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SAP x Skillnote 特別対談 ~共に創造する製造業の未来~(全1記事)

2〜3年で離職する今、「10年ぐらい働いて一人前」は過去の話 人材育成、技術の変化…製造業が抱える課題解決のカギ

提供:SAPジャパン株式会社

2019年の設立以来、30社を超えるスタートアップとの協業を推進してきた、SAPジャパン株式会社のアクセラレーションプログラム「SAP.iO Foundry Tokyo」。このプログラムに参加するスタートアップとの特別対談が開催されました。今回は、7月にSAPジャパンと共同で製造業のスキルマネジメントシステム「Skillnote」をグローバル展開することを発表した株式会社Skillnoteの代表・山川隆史氏と、SAPジャパンの代表・鈴木洋史氏の対談の模様をお届けします。

製造業を取り巻く環境変化と課題

鈴木洋史氏(以下、鈴木):日本における製造業を取り巻く環境が大きく変化しています。設備の老朽化や人材の不足、また技術の継承といった課題があり、デジタル化の促進は避けて通れないのではないかと考えます。

かつては、勘や経験による属人化した採用、育成、そして配置といったプロセスでも十分に企業が成長できた時代でした。しかし、現在のような不確実性の高い情勢の中では、企業そのものがビジネスモデルを変えたり、あるいは企業変革をしていかないと立ち行かない時代になっています。

その企業変革を実現するためには、DX化や人材のリスキリング、アップスキリングが不可欠です。また、人的資本経営、非財務指標の可視化といった観点からも、企業は社内外に向けて進捗状況の開示が必須になります。

こうした状況を打開するためにも、スキルベースの組織設計や人材育成にあらためて焦点が当たっており、Skillnoteさんとの協業は、SAPのお客さまにとっても大変意義のあるものだと思っています。

山川隆史氏(以下、山川):ありがとうございます。我々は日々、製造業のお客さまと対面していますが、以前は未来を見据えて「将来どうしようか」というお問い合わせが多かったんですが、ここ1年ぐらいは「今、人がいなくなっている」「今すぐ技術を変えないといけない」といったご相談が増え、製造業を取り巻く環境が大きく変わったと実感しています。

製造業には多くの課題がありますが、我々が取り扱っている領域が「スキル」で、特に「人材」に関する仕事をしていますので、ここでは「企業側」と「従業員側」の2つの視点で考えたいと思います。

1つ目の「企業側」の視点ですが、組織として人材のスキルをしっかり把握して、戦略的な人材育成ができていないことが大きな課題ではないかと考えます。かつては「先輩の背中を見ながら学ぶ」と言われていましたが、製造業の事業所を伺っていると、依然として場当たり的な人材育成が主流のように感じられます。

人が採れず、スキル・技術がどんどん変わっていく昨今の状況においては、もう少し根拠に基づいた戦略的な人材育成が必要なのではないでしょうか。

製造業で求められるスキル情報をベースにした戦略的な人材育成

山川:2つ目の「従業員側」の視点については、製造業の現場で働いている人のモチベーションや、持続可能性が大きな課題かなと思います。お客さまからは、「かつては10年ぐらい働いて一人前になっていたけど、最近は2〜3年で離職してしまう」というお声も挙がっており、閉塞感が漂う現場も少なくないと思います。

これまでの製造業は人がいるのが当たり前で、そこからどうやって活躍してもらうかを考えるのが主でしたが、今後は製造業から人が離れてしまう未来をなんとしても避けていかないといけません。そのためには、企業はより一層従業員のほうを向いて、キャリア形成の支援をすることが大事です。

企業側と従業員の視点でそれぞれの課題をお話ししましたが、これらを解決する鍵が人材スキル情報のデジタル化と、そのデータ活用ではないかと考えます。

特に製造業では、人材のスキルや知識・経験は企業価値に直結するものであり、最近は製造業もDXやデジタル化が進んできましたが、人材の領域においてはなかなか進んでいないのが実情かと思います。

ですので、この人材のスキル情報をデジタル化して、データに基づいた戦略的な人材育成やキャリア開発を行うことが、今の日本の製造業に求められていることかと考えます。

鈴木:終身雇用や年功序列が完全に崩れた中で、企業による従業員のみなさんの育成は非常に重要ですが、従業員のみなさんもスキルアップを自分ごと化して、生産性を上げるために切磋琢磨していく姿が求められますよね。

