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職場環境優良法人日本一から学ぶ!組織・人づくりのヒント~ついついエンゲージメントが上がってしまう理由〜(全2記事)

給与や制度を整えても、あくまで“不満の防止”にしかならない 従業員エンゲージメントを高める「内発的動機」の重要性

2年連続で「職場環境優良法人1位」を受賞し、「ホワイト企業大賞」や「働きがいのある会社ランキング」にも選出された実績を持つGCストーリー株式会社。同社の取り組み事例をもとに、従業員のエンゲージメントを高める施策や組織づくりのポイントに迫ります。本記事では、社員のエンゲージメント向上には「内発的動機づけ」が重要な理由を語りました。

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組織だけでなく「個人」が成長することを目指して

大野拓氏(以下、大野拓):ここからは弊社の常務取締行の萩原から、これからの組織づくりについてお話しさせていただければと思っています。

萩原典子氏(以下、萩原):ここからは私からお話をさせていただきたいと思います。あらためまして、GCストーリーの萩原と申します。

2005年から、実の弟が社長で、私は常務として一緒にGCストーリーという会社を経営しています。この20年近くは文明ではなくて、文化づくりをたっぷり堪能してきた20年だったなと思っています。

先ほど、大野からご説明のあったビジョンに「収益・事業の発展と、幸せの組織づくり」と書いてあったんですが、両方を大事にしています。文化づくりをすごく大事にしてはいるものの、売上や利益もちゃんと見ていこうというビジョンを会社の中で浸透させています。

良い組織にしたいという思いはすごくあったので、いろいろなことをしながら20年掛けて、賞をいただいたりするようになってきたんです。賞をいただくことは本当にうれしいし、社員一人ひとりもうれしいのではないかなと思うんですが、今は賞よりも日々の会社の中で起こる出来事が本当に幸せで、ミラクルで、感謝の日々です。

GCストーリーにいることで、一人ひとりの人生が彩りが豊かになっていくのを感じられたり、幸せな組織だともちろん組織のパフォーマンスも上がっていくんですが、その中で個人も成長していくループができるようになったのがすごく幸せだなと、日々思っています。

組織づくりのカギは「どこまで当事者意識を持てるか」

萩原:でも、やはり組織は生もので、ちょっと怠るとけっこういろんなことが起こったりするんですよね。なので全員で意識しながら、日々良い組織づくりをがんばっている状況かなと思っています。

今日はGIFTに参加させていただきました。私は以前は大企業に勤めておりましたので、そこと比較すると、中小企業のベンチャーを立ち上げて良い組織を作っていく中で、大企業だとちょっと難しいよなと思う部分もあるんですよね。なので、今日はそこを中心にお話をしていきたいなと思っています。

時間も短くて、具体的に何をやったかは聞いていただいて一緒に考えていきたいので、キーワードを2つくらい持ってきました。

1つ目は、GCストーリーが組織づくりとしてすごく大事にしていることです。「大企業だと難しいんじゃないですかね」と思うのは、先ほど大野も言っていた「認識の範囲」というキーワードです。これをGCストーリーではすごく大事にしています。

要は「一人ひとりがどこまで当事者意識を持てるか」に近いと思います。例えば、自分のチームの中でミスが起こった時、認識の範囲が「自分」だけですと、自分とチームメンバーが分断されている状態なので、ミスが起こった人を責める判断にしかならないと思うんです。

大企業だとなかなか難しい“組織の自分ごと化”

萩原:認識の範囲が「チーム」メンバーまでいっている状態で、「一緒」「私たち」という捉え方ができている状態ですと、「チームメンバーと一緒にどうやってミスをカバーしていくか」といった認識になっていくと思うんですよね。なので、この「私たち」という認識がどこまで持てているかが、すごく重要だと思っています。

GCストーリーでは、これが「会社」なのは当たり前。メンバーには、それ以上の「社会」「人類」「宇宙」まで広げていきましょう、というメッセージングをしています。

全員が会社のことを自分のこととして捉えて、日々「どうしたら会社を良くできるんだろう」と考えて言動していくようになれば、会社が良くなるイメージがありますよね。だけれども、やはり大企業だとそこが難しいのかなと思います。

(認識範囲を)「会社」まで広げるのはなかなか難しいのかなというのが、まず1つ思ったことです。もちろん、GCストーリーにも新卒が毎年入ってきます。新卒が、入った途端に「会社」という認識で何か言動ができるかというと、すぐには無理ですよね。

それでも、入社する時に「うちは幸せな組織ではあるんですが、君が入社して(あなたを)幸せにしてくれる組織ではないですよ。あなたが自分のこと、そして周りのことを幸せにする組織だよ」と、ちゃんと理解をして入っていただいています。

「みんなで幸せを作っていく組織」ということが、会社全体としての認識で考えられていると思います。それで言うと、大企業だと「会社」まではなかなか難しいのかなと思っています。

ヒエラルキーがあるほど「認識の範囲」を広げるのは難しい

萩原:では、大企業の場合どうするのか。特にヒエラルキーがあればあるほど、自分の認識の範囲を広げていくのを阻むなぁと思うんですよね。「部長が考えること」「課長が考えること」みたいになっていくと思うので、難しいなと思うんです。

