2024.10.10
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カリフォルニア工科大学 卒業式 2012 イーロン・マスク(全1記事)
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イーロン・マスク氏:何が未来にとって最も有用なのかについて話すとしたら、まずどのようにして私がこの場に立つことになったのか、どのようにして物事が起こりうるのか、そこからどのような学びがあるか、などを話していきたいと思います。
大人になったら何をするのか、若い頃に人に聞かれ続けましたがわかりませんでした。でも何か発明することはかっこいい、クールなことだと思っていました。
そう考えた理由は、アーサー・クラーク(SF作家)の言葉を引用すると「進んだテクノロジーと魔法の間に違いはない」からです。
この言葉は真実です。私たちが今日、当然と思っていることを300年前の昔にできれば、魔女として火あぶりの刑になったことでしょう。
空を飛ぶこと、遠くにあるものを見たり、インターネットを使って遠くにいる人やグループと有効的にコミュニケーションをとったり、地球のあらゆる地点からどんな情報にもアクセスすること。
これらは昔ならまるで魔法のようなことだったのです。今日当然なことが、昔は想像すらできなかった魔法以上のことでした。
私が今この時代に、想像もできないようなことのいくつかでも成しえることができれば、それは魔法のようでかっこよく思えたのです。
また私は生命の意義を追求しており、目的、価値、万物の存在の意味、物事の目的を理解することに注力してきました。世界の知識を進化させることができれば、意識の範囲や規模を拡大することができます。
そうすれば、世界や人類はより的確な質問ができるようになり、さらに啓発されるのです。それが前へと進むための道です。
私はどのように物事や万物が機能するのか、経済がどのように動くのかを理解するために物理とビジネスを学びました。そして何かを成すためにどのように人をまとめていくのかを学びました。
1人で物事を成し遂げるのは、重要な技術分野では簡単なことではないからです。
その後、電気自動車のエネルギー密度をどのように改良するかを学ぶため、カリフォルニアに来ました。電池の代替品としての可能性を探るためです。1995年のことでした。インターネットもこのころ勃興しました。
成功だけが成果だけではない、このどちらの技術も追求することができました。またインターネット業界に参入することもできました。そこで、私は大学を中退することにしました。
このセレモニーは卒業をしたみなさんのためのものですので、中退することはお勧めできませんが……。
(会場笑)
さて、インターネットの話に戻りますが、まあいろいろありまして、そのうちの1つがPaypalでした。Paypal創設のポイントは、とにかく始めることが大変だったということです。
当初の計画では、すべてのファイナンスサービスを境界無しに1か所に統合し、スムーズに機能するインターネットサービスのコングロマリット(複合企業)を目指していました。そのうちの機能の1つが電子メール支払いです。
毎回誰かに、何かしらのシステムを見せるたびに、複雑で難しい部分を見せました。様々なことが1つに集約されたファイナンス・コングロマリットだったのですが、誰も興味を示しませんでした。
電子メールで支払いをするというアイデアを見せることは簡単です。誰もが(そのシンプルなアイデアに)興味を持つからです。対象とする顧客からのフィードバックを得ることは重要です。そのフィードバックをなるべく活かせるようにしましょう。
私たちは電子メール支払いサービスに集中し、それが機能するよう努力し、これを実現しました。もし私たちが人々の反応に対処しなければ、これほど成功はしなかったでしょう。初期の計画や道筋から、必要であれば軌道修正をすることは大切です。
Paypalの次に、どのような問題が人類の未来を変えるかというと、どの方法がお金を一番生み出すかという順位ではありません。まあ、お金を生み出すことは悪いことではないのですが、何が人類に一番影響するのか、ということです。
地上における最大の問題は、持続するエネルギーに関することであり、生産、消費も含めて包括的に考えないと、今世紀中に私たちは行き詰ってしまします。このままでは、地上の生物の絶滅を引き起こしてしまいます。
私たちはいくつかの惑星上において生命の維持が必要です。この考えがSpace X、テスラ、ソーラーシティ設立の基礎となっています。
初めてSpace Xを立ち上げたとき、1人で会社を設立することは考えていませんでした。そこまで馬鹿ではありませんでした。
しかしどのようにNASAの予算を増額するかという最初の目的を考えたときに、乾燥させた養分ジェルを火星着陸の際に水分を戻す低予算の『マースオアシス』(Mars Oasis)を発案し、「赤い大地に緑の植物を」という売り文句を考えたりしました。
(会場笑)
火星上での初の生命体発見や、初めての惑星間旅行に大衆は最上の反応を見せ、興奮し、それがNASAの予算増額につながります。
もちろん、このような火星訪問、または宇宙旅行からの財政的な成果はおそらくゼロでしょう。科学技術が進んだということぐらいでしょう。
私は、改装したICBMロケットを見にロシアに3回行きました。それが一番安い方法だったからです。
(会場笑)
2001年、2002年とロシアに行き、ロケットを2つ買いたいと言ったのは自分でもおかしな感じでした。「ロケットは買うけど、原子爆弾はそちらで持っててもらっていいよ」という感じで。
(会場笑)
