1つの方法を共有させていただきました。「リスキリングって、なんでやらないんでしょうね?」という質問を出発点に、それを原因と結果で捉え、「リスキリングをしない理由」を生む原因を探りにいく。ここは「個人レベルの理解」」というところで、理由の発見を行いました。
定性調査はあくまでもN=1の理由なので、次にやるべきは、「それって全体に当てはまるの?」というところの深掘りで、そのアプローチが定量調査による理解になります。
先ほどは10個の理由に収れんさせましたが、N=1の場合もありますし、N=10の場合もあります。行動観察にも当てはまるんですけれども、「そんな少数の行動を観察したり、人に刺激を与えた結果だけで判断していいの? マスがそうだとは限らないですよね」という批判をよくいただきます。
なので、先ほどの定性調査の結果を定量調査にかけてみましょう。みなさんに『(あなたは)当てはまりますか? 当てはまりませんか?』というのを聞くということですね。
先ほど1万人に聞いた中で6,500人が、「直近で仕事に必要なスキルを学習したことがない」とおっしゃっているので、その6,500人の中の600人ぐらいの人に、あらためて定量調査を実施します。そして、その理由が「当てはまりますか? 当てはまりませんか?」という質問でご回答いただきました。
その結果がこちらです。
「当てはまります」「やや当てはまります」の合計57パーセントの人が、「スキルを身に付けても、特別手当・補助は出ない」と言っています。同じく50パーセント以上の人が「当てはまります」「やや当てはまります」と回答したのが、「出世・昇進と無関係だから」と「業務時間外は仕事のことを一切したくないから」ですね。
今回特徴的なのは、「どちらとも言えない」という回答が比較的多く出たことです。「やや当てはまらない」「当てはまらない」の回答はだいたい2割を切っています。これはけっこう珍しく、5段階評価ではなく6段階評価にして、「どちらとも言えない」を選択肢から外したら、恐らく結果の見え方は変わってくるのかなと思います。
この定量調査の結果を、先ほどの2軸4象限に当てはめると、こんな感じになります。
上側の「変化を避ける」より、下側の「僕なんか別に求められない」とか「今のままで十分」みたいな人は、「どちらかと言うと当てはまる」と思っている方が若干少ない。
一番多いのはやはり左上ですね。「スキルを身に付けても評価に関係しない」とか、「スキルを身に付けてもお金は出ない」という、「どうせ学んでも、会社は変わらないでしょ」という方。言い方を変えると、「私が変わっても、会社は変わらないでしょ? だからリスキリングなんてしないんですよ」となる。
この表現に変えたら、トップ2で65パーセントぐらい取れそうだなと思ったんですが、いずれにしろ強弱というか、「どちらかと言うと賛同を得そうかな」と「賛同を得なさそうだな」という違いも、今回の調査を通じて見えてきたことです。
2024.10.29
5〜10万円の低単価案件の受注をやめたら労働生産性が劇的に向上 相見積もり案件には提案書を出さないことで見えた“意外な効果”
2024.10.24
パワポ資料の「手戻り」が多すぎる問題の解消法 資料作成のプロが語る、修正の無限ループから抜け出す4つのコツ
2024.10.28
スキル重視の採用を続けた結果、早期離職が増え社員が1人に… 下半期の退職者ゼロを達成した「関係の質」向上の取り組み
2024.10.22
気づかぬうちに評価を下げる「ダメな口癖」3選 デキる人はやっている、上司の指摘に対する上手な返し方
2024.10.24
リスクを取らない人が多い日本は、むしろ稼ぐチャンス? 日本のGDP4位転落の今、個人に必要なマインドとは
2024.10.23
「初任給40万円時代」が、比較的早いうちにやってくる? これから淘汰される会社・生き残る会社の分かれ目
2024.10.23
「どうしてもあなたから買いたい」と言われる営業になるには 『無敗営業』著者が教える、納得感を高める商談の進め方
2024.10.28
“力を抜くこと”がリーダーにとって重要な理由 「人間の達人」タモリさんから学んだ自然体の大切さ
2024.10.29
「テスラの何がすごいのか」がわからない学生たち 起業率2年連続日本一の大学で「Appleのフレームワーク」を教えるわけ
2024.10.30
職場にいる「困った部下」への対処法 上司・部下間で生まれる“常識のズレ”を解消するには