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Not afraid(全1記事)

日本の学校でITが使われないのはなぜ? 創造性重視のアメリカの教育と比較してみた

Life is Tech !が主催する教育とテクノロジーの祭典「Edu×Tech Fes 2013」において行われた、当時中学生でアプリ開発者の角南萌さんによるスピーチ。自身が経験したアメリカのITを活用した対話型の教育カリキュラムを紹介し、記憶中心の日本の学校教育に疑問を呈します。また、日本の教育は受験がゴールとなり、一人ひとりの自主性を無視していると指摘し「テクノロジーの導入と同時に、授業や試験の形そのものも改革しなければ意味がない」と、教育改革を訴えました。(Edu×Tech Fes 2013)

「見えるプレゼンタイマー」開発のキッカケは、学校のディベート大会

角南萌氏:こんにちは。角南萌です。今日は、私がどうやってテクノロジーの世界に興味を持ったか。また、ニューヨークでの経験をベースに日本とアメリカの教育の違いについて、私が感じたことをお話しようと思います。でも、その前に知らない人のために、私のアプリ「見えるプレゼンタイマー」についてちょっとお話をしたいと思います。

去年の今頃、学校でディベートの大会がありました。そのとき痛感したのは、人前でしゃべるには時間配分がとても重要ということです。せっかくのプレゼンもタイムマネージメントができないと台無しになってしまいます。

それでApp Storeで何かないか探したんですけど、普通の数字のタイマーしかありませんでした。

私はもっと見やすい、プレゼンの時間配分が一目で分るタイマーが欲しかったんです。

最初に浮かんだアイデアがだんだん具体的になって、

機能を工夫しながらプログラミングをしているうちに実際にアプリになって、「見えるプレゼンタイマー」が出来上がりました。

嬉しいことに世界中でなんと40,000人もの人が使ってくれています。日本はもちろん海外からもフィードバックを貰っています。このアプリのコンセプトに共感してくださる声が多くて本当に励みになっています。

でも1番の感動は、やっぱり自分のアイデアが形になって、本当のiPhoneアプリとして自分や友達のiPhoneに入っていることです。このアプリは春頃からゴールデンウイークや夏休みに集中して作りました。

でも実はそれ以前からテクノロジーの教育を受ける機会があって、そのおかげでこうして自分のアイデアを形にすることができたんだと思います。とはいっても、「デジタルネイティブ」と言うほど、生まれつきデジタルに触れていたかと言うとそうではなく。私は小さい頃は結構アナログな子どもだったなあと思っています。

「10歳で専用のiMacをもらった」海外の学校教育におけるIT活用

私が生まれたのは1998年で、このカラフルなiMacが発売された年です。

家にもこれがあったんですが、小さい頃はあまり触らせてもらえませんでした。そんな私の生活にコンピュータが入ってきたのは小学校2年のときです。父親の転勤で海外に引越してインターナショナルスクールに入学しました。

そこではアメリカのカリキュラムでタイピングを習ったり、オンラインで宿題をするようになりました。それで両親も、勉強ならしかたがないということで、家のパソコンが解禁になりました。

これは当時ESLで使っていたリーディングのオンラインプログラムです。

少しずつ難しくなっていく英語の本をナレーションの発音に合わせて読むことで、すぐ英語の本が読めるようになりました。

そして、3年生になると友達との遊びにもコンピュータが入ってくるようになりました。友達の間でWebサイトを作るのが流行っていて、私もすぐに夢中になりました。

好きな写真をアップして私だけのコンテンツを作るのが、とてもおもしろかったんです。そして小学校4年で、今度はアメリカのニューヨークに転勤になりました。

10歳の誕生日にiMac。そしてクリスマスにiPhoneを両親からプレゼントされました。

これのおかげで前の学校の友達との連絡も、チャットやFacebookも簡単にできるようになりました。そして友達との遊びでもiMacでオリジナルのミュージックビデオを作ったりと大活躍でした。

そして、小6の時ニューヨークの私の学校でLaptop Integration Programが導入されました。6年生になると生徒全員にMacBook Proが配られるんです。みんなこのときをずっと楽しみにしていました。

生徒には学校ドメインのメールアドレスが割り当てられ、宿題や学校からの連絡のほとんどが、学校のWebサイトを通じてできるようになりました。また質問があれば先生に直接メールしてサポートを受けることができ、その際、先生にメールするときのマナーもきちんと教えてもらいました。

