2024.10.01
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Oprah's Compelling Commencement Speech To TSU Class of 2023(全1記事)
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オプラ・ウィンフリー:在校生、教職員、ご家族のみなさん、そして何より2023年卒業生のみなさん。本日はおめでとうございます。
(会場歓声)
懐かしい母校に戻らないなんてありえません。私は帰って来ました。このたびはグレンダ・グローバー学長からご招待を受けました。まったく、彼女には情け容赦というものがありません。「断る」という選択肢は一切与えてくれないのですから。
学長は現職に就任して10年になりますが、この10年間、私にずっと卒業式への出席を依頼してきました。
私は大学の卒業式によく出席します。というのも、南アフリカで私が(慈善活動の一環で)設立した学校出身で、アメリカの大学を卒業した“娘”が20人おり、全員の卒業式に出席するからです。
だから「卒業式の予定はフルで入っているからお受けできません」と断ったのですが、学長はきっぱりおっしゃるんです。「いいから来なさい」と。
(会場笑い、歓声)
でも招待をお受けしてよかったと思います。なぜなら……。
(会場歓声)
“TSU(テネシー州立大学)に来てよかったとても幸せよハレルヤ!
TSUに来てよかった神に栄光あれさあ歌おうハレルヤ!”
(会場合唱、歓声)
ご家族並びに在校生のみなさん、本日は大勢お集まりいただきありがとうございました。
私の家族も大勢出席してくれています。どうもありがとう。こんなに集まってくれるなんてまったく知りませんでした。ウィンフリー家とウォーカー家のみなさん、ありがとう。
では、まず告白します。本来、私はTSUを1975年に卒業予定でした。しかし、1単位足りませんでした。大学では多くを学ぶことができましたが、必要な単位を取ることを重要視していませんでした。
率直に言って、在学当時は多忙のあまり手いっぱいの状態でした。東ナッシュビルの実家で父と暮らしており、そこから毎日通学していました。大学から帰ると、今度は父の店の手伝いです。週末は、ナッシュビルのラジオ局『WVOL』でニュース報道のアルバイトをしていました。
2年生になると「スピーチコミュニケーションと演劇」を専攻しました。俳優になりたかったからです。しかし父には反対されました。「芸能界へ行って枕営業なんて、断じてさせないからな」。仕方がないので、先生を目指すことにしました。
ところが私は成績不振で、特に「舞台美術」がピンチでした。舞台上で、教授のW. デューイ・コックス先生に裏方担当の全クラスの前で言われました。「ウィンフリー、君は定規を使っても直線すら描けないな」と。
さて、ちょうどコックス先生の授業を受けている時、電話の取次ぎが入りました。教室を抜け出して出てみると、相手はナッシュビルにあるCBS系列のテレビ局のアンカーキャスター、クリス・クラークでした。開局当時は『WLACTチャンネル5』という名称で、現『WTVF』に当たります。
当時、クリスはニュース部門長であり、チャンネル5のアンカー部長でもありました。『WVOLラジオ』で私の放送を聞いたと言うのです。クリス・クラークともあろう人が、黒人が運営する片田舎のラジオをなぜ聞いていたのか、知るよしもありません。神のお導きがあったのでしょう。
いずれにせよ私を指名してTSUにわざわざ電話をして、テレビ局で働いてみないかと声をかけてくれたのです。
私の答えは「ノー」でした。
「テレビですって? 父に反対されます。大学中退なんてとんでもない、ぜったいに卒業するべきだって。それにテレビ局で働くこと自体、言語道断だと言われるでしょうね」。クリスは、考えがまとまってからでよいので、後日返事が欲しいと言ってくれました。
教室に戻った私はコックス先生に電話での会話の内容をそのまま伝え、「ぜったいに父に反対されます」と言い添えました。
さて、コックス先生は『オズの魔法使い』に出てくるライオンそっくりの風貌で、温厚・柔和・穏やかさとは程遠い方です。その先生が、神は脳みその代わりにレタスでも与えたもうたのではないか、といった面持ちで私をにらむではないですか。そして言いました。
「CBSのチャンネル5から名指しで電話が来るような、そんなチャンスのためにお前は教育を受けているのだ、愚か者め。お前もお前の父上も、そんなことがわからないのか」。先生はあきれ果てたといった様子で目をむき、こう言いながらのしのしと歩き去りました。
「父上に直談判してやる」。
まさに有言実行でした。こうして、TSUで2年生在籍時の2学期以降、私は午後2時にはその日の授業が終わるようにカリキュラムを履修し、2時半から10時半の夜のニュース番組終了までテレビ局で働くことになったのです。父が設けた11時帰宅の厳格な門限にはかろうじて間に合いました。