でも、先ほど大野が天国と地獄の絵の話をしていましたが、自分のチームだけでも、全員が認識の範囲を「自分のチーム」に捉えている状態ができるかどうかだと思うんですよね。

例えばみなさんがチームリーダーであれば、まずはチームリーダーとして、チームのメンバー全員が認識の範囲を「チーム」の部分に合わせていて、自分とチームメンバーを分断していない。全員を包含している状態になると、少なくともチームは天国の状態に持っていくことができると思うんですよね。

大企業なので、なかなか「会社」レベルでは難しいかもしれないんですが、まずは自分が手に負えるかから始めていくことになるのかなと思っていて。これは私がそう思ったという話なので、みなさんと(議論を)深めていけたらいいのかなと思います。

組織を変えていくうえで設計すべきポイント

萩原:もう1つ、大企業だと難しそうだなというキーワードがこれ(スライドの図)です。左上に「一貫性」と書きました。この図は、私が組織を改革するのを手伝わせていただく時に、組織改革の認識をしてもらうために「インテグラル理論の四象限」というものを使って作った図です。

縦軸が「個人」と「組織」、横軸が「内側」「外側」です。右上が「個人の行動」、左上が個人の心の中(「個人マインド」)、左下が組織全体の「関係性・文化」、右下が組織全体の「制度・しくみ」を表しています。

真ん中に「共通の価値観」とあるんですが、組織としてはミッション・ビジョンがあるので、それを中心に、この四象限すべてに一貫性があることをすごく大事にしています。

一番大事なのは「個人のマインド」から「個人の行動」のところです。あとで少しお話しようと思うんですが、もし組織を変えていこうとすると、自分たちの状態をちゃんと把握して、「個人の行動」がうまいこと変わっていくように設計することが必要になってきます。

例えば、人事関連のみなさんなら知っていると思うんですが、数年前にティール組織がすごく流行ったことがありましたよね。今の時代に合う組織としてティール組織が流行った時に、私のところには「GCストーリーさんってティール組織に近いですよね」というご相談をけっこういただきました。

「ティールじゃないよ」とGCストーリーは認識しているんですが、それでも「失敗しました」「うまくいかなくて本当に困っています」という相談をたくさんいただいたんですね。

不安を脅かすような制度下では組織改革は難しい

萩原:例えば「制度・しくみ」で言うと、自分たちの組織の状況を把握しないままに、ティール組織としてうまくいっている会社さんをそのまま真似して導入してみたらうまくいかなかった、みたいなことがあったりしました。

「給与を全公開してみましたが、みんなが辞めました」という相談があったりしました。それは、左上の「個人のマインド」で言うと、例えば他者との比較ですごく傷つくような人たちが揃っている組織でそんなことをやってしまうと、本当にみんなつらくなったりするんですよね。

なので、この四象限を特に大きく変えたい時には、そうは言っても少しずつレベルを合わせながら変えていく。その時に「共通の価値観」がすごく重要になってきますので、組織を変える時には、それがずれないように一緒に揃えていっています。なので「一貫性」が重要です。

大企業だと難しいのは、「制度・しくみ」が自分たちの手に負えないところで行われてしまうことかなと思っていて。例えばチームリーダーのみなさんが、まずは自分たちの認識を揃えて、「よし、みんなで良い組織を作っていこう」「自分たちの組織は心理的安全性が高い組織にしていこう」とがんばったとします。

でも、心理的安全性を潰すような、会社全体では評価制度が個人の不安を脅かすような制度になっていたりすると、いくら自分たちががんばっても難しいんじゃないかなと思います。

自分ごと化できていないと、会社を「遠いな」と感じてしまう

萩原:例えば、「女性の活躍を推進していこう」と会社が謳っているにもかかわらず、育児休暇などがちゃんと整っていないとか、女性に対しての評価制度がなんだか偏っているとか。

そんなことがあったりすると、「まずは自分たちのところでこぢんまりとがんばろう」といくら思っても、自分たちの手に負えないところがあるので、なかなか難しいのではないかなと思ったりします。

GCストーリーの場合は、すべてが一貫性がある内容です。かつ一人ひとりが「成長と貢献」という価値観に則った流れで、みんなで進んでいけるところが、組織がすごく強くなっている部分ではないかなと思っています。

「関係性・文化」の部分もやはりすごく難しくて。関係性や文化って、会社全体に知らないうちにできているというか。自分たちがいくら心理的安全性が高い組織を作ったとしても、それ以外の部分はそうなっていないから引っ張られる、ということも起こりがちかなとは思うんです。

それでも右下(制度・しくみ)の一貫性のなさと比べると、自分たちでなんとかできるところがあると思っています。

じゃあ、これはどうするの? という話なんですが、これもさっきの「認識の範囲」を見ていただいた時に、会社全体を「遠いな」という感覚があったと思うんです。そういったところで、「だから変えられないじゃん」「諦めよう」みたいになりがちな部分なのかなと思うんです。

