お知らせ
お知らせ
CLOSE

2025年メジャーリーグ殿堂入り式典でのイチロー氏のスピーチ(全1記事)

イチロー氏が米野球殿堂入りスピーチで語った仕事哲学 「自分に責任を持つ」ことがチームを支える理由 [1/2]

【3行要約】
・プロフェッショナルの条件とは何か――イチロー氏の殿堂入りスピーチはユーモアを交えながらも、深い野球哲学と人生観を伝えています。
・51歳で「三度目のルーキー」となったイチロー氏は、MLB挑戦時の批判を乗り越え、常に全力でプレーし続けた自身の選手人生を振り返りました。
・イチロー氏は「夢」と「目標」の違いを強調し、若い世代に対し、目標達成のために何が必要かを見極める重要性を説いています。

“新人いじり”はお手柔らかに

イチロー氏:今日、私は二度と経験することはないと思っていた感情を味わっています。三度目の “ルーキー” です。

(会場笑)

最初は1992年、高校からオリックス・ブルーウェーブ(現在はオリックス・バファローズ)にドラフト指名された時。次は2001年、27歳でシアトル・マリナーズと契約した時です。

(会場歓声)

そして今、ロッド・カルー、ジョージ・ブレット、トニー・ラルーサといった方々を目の前にして、再びルーキーになったと感じています。

(会場笑)

このすばらしいチームに温かく迎えてくださり、本当にありがとうございます。

(会場拍手)

殿堂の価値観を守るよう努めますが、私はもう51歳ですから、“新人いじり”はお手柔らかにお願いします。もうフーターズのユニフォームを着るのは勘弁してください(新人選手が仮装をするメジャーリーグの恒例行事)。

(会場笑)

ルーキーとしての最初の2回は、常に「最高レベルでプロとしてプレーする」という明確な目標があったので、感情をコントロールすることは容易でした。しかし、今回はまったく違います。なぜなら、日本での少年時代には、自分のプレーが存在すら知らなかった “野球の聖地” に導いてくれるなんて想像もできなかったからです。

人々はよく私を記録で測ります。3,000本安打の達成、ゴールドグラブ賞を10回、10年連続の200本安打……悪くないでしょう? 

(会場笑)

しかし実のところ、野球がなければ私はただの間抜けだと言われていたでしょう。ひどいチームメイトですよね、ボブ・コスタスさん?(アメリカのスポーツ解説者)

(会場笑)

10点差で負けていても、全力でプレーする

野球は打つ・投げる・走るだけではありません。野球は何が大切かを判断する力を教えてくれました。人生と世界を見る視点を形づくってくれたのです。

子どもの頃は、いつまでも野球ができると思っていました。しかし歳を重ねるにつれ、45歳まで最高レベルでプレーし続ける唯一の方法は、野球に完全に身を捧げることだと悟りました。

ファンのみなさんが貴重な時間を割いて球場に来てくださる以上、10点差で勝っていようが、10点差で負けていようが、全力でプレーする責任があります。開幕戦から162試合目まで同じモチベーションを保つことが私の務めでした。私はシーズン最後のアウトまで荷造りを始めたことは一度もありません。毎試合、ファンのみなさんに向き合うのがプロだと考えていました。

(会場拍手)

ファンは、いつ球場に来てもエンターテインメントを受け取るべきです。野球は私に “プロフェッショナル” の意味を教えてくれました。それこそが、私がここに立つ最大の理由だと信じています。他の選手より才能があったからではなく。

3,000安打やシーズン262安打は記者が認めてくれた成果です。もっとも、ひとりだけ認めてくれなかった記者もいますけどね(イチロー氏は殿堂入りの投票において1票足りずに満票を逃した)。

(会場歓声)

その方を我が家の夕食に招待するオファーは、残念ながらもう期限切れです(笑)。

(会場笑)

自分自身の行動に責任を持つ

私は19シーズン、毎日、小さなディテールに気を配り続けたからこそ数字を残せました。グラブのひもが緩んでエラーをしたり、走塁時にスパイクの汚れですべったりするのを防ぐため、道具は自分で手入れしました。

オフにも厳しいルーティンを守り、春のキャンプに来る頃には腕が出来上がっていました。マリナーズの放送席でリック・リズ(シアトル・マリナーズの専属アナウンサー。イチロー氏の代名詞「レーザービーム」の名付け親とされている)が「ホーリー・スモーク!(なんてことだ!) イチロー、(外野から)二塁にレーザービームだ!」と叫ぶのを待ちながら。

(会場拍手)

小さなことを積み重ねれば、達成できることに限界はありません。私は身長180cm、体重77kgです。アメリカに来た時、多くの人が「メジャーの大柄な選手にはかなわない」と言いました。初めてフィールドに立った時、その競争のレベルに圧倒されました。しかし、準備に関する自分の信念を貫けば、自分自身の中にある疑念さえも乗り越えられると分かっていました。

「チームのためにできる最高のことは何か?」と聞かれたら、私は「自分に責任を持つこと」と答えます。夜、家に帰って、なぜヒットを打てなかったのか、なぜ捕球できなかったのかを考える時、正直な答えは「投手がすごかった」や「太陽がまぶしかった」ではありません。本当の理由は、自分がもっと良くできたことがあったからです。自分に責任を持つことで、チームメイトを支え、ファンを裏切らないことにつながるのです。

(会場拍手)

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

次ページ: 「夢」ではなく「目標(Goal)」

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!