2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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パトリック・ムーアヘッド氏(以下、パトリック):マイケル、 本題に入る前に、この15年近くであなたと親しくなれたことに感謝しています。私が90年代半ばにコンパックに勤めていた頃、あなたとデルのことは知っていました。 その後、私がAMDに在籍していた時には、デルのサプライヤーでした。本当にすばらしかったです。ありがとうございました。
マイケル・デル氏(以下、マイケル):あなたと知り合えてよかったですし、オースティンに来られてよかったです。テキサスで生まれなかった人たちは「私はできるだけ早くここに来た」と言うでしょう。私が最初にテキサスに引っ越してきたのは1995年でしたが、2001年から3人の子どもと妻と一緒にオースティンに住んでいます。
パトリック:本当に世界一すばらしい国ですね。我々はイギリスと独自の協定も結んでいるのですから、それはすばらしいことです。私は歴史と伝記が大好きなのですが、あなたは確か2冊出されていますよね。最新作(『Play Nice But Win A CEO's Journey from Founder to Leader』)を読みましたが、すばらしい内容でした。
デル・テクノロジーズとあなたがビジネスでやってきたことの話だけでなく、あなたの子ども時代から始まる個人的な話や、レストランで皿洗いの仕事をしていたことも書かれていました。メキシコ料理店で働いていたことも知っていますが、それ以前から起業の道を歩み始めたのですね。
マイケル:そうですね。もともと好奇心旺盛でしたし、幸運なことに、私の両親は私の好奇心を抑えるようなことはしませんでした。それで、切手のオークションをやったり、お金を稼ぐためにいろんなことをしていました。
ビジネスには本当に興味がありました。両親はスポーツの話はあまりせず、経済の話ばかり。私が育ったヒューストンは、原初の沼地のようなもので、大きなビルが建ち並ぶのを見ていました。好景気の街で何が起こっているか、既存の状況に挑戦し、新しいビジネスを構築している起業家を見て楽しんでいました。
パトリック:あなたには、物事を成し遂げ、次のレベルへと発展させてきた実績があるようですね。
(新聞配達をする)多くの子どもたちは新聞を売るルートを持っていましたが、覚えている限りでは、新しい住人が新聞を買うかどうかの関連性を作り出したと聞いたことがあります。あなたが若い頃、裁判所に行って、「誰が新聞を買いに来る可能性があるか」がわかる書類を手に入れた時の話をしていただけますか?
マイケル:ええ、16歳の夏、雇用の機会がかなり広がりました。両親からお下がりの古いステーションワゴンをもらって、この仕事に就いたんです。それで無作為の番号に電話をかけて、ヒューストン・ポスト新聞を売ろうとしたんです。結果的に、私はそれがかなり得意でした。いろんな人の話を聞いてわかったのは、新聞を買うのはたいてい、新しい家に引っ越す時か、結婚する時だということです。
それで、私の脳裏に「どうしたらもっと新居に引っ越したり、結婚する人を見つけられるか」という考えが浮かびました。それで、いろいろと質問してみたんです。住宅ローンを申し込んだ人のリストがあったので、その人たちにヒューストン・ポストの購読を勧めるダイレクトメールを送ったら、うまくいきました。
それから、テキサス州では結婚しようと思ったら、結婚許可証を申請しなければならないことがわかりました。これは郡の裁判所で行われます。(結婚許可証には)免許証の送り先が書いてあるので、郡庁舎に行って「結婚許可証を申請した人のリストが見たいんですが」と言うと「何を言っているんだ」という顔をされます。
パトリック: なるほど。ヒューストン・ポスト紙の購読を申し込むには、ちょうどいい住所ですね。
マイケル:それで、大当たりだと思ったんです。ヒューストンはハリス郡にあったんですが、ヒューストン・ポストの配達先になる郡が周辺に16ヶ所ほどありました。それで、高校時代の仲間を何人も雇ってそれらの郡に出かけて行って、すべての住所を集めました。
パトリック:私が今考えているのは、会場のみなさんと同じかもしれませんが、「私が16歳の時、何をしていたんだろう」ということです。私はレストランの皿洗いでしたが、(あなたの今の話は)デル・ダイレクト・モデルを最初に聞いた時の通りです。
マイケル:確かに、ダイレクト・マーケティングの初期のレッスンでした。
パトリック:そうですね、(みなさんは)早い段階でたくさんの自発性を持ってください。ちなみに本はとても良いので、ぜひ読んでください。しかし、これらのどれをもってしても、あなたがUT(テキサス大学オースティン校)を中退することについて、両親を説得するのは難しかったでしょう。これは明らかにあなたにとってうまくいきましたが、あなたが学んだ教訓のいくつかについて話してもらえますか?
