嫉妬は思いやりの敵 憧れに変えて、前に進む燃料に
ここから次のテーマ、「嫉妬」に話を移したいと思います。嫉妬は、思いやりの敵です。
嫉妬は、自分の持っているものを信じられないこと、そして無知から生まれます。そもそも、みなさんは何に嫉妬しているんでしょうか。例えばスティーヴン・コルベアのような人間が、自分のために作り上げた「見せかけ」に対してです。
嫉妬を、憧れに変えてみてください。そしてそれを、自分の野心を前向きに駆動させる燃料にしてください。
正直に言うと、私はスティーヴン・コルベアに嫉妬してはいません。実際、彼は本当に親しい友人であり、「中身スカスカの男」のわりには、とてもいい奴なんです。
「根に持つこと」と残り1パーセントのどうしようもない正しさ
思いやりへのもうひとつのハードルは、「根に持つこと」です。誰もが経験しているし、ついハマりやすい罠です。
18年前、私は初めてアカデミー賞に出席しました。レッドカーペットを歩いている時、私は緊張して不安で、完全に場違いな気持ちでいっぱいでした。そして私は、とても有名な女優のドレスの裾を踏んでしまい、彼女の動きをピタッと止めてしまいました。彼女は振り向き、ものすごく冷たく私に当たりました。
その瞬間から私は17年間、彼女に対して恨みを抱き続けました。彼女の名前を聞くだけで、気分が悪くなるほどでした。そして1年前、また彼女とばったり会うことになりました。どうだったと思いますか?
私は最初から正しかったんです。彼女はやっぱりひどい人でした。
というわけで、私が言いたいのはこうです。99パーセントの場合、「根に持つこと」は完全な時間のムダです。でも残り1パーセントについては、ものすごく気持ちよくて、完全に正当な場合もあります。
突然のダンス休憩タイムと「ノースウェスタンとのつながり」
さて、ここでノースウェスタンの卒業式の伝統に従い、みなさんにお願いしたいことがあります。立てる人は、どうぞご起立ください。立てる人は全員、立ってください。
さあ、今こそ私と一緒に、「スピーチの途中で突然始まるダンス休憩タイム」です。さあ、行きますよ。ほらほら。(音楽が流れる)
今のは元気が出ると同時に、かなりシュールでしたね。いやあ、私は本当に体力が落ちています。息が切れてしょうがない。みなさんは踊り続けていていいですよ。
私は、ノースウェスタンと永遠につながっていくことになります。本当に。冗談抜きで、今ちょっと気を失いそうです。
私はこれからもずっと、ノースウェスタンとシカゴと深く結びついていくでしょう。娘はノースウェスタンの卒業生です。息子も、来年ここを卒業します。
私は高校生の時、ノースウェスタンのサマー・ハイスクール・インスティテュート(演劇コース)に参加しました。そこで、ノースウェスタンの学生たちが開いてくれたマスタークラスを通じて、初めてインプロ(即興演劇)に出会いました。
その経験に刺激を受けて、のちに私は再びシカゴに戻り、セカンドシティでのキャリアを目指すことになりました。
インプロが教えてくれた「聞くという敬意のかたち」
ここから、もうひとつ話したいテーマ、「聞くという技術」に移りたいと思います。私がセカンドシティで授業を受け始めた頃、すばらしい先生だったドン・デポロは「聞くこと」の大切さを強調していました。インプロのシーンは、お互いがちゃんと相手の話を聞いていないと、どこにも進みません。
ドンは、聞くことについて、そして他にもいろいろなことを教えてくれました。ちゃんと聞いておけばよかったんですが、私がドンから確かに学んだのはこれです。
「他人を本当に理解し、見てあげる一番の方法は、その人の話を聞くことだ」ということです。誰かの話を聞く、という行為そのものが、相手への敬意の表れなんです。
そこの青い服の卒業生、あなた。あなたのすぐ後ろの人です。さっき私が言った最後の言葉は何でした?そう、「聞くという行為は、相手への敬意だ」という言葉ですね。もうこのスピーチが、早くも大きな成果を上げているのが分かりますね。
リスペクトは最初から渡してしまう
では、少しだけ「リスペクト」について話しましょう。リスペクトというのは、とらえどころのない概念かもしれません。「お前はまず、俺のリスペクトを勝ち取らなきゃいけない」と言う人もいます。
