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第947回 仕事に役立つABC『厳しいフィードバックは必要か?』(全1記事)

今の時代、部下・後輩への厳しいフィードバックは必要か? 指導において大切なのは“NGライン”を正しく知る努力

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル「ちょっと差がつくビジネスサプリ」。本記事では、「厳しいフィードバックは必要か?」をテーマに、部下や後輩に指導する際のポイントを解説します。 ■音声コンテンツはこちら

部下・後輩に厳しいフィードバックは必要か?

熊谷翔大氏:今日は「厳しいフィードバックは必要か?」がテーマです。毎週水曜日のこの放送を聞いてくださっているリスナーの方から、先日相談を受けました。

内容は、その方の会社で上司・先輩の立場の人がすごく気を遣ってしまって、部下・後輩になかなか厳しいフィードバックができないというお話でした。もちろん社風もあるかと思いますが、けっこう似た悩みを抱えているマネジメントの方は少なくないのではないでしょうか。

2022年、あるタイミングでこんなニュースを目にしました。リクルートワークス研究所さんがされていた、大企業に勤める新入社員を対象とした「大手企業における若手育成状況調査報告書」というものがあって。内容なんですが、約25パーセントの新入社員が「一度も上司・先輩から叱責されたことがない」と回答したというんですね。

その他にも「職場をゆるい」と感じると回答した新入社員のうち、「このまま所属する会社の仕事をしていても、成長できないと感じる」と答えた人が62パーセントもいたと。ゆるい職場がキャリアの不安につながっているという調査結果でした。

私もこの記事を読んだ時にいろんなことを考えたんですが、ある意味では新入社員・若手の方は、本当に健全な危機感を持っているなと感じました。私自身も、過去の上司・先輩から厳しいフィードバックをもらってきたからこそ成長できて、今もしっかりと仕事を進めることができているなと感じています。

今日のテーマに素直に答えると、上司・先輩からの時には厳しいフィードバックはやはり必要だと私は思います。また反対に、このニュースを上司の立場で頭を巡らせてみたんですが、今の時代の流れを言い訳にして、必要なフィードバックまでやめてしまってはいけないなと考えました。

理不尽な指導や相手を不快にするフィードバックはNG

最初のリスナーの方の相談に戻ると、厳しいことを部下・後輩に言うことがなかなか難しい気持ちは本当によくわかります。でも、やはり時には必要です。そこで気になるのが、どういう心構えで、何に気をつけて、部下・後輩に厳しいフィードバックをすればいいのかだと思います。

今日は、厳しいフィードバックをする時に気をつけたいことについて、私が大切だなと思う3つのポイントをご紹介します。

中身に入る前に断っておきますが、「厳しいフィードバックも必要だ」といって、理不尽だったり、相手が不快に感じる指導やフィードバックをするのは絶対にNGだと思います。その点をご理解いただいた上で聞いてもらえればと思います。

まず1つ目ですが、何より部下・後輩の成長を本気で考えましょう。大前提として、部下・後輩の育成責任は上司・先輩にありますよね。育成はそう簡単にはいかないんですが、その役割を上司・先輩が正しく認識して心に留めておくことは大切だと思います。

偉そうに言いつつ、私もメンバーに何か言おうとした時には、「こんなことを言ったら嫌な顔されるかもな」「余計に時間がかかってしまうな」みたいなことを心の中で思ってしまう瞬間も、もちろんあります。

でも、その時に自分に言い聞かせるのは「今、指摘してあげないと、このメンバーがお客さまの前や他部署の人の前で気がつかずに失敗する。そんな恥ずかしい思いをさせていいのか?」という問いです。

自分の中で「アカンアカン。今しっかり言おう」という気持ちに変える努力をするイメージですね。これは上司のミッションなんじゃないかなと考えています。

指導において「何がNGなのか」を正しく知る努力が必要

続いて2つ目ですが、コミュニケーションの取り方に正しく気をつけましょう。厳しいフィードバックがしづらい理由の1つに「厳しく言ったらハラスメントになるんじゃないか?」という不安があるかと思います。

もちろん、その不安は上司・先輩にとっては非常に大切です。ハラスメントは絶対にあってはならないですし、今の世の中の変化としてハラスメントに厳しい目線が行っていること自体は、私も大賛成です。

だからこそ「厳しく言ったらハラスメントになるから何も言わないでおこう」と思考停止するのではなくて、何がNGなのかを正しく知る努力が必要です。知識を得たり、時には周囲の人に自分のコミュニケーションが問題ないかを聞いてみたり、そういったアクションを上司・先輩自らがするのは欠かせないと思います。

最後に3つ目ですが、部下・後輩と腹を割って話しましょう。相手、つまり部下・後輩が心の準備ができていないままに、いきなり厳しいことを言っても引いてしまうだけですよね。

だからこそ「自分はこんなことを大切にしているよ」「こんな場面では細かいフィードバックをするけれどもそれでいいか? ぜひ受け止めてほしい」ということを、上司・先輩から腹を割って話すことが大切だと思います。

腹を割っていい関係が築けていければ、必要なフィードバックが正しく行われる職場作り、チーム作りをやっていけるはずです。

部下・後輩へのフィードバックの3つのポイント

ということで、今日は3つのポイントをお伝えしました。1つ目が「部下・後輩の成長を本気で考える」。2つ目が「コミュニケーションの取り方に正しく気をつける」。そして3つ目が「部下・後輩と腹を割って話す」。こんなことを気をつけながら、時には厳しいフィードバックをしていくというお話でした。

今日のテーマで私が思い出すのが、前職時代に副社長までされた偉大な方が言っておられた言葉です。それは「本気で部下のことを思うなら、箸の上げ下げまで言ってあげなさい」というメッセージでした。ぶっちゃけ、そこまでするのはなかなか難しいと思いますし、もしかしたら正直、今の時代には合わないのかもしれません。

でも、こんな時代だからこそ、少しでもそんな気持ちや部下・後輩に対する愛情を持つ。コミュニケーションの取り方や言葉遣いに十分気をつけた上で、必要な時にしっかりと厳しいフィードバックをしてあげる上司・先輩が1人でも増えれば、少しでも日本の会社・職場は良くなっていくんじゃないかなと感じています。

もし少しでも共感してくださる方がいれば心からうれしいですし、特にマネジメントをされる方にとっては、悩む場面も多いテーマかと思います。だからこそ、ぜひ一緒にいろんな工夫をしながら日々を乗り越えていきたいなと思います。一緒にがんばっていきましょう。

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