また学校にテクノロジー専用のヘルプデスクがあってエラーやトラブルがあるとすぐに相談にのってもらえるんです。もちろん校内にはWi-Fiが完備されていました。

ITはコンピュータ以外の授業にも、すべての教科で活用されました。例えば、理科や社会のプロジェクトではiMovieやPhotoshopなどのソフトも活用しました。オンラインの資料も豊富に用意されていて、例えばオンラインのブリタニカの百科事典や専門の研究機関の有料のリソースなども学校のアカウントでリサーチなどに利用することができました。

ITのリスクから逃げず、向き合い対応する力を育むプログラム

それから生徒がトラブルに巻き込まれないよう、ネットを使うときの注意点も細かく指導されました。学校ではCyber Bullying、つまりネット上のいじめ問題についてのビデオをつくりました。学校ではフィルタリングをかけるのではなく、生徒の判断力と責任感を養うことが重視されていました。

私のニューヨークの学校は女学校で、どちらかというと保守的な学校だったのでITの導入には慎重な意見もあったそうです。でもITのリスクから逃げるのではなく、リスクにも正面から向き合い対応する力をつけるという発想の転換があったそうです。

実際にこの学校でこのプログラムは、とても上手くいっていたと思います。

コンピュータは私にとって、友達とつながり情報交換する、創造する道具になりました。ITは自分のアイデアを表現するために欠かせないツールなんです。

そのうち、コンピュータを使ってもっと自由に創造したいという思いが生まれました。

そんな時Facebookの初期を描いた『ソーシャルネットワーク』という映画を観たんです。

一見なんの脈略もない文字や記号の羅列が、1つのプログラムとなって数億人の人を結びつけるパワーを持つことに感動し、私もやってみたいと思いました。

それから、アメリカのITキャンプに参加したりiTunes Uの授業を通じてプログラミングを実際学び始めたんです。

日本の学校教育はゴールが受験、アイデアや創造性を無視している

お話してきたようにニューヨークでは、コンピュータはどの教科にも不可欠なツールになりました。なので帰国して編入した日本の学校はカルチャーショックでした。日本の学校では、コンピュータは勉強に必要がないのです。

なぜなら日本の勉強は記憶に重点が置かれていて、先生が黒板に書いたことをノートに写して、それを暗記してテストするというやり方だからです。一人ひとりのアイデアや創造性は無視されているんです。

アメリカの学校ではリサーチしたり、考えたり、議論してプロジェクトをまとめるクリエイティビティが求められます。そのためにITが効果的に生かされています。授業のスタイルも先生が一方的に情報を伝えるようなものではなく、教室は生徒同士や先生との対話や協力する場です。

そこでは私自身が主役であり、自分がやりたいこと、知りたいことを勉強していると感じることができます。例えば、私が今通っているアメリカンスクールのLanguage Arts、つまり国語の時間では一人ひとりの文章の解釈分析をクラウド上で共有し、お互いにフィードバックを掛け合っています。

一方日本の学校では黒板に先生が書いた解釈をノートに書き写し、テストのために暗記するというスタイルでした。この違いの1番の理由は、日本ではみんなの関心が試験や大学受験に集中していることです。

その大学入試がペーパーテストだけで行われるので、良い結果を出すためには紙と鉛筆で暗記や計算に明け暮れるしかないということです。だから、日本の学校では想像力や表現力は後回しで、ITは教室では歓迎されない存在なのです。

ITはアイデアを形にする道具

でも、日本の中高生もいつかは学校を出て、世界に出て、世界の人と情報やアイデアを交換し合って新しいものを創り出すことが求められるのではないでしょうか? そのときITを使いこなせなくて、果たして自立した大人になれるでしょうか?

ITはアイデアを形にする道具です。子どもなら誰でも持っているクリエイティブな発想や可能性を広げてくれるとてもためになるツールです。ITを使うか使わないか迷っている余裕はありません。答えは分っていると思います。

でも、日本の学校が受験のための暗記学習に力点を置いている限り、ITが教室に入り込む余地はないでしょう。

テクノロジーの導入と同時に、授業や試験の形そのものも改革しなければ意味がないと思います。

私が理想だと思うのは、テクノロジーを学んで終わりではなくて、テクノロジーをツールとし、興味があることを勉強したり、新しいことを創り出したりする教育です。テクノロジーを怖れず使って、それから先にある教育が大事だと思います。

ITから始まる新しい教育で変わることを怖れずにチャレンジしましょう。

最後まで聴いて下さって、どうもありがとうございました。

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