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Commencement 2023 - Idina Menzel Speech(全1記事)

「声が裏返っても、私は歌い直した」 ミュージカル『ウィキッド』主演女優が語る、失敗から前に進む力

【3行要約】
・声を上げることの意義が問われる現代社会で、自分の言葉が響くのか、攻撃されるのか、無視されるのか、そんな不安を多くの若者が抱えています。
・イディナ・メンゼル氏は舞台の上でも、人生の上でも、「うまくいかない」ことの中に、前に進む力があると述べました。
・メンゼル氏は「あなたは一つの役割だけでなく、すべて」と語り、社会の二元論にとらわれず、自分の声を力強く響かせる勇気を持つよう卒業生に訴えかけました。

私たちには声がある

Idina Menzel(イディナ・メンゼル)氏:よし、もう私の話はこれくらいにしておきましょう。あなたたちに話す前に、まずあなたたちの声を聞かせてほしいの。私のことじゃなく、あなたたちのために。
もし叫べるなら、歌えるなら、手話でもなんでもいい。声を届けて。

叫んで! 歌って! 手話でも! アネンバーグ・センターでカーテンが下りた瞬間を想像して。あるいは、パレストラでケイラ・パディラ(女子バスケットボール選手)がスリーポイントを決めたところを想像して。さあ、聞かせて! もっとよ!

小さな頃から、ずっと言われてきました。「あなたの力は“声”にある」って。そして今はっきりわかりました。2023年の卒業生のみなさん、私たちにはそれが共通しているんです。

マギル学長、ウィンケルスタイン副学長(当時は暫定)、理事のみなさん、教職員、スタッフ、家族のみなさん、共に表彰されるみなさん、そして卒業生のみなさん、本当にありがとうございます。

卒業生が直面してきた社会の荒波

卒業生のみなさん。あなたたちは短い人生の中で、景気後退とインフレ、パンデミックと反乱、ロー対ウェイド判決の撤回とMeToo運動の広がり、人種問題への直面、気候危機など、さまざまなことを経験してきました。

それだけでなく、スマートフォン、ストリーミング、SNSの登場、人間のゲノムの解読、現代医療の奇跡、そして心の中や胸の内でも、きっと多くのことが起きていたはずです。


何を言うかより、どう言うかに悩む日々

こんな時代の中では、自分の声を「いつ、どう使えばいいのか」が本当に難しくなります。叫ぶべきか? ささやくべきか? 断言するのか、それとも疑問を投げかけるのか。話すのか、聞くのか。

あなたの言葉は響くのか? 攻撃されるのか? それとも無視されるのか。そして、そうなることに意味があるのかどうか。あなたの怒りは許されるのか。あなたの悲しみは妥当なのか。あなたのアイデアには価値があるのか。

 今、ここに座っていても、その葛藤を感じているかもしれません。なにかすばらしいものが終わり、まだ想像もできない何かが始まる、その瞬間に胸は痛みと喜びでいっぱい。

卒業生のみなさん、私が今日ここに来たのは、たったひとつ、これを伝えるためです。自分を押しとどめないで。その葛藤を力に変えて、あなたの声を、しっかりと響かせてください。

『ウィキッド』での挑戦と挫折の記憶

今日は2023年5月15日。ちょうど20年前の2003年5月15日、私はサンフランシスコで『ウィキッド』の世界初演に向けたリハーサル中でした。

エルファバの役をもらえることは、決して当たり前ではありませんでした。ある初期のオーディションで、制作チームから「Defying Gravity」を歌うように言われたんです。今日ここにいるペン・プレイヤーのみなさんならわかると思います。

あれはすばらしい曲で、最後にとても高い音が出てくるんです。だから私は何度も何度も練習しました。そして監督やプロデューサーの前に立った時、「いける」と思っていたんです。
 
でも、いざその高音の部分に差し掛かった時……

So if you care to find me, look to the Western sky……
And nobody in all……
Is ever gonna bring me……
Bring me……(声が裏返る)

私は自分にすごく腹が立って、大声でしかもかなり下品に叫びました。でも、逃げ出したい衝動を押さえて、深く息を吸い込み、伴奏者を見てこう言いました。「もう一回、いきましょう」そして、歌い直したら今度はしっかり高音を決めました。


失敗や感情も受け止めて前に進め

見てください。私たちはみんな、人間です。あなたたちも、2023年の卒業生も。世界トップレベルの教育を受け、どれほど努力してきても、ビジネスはうまくいかないこともある。

研究が失敗することもある。声が裏返ることもある。誰かは私のように怒りを爆発させるかもしれない。誰かは心を閉ざしてしまうかもしれない。どんな感情でも、しっかりと感じてください。そのすべてを。そして、前へ進み続けてください。

人間らしさが道を切り開く

数年後、『ウィキッド』の演出家ジョー・マンテロはこう言いました。 「君が音を外したあの瞬間に、君がこの役にふさわしいと確信した」と。彼は「根性」に心を動かされたのです。そしてもうひとつの四文字の言葉が契約を決定づけました (笑)。彼は言いました 「それが“ウィキッド”らしさに見えた」と。

