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Angela Duckworth at Bates: Push those cell phones away(全1記事)

スマホの誘惑は意志ではなく設計で断ち切る 成果・関係性・安全・メンタルを守る6つの距離戦略 [2/2]

携帯を遠ざけるほど成績は伸びる

状況の再設計に関する研究はとても示唆に富んでいます。いわゆる「ブレイン・ドレイン(脳の消耗)」の研究では、IQテストを受ける際、携帯が視界に入る場所にあるだけで、たとえ画面を伏せていても、成績が下がることが示されました。

一方で、バッグの中や別の部屋に置くと成績は上がります。見えるところに携帯があり、それを無視しようとするだけで精神的エネルギーが削られ、目の前の課題に使える認知的リソースが減るのです。

私の研究チームでも同様の結果が出ています。全米の高校生を調べたところ、勉強中に携帯を遠くに置く生徒ほど学業成績が良いことがわかりました。携帯が遠いほど、GPAが高いのです。

画面が対話の時間を奪う

まだあります。居心地が悪い、不安だ、退屈だ、そんな気分の時、私たちは幼い子が沖井入りの毛布に手を伸ばすように、携帯に手を伸ばしがちです。言い換えると、携帯は大人の「おしゃぶり」になってしまうことがあります。

さらに懸念すべきは、対面コミュニケーションへの影響です。2004年以降、ソーシャルメディアの急速な普及と並行して、対面で過ごす時間が顕著に減っています。ベイツは対面コミュニティの良さをよく知っている大学ですよね。考えてみてください。テキストやDM、絵文字が、豊かで繊細な対面のやりとりの時間を置き換えていることを。

画面に縛られている間にできないことを想像してみてください。力いっぱいのハグ、ハイタッチ、未来の伴侶とかもしれない誰かと目を合わせること。最近、スタンフォードの同僚が、ソーシャルメディアと感情の健康に関する史上最大規模の無作為化比較試験を終えました。わかったのは、インスタグラムやフェイスブックを1か月だけやめてもらうと、幸福度が上がり、不安や抑うつが下がるということです。


デジタルの慰めは孤独を深める

さらに考えるべき点があります。今や携帯は24時間365日、ChatGPTなどのAIチャットボットにアクセスできます。人生相談や話し相手、さらには愛情を求めて、チャットボットに向かう人が増えています。ハーバード・ビジネス・レビューによると、チャットボットの利用用途の1位は、助言や慰め、親密さといった「相手役」としての機能だそうです。

もしデジタルな相手と過ごす時間が、人間同士の時間を置き換えてしまったらどうなるでしょうか。若手研究者のダニガン・フォーク氏は、この点を懸念しています。彼の研究では、人は孤独を感じるとチャットボットに向かいがちですが、長期的にはそれが孤独感をかえって強める可能性が示されています。

つまり、チャットボットは心のジャンクフードのようなものかもしれません。短期的な満足は得られるけれど、長期的な栄養にはならないということです。状況があなたを形作る前に、あなたが状況を形作ることは、簡単なことから始められます。今日はその第一歩を踏み出しました。私が促したのは確かですが、携帯を隣の人に預けると決めたのは、みなさん自身です。

日常で使える6つのアイデア

ここからは、携帯との付き合い方について、日常で使える6つのアイデアを提案します。状況の再設計を実践する6つの方法です。自分に合うものがあれば取り入れてください。

1つ目。深く集中したい時は、携帯を別の部屋に置きます。見えなければ、意識からも離れます。

2つ目。空とスクリーンの比率を変えます。気まずい、不安、退屈だと感じたら、立ち上がって外に出ます。頭上の空には、あなたを依存させるアルゴリズムも、巧妙なマーケティングもありません。だからこそ、手のひらの青白い四角い光より、ずっと健全な選択になります。

1853年8月22日、ヘンリー・デイヴィッド・ソローは、ウォールデン池での2年間の実験生活をふり返って日記にこう記しました。「自然は、一瞬一瞬、私たちを健やかにしようと最善を尽くしている。他の目的は持たない。わずかでも健康になろうとする心をもって、彼女に逆らってはならない。私たちは病む必要はない」。

