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本田宗一郎が怒っている(全5記事)

「国民よ、怒れ!」 本田宗一郎氏がボロクソ批判した、政府のムダな支出あれこれ

一代にして世界的大企業ホンダを創りあげた、戦後日本を代表する経営者・本田宗一郎氏。1982年に行われた講演会で同氏は、当時問題となっていた都心部の渋滞問題や成田空港問題などを例に「政府は金の使い方が下手くそ」と痛烈に批判。国民はもっと声をあげるべきだ、と語りかけた。

政府は金の使い方が下手くそ

本田宗一郎氏:私も年寄りです。年寄りは年寄るほど、いろいろな問題がある。それをやはり国自体が面倒を見ていただく。そのために今、行革をやる。

私たちはまだいいにしても孫、子のほうが私は可愛いんです。皆さんだってそうでしょう。孫、子を持ってるお年寄りの方々。自分もそうだけど子どもも可愛い。その子どもがお年寄りになって、もし(補助等が)出なくなったらどうなりますか、これ。もしそれを無理して出したら、働いてる人に働きがいがありますか。

国の名前はちょっとウチの商売の関係がありますので、はっきり言うことは憚らせていただきたいんですが、個人的で申し訳ないけど、そういう国がいっぱいあるんです。給料の半分は国の税金で持っていかれてしまう。こんなことがザラです。

それでいいんですか? 若い人はこれから大丈夫ですか? お年寄りの方も大丈夫ですか? 政府がしっかりしてもらって、今のうちに借金を返す。本当なら、各家庭で皆さんがお持ちになってるような預金をしていただきたいと、国に要求をしたいわけでございます。

余裕ある社会づくり、これが本当の国のやるべきこと。それができなければ、国はつぶれてしまう。つぶれてしまって領地がなくなるわけじゃない。(しかし)国としてやらなければならないものを切ってしまうということに相成るわけでございます。ですから、ここが分かれ道で一番大事な時期でございます。どうかそういう点をひとつご納得いただきまして、ぜひやっていただきたい。

それじゃあ、どういうところに金を使ってどんなことをやってるんだろう。政府は金の使い方が悪いんですよ。下手くそなんですよ。自分の懐から出した金のようにケチケチってわけでもないけれど、とにかく人の金だと思って使わんようにすること。もし使っても、合理的にいつどこで誰が見て考えても「これなら当たり前だ」というような金の使い方をしていただきたいんです。

(会場拍手)

このことだけお願いできさえすれば、皆さん安心ですよ。これは、社会保障を国民が全部していただいたのと同じことになるわけです。今社会保障してもらったって、これは先が危ないですね。すぐってわけでもない。すぐならみんな気が付くんですね。我々は企業をやっていて、すぐなら気が付くんです。だんだん衰微していって、気が付いたときにはもう手遅れだっていうんじゃ困っちゃうね。

成田空港の問題について

あの成田の空港、皆さんどう思います。ものすごい日にちがかかってるんですね。そしてあれだけの人たちが、日本中、世界のニュースになるような、良いほうのニュースならいいけど悪いほうのニュースになるような、あの開発の仕方。

どうです、世界一高いですよ、僕が調べてみたら。世界一高い飛行場で、世界一小さな飛行場で、世界一だらしのない空港ですね。北向きの風に対する着陸の滑走路がない。そういうふうな、まず空港としては欠陥空港だね。

あれを作るときに、若い人たちとのいろいろなトラブルがあった。あれは若い人たちが悪いんだとばかりは言えないです。あんなところになぜ作ったということなんです。まだ日本にはいくらでもあります。羽田沖だって何だってある。

あのとき(元東京都知事の)美濃部(亮吉)さんが反対してどうだこうだって言ったけれど、人間っていうのは話をして、大衆が、みんなが賛成するんだったらどうしてもやらなきゃならん。それが政治というものなんです。

そしてあの小さな飛行場を作り……あれだけの世界一の騒ぎをして、世界一都心から遠い飛行場。何回世界一が付くんだね、こりゃあ。まだあるまだある、いくらでもある。……これは夜店じゃないけどね。

(会場笑)

何がって言ったら、水か何かで飛行機ってものが走るつもりでいたらしいな。結局ガソリンのパイプを忘れちゃったんだ。油のパイプを忘れる。今度は飛行場に行く道がないんですね。どうです。ハワイに行く時間くらい、都内でかかっちゃうんです。

