2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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リード・ホフマン氏(以下、リード):ここで質問に答えたいと思います。鍵であった創業者のマインドセットについて受け付けましょう。
生徒:どうやって自分の投資計画を補強するのかについて非常に興味があります。あらゆるスタートアップが、まさに同じ問題に直面していると思うからです。
リード:本当に重要なこととして、プロダクトの流通が鍵になると思います。
LinkedInについては、幾つかのことが重なっていました。ひとつは、2003年ごろ、ウェブは退屈でした。誰もがCGMが終わってしまったと思っていました人々はタグを綺麗にしたり、企業アプリケーションを開発したりしていました。今は状況が難しくなっています。なぜならみんながインターネットやモバイルはおもしろいと思っているからです。ノイズの中を切り抜けるというのは鍵ですね。
だから私たちの戦略は上手くいきませんでした。私たちは人々に招待を送って、仕組みを整え、PRをはじめました。初期に私たちがした正しい決断のひとつは、招待なしのサインアップを許可したことです。なぜならこのサービスについてとても熱心な人が知り合いである必要はない、だからサインアップして拡げてくれるだろうからです。
今はプロダクトの流通をめぐってさらなる困難があります。潜在的な顧客やメンバーに対して、他の競合するサービスと比べて自分のサービスを信じて時間を使ってもらうようにしなくてはいけないからです。
2003年当時は、専門家のネットワークというのはいいアイディアで、いずれにしてもそれで行こうと思わせることができました。他に見るものがなかったからです。今日では、競合は山ほどあります。そのため今日の戦略は、プロダクトの流通に関して言えば、競合との差になる最も鋭い部分はなんだろう? 他の人が知らなくて、自分が知っていることはなんだろう?ということです。
生徒:誰かがあなたに会いにきたとき、どうやってその人が創業者に向いているかわかるのでしょう?
リード:どうしたらその人がいい創業者かどうかわかるか、ということですね? 基本的に私は他の人の紹介や推薦を非常に信じて紹介でしか会いません。いつも次のミーティングに出るために行かなくてはならなくなってしまうからです。だから私の興味を引いて時間を取ろうと思ったら、紹介してくれる人を探してください。
LinkedInを使ってもダメです、例えばやあサム、と言ってサムを持ち上げてバスの下に投げ入れたり……。
(会場笑)
私は紹介によって投資を決める事もあります。例えば、私がAirBnBの人たちに会ったときのことです。私が彼らのところに行って2分間で投資を決めました。私が、AirBnBはとても素晴らしいと思う、ということが出来たのは、あらかじめ紹介を受け彼らのことを知っていたからです。人脈が重要な鍵になっているということです。
生徒:テーマを見つけ出したり、その通りに実行したりするために見識は必要か? 簡潔な文で物事を説明できるような。
リード:筋道を立てて、目標が何なのかを明確にできるような能力は必要だと思います。海を沸かしたり、スイスアーミーナイフ的なことではなく、これこそが解決すべき問題なのだとはっきり言えるような、ものごとを高いレベルで明確にする力がないと、人脈を築くことが難しくなり投資家も従業員も得られません。常にやろうとしているミッションがなんなのか明確にできる必要があります。
いい方法で問題を分析する創業者に私は惹かれますが、素晴らしい創業者の中にはいい分析を披露する代わりに、自分が何をやっているのかについて優れた直感を持っている場合があります。自分がどこに向かって、何が起きているのかというような。
生徒:LinkedInは5年間ほど元になったサービスに比べユーザー数が半分以下という困難をどうやってのりこえたのですか?