10年前のことです。ロシアの人々は、私の頭がおかしいと思ったようですが、私には資金がありまいたのでなんとかなりました。
ロシアに何度か行ってみて、自分の最初の印象が間違っていると気づきました。以前は地球外の探検をしたり火星に基地を持つ、といった意志を持つ人々は存在しないと思っていました。
しかしそれは間違いで、そのような意志は多く存在しました。とくにここ米国は、探検家気質の国民です。みな別の世界からここに移民としてやって来た人々です。
米国は、人間の探検精神の選りすぐりの国です。しかし、人々が宇宙旅行などそんなことできないと思えば、連邦予算は下りませんし、誰も実行しようとしません。
ロシアへの3回目の渡航での結論は、宇宙への運送問題を解決しなくてはならないということでした。こうしてSpace Xは始まりました。
この話を聞かせた、友人たちのほとんど全てがSpace X計画に反対しました。ある友達は、ロケットが爆発する動画ばかりを私に見せました。まあ、彼はそれほど間違いではなかったわけですが。
(会場笑)
私は子供のころ、モデルロケットを作った以外に物理的なものを作ったことがなかったので、大変でした。何か物理的なものを製作した会社を所有したこともありませんでした。
これらすべてのことをどのようにして1つにまとめ上げるか、それを成しえるのにふさわしい人々のチームかどうかを見極めなければなりませんでした。出来ることはすべて行い、3回失敗しました。
みなさんは、ロケットの及第点は100%と考えます。実際に打ち上げる環境で、ロケットのテストはしません。
複雑で小さな一部のソフトウエアの製作に例えると、その小さなソフトウエアを全体のシステムに統合し、それをコンピュータ上でテスト無しに起動させることはできません。
ロケットエンジニアリングの最適な類推法とは、初めてすべて組み立てたものを、バグなしでコンピュータ上で起動させるようなものです。これがロケット打ち上げの基本的な本質です。
その重要な段階を私たちは見逃しました。最初の発射では、発射基地の近くでロケットの破片を拾う結果となりました。私たちは各発射と飛行の経験から学び、2008年、4回目の飛行でついに軌道に到達することができました。
またこの時が、持ち合わせた最後の資金でした。この実現は本当にありがたいことでした。
軌道に乗せるためFalcon 1から取り掛かり、推進力の大きさの規格外、ほぼ100万ポンド(45万3,592キロ)の推進力を持つFalcon 9までスケールアップしました。
軌道上へ乗せる管理を経て、ドラゴンスペースクラフトを開発し、このスペースクラフトは、最近スペースステーションにドッキング後、無事に地球に帰還しました。
これは手に汗握る出来事で、成功したことにとても安心しました。いまだにこの実現が信じられないくらいです。
(会場拍手)
しかし、人類が大気圏外へ旅行をし、文明が惑星間で定着するには、まだ多くのことをしなければなりません。これは私たちの生命に関わる重要なことです。
私はあなたがたのうち誰かがSpaceXやその他の企業に参加することを願います。なぜならこうした地球圏外へ探検しようとする意識、自覚の維持と拡張が最も大切なことだからです。
地球は40億年以上存在し続け、記録上の文明の歴史は約1万年ほどあります。地球上の文明と意識と自覚は、まだ弱々しい存在です。
しかし私は、未来に関して楽観的です。みなすべて死に絶えてしまうと私が考えているという間違った印象を人々に持ってもらいたくはありません。
私は、地球はこれから長きにわたり、ほぼ大丈夫だと考えています。確実ではありませんが、そうなるでしょう。しかし99%大丈夫でも1%の努力を生物圏の予備の確保に費やすことには、価値があります。
これを成し遂げるためには、突破口が必要です。火星への急速で、再生可能な移送システムを作り出すことが、不可能と可能の間のボーダーライン判定の1つです。それは、私たちがSpaceXを使って実現しようとしていることです。
テスラにおいては、電気自動車ができることを人々に示すことが目標です。なぜなら人々は電気自動車に対して間違った印象を持っていたからです。
人々が持つ、遅くてカッコ悪い、短い距離しか走らないゴルフカートのようなものという電気自動車に対する認識を変える必要がありました。
そのため私たちは、速く走れて魅力的で長い距離を走る、テスラ・ロードスター(スポーツカータイプの電気自動車)を作りました。
紙の上で理論や計算が正しいことを見せることはできますが、物理的に動くものを人々に見せない限り、人々に実感は湧きません。もし会社を設立するなら、まず初めに動くプロトタイプを作って見せることです。
パワーポイント上ではなんでも素晴らしいものに見えてしまうでしょう。なんでもできるようにパワーポイント上では見せることができます。
(会場笑)
原始的な形のものでさえ、実際に動くプロトタイプは人々を納得させるために必要です。
テスラ・ロードスターを作ったあと、人から「ああ、君がそのような車を作れると知っていたよ。値段が高くて、小さくて。でも『本物の車』は作れるのかい?」とよく聞かれました。
「いいよ、それも作ろうじゃないか」と私は返答し、それがもうすぐ完成します。
私のこれまでの話から、何か学びがあれば良いなと思います。しかし私がこの場で強調したい包括的なポイントとは、みなさんは、21世紀の魔法使いだということです。
何事もみなさんを引き留めさせてはいけません。想像には限界がありますが、想像を越えて魔法を作り出してください。
ありがとうございました。
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