完璧さはなかなか得られないけれど、人間らしさは確かにある。そしてそれこそが、あなたを進むべき場所に連れていってくれるのです。

繰り返しの中で声と意味を磨く

私は『ウィキッド』を何年も、週8公演で演じ続けました。「Defying Gravity」の高音も、数えきれないほど歌いました。その中で、もちろん声が裏返ることもありました。

パフォーマーの人生というのは、ある意味「繰り返しの人生」です。同じセリフを繰り返し言い、同じメロディーを繰り返し歌う。みなさんの中にも、ディズニーのある歌を、兄弟姉妹が何度も何度も歌っていたという人がいるでしょう。その節は失礼しました(笑)。

でも、ここだけの話……私は繰り返すのが、嫌いじゃないんです。というか、むしろ大好きです。私は俳優だから、自分の声を聞くのが好きなんです。 注目を浴びるのも、ね(笑)。

でも本当の理由は、自分の声を使える機会に、心から感謝しているから。繰り返すことで、メロディーに新しい変化を加えることができる。歌詞の中に新しい意味を見つけることができる。素材や観客と、もっと深くつながることができるんです。

悲劇の後に歌に宿った新しい意味

数年前、私はピッツバーグにいました。 「ツリー・オブ・ライフ」の銃撃事件から、ほんの数週間後のことです。私はコンサートを開く予定でしたが、葛藤していました。観客は悲しみに沈んでいるだろうし、私もそうだった。ユダヤ人として、そして善良な人間として、みんなが深く悲しんでいました。

私はステージでキャンドルに火を灯し、何千回も歌ってきた曲、『RENT』の「No Day But Today」を歌いました。

There's only now. 
There's only here.
Give in to love or live in fear.

その日、その言葉は、まったく違う意味を持って心に響きました。

繰り返しの中で見つかる新たな解釈

みなさんの中には、毎年同じ歴史を教える教育者もいるでしょう。でも今という時代に、それがどんな意味を持つか、あらためて考えてみてください。同じ市場の動きを何度も何度も追う経済学者もいるでしょう。でも、未来へのビジョンを持つことで、それがどう変わるでしょうか?

ジャズミュージシャンのみなさんは大丈夫、即興が得意ですから。マーチングバンドのみなさんも大丈夫、ドラムのリズムは体に刻まれていますから。でも、その他のみなさんに聞きたい。繰り返さなければならない時、あなたはどうしますか? 踏みとどまり、続ける時、どうしますか?

あなたは多面体であり「すべて」である

卒業生のみなさん。あなたたちは一人ひとりが多面体です。集団としても、そして個人としても。

どうか、そのことを忘れないでください。この社会は、ラベル付けや二元論にとらわれすぎています。すべてを箱に分類したがる。でも本当はあなたは一つの役割だけではありません。いくつもの顔を持っている。というより、「あなたはすべて」なんです。



ただし、勘違いしないでください。「全部やれ」と言っているわけではありません。 「全部できる」とも言いません。でも、自分という存在を、余すことなく生きてほしい。この世界で、あなたが果たすべき役をすべて演じてください。

舞台は予測不能、即興を恐れないで

2023年の卒業生のみなさん。もしシェイクスピアが正しければ「世界は舞台」です。そして今日、あなたたちはその舞台へと一歩を踏み出すのです。この4年、あるいは5年、6年。大学院生ならもっと長い時間をかけて、あなたたちは準備してきました。

正直、どんな制作にも、予定より時間がかかるものです。でも今、あなたはここにいる。セリフもすべて覚えている。演じる準備はできています。

人生という舞台の主役を演じきる

とはいえ、何もかもが脚本どおりにいくとは限りません。アドリブが必要な場面が、きっと出てくる。なぜならこの世界は伝統的というより、実験的だからです。調和よりも、不協和音のほうが多い。
 
例えるなら、ブロードウェイではなく、オフ・オフ・ブロードウェイ。だから、スポットライトの下で少し緊張してもいい。でも、パフォーマーとして、ひとつお願いがあります。

それを理由に、立ち止まらないで。その感情を「覚悟」に変えてください。繰り返しの中に高揚を見つけて、この一生に一度の役に、あなたのすべてを注ぎ込んでください。この人生という名の舞台の、その主役として。


声の力は人間誰もが持っている

2023年の卒業生のみなさん。冒頭で証明してくれたとおり、私たちにはみな、「声」があります。私たちの体の中には、靭帯、筋肉、組織があり、それらが合わさって声帯となり、そこに空気が流れると緊張が振動を生み出す。

その緊張を活かせば深いため息も、大きな叫びもできる。歌うことだってできる。

And when the night is cloudy.
There is still a light that shines on me.
Shine until tomorrow, let it be.
I wake up to the sound of music.
Mother Mary comes to me.
Speaking words of wisdom, let it be.
Let it be, let it be.
Let it be, let it be.
Whisper words of wisdom, let it be.

あなたの声を、響かせてください! 卒業生のみなさん、おめでとう! ありがとう!

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