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今井武・ビッグデータがもたらす、安全で快適なモビリティー社会をめざして(全4記事)

クルマという資源を活かす「テレマティクス」とは? ドライブで社会を救う、ホンダの挑戦

ITのチカラによって渋滞や事故をなくし、危険を未然に防ぐ目的で各社が開発を進めている「テレマティクス」。ドライブとビッグデータが融合すると、渋滞解消だけではなく災害時の対応にも多くな好影響が期待できるとか。ホンダのグローバルテレマティクス部・今井武氏がその一つの答えを語った。

災害時にデータホルダーができること

今井武氏:そういうことで、いくつかさらに研究をしていることをご紹介させていただきます。

輪番休日で平日休んでいてもしょうがなかったもんですから、お世話になっている道路工学の大家の桑原先生にお話しして、「こういった状況をもとに、次にどうしたらいいかって研究をやりませんか」ってことで、先生が必要なプレイヤーを集めてくれて、この手弁当の研究会を立ち上げて、2年半経っています。その研究成果を2つ紹介をさせていただきます。

石巻の3.11のときのデータをすべて再現致しました。津波が襲ってくると、どんどんこのあと渋滞が発生していきました。石巻は非常に道路構造が悪いです。この画面の下側が海です。両サイド川に囲まれています。

それからこの上のほうは仙石線というのが走っていて、地震と同時に踏切がシャットダウンして、要するに四方まったく動けない状況に(なり)、街の中心はここにあるということでですね、非常に道路構造が悪い、環境が悪い街になっています。

で、これを何に使ってもらっているかというと、ここに橋をもう1本掛けたらこの渋滞はどういうふうになるのか、避難道路を1本作ったらばどういうふうに渋滞が解消できるか、と。交差点を立体交差にしたらどれだけ渋滞が回避できるかというシミュレーションが完全にできるようになったもんですから、これを石巻市のほうに提供して、都市計画に使ってもらっているというものであります。

もう1つがこれでございます。

これは鳥瞰図で石巻の街の渋滞をしている状況ですね、そこに津波が襲ってくる。これを完全にシミュレーションができるようになりました。気象協会さんのデータと地形のデータ、それから建物のデータを入れることによって、津波がどういうふうに侵食してきたかということが分かるようになりました。

もし、石巻の渋滞している人たちもこの(津波が)襲ってくる状況が分かれば、こんなに死者は(出なかったし)、被害にあった人はもっと少なかったはずだと考えています。ビッグデータ、これからはリアルタイムにいかに処理をしていくか、的確に情報を伝えるかっていうことが非常に大事だなっていうことで研究を進め始めたものでございます。

災害時は、データホルダーはこういった形で1つのクラウド上に提供してほしいなと思っています。それは「民」の情報もそうですし、「官」の持っている情報もそう。で、その情報を的確な形で加工して、必要な人に必要な形で提供していく社会をつくっていく必要があると思っています。

もう1つ、ちゃんとつながらなくてはいけないということもあります。ソフトバンクさん、いろいろ頑張ってもらってて釈迦に説法なんですけども、万が一災害が起きた時に、やっぱり携帯電話にトラフィックが集中する可能性があります。

それに対して何とかされている技術ももちろんよく知っているんですけども、WiFiでつながるモビリティー社会、これをですね、実現したいなということでやってきております。

WiFiでいつでもどこでもつながるモビリティ社会

もう1つこれのポイントは、交通事故の死傷者が5000人を切ったわけですけども、これを2020年には2500人以下にしようという目標があるんです。

もっと少なくするためには、要するに見えないところの危険が分かるようにならないと、死者は無くならないというふうに考えております。そこをこういったWiFiでつながりながら、見えないところを可視化、共有できるような仕組みをつくっていこうということでやっています。ムービーをつくっていますので、見てください。

<映像開始>

(テロップ)-テレマティクスを使ったつながる世界-WiFiでいつでもどこでも、誰とでもつながるモビリティー社会をめざして

(テロップ)歩行者(カート)とクルマの通信を使って、お互いの存在を認識することで、安心して移動が可能に。(テロップ)複数台ドライブのコミュニケーション。

今井:(映像を見ながら)これ、一緒にドライブしてるシーンですね。

(テロップ)近くのお店のおトク情報をゲット!