リード:LinkedInが通ってきた道の中で、私がどのようにして方針を保ってきたかということですね。覚えている人もいるかもしれませんが、私たちはFriendster、それからMySpace、そしてFacebookの下位互換であるように扱われてきました。大きな素晴らしい巨人の隣にいる小さな存在だと毎度思われてきたのです。
私はLinkedInについて考えていたことは、投資計画をひとつのメカニズムとして考えるというところに戻ります。私は個人と組織の生活のための正しい経済システムの設計が、開かれた専門家のプロフィールだと信じ続けてきました。その世界が、本来あるべき世界だと。それがあったほうが誰もがよりよく生活できる。
私たちは誰よりもそれに近づきました。それは私が望むほど速くはなかったかもしれません。2003年の夏と秋に、私たちはビジネス用Friendsterですと言ってニュースになったわけですが、プライベート用でなくビジネス用なら参加しよう、ということで登録したユーザーが沢山いました。人々に関心を持ってもらうためには、こうしたことは重要でした。
私は未だに、LinkedInはこの世界に存在すべきだし、我々以上に近い存在はないという自信を持っています。達成するためには思った以上に時間がかかるのかもしれませんが、それはそれでいいと考えましょう。
リード:サム君。どうぞ。
サム・アルトマン氏:例えばとってもいいと思っていたファンドが実際には全く逆で、書類では全くかけ離れているように見えるときがありますよね。最初の第一印象を誤らせてしまうものはなんだと思いますか?
リード:地雷原を抜ける方法は、実際に飛び込んでやることしかないですよね。仮説が間違っていることもあるわけです。
こうした間違いを防ぐ為に、私がやってみるのは、柔軟さと頑固さの両方を見るということです。確かに自分の言っていることについて信念を持っているのですが、私はあなたの言っていることを聞いているし、あなたがそれをどのように考えているかはともかく、懸念は受け入れますよ、という態度です。
ときどきそうした演技ができる、という人がいます。聞いているように見えるしあなたが持ってきた事柄について考えているように見えるけれど、実際には無視している、という人です。私を無視するのは別にいいのですが、一般に世の中を無視することはよくないですよね。
でも普通、創業者には受容性が必要になります。よく言うのは、「無限の学習曲線」というフレーズです。ある意味ではあらゆる企業のパターンは独自で新しいものなので、新しいものを学べるかどうかが重要なのです。
学ぶことができるか、あるいは重要なスキルセットを持っているか、エゴが邪魔をしないか、誰もが自分を賞賛すべきだと思っていないか、というような、受容性について考える必要があります。
生徒:素晴らしい共同創業者かどうか評価をする際どこを見ますか?
リード:共同創業者のチーム、どうやって評価するか、そしてどうやって共同創業者について考えるかということですね。
最初に考えることは、よく協働できるということは超重要だということです。チームについて考えるとき、それが重要なポイントだと思います。
鍵になるのは、創業者について考えるとき、多様でたくさんある必要な強みの中で、役立つものを持っているかどうかです。技術担当が最低ひとりはだいたい必要になります。あるいはビジネスサイドをやる人もよく必要になります、資金調達などをする人です。古典的には、こうしたものはスキルセットと呼ばれます。2、3の能力の組み合わせなのです。設立チームについてもう一段階深く考えるときには、こうしたことが重要です。
例えば、夫婦のチームに投資をしてはいけない、ということがよく言われます。そして実際、これは起きる全てのことに余計な重みを加えますし、個人的な事情が起きている時に更なる混乱を生みます。お互いに本当によく協力できて、お互いに助け合うことができるのかを見極めるべきです。
私はチームと話しているとき、お互いの問題を解決し合う時に最も感動します。これは同じ歌を歌っているから仲間だよ、というようなことではありません。これについては考えたか? とか、何が問題かについて共有しているということです。起業とは、リスクでいっぱいの戦場で、お互いを導き合うようなものだからです。
例えば、PayPalでとてもよくあるのは、催促のシステムやその他全てを作ったマックスが、ピーターのオフィスに頻繁に来て、今や伝説の人となったピーター・ティールにこう言っていました。「こういうものが私たちを殺そうとしているから、集中しなくてはならない」と。