マイケル:当時は19歳で、テキサス大学の1年生の寮で会社を始めました。チームの大切さ、チームを育てることの大切さ。すばらしい人たちに囲まれ、好奇心を持ち続け、常に学び続けなければならないことと、誠実さと評判が最も価値あるものだと学びました。それを築き上げるには長い時間が必要で、壊すのは本当に簡単なことなんです。
顧客の近くにいて多くのことを学び、彼らの課題や問題、機会、未解決のニーズを理解することは、成功の源です。最終的に、失敗があったからこそ本当に学ぶことができると知りました。成功からは学べませんからね。成功したふりをするのではなく、失敗から学び、試行錯誤し、さまざまなことを試して実験することが成功への道です。
パトリック:そうですね、まさに賢明な言葉です。正直に言うと、そこにたどり着くまでに40代までかかったと思います。自分がいつも一番賢いわけではないと知り、自分を偽らずにいることですね。
あなたが20代の時に雇った初期の幹部たちは、40代や50代だったと思います。多くの起業家の失敗の原因のいくつかが、その場の空気を読まず、全体的な視野を持たず、会話の中に成熟した知恵を持ち込まないことにあると思います。それで、(あなたは)明らかにうまくいったのですね。
マイケル:でも本当に幸運だったのは、この壮大な冒険に、たくさんのすばらしい人たちが契約してくれたことです。
パトリック:あなたについて書かれていることの多くは華々しい成功についてですが、本の中では、苦労して学んだことについても語られています。若い頃、思い通りにいかなかったことや、そこからどのように立ち直ったのか、例を挙げていただけますか?
マイケル:私たちは今日ではインフラ製品、サーバー、ストレージなどのリーダーですが、最初の2、3回の挑戦は、あまり成功しませんでした。これはLinux(OSの一種)が登場する前の話ですが、私たちは独自のバージョンのUnix(現存する中で最も古いOS)を持っていました。
そのためにかなりのお金を使いましたが、サーバー開発の最初の1、2回の試みは、ヒューストンにある、私たちが打ち負かそうとしていた他の会社ほど成功しませんでした。
私たちが開発したものは、本当に的を射ていないものばかりでした。また、顧客が重要なデータを保存する、より高度な製品を販売する許可を得るのにも時間がかかりました。私たちはスマートフォン事業に参入しようとしましたが、うまくいきませんでした。
この本では、そのような失敗と学びについてたくさん語っています。私たちのチームと話す時には、「5つのことをやって5つのことをうまくやろうとするな」「10のことをやって、6つのことを成功させなさい」とよく話しています。
失敗してもいいんですが、同じ失敗を何度も繰り返してはいけません。失敗から学びましょう。物事が常に変化し、プレイブック(ビジネスの鉄則やセオリーを言語化したもの)がないような分野では、小さな実験を繰り返してください。それが正しい答えを見つける方法です。自分で見つけなきゃ、正しい答えなんて誰も持っていないでしょう?
パトリック:私は30年以上デルの周辺にいましたが、デルは顧客が何を求めているのかをよく理解しています。デルは、顧客が求めていないものには手を出さないということです。
市場参入のタイミングが本当に良いのですが、あなたが学んだこととどのように関係しているのでしょうか。あるいは、そのスキルはどのように磨かれたのでしょうか? あるいは、そのスキルはどのように磨かれたのでしょうか? つまり、IBMやATPC(設定速度をキープして走行できる機能)のアップグレードを手がけていた時から、顧客を知り尽くしていたということですか?
マイケル:つまり、経験の積み重ねです。80年代によく日本に行ったのを覚えています。彼らはすばらしいものを開発していたんですが、誰もそれを必要としていなかったんです。ちょっともったいないですよね。それで、実用的なイノベーションというアイデアにたどり着きました。顧客は未来のソリューションが何であるかを常に明確に示すことはできませんが、大抵の場合、抱えている痛みや問題を明確に示すことができます。
そして、さまざまな分子レベルでの部品やパーツに至るまで、あらゆる技術があります。魔法は、それらの交差点を見つけることなのです。
規模や性能の問題や、解決すべき例を持っているリード顧客がいます。適切な顧客を見つけることができれば、そのような顧客はさらに10人、1,000人、100万人と増えていくでしょう。この時、機敏に柔軟に、絶えず適応していなければなりません。なぜなら、間違ったことをしても、それを受け入れ、対処し、素早く変化し、反復することができるからです。
パトリック:デル・テクノロジーズとあなたの個人的な歴史の中で、最も大きなマイルストーンの1つは、公開会社から非公開会社になったことだと思います。私たちが初めて会ったのは、ちょうどその頃でした。デル・テクノロジーズが上場した時に株を買っていれば、1,355パーセントも上昇していたと思います。
当時のデルが非公開になるのは少し奇妙な感じがしましたが、その時の自分に戻って考えてみると、それは理にかなっていたのです。なぜなら、率直に言って、世間はあなたの将来の可能性と業績を評価していなかったからです。
あなたは会社を設立し、マストヘッドにはあなたの名前があり、あるプロセスを経ましたが、一時は、あなたから会社を取り上げようとする人もいましたよ。それがどんな経験だったか、お話しいただけますか?