山川:まさにその通りで、会社側も従業員側も変わっていかなければいけないというのが現状だと思います。

Skillnoteは、一言でいうと「製造業さま向けのスキルマネジメントシステム」です。製造業の技術者や技能者が持つ専門スキルを可視化して、そのスキルデータを用いて、戦略的な人材育成や配置などを支援しています。

製造業が直面する技術継承や技術変化への対応といった事業課題を解決するソリューションとして、産業機械や輸送機器、素材メーカーといった幅広い製造領域で、150社を超えるリーディング企業のみなさまに導入いただいています。

品質管理と安全につながる「スキルデータの可視化」

鈴木:SAPには「SAP.iO」というグローバル組織があって、日本でも数年前に立ち上げて、スタートアップのみなさんとの協業を推進しています。SAPのお客さまの幅広いニーズにお応えするためには、SAPのソリューションだけでなく、スタートアップのみなさまとの「Co-Innovation」がとても重要です。

Skillnoteさんは「スキルの可視化」という、お客さまに求められているソリューションを、SAPのソリューションと連携して共同提案したり、お客さまの課題解決に向けた取り組みをされています。SAPはこうした活動に今後も注力していきますので、引き続きよろしくお願いします。

山川:ぜひよろしくお願いいたします。今お話のあった「SAP.iO」というアクセラレーションプログラムに我々が参加したことが大きな起点となり、そこからSAPさんとはいろんな連携をさせていただいています。我々もなんとか力を発揮して、キーワードに挙げられた「Co-Innovation」を実現して、お客さまに価値提供をしたいと思っています。

SAPさんとは大きく2つの領域で連携させていただいています。1つ目は人事業務ソリューションである「SuccessFactors」との連携です。「SuccessFactors」が経営や人事領域で価値発揮をされているのに対して、我々は製造業の現場部門特有のスキルデータの可視化をしています。

集まった詳細なスキルデータを集計して、「SuccessFactors」に連携することで、戦略人事やタレントマネジメントを高度化します。

もう1つは、設計や製造領域になりますが、SAPさんの「PEO」(S/4HANA Manufacturing for Production Engineering and Operations)のソリューションとの連携です。

例えば、産業装置の組み立てで特殊な配線作業をやる時に、「PEO」の画面に出た作業者指示書に、「山川が今からこの作業をやります」と入力するとSkillnoteに確認にいき、山川がこの作業をできるスキルを持つかどうかをチェックします。

有効なスキルを持っていれば作業が実行できるし、有効期限が切れていたりすると作業をブロックする。高い品質を求められる領域で厳格な品質管理をして、無資格者による作業を防止することができ、実際に危険を伴うような作業の領域などで使っていただいています。

技術者のスキル判断はAIが行う時代

鈴木:スキル管理自体は決して新しいものではなく、製造部門や人事部門のみなさまが何十年も行ってきたわけですが、管理する項目はどんどん多様化しており、人による管理が限界になっている。

そんな中で、昨今はAIを活用した効率化が望まれています。例えば、多種多様で煩雑になったスキルの管理をAIを活用して行う。具体的には、スキルの重複や類似の判断をAIに任せることも可能です。

また、社員それぞれの働きがいや目指す姿、キャリアの考え方も多様化する中で、企業も自律的なキャリアの実現を謳う以上は、社員ごとに最適化された成長機会の提供や、個人個人への育成施策の実施が必要です。人の判断だけでは限界がある中で、AIによる推奨や提案がとても役立つと思います。

技術の継承やリスキリングの観点では、これまで製造現場と人事部門が個別に行ってきた施策を融合して、製造業でのDX実現に不可欠な人的資本を可視化する。あるいはきめ細やかに、かつ連動したスキル管理や人材の採用、教育、育成、配置策を実現していくことが重要です。

SAPは昨今大きくAI領域に投資していますが、その1つにスキル管理ソリューションが含まれています。これによってSkillnoteさんとSAPのソリューション群がシナジーを出して、企業の変革に寄与できると確信しています。