ただそこにみんなでいて「いい旅だね、ごきげんよう」と言い合うのではなくて、何が真実で何が解決すべき問題なのかを調整するためにいるのです。短期的な問題がなんなのか、そして長期的な問題が何で、どうやってそれに立ち向かうのか? そしてチームがそうやって集合的に問題解決をするとき、その集合的な学びが素晴らしいチームを形作るのです。
生徒:ピーター・ティールが「私たちはみんな空飛ぶ車を夢見ていたのに、実現したのは140文字だった」と言っていたのを思い出しました。全く異なる分野の人がいて、一般的なコンピューター技術があったときに、どうやって外側の人をチームに引き入れるのでしょう。
リード:この講義は、創業者のどんなマインドセットが独自のものなのかが狙いでした。たくさんいる創業者に共通している素晴らしさとは何なのかという話をしてきました。しかしそれぞれ違いがあるということは確かです。
例えばソフトウェアで言えば、マーケットへの対応スピードと、学習スピードは重要な鍵です。ハードウェアではミスしたら死にますから、正確さは本当に重要です。
一般的に言って、たくさんの投資家がひとつのことについて非常によく学んでいるのに、他のものについても学ぼうとするのは、どの領域にいる創業者が本当に重要なのか判断できるようにしようとしているためです。この領域に投資したとして、なぜうまくいくのか? それぞれの領域に独自の性質があります。
よく言われる質問は、マージンやコストコントロールなどのオペレーションの効率化についてどれくらい得意でなければならないのか、ということです。コマースなどの物質的な世界を扱うのなら、本当に得意でなくてはいけません。でもZynga的なスタートアップなら、全くなくても構いません。
そうした種類の性質や気質を見るとき、最初に言ったように、ひとりが全てのことをできることはありえない、というのが事実なのです。
私が最初のスタートアップとしてソーシャルネットを作っていたときに「リード、僕はマクドナルドのマネージャーに君を雇うことは絶対にしないよ」と言われました。いや、私もそうしないだろうと思います。私はとても苦手でしょうから。
パラドックスのように見えるものを行き来するとき、実は最適なスキルセットこそがポイントなのです。時には片方に重きを置いて、時にはもう片方に重きを置く。そして今やっていることについて正しい判断をする。これならいろいろな場所で通用しやすいと思います。
生徒:成長するために時間をかける、というお話をされていたと思うのですが、どうやってピボットを決めるべきなのでしょうか。
リード:投資計画を持って、その信頼性を明確にしておくのはなぜでしょうか。一般的に言って、信頼性が長い間測られずに減少している場合はどうしたら信頼性を回復できるのかということを考えると思います。それも失敗したなら、ピボットするのにいいタイミングだと思います。
投資を受けられるか、プロダクトの流通と成長についてのパターンやバイラルの限界、SEOやその他全てがうまくいくような計画を考えなくてはいけないとき、どんどんとダメなスパイラルに陥るのは良くありません。ピボットについてのよくある間違いは、壁にぶつかって全てがダメになってしまってもうどこにも行けない状況になるまで待ってしまうことです。
私がした最もおもしろい会話のひとつに、コロラド州知事とのものがあります。彼は素晴らしい創業者は魅力的だ、なぜならバランスのいいライフスタイルだからだ、と言っていました。
「自分はバランスのいいライフスタイルをしている」と話している創業者がいたら、私は勝つために十分コミットしていないと考えます。本当に素晴らしい創業者は、全てを注ぎ込んでいます。
だいたいは数年のことなのです。しばらくこれをやって、次は別のことをやる。目の前のことをやっている間は、アンバランスになっています。休んではいけないということではないですし、デートに行ったり他のことをしてもいいと思います。ただ目の前のことにものすごく集中していなければすぐにダメになります。それが私が崖から飛び降りる比喩をよく使う理由です。
生徒:他の人が見えないアイディアにこそチャンスがある、というお話でした。どうやってスタートアップの経済システムが、いいチャンスだと判断できるのでしょうか。
リード:逆張りのチャンスにおいて、スタートアップの経済システムを作るのか。これは難しいです。なぜなら逆張りでない場合は、古いアイディアになるからです。
私はこれを混合だと考えます。素晴らしい投資家にとって必要な能力とは、革命的な一手を打てることです。こうした一手を放つためには、十分な人や投資家、人脈が必要です。ときにノイズが多くて、シグナルを捉えるのが難しいことがあります。一方で、ときどきただただ気が狂っているとしか思えないような一手もあります。