マイケル:ええ、そうです。もう少し単純明快で簡単なことです。事実上非公開にすることで、会社を解放し、起業家精神を活性化させ、私たちがすでに進めていた変革を加速させることができると思ったんです。その後、大勢の邪魔者が現れ、さらに複雑で困難な、個人的な問題に発展しました。そのことは、この本の中で説明しました。
オフィスに行くべきかどうか、経営陣と話すべきかどうか、本当に迷うような気まずい瞬間もありました。他のシナリオについて公然と憶測が飛び交い、私たちのチームやお客さまに不安を与えたので、心が締め付けられる思いでした。
しかし、私たちは何とかそれを乗り切ることができました。この業界は、変化のスピードが加速する一方だと思います。変わるか死ぬかの業界なのです。そして、大きな変革には財務的な変動が伴いますが、一般投資家はそれをあまり好みません。だからこそ、非公開化は変革を加速させ、数年後、私たちは再び力強いプラス成長と勢いを経験するまでになりました。
そして株式公開市場に戻ることで、資本構造と所有構造を簡素化することができました。そして今、私たちは再びここにいるのです。
パトリック:この件について相談できる人は誰でしたか?
マイケル:私のすばらしい妻、スーザンです。
(会場拍手)
パトリック:確かに私は小さな創業者でありCEOですが、孤立することがどんな感じか知っています。彼(マイケル)はこの会社を経営していたのですが、90日間ほど上級幹部と話すことができなかったのです。
マイケル:文字通り、弁護士から電話がかかってきて、しばらくは経営陣と話をするなと言われたこともありました。この前確認したんですが、私はまだ会社のCEOなんですよ。変な話ですが、オフィスには行かないでください。まあ、これはCOVIDの前の話なんですが、そもそも会社を率いるのは孤独な仕事です。
他の社長や他の境遇の人に相談できることもあるかもしれませんが、今回は特殊な状況でした。そして、もっと難しいことが分かりましたが、私たちはそれを乗り越えました。そして幸運なことに、チームは会社に留まり、私たちはより強くなりました。
パトリック:もちろんです。多くの変遷や変化を見てきたわけですね。メインフレームからミニ・コンピュータ、ミニ・コンピュータからx86サーバー、PC革命、タブレット、スマートフォン、インテリジェント・エッジ、クラウド・コンピューティング、ソーシャルメディア......。
確かにたくさんありますね。いくつかの浮き沈みがありながらも、変化を乗り越えた今、あなたが会社を存続させるだけでなく、繁栄させている理由は何ですか?
マイケル:私は本当に企業文化だと思います。確かにすばらしい製品を作ることも重要です。しかしどの組織も、他の手段では解決できない問題を解決するために存在しています。そうすれば組織として存在し続けることができ、活躍して顧客を助けることができるんです。
もしそうしなければ、彼らは他のことをするようになるでしょう? だから、あなたはそれらの問題を解決し続けなければならないのです。そのためには、多くのことに耳を傾け、理解し共感し、何が問題なのかを見極め、あらゆる要素を考慮しながら、常に再構築していかなければなりません。 この問題を解決するためには、どのようなテクノロジーを採用する必要があるのでしょうか。
そこでまた文化に話を戻しますが、私たちにはPowerMax、PowerEdge、PowerStore、PowerConnect、Latitude、そしてXPSといった、すばらしい製品やサービスがあります。その一つひとつを私たちは誇りに思っています。
しかし、そのようなものを何度も生み出し、その都度より良くしていくことができるのは、本当に企業文化のおかげなのです。そうしていけば、もっと多くのお客さんが来てくれるでしょうし、私たちの仕事は、そうした将来の課題を理解し、それを解決することなのです。
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