【3行要約】
・元ニューヨーク・ヤンキース主将で殿堂入り選手のデレク・ジーター氏が、2025年ミシガン大学の卒業式で祝辞を述べました。
・同氏は「選択」「情熱」「失敗」をテーマに、自身のキャリアを通じた学びを語りました。
・「誰にも見られていない時の選択こそが一流をつくる」と述べ、卒業生に力強いメッセージを送りました。
目覚ましに対する反応は人生をどう生きるかの縮図
デレク・ジーター氏:卒業生のみなさんに質問があります。今朝、目覚ましが鳴った時、どう反応しましたか? わかりますよ、目を開けて、パッとベッドから飛び起きて、今日の予定を頭の中で整理しはじめた人もいるでしょう。もしかすると、すでに未来のキャリアに向けて一歩踏み出している人もいるかもしれません。
一方で、妻と同じようにスヌーズボタンを押して、あと10分だけ……とベッドに残った人もいるでしょう。そんなあなたは、どんな仕事がいいのか、新しい街に行くべきか、次に踏み出すべき一歩は何か、まだ迷っているのかもしれません。
でも、どちらであっても、目覚ましに対するあなたの反応は、卒業後の人生にどう向き合うかを映し出しているのではないでしょうか。
未来への期待と不安
クラスメートの中には、「もし○○だったらどうしよう?」と周囲から投げかけられる数々の“もしも”に心を押しつぶされそうになっている人もいます。一方で、興奮や希望、可能性の力に突き動かされている人もいるでしょう。
今日みなさんが受け取るミシガン大学の学位は、確かにあなたにアドバンテージをもたらします。そして、大学の応援歌にもある、「勝利者に栄光あれ、征服する英雄たちに、指導者に、最高の者たちに」という言葉は、あなたの背中を押してくれるはずです。
人生を先に歩んできた者として知見をシェア
今回スピーカーとしてお声がけいただいた時、正直に言うと、今日のあなたにとって何が価値ある話になるのか、すぐにはわかりませんでした。だって、みなさんは私よりもずっと先まで勉強を続けてきたのですから。事実、私はいまだに大学1年生の段階なのかもしれません。
でも、人生を少し先に歩んできた者として、これからの世界で待ち受けていること、そしてそこから得られるいくつかの知見を分かち合えたらと思っています。これから言うことは、覚えるのは簡単でも、実行することは簡単ではありません。
情熱がカギ
今日そして毎日をどう捉えるかはあなた自身の選択です。あなたの人生は、あなたの選択によって形作られています。現実の世界には、確実な約束も、保証もありません。では、あなたが“その他大勢”と違う存在になるために必要なものとは?
あなたが描く夢、それは多くの人もまた持っているものです。あなたが注ぐ努力、それも多くの人がすでにしていることです。最近聞いた話ですが、人は平均して生涯に9万時間もの労働を経験するそうです。
では何が違いを生むのか? それは「情熱」です。自分のすることに対する情熱。 自分に対する情熱。
不安を抱えて始める人生の次の章
あなたは、人生の次の章を、不安を抱えながらスタートするかもしれません。でも、そんなのはあなただけではありません。最初は誰もがそうなんです。
ポジティブな面もあります。ネットワーキング、メンターシップの機会、起業家精神の集まり、他にもたくさんあります。「可能性に支えられた未来に目を向けるかどうか」。それもまた選択です。あなたの選択です。
私は名言が好きです。お気に入りのひとつがネルソン・マンデラの言葉です。「あなたの選択が、恐れではなく希望を反映したものでありますように」
今日、こうしてこのステージに立てていることを、私は本当に光栄に思っています。オノ学長(サンタ・ J・オノ氏)、理事のみなさま、ありがとうございます。私は今、ずっと昔にミシガン大学への入学意志を表明した時に思い描いていた学位を、ようやく手にすることができます。
そして、正直に言って、ホッとしています。だって、自分の子どもたちの方が先に学位を取ってしまうんじゃないかと心配していましたからね。彼らはまだ7歳、6歳、3歳、そして2歳です。
でも、正直に言えば、私は少し寄り道をして、ニューヨーク・ヤンキースでプレーするという長年の夢を叶えました。
あなたはまだ完成形ではない
この機会に、今日の名誉学位受章者の方々にも心からの敬意を表したいと思います。彼らは慈善活動、科学、医療などの分野で目覚ましい功績を残されています。昨晩、少しだけお話しする機会がありましたが、その実績にはただただ圧倒されました。
今日ここで称えられる卒業生のみなさん。過去の成果はもちろん、これからの未来の歩みに対しても、あなたたちは本当に一人ひとりが特別な存在です。
でも、よく聞いてください。あなたはまだ完成形ではありません。まだ「進化の途中」なのです。21歳、22歳で人生のピークを迎える人なんていません。だから、過去を振り返ってばかりいてはいけません。あなたの進むのは前です。
私の選択が私の人生を決めた
私の人生は、若い頃から、一見些細に思えるような選択によって方向づけられてきました。
例えば、高校に入ってすぐの頃のことです。友人たちに、週末の釣り旅行に誘われました。それまで釣りに行ったこともなかったのですが、なんだか楽しそうだと思いました。でも、その日は練習があったんです。
父にその話をすると、彼はこう言いました。「釣り人になりたいなら、行ってこい。でも、メジャーリーガーになりたいなら、練習に行くことだ。」
最終的に決めるのは自分だ、と父は言ってくれました。そして私は、釣り旅行を断って、練習を選びました。こういう選択、どんなに小さく見えても、意志を持って下した決断が、人生の道を作っていくのだと思います。
期待には2種類ある
期待というものは、今日のような日には特に強く感じるものです。でも期待には2種類あります。ひとつは、自分自身の価値観や経験、信念に基づくもの。もうひとつは、他人から押し付けられるもの。
あなたにとって本当に大切なのはどちらでしょう? セーフティーネットが欲しいのか? 最初の給料の高さを求めるのか? 世界に爪痕を残したいのか? その選択は、他の誰でもない、あなた自身のものです。