eBayに資金を出したのは、唯一Benchmarkだけでした。1年前、いや18ヶ月前、シリコンバレーのほとんどの人にBitCoinの話をしても「なんだって? Bit、何?」と言われたでしょう。誰も知らなかったのです。
BitCoinが上手く行くかどうかはまだ未知数です。しかし、暗号通貨による信用制度は確実にこの世界に存在していくでしょう。つまり本当にしなければいけない質問は、BitCoinが最初の暗号通貨になるのか、それとも最後の暗号通貨になるのかです。最初の場合は、新しいものが出て新しい要素が加わるでしょう。最後なら、ネットワーク効果が効いたのです。
人々が逆張りしていると思うのは、独自の組み合わせを持っているときです。ふたつの例を出しましょう。
さまざまな創業者から私に毎日30くらいの計画が送られてくるのですが、タイトルが面白くない限り見ません。これから話すのは、面白かったものです。ひとつはコンピュータによってモニターされているウェアラブルおむつです。子供がうんこやおしっこをしたら、どんなに遠くにいてもわかるというものです。もうひとつは、カスタムされたECのベルです。誰も思いついていないアイディアを思いついたかもしれませんが、経済的には正しくはありませんよね(笑)。
生徒:マーケットを創出すべきなのか、発見すべきなのでしょうか。
リード:これは難しい質問ですね。よくある逆張りに続く悩みは、マーケットはもう存在するのだろうか? 大きいのだろうか、あるいは存在しないんだろうかと言う事です。マーケットがないと思われているところでも、信じる理由が十分ある場合は、これはいい賭けでしょう。しかし完全に燃え尽きてしまうことも考えられます。
投資計画を考えるときに、マーケットがあるかないかと考えさせているものはなんだろう、というのは重要です。最初はマーケットなんて存在しないからです。なぜなら最初は、もちろんどんなマーケットも存在しないからです。つまりもちろん原理的には、新しいニーズさえあれば、マーケットを生み出すことは可能なわけです。
一方で、問題は誰もがどんなカテゴリーなのか、本当に欲しいのかもわからない中で、どうやってできるだけ速く受容してもらうかです。よくあるのは、いざ作られてみるとみんなが押し寄せて行列になる、というものです。例えばスティーブ・ジョブズのように、それが可能な起業家も一部存在します。
しかしほとんどの場合はそうなりません。だから投資計画の中で、なぜそのマーケットがまだ存在していないのかを考えなくてはなりません。でも逆張りするとしたら、マーケットが存在していないとおかしいと思うのは自然なことです。
LinkedInの場合は、求人というのはかつて新聞で行われていましたが、情報時代ではどこで行われるのだろうと考えました。直接個人に対して求人を行えるというのが、情報化時代の求人のあり方であるように思われました。これは比較的確認が容易でした。
生徒:どうやって長い期間会社を一緒にやっていけるかを判断するのでしょうか。PayPalを始めたとき、たくさんの人の中で、会社をはじめるほど信用できる相手をどうやって見つけたのですか?
リード:基本的にはどうやって相手が共同創業者となるほど信頼できるのかということですね。たくさんの変数について考えなければならないのですが、取らなくてはならないリスクのひとつです。どうやって相手のことを十分知っているか判断できるのでしょう。私が非常に役立つと思うことを言っておきましょう。
私のポートフォリオに入っている会社のCEOや創業者がCEOを雇おうとしているときに言うのは、CEOとして雇おうとしている人と、20時間以上の時間を過ごしてみる、ということです。深く会話をしてみて、意見や、信じているものや、仕事のスタイルや、そうしたことをお互いに交換しあいます。
ただただ契約書にサインをするのではなく、あらゆるパラメーターについて考え、会話をして何に賛成し何に反対するかを知るようにしています。離婚のように、もうダメだ、上手くいかない、ということにならないように、事前にちゃんとカバーしておくわけです。
あるところから、戦場に赴かなくてはなりません。これはものすごくストレスのかかる死の谷です。たくさんのことについて話し合って、何かを一緒に計画したというお互いの了解があれば、問題を解決することは比較的簡単になります。
高いレベルで信じられるようにしておかなくてはいけません。何かが後から出てきたとき、これはもう話しただろうと言ったり、あるいはその逆に言われたりなどするのですから。
ご清聴ありがとう。
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