今井:ハニードーナッツというお店からクーポンが配られてきて、「ここに行って休憩しよう」。

(テロップ)対向車から渋滞情報を入手! 見えない先の情報がわかることで、余裕を持って緩やかに停止できます。

今井:前方がどんどん渋滞していって、(渋滞がカーブ先のため)分からなくなってしまうという状態です。それを対向車が検知をして、後続の車に情報を送るということです。

(テロップ)ホンダはテレマティクスを使い、より安全で、快適・便利なクルマ社会をめざしていきます。

<映像終了>

今井:2020年東京オリンピック、パラリンピックが開催されるわけですけども、これに向けてですね、いろんなアプリケーションを、おもてなしサービスをやって行きたいと思っています。

東京はすごい素晴らしいんだけども、万が一何か起きたとき、瞬時にいろんなことが助けられるという世界をつくっていきたい。車が情報を伝達していくという世界ですね。こういったことが実現できないかなと思っているものでございます。

人の役に立つIT

最後に申し訳ないです、1つお願いがあるんですけども、実はこの夏、今月の末(2014年7月)になるんですが、相補区復興プロジェクトで「ミヤギPOKERUN」というイベントを立ち上げております。

これ、internaviの技術を使った新しいものなんですけども、これについてちょっと説明をさせていただきます。宮城県内をinternaviの技術を使ったアプリケーション、そのアプリを使って巡る、新しいかたちのスタンプラリーというもので。

目的は、たくさんの方々にモビリティの楽しさと、それから東北の素晴らしさ、非常に海岸線なんかもきれいです。それと同時に今どういう状況になってるか、ということを知っていただきたいということで、こういった企画をしております。

伊勢谷友介さん率いるREBIRTH PROJECT、これの共同代表である亀石さん、よく知っているんですけども、亀石さんから「この夏こういった企画をやりたいんだけど、協力してくれない?」といったことで言ってきてくれましてですね、ぜひやろうと。何かきっかけがあれば、東北に足を運んでくれることになるだろうということで、やってきているものでございます。

このPOKEというのは、Facebookなんかで使ってる「突っつく」とか、そういった意味でのコミュニケーション、そういった意味でですね。POKER RUNという名前をつけたら、POKERは賭博罪になるからダメって言われてですね(笑)、日本ではですね。POKERUNという名前にしてるんですけども。こういったかたちでやることにしました。東北のIT企業を支援をして、そこに開発費をうちのほうでお支払いをして、アプリを開発してもらいました。

アプリは使用権を譲渡して次年度以降、自立してやっていってほしいということで、譲渡することにしています。サイトからチケットを申し込んでいただいて、このアプリをダウンロードしてもらって、宮城の70か所、復興マルシェだとか牡蠣小屋だとかそういったポイントを、車でもバイクでも自転車でも、なかなか歩かれる方はいないと思うんですが、周ってもらうと。

そこのチェックポイントに行くとスマホにカードがダウンロードできるようになっている。ランダムにダウンロードするんですけども、そこで例えば「何かを食べてもらって、食べた写真を撮ってください」みたいなことをすると、手札がどんどんいいものになっていくと。

そんなミッションをクリアしながら手札を集めてもらって、最後3日の日にSUGO、サーキットのあるコースなんですが、SUGOに行ってもらって、そこで表彰式とあと音楽フェスを行います。こういったイベントです。先日行ってきたんですが、非常に楽しいイベントですので、ぜひ参加してほしいなというふうに思っております。

実は協賛各社さんも我々の想いに共感していただきまして、このような各社さんから協力していただくことになりました。ここにありますソフトバンクさん、ここに(ホンダのミニバン)エリシオンがあるんですけども、移動基地局として使われています。これは非常にドラマがあるエリシオン号で、3.11の日にこの車が出来上がって納車整備をされていたんですね。

で、地震が発生したということで、すぐに1日でナンバーをとって、このエリシオン号を石巻専修大学のほうにずっと走って行ってくれたんです。で、あのときの状況をお伺いすると、まったく通信も使えなかったわけですから、家族と連絡を取りたい人がものすごくいたわけです。で、この車がものすごく役に立ったと。それはもう、ドラマそのものの状況ということだった、というふうに聞いております。

ぜひ、この「ミヤギPOKERUN」。この5日間のうちに5か所を回っていただいて、SUGOに集まっていただいて参加をしていただければなというふうに思っております。

うちの会社の創業者、本田宗一郎になるわけですけども、いくつか言葉を残してくれています。僕が一番大事にしているのがこの言葉です。人の役に立って、使って便利で楽しいものを提供したい。この言葉をこれからも商品開発に反映していいものをつくっていきたいなというふうに思っております。どうもありがとうございました。

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