では、こうしてみたらどうでしょう。人に「自分のリスペクトを勝ち取らせる」代わりに、最初からその人をリスペクトするようにするんです。皮肉っぽく構えるのではなく、まず「この人はきっといい人なんだ」と思い込むところから始めてみる。
私はスティーヴン・コルベアに対してこれを試してみていますが、ぜんぜんうまくいきません。
知っているけれど、忘れがちなこと
今朝、私はみなさんに、かなりいろいろなことを考える材料を渡してきましたが、同時に、ほとんど何の価値もないことしか言っていないとも言えます。
まとめると、思いやり。これは単純な概念で、おそらくみなさんはすでに知っていることです。
嫉妬。それも人間の感情で、誰もが感じるものです。ただ、人によって、どれだけ上手に隠せるかが違うだけです。
そして「聞くこと」。みなさんが今、私の話を一生懸命聞こうとしてくれているのは分かっています。
でも、こうも思っています。みなさん、この一週間とても忙しかったですよね。昨夜も、たぶんほとんど寝ていない。ここには「肉体」は来ているけれど、「魂」は別の場所にいる。そういう状態でしょう。
そして最後に、リスペクト。エイブラハム・リンカーンはかつてこう言いました。「RESPCT.Find out what it means to me. RESPECT. Take care. TCB」。 (※アレサ・フランクリンの曲の歌詞)
実用的な人生のアドバイス集
最後に、本当にランダムな考えをいくつか残したいと思います。
「nonplussed」という単語は、あなたが思っている意味とは違うかもしれません。調べてみてください。誰かに手書きのメモを送ると、その人はショックを受け、困惑するでしょう。でも、きっと喜んでくれます。
ドアは、相手の性別や年齢、政治的な立場にかかわらず、持ってあげてください。個人的なメールにチャットGPTを使っている人には注意してください。交差点で車を停めている時に、鼻をほじらないでください。誰かが見ていて、「うわ、気持ち悪い」と思っていますから。
ここで出会った友人たちとは、連絡を取り続けてください。時間はあっという間に過ぎていきます。
それから、さっきもお見せしたように、時々はただ踊ってみてください。
親の罪悪感さえも味方にして生きていけ
そして最後に、世の中のお父さんたちに、ハッピー・ファーザーズ・デイ。あなたの子どもの門出を祝うこの日が、あなた自身の特別な日を台無しにしてしまっていることをお詫びします。
覚えておいてください。あなたは愛されています。私は父親で、子どもたちはみなさんとほぼ同じくらいの年齢です。みなさんがこれまでの人生でどれほど多くのことを経験してきたかを思うと、私にはうまく消化しきれません。
みなさんが世界に対して感じている不安や恐怖を、私は確かに感じています。それは、本当に胸が痛くなることです。
みなさんはすでに、人生まるごと一生分に匹敵するような混乱や不確実性を乗り越えてきました。それは、どう考えてもフェアではありません。
妻と私は、子どもたちがこうした不安な時代を生き抜く手助けができるよう、できることをしています。そして、子どもたちに伝えているのと同じアドバイスを、みなさんにも送りたいと思います。
小さなことを覚えていてください。優しくすること。そして、自分は決してひとりではないということ。お互いを大切にしてください。笑える時には、ちゃんと笑ってください。泣く必要がある時には、しっかり泣いてください。
そして、みなさんが世界の現状についてどれほどつらく感じていても、その何倍もつらく感じているのが、あなたの親かもしれないということを忘れないでください。
それを利用してください。その罪悪感を、うまく活用してください。今は、親の罪悪感を最大限に利用し、感情的にゆすりをかけるのに絶好のタイミングです。もしかしたら、地下室にあと6ヶ月余分に住まわせてくれるかもしれませんよ。
ありがとう。そして、ノースウェスタン大学2025年卒業生のみなさん、本当におめでとうございます。ありがとうございました。