ここから東京に出て、成田に行ってごらんなさい。ハワイに行ける時間ですよ。フォローウインドのとき、いわゆる後ろから風が吹いてきたときだったら、4時間から5時間でハワイに行っちゃうんですからね。そうすると都内のほうが時間かかって、飛行機に乗ってる時間が短いんだな、これ。こういうザマですね。

国民は政府に怒らなきゃダメだ

この頃、やっとこ海岸線(の開発)ができた。実はあそこにヘリコプターの基地(東京ヘリポート)がございますので、私はそこを降りて、自動車で家に帰ろうとした。その基地から箱崎に出るまで、2時間かかっちゃう。どういうことなんですか。もう(箱崎は)目に見えるところにあるんですよ。そういうふうな道の作り方。

これはどうですか。皆さん、無駄金とは思いませんか。それで箱崎がどうだっていうと、千葉方面。今度は茨城から来る常磐道がそこに入る。東北道がまたそれに入る。今だって(渋滞で)どうにもならんっていうのに、どうするんでしょうね。もう投げやりでどうにでもなれっていう格好で、放ったらかしたんだね。

こういう無駄金を使い、我々にくだらない無駄な時間をくれているわけです。どうですか、これ。千葉にコンビナートを作った。製鉄所を作った。道路は作らないんです。

こちらのほう(埼玉県本庄市)におられたって、やっと新しい道路ができたようですが、こちらのことは私はよく知りませんが、こういうふうにとにかくチグハグなんですね。そして12月、我々が1年で一番忙しい時期に……いわゆる税金の稼ぎ手ですよ、我々は。皆さんとともに。ほうぼう掘っちゃってその邪魔をして、税金が納まるかいね、こりゃあ!

(会場拍手)

(机を叩いて)どうして邪魔をするんだろう! 税金を出さなきゃ文句言ってる人が、税金を納められんようなことばっかり僕らにさせてるじゃないか。これで怒らんかったらどうかしてるよ! 国民、怒れ怒れ!

(会場拍手)

怒らなきゃダメだ、怒らなきゃ! これからはみんなしてカンカンに怒って、放り出さなきゃいけんよ、政府を。僕はつくづくそう思うなあ。僕がこうやって怒ってるのは何かって、12月のあの(工事を)始めるってんで、2時間でも3時間でもひとところで待たなきゃならん。みんな忙しいってのに大変なことだ。

我々のこと考えてくれてるのかな、これ。全然考えてねえじゃねえか。そういうこと、目に見えることまでだって考えていない政府が、心の中は国民がどう思ってるかなんて考えてくれるわけがないぞ! そんなものみんな期待しちゃダメだよ。

(会場拍手)

お上は放っておくと威張る

期待しないってことは、みんなして怒って、政府に詰め寄って、改革してもらうよりしょうがないね、こりゃあ。こういうふうな金の使い方が、僕たちは朝早くから夜遅くまで一生懸命働いて、ウチの若い連中とも私は……今はほとんどやらないけどね、クビになっちゃったから。

まあウチの若い連中と真っ黒くなって働いて、そしてこういうしっぺ返しを食ったんじゃどうにも承知が悪いなあ。どうか皆さん、そういうふうな意味で、私は二宮尊徳の旗幟というんじゃないんです。やることを当たり前にやっていただきたい。我々国民もやることは当たり前にやるんだから、当たり前に政治をやってもらいたいと思うんです。

そういう感覚、今まではお上という感覚で我々はものを見ておった。そうじゃない。我々のいわゆる行政官、行政をやってくれる人であるということで、もっと国民が……昔の侍も放っておくと威張っちゃってね、二本差しで威張って歩くようになっちゃうんだよ。そうさせんためにも、みんなして一生懸命に国に対抗しなきゃならんと思うわけでございます。

それからもうひとつ……言いたかったことが山ほどあるね。今夜一晩しゃべり続けたって言うことあるよ。

(会場笑)

私がこれから一番やらなきゃならんと思うものが、今言った行政改革。我々が、政府に謝ることを教えなきゃならんね。私たちは、何かものをやって壊れて失敗したときには謝りますよね、皆さん。どうです。国民がみんな謝ってるんですよ。

ひとつ事故を起こしたって、警察に行って謝るとか、被害者に謝るとか、みんな謝ることによってお互いの心を和らげてる。そしてお付き合いして仲良くして、集団としてやっていく。

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