残念ながら、多くの人がこの助言を実行できていません。アメリカの大人は今、屋外で過ごす時間が1日1時間にも満たないのが現状です。つまり、空とスクリーンの比率はおよそ1対6です。自分の比率を知っているのはあなた自身だけで、それを変えられるのもあなた自身です。

3つ目。例えば今夜など、大切な人と夕食をとる時、テーブルの上に携帯を置かないこと。できれば、手が伸びにくいチャック付きポケットに入れておきます。無意識に手が伸びる習慣を遮るためです。

4つ目。運転中は、腕が届かない場所に携帯を置きます。注意散漫運転は、毎年およそ80万件の事故、30万件超の負傷、3000人以上の死亡につながっています。

5つ目。寝室に携帯を置きません。関係性の専門家エステル・ペレルはこう言います。「寝る前に最後に撫で、朝いちばんに撫でる相手が携帯なら、それはあまり良くない」。

6つ目。携帯で何かを意図して聴くと決めた時は、エズラ・クライン氏のポッドキャストにある作家ゼイディ・スミス氏の回を探してみてください。エズラが「なぜスマートフォンを持たないのですか」と尋ねると、ゼイディは「発売された2008年に、3か月だけ持っていました。他人の意見は、私にとっても誰にとっても大切です。でも、もし一日中、毎秒のように他人の意見にさらされて、自分の生活を本来とは違う“メディアとしての私”のかたちで見せ続けることになったら、私の思考も、作品も、人間関係も、子どもとの関係も、どうなってしまうのか想像がつきません。」と答えました。

ここであらためて、人と人との関係について考えてみましょう。状況の再設計は禁欲ではありません。意図して選ぶことです。刺激と反応、通知と反応の間に、意図的な余白をつくることです。そして自分の注意力を取り戻すことです。


遠くとつながり近くを見失う前に

もう一つ、考えてほしいことがあります。ベイツでは、友人と顔を合わせて話すことが日常に組み込まれていました。キャンパスで一緒に暮らし、理科棟で一緒に勉強し、コモンズ(学内のメイン食堂)で一緒に食事をしていました。けれども今日からは、友情を保つために、より意識的な努力が要ります。予定を入れ、距離を移動し、大切な人のために時間を優先的に確保する必要があります。自由時間ができるたびに携帯に潜り込むのが常態化していると、そのすべてが格段に難しくなります。

「携帯は他人とつながる助けになるのでは」と思う方もいるでしょう。確かに、遠くにいる人とつないでくれます。でも、目の前にいる人からはあなたを引き離すこともあります。友だちと一緒にいるのに、それぞれがフィードをスクロールしながら上の空で会話をする、そんなことはありませんか。私自身、母を無視してしまったことが何度あったでしょう。状況の再設計という小さな行為はささいに見えますが、積み重なると大きな差になります。

私の親友がリビングルームから大型テレビを撤去する時、二人の息子たちは文句を言いましたが、彼女は母から受け継いだヒンドゥーのことわざを伝えました。「人は、そばに置いたものを崇拝する」。ジェンキンス学長、先ほどの小さな実験にご協力いただきありがとうございました。

人生は常にトレードオフ

そろそろ携帯を返しましょう。みなさん、交換し合って元に戻してください。学長もどうぞ。卒業生のみなさん、中庭を後にして、代々のベイツ生を見守ってきたこの美しい木々の下を最後に歩く今、控えめだけれど力強い誓いを立ててください。

状況の再設計を続けることを約束してください。デジタル時代のマインドフルネスは、意志の力ではなく、自分を形作る状況を自分で作る知恵にあります。最後に、誰にでもFOMO(取り残される不安)はあります。今の17分間、隣の人に携帯を預けている間に、きっと誰もがメッセージや通知、メールの1つは見逃しました。

人生は常にトレードオフです。何かを選ぶ時には、作家アニー・ディラードの言葉を思い出してください。「私たちの一日は、結局のところ、私たちの一生そのものだ」。ありがとうございました。ゴー・ボブキャッツ。

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