ただ、最終的にはここにチャレンジしていただくのがいいのかなと思っていて。たぶん会社は美しいミッション・ビジョンを持っているはずで、そこに対してずれた制度・しくみがあるならば、ぜひ文句を言いに行き、「変えてやるぜ」という行動を取っていただくのがいいのかなと思います。

さっき岩波(直樹)さんが「僕は変態を増やしたいんだよね」とおっしゃっていましたが、そういった行動が取れる人が1人でも増えていくと、大企業の変化につながっていくのではないかなと思います。

それをやっている時点で、みなさんの認識の範囲は「会社」まで上がっている状態になってきて、それはそれでおもしろいのではないかなと思っています。なかなか難しいのは前提として、そう思ったりしました。

組織が変われば個人の言動も変わる

萩原:最初にお話ししたとおり、大企業だと難しいかなと思うキーワードは「認識の範囲」と「一貫性」の部分ですが、もう1つ、GCストーリーとしてすごく大事にしているキーワードをせっかくなのでお伝えしておくと、「内発的動機付け」はとてもとても重要だと考えています。

例えばこの四象限に対しても、「個人のマインド」に対しては1on1で自己認知力を高めるようなフィードバックをしたり。組織づくりで言うと、心理的安全性の知識・スキルをリーダーが持つのはそうですし、組織としてワークショップなりいろいろやらせていただいて、取り組みとしては本当にすごくいろんなことをやっています。

気になるところはあとで聞いていただければいいかなと思いますが、キーワードとしては「内発的動機付け」を大事にして、いろいろなところを設計しています。

組織が変わるということは、この中で言うと個人の言動が変わっていくことになるので、(図の)右上のところが変わってきます。例えば組織で毎日遅刻してくるメンバーがいた時に、制度・しくみとして「明日から遅刻したら1万円な」と言われたら、(遅刻せずに)来るかもしれないですよね。

来るかもしれないけれども、やはり本人の中身は何も変わっていないので、罰や外発的な動機付けで行動を変えたとしても、あまり意味がないと思っていて。内発的な動機付けでその人の行動が変わるような促しができる組織づくりを、いろいろと仕掛けながらやっています。

「外発的要因」だけを整えても不十分

萩原:(スライドのグラフは)もしかするとご存じの方はいらっしゃらないかもしれないんですが、ハーズバーグの二要因理論です。エンゲージメントに関して言うと、たまたま上がってしまう(ケースもある)。

弊社はエンゲージメントに関して、「どうやってエンゲージメントを上げよう」とは、あまり考えてきていなかったんです。けれども、今回GIFTでお話させていただく中で、何がエンゲージメントが高まっている要因なのかな? と考えた時のキーワードが「内発的動機付け」だなと思っています。

この研究でいうと、ワークエンゲージメントが上がる理由は「達成」です。仕事をして何かを達成できたとか、それが認められたとか、責任の重い仕事を受けてがんばれたとか、本人の内発的なものによってワークエンゲージメントは上がるという研究結果が出ている。

ワークエンゲージメントを下げる要因もあるんですが、それは制度や給与、外発的なものです。ただ、上げる要因にはなり得ないんですよね。

外発的要因を整えても、不満を防止することはできるけど内発的要因ではないので、ワークエンゲージメントという意味では上がってこない。なので、内発的な動機付けはエンゲージメントとすごく関係があるんだろうなと、我々も把握しています。

組織は“生もの”だから、腐らないように継続が必要

萩原:そして(次のスライドの)図に関して言うと、内発的な動機付けも含めて、私たちが組織を作っていく中で大事にしている4つのキーワードです。

先ほど大野からも出ていましたが、「関係性の質」「自律度」「存在意義の共感度」が高いことによる、「幸福度の高さ」。組織として、これらをいつも高めておくことは気に掛けております。

右側に、ダニエル(・キム)さんの「成功の循環モデル」という有名なフレームワークもありますが、一番最初に関係の質が高くない状態ですと、組織が良くならないというのは私たちも同じ考えです。

例えば、主体的に「これをやりたいぞ」と思っても、「そんなことをやっても意味がないじゃん」と周りの人に言われるようでは自律度は高まっていかないので、関係性の質を高めていくことはとても大事にしています。これらを毎年チェックしながら組織づくりをやっています。

ここまでお話してきた中で、先ほど言ったように4つのカテゴリ(幸福度、関係性、自律度、存在意義)を見ながら、GCストーリーは本当にいろんな施策をしています。

この4つの項目に関しては、半年に1度チェックをしています。社内で作っているチームインサイトという仕組みがあるんですが、それでチェックをしていて、ここ数年は本当に高い結果が出ています。

それを元にもっと一人ひとりの成長支援も行いながら、先ほど言ったように組織は“生もの”ですのでそれが腐らないように、組織づくりをきちんとし続けられているのがいいのかなと思っています。

ということで、駆け足でここまでお話ししてきました。GCストーリーは本当にいろんなことをやっているんですが、この場ですべてお話するのは無理なので、いったんここまでとさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

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