Skillnoteさんがもともと強みとしてきた製造業の現場向けのスキル管理と人材育成。そしてSAPの「SuccessFactors」が強みとしてきた人事部門における人材育成を融合することで、まさに製造業さんの抱える課題を解決できると考えています。

SAPの「SuccessFactors」との連携においては、製造業の人事領域での課題解決に寄与していますが、共同でプレスリリースさせていただいたインダストリー・クラウドの認定においては、製造業全般の課題解決をSkillnoteさんとご一緒にできると考えています。

SAPの「PEO」との連携で、設計・製造工程における人材活用の最大化やイノベーションの促進を今後も強く進めていきたいと思います。

製造業のスキル管理は日本だけの課題ではない

鈴木:製造業において同様の課題を抱えているお客さま向けに、SAPと川崎重工業さん、富士通さん、そしてSkillnoteさんで、新たなプラットフォームサービスに向けた協業の検討も始めています。これによって、業界全体でのイノベーションを一緒に推進していきたいと考えています。

また、日本のみならずグローバルの製造業のお客さまにとっても、スキル管理はとても大切な課題の1つです。そういったグローバルのお客さまにも、日本のスタートアップであるSkillnoteさんとのソリューションの連携メリットを享受していただきたいと思います。

山川:我々は製造業の現場のスキルには、これからも徹底的にこだわっていきたいと思いますし、SAPさんが力を入れられているAI領域や人事領域、あるいは生産領域のソリューションと我々の現場のスキルをかけ合わせることで、今後もお客さまに高い付加価値を提供できると思っています。

今、SAPさん、川崎重工さん、富士通さん、それからSkillnoteの4社による連携の取り組みを進めさせていただいているところですが、正直、すごくワクワクしています。

大手企業さんが活用されているSAPさんのソリューションを、もっとサプライチェーン全体で中堅・中小の企業さまも使えるようにする試みですので、産業にとっても大きな意義があると思いますし、ぜひ成功させたいですね。

鈴木:本当にワクワクしますよね。日本はものづくりの国で、数で言うと、99パーセントが中堅・中小企業さんです。そういった裾野にまで私どもがご提供する価値をお届けできるように連携していきたいと思います。

山川:製造業の強い日本発のソリューションをグローバルに広げられるといいなと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。

2社のパートナーシップだからできること

山川:我々Skillnoteは「スキル」を軸に日本の製造業を変革していきたいと考えています。これまで我々は多くの製造業さまをサポートすることで、ものづくり産業におけるスキルの体系と、どう運用するかも含む知見やノウハウを蓄積してきました。

なかなか他が真似できない領域かなと自負していますが、これを製品・サービスに反映して、多くの日本の製造業のリーディングカンパニーに利用いただいています。

SAPさんはいろんな産業をカバーされている中でも、製造業にすごく力を入れられているという認識を我々は持っています。我々はこれまで長く日本でやってきましたが、世界の隅々までサービスを提供されているSAPさんとパートナーシップを組むことで、世界の製造業の変革に一緒に取り組ませていただきたいと思います。

鈴木:ここまでお話してきた課題やテーマは、日本国内や日本企業に特化した話ではありません。日本を起点に、まずは日本企業のみなさまのグローバルレベルでのDX実現に向けて、私どもSAP、Skillnoteの活用ケースを展開していきたいと思います。

そして、アジアの企業や世界各国の企業に向けたDX実現に寄与するソリューションを、両社で目指していきたいと思います。

スキル管理は製造業に留まらず、あらゆる業種・業界で大きな課題です。まさにすべての業種・業態のDX実現に寄与できるソリューションだと思っていますし、ぜひ両社でそういうかたちに発展させていきたいと思います。

申し上げましたとおり、SAPは「SAP.iO」の枠組みでスタートアップ連携を進めていますが、その最たる成功事例が日本ではSkillnoteさんです。

パートナーエコシステムがかつてないほど重要になっていますが、両社のクラウドソリューションを通じてお客さまへ成功をお届けするために、今後もSkillnoteさんとのパートナーシップで、お客さまの変革推進アドバイザーとして、日本企業のさらなる成長をご支援してまいります。

山川さん、これからもどうぞよろしくお願いします。

山川:ぜひよろしくお願いいたします。

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