想像もしていない可能性に心を躍らせる
スタンフォードの学生であるみなさんは、今日、大きな計画を持って卒業していくことでしょう。さらなる学位の取得、大義の追求、会社の設立、業界の変革など。そうした大胆な計画はすばらしいものであり、世界はみなさんを必要としています。
しかし私のアドバイスは、その計画が変わる余地を残しておく、ということです。スタンフォードでのことが、すでに1つの道筋や特定のキャリアに縛り付けている、という考えに抵抗してください。
まだ想像もしていない可能性に出会うことに心を躍らせ、学んだことによって、自分がこの地球上で何をするためにいるのかという考えに変えていく意欲を持ってください。
波が自分を別の名前で呼ぶことを学び、単なる波ではなく水であると気づいた時、新しい形を取る自由を得るのです。そしてみなさんも同じです。
自分の小さな波を見つける価値
次のアドバイスは短いものです。自分の小さな波を見つけてください。波の物語では、小さな波がヒーローです。大きな波が物事を違った角度から見るのを助けるからです。
実は、小さな波は決して小さくないのです。それは大きな波が自分自身について持っていない視点を、大きな波に対して持っているのです。
卒業生のみなさん、あなたが誰であれ、人生のどこにいようとも、小さな波を持つことは非常に価値のあることです。人生のさまざまな時期に、さまざまな人がその役割を果たしてくれるでしょう。
アイデンティティを失わず文化をナビゲートする
私のキャリア初期にいた、シャーロットという同僚がその人でした。マイクロソフトに入社した当初から、私はその仕事が大好きでした。しかし時が経つにつれて、その文化が好きではないことに気づきました。
それは傲慢で攻撃的で、私らしくありませんでした。私はMBA採用クラスで唯一の女性で、周りの男性たちを真似るべきだという大きなプレッシャーを感じていました。
最終的に、会社を辞めようかと考えるまでになりました。大きな波のように、物事が終わりに向かっていると感じていました。しかしシャーロットが物事を違った角度から見せてくれました。
彼女は私よりも少し年上で経験豊富で、自分のアイデンティティを失うことなく会社の文化をナビゲートする方法をすでに見つけていました。シャーロットの存在があったからこそ、マイクロソフトでの将来を想像することができたのです。
卒業生のみなさん、今日このスタジアムには、みなさんにとっての小さな波の役割を果たす人がいることを約束します。みなさんがなりたい人物になる手助けをしてくれる人がいるのです。
そして同じく重要なことに、みなさんがその役割を果たしてほしいと願っている人も同様にいるのです。
確かな信頼の絆を隙間なく築く
これが、最後のアドバイスにつながります。「確かな信頼の絆を隙間なく築きなさい」。
この美しい言葉は、伝説の実業家チャーリー・マンガーからのものです。彼の寛大さによってすばらしい学生寮が可能となり、このキャンパスの景観が変わりました。
チャーリーは、文明が達成できる最高の形は「確かな信頼の絆」であり、「完全に信頼できる人々が互いに正しく信頼し合うこと」だと述べています。
確かな信頼の絆。なんとすばらしい目標でしょう。
社会として、私たちは常に隣にいる人や対立する意見を持つ人に対して責任を感じるようにはできていません。特に現在はそうです。しかし誰であれ、私たちはお互いを必要としています。
お互いを必要とする絆の力
人生の旅路には、誰かに支えられる必要がある時、あるいは誰かが、みなさんに支えられる必要がある時があります。
親友のジョンが37歳で亡くなった時、私は彼の妻エミーが悲しみを乗り越えるのを助けようとした少人数のグループの一人でした。3年前、私の結婚が終わった時、彼女は私が悲しみを乗り越えるのを助けてくれた一人でした。
私たちの間の絆は信じられないほど深いものです。しかしもちろん、チャーリーが語っていたのはそれよりもはるかに大きなものでした。そのような関係に基づく社会全体のことです。強く相互的な絆が何百万倍、何十億倍にも増幅されたものです。
学生として過ごした時間の中で、みなさんは世界がまだそのビジョンに達していないことを痛ましく目の当たりにしてきました。しかし同時に、世界が必要とする進歩の原動力となる準備が、いかにできているかも示されてきました。
岸を形作る水の力となれ
みなさんは、壊れた世界へと卒業していきます。しかし物事を再構築するのはコミュニティです。みなさんはすでにここで、そのコミュニティを構築し始めています。そして共に、壊れたものを再び整えていくのです。
しかしまずは、卒業する必要があります。数分後にみなさんとクラスメイトが立ち上がるよう促された時、その呼びかけの中に、行動することへの呼びかけを聞いてほしいと思います。
今日、この節目に到達するのを助けてくれたすべての人々のことを考え、彼らがみなさんにしてくれた投資に報いる誓いを立ててください。
何よりも、徹底的に心を開いて、未来へと踏み出してほしいと思います。共に旅する、小さくも賢明な波の知恵と視点に勇気づけられて。
みなさんがすでに周囲に織り始めている、確かな信頼の絆を広げることに尽力して。
そして明日目覚めた時、もはや今日の自分ではなく、まだ次になる自分でもないその瞬間に、卒業生であるみなさんが水であり、岸を形作る力であることを知り、勇気と自信を得てください。
それが、なんと強力な力であることか。ありがとう。