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第952回「『 そもそも系質問』にも2種類ある。ゼロベースとベースゼロ」(全1記事)

会議がムダに長引く、的はずれな指摘をする「そもそも系質問」 話し合いの質を左右する「思いつき」と「ゼロベース」の違い

日本最大のビジネススクール「グロービス経営大学院」が、ビジネスパーソンに向けて、予測不能な時代に活躍するチャンスを掴むヒントを配信するVoicyチャンネル『ちょっと差がつくビジネスサプリ』。本記事では、会議などでよく耳にする「そもそも系質問」の注意点と、筋の通った質問をするために大切なことを解説します。 ■音声コンテンツはこちら

「そもそも質問」は2種類ある

本山裕輔氏:グロービス経営大学院の本山です。今回は「そもそも論」がテーマなんですが、例えば「この業務って、そもそも必要でしょうか?」という質問があったとしましょう。パッと聞いた感じだと、本質を突いた鋭い質問のように思います。

しかし、「そもそも質問」にも2種類あります。まず1つ目が、誰もが抱いていた固定観念をぶち壊して、ブレイクスルーをもたらしてくれる、本質的な「そもそも質問」ですね。そしてもう1つは、議論すべきではない論点までほじくり返してしまう、的外れな「そもそも質問」。この2種類があります。

後者は「え? 今、そこを議論するの?」「いやいや、この前もそれを議論しましたよね」など、本当に議論を遠回りさせてしまうケースもあります。この2種類の「そもそも系の質問」をどうやって見分けるのか、どうやって使い分けるのか。こんなことについて今回お話できればなと思います。

書店を見渡してみると、「ゼロベース思考が大事である」と書いている本をいくつか見かけるかなと思います。ゼロベース思考とはいったい何かというと、前提や常識を疑う考え方を意味しています。

ただし、この前提や「常識を疑う考え方」に、私は少し違和感があるんですね。というのも、何でもかんでも、根掘り葉掘り疑えばいいわけじゃないんじゃないかと。言い換えれば、「疑うべき常識」と「スルーしても大丈夫な常識」があるということです。

「ゼロベース思考」と「ベースゼロ」の違い

そして、スルーしてOKな常識ばかり疑ってしまうのは、実はゼロベース思考ではなくて、知識がないという意味で「ベースゼロ」なんじゃないかと思います。

例えば、先ほどの「この業務ってそもそも必要でしょうか?」という質問を思い浮かべていただければと思います。この質問をいきなりする前に、一度立ち止まって「この業務をなくすことで何が困るのだろうか。他の業務や自社のサービスといった、全体の整合性にどんな影響が出るのだろうか」。

あるいは「この業務をなくすことで生まれるメリット・デメリットは、いったい何だろうか。逆にこの業務を残しておくことによるメリット・デメリットは、それぞれどんなものがあるのだろうか」。

「そもそも」という質問を投げかけることで、会議の誰がどんな表情をしそうか。こんなことまで思いを馳せた上で、あえて「そもそも質問」をするということであれば、それは疑うべき常識をきちんと考えて見抜こうとしている。この点において、すごく立派なゼロベース思考なんじゃないかなと思います。

一方で、さっき話したようなことは一切考えずに、目についたものをただ思いつきだけで、脊髄反射的に何でもかんでも「そもそもこれ、必要ですか?」と質問をする。何も自分の頭で考えようとしていないという点では、実はベースが空っぽという意味で、ベースゼロと呼べるのではないかなと思います。

質問される側は「ベースゼロ」を見極めるのが難しい

しかしやっかいなのが、質問される側の立場としては、された質問がベースゼロな質問なのか、それともゼロベースなきちんとした思考に則った上での質問なのか、見極めるのがなかなか難しいですよね。

「これはベースがゼロの思いつきの質問なんじゃないか?」と思っていた質問が、実は本質的で的を得たそもそも論だった、なんて可能性もあったりします。ですので、質問される側がいかに見極めるかというよりは、逆ですね。

ベースゼロの思いつきの質問ではなくて、質問する側・投げかける側がきちんとゼロベースに考え抜いた上で、質問するということを意識しておかないといけないんじゃないかなと思います。

では、ゼロベース思考を身につけるために、いったいどんなことをすれば良いのか。1冊の本をおすすめしたいんですが、それは山口周さんの『自由になるための技術 リベラルアーツ』です。

この本によると、リベラルアーツとは「自由になるための技術であり、真偽を見極めるための技術であり、疑うべき常識とスルーしてOKな常識を見極める技術」ということを意味しているそうです。

筋の通った質問をするために気をつけること

「この業務ってそもそも必要なんですか?」という問いに思いを馳せるために、業務の裏側にある原理原則をひもといていくために、例えばオペレーションやサービスマネジメントの理論を知っておくと、より深く考えることができるかなと思います。

あるいは、さらに裏側の本質の部分、原理原則の部分をひもとこうと思ったら、オペレーション理論のさらに裏側にある物流史を学んでおくと、さらに深く議論できるかもしれません。

さらに、会議中に「この業務ってそもそも必要でしょうか?」と質問をした時には、誰がどんな表情を浮かべそうか。こんなことをシミュレーションするためには、心理学や組織論を学んでみたり、小説や昔の戯曲なんかに目を通しておくと、周りの感情の変化に敏感になれるかもしれません。

このように、リベラルアーツできちんと足腰を固めておくと、とんちんかんな質問ではなくて、きちんと筋の通ったゼロベース思考が少しずつできてくるんじゃないかなと思います。

私自身も「リベラルアーツはいったい何のために学べば良いのか」と悩んでいることがあったので、思考の整理も兼ねて、今回はこのようなお話をさせていただきました。

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