こうして、当初卒業を予定していた時期が来る頃にはフルタイムで働いており、卒業して学位を取ることにはさして執着がなくなっていました。
でもね、それからどんなに長い年月が経っても、それこそ『オプラ・ウィンフリー・ショー』の放送が始まって数年が経っても、父は私に聞くんです。「大学はいつ卒業するんだ?」って。
というわけで、先ごろ逝去された故ジェイミー・ウィリアムズ教授の計らいにより、1988年、これまで司会を務めた番組について書いた論文が受理され、私はめでたくテネシー州立大学を卒業し、学位を授与されることとなりました。3度目のエミー賞受賞と同時のできごとでした。
(会場歓声、拍手)
複数の職の掛け持ちと学業の両立や、遠距離の通学通勤など苦労の末、時間こそ掛かりましたが、大学卒業の夢は実現できました。米史上唯一、黒人の大学教育を目的として設立された州立大学の卒業生として、自分を誇りに思います。無事、母校に戻ることができました。
(会場歓声、拍手)
バーガンディ色の愛車、オールズモビル・カットラスに乗り込んで故郷のナッシュビルを去る時、私はバプテスト教会で「国際女性デー」のスピーチを行いました。「国際女性デー」、ご存知でしょ。当時のスピーチから少し進化を遂げましたが、今でも持ち続けている信念をこれからお話ししましょう。
「未来は誰にもわからないが、未来の主導権を握っているのが誰かははっきりとしている」。私は生涯を通して神の恵みの灯に導かれて生きてきました。人は尋ねます。「あなたの成功の秘訣を教えてください」。私が成功したのは、神の恵みに身を委ねて生きてきたからです。
人生は常に何かを伝えてくれます。これだけは断言できます。人生がみなさんに何事かを伝えようとした時には、黙って耳を傾ければよいのです。真剣に耳を傾けてください。世俗の雑音を超えて真実を伝えてくれる「良心の声(聖書の「still, small voice」)」を聞き分けることができるようになります。
声が聞こえた時にわかります。それと判断して心をつなぎ、深く追及できるようになります。「良心の声」の奥底にひそむ、自分自身の声も聞き取れるようになります。
「良心の声」を聞き取れれば、自分の本心を悟り、何が自分にとって一番大切かがわかるようになります。これまで私が取ってきた正しい選択は、良心の声によく耳を傾けて従ったおかげです。声の力に身を任せたからこそできたのです。
この力があれば、人の輪の中に颯爽と現れるだけでみなに立ったりひざまずいたりして出迎えられ、「社会現象を起こした人だ!」と誉めそやされるようになります(※ルイ・アームストロングのジャズの名曲“Hello! Dolly”のオマージュ)。
人の輪の中に颯爽と現れる時、私はひとりであってひとりではありません。私より昔に生きた1万人が寄り添ってくれるからです。曽々々祖父であるコンスタンティン・ウィンフリーは奴隷として生まれ、読み書きができず自分の名前すら満足に綴れませんでした。
しかし「奴隷解放宣言」から10年が過ぎた頃には文字を覚え、一万梱の綿花を摘んで働いて80エーカーの土地を手に入れ、私のアメリカ系の祖先の中で初めて私有地を手に入れることができました。
「私はひとりだが、1万人が私と共にある」。この信念は常に力を授けてくれました。
1975年のここナッシュビルでのキャリアの最初期、私は長い間ニュース報道室の唯一の女性、唯一の有色人種として共同アンカーの一人を務めました。当時はきわめて異例の事態でした。
80年代には役員たちに掛け合って、番組でただ司会するのではなく「自分の番組」を持たせてくれ、今よりもはるかに多く稼ぐ自信があるから、と談判したのです。自分は場違いだとか、分不相応だとか非力だと思う「インポスターシンドローム」は一切感じませんでした。みなさん、インポスターシンドロームに負けてはいけません。
なぜ私はくじけなかったのでしょう。自分がどのような人物か知っていたからです。もっと大切なことに、自分自身の主導権を握るのは誰かを知っていたからです。未来なんて誰にもわかりません。でも未来で主導権を握るのが誰かはわかっていました。
私とみなさんに共通して言えることですが、「仕事」とは、実は神の夢を叶えることなのです。私は常にこう祈っていました。「神様、どうぞ私を使ってください。あなたが考える、私のあるべき姿をお見せください。あるべき姿へと到達できる道へ導いてください」。
よく聞いてください。神はみなさん自身よりもはるかに壮大な夢を、みなさんに対して持っておいでです。私がまさに神の望みを叶えた生き証人です。
今日の私の使命は、みなさんが夢を実現する人生の旅路の、次のスタートを切るお手伝いです。ではその実現の手段を一緒に考えてみましょう。
みなさんはこれまでも、今の時代が抱えるきわめて複雑な問題に対処してきましたね。みなさんの世代では、正当な扱いを受けるには防犯カメラの携帯が必須です。そこまでしてもなお、正当な扱いを受けるのが難しいと、何度も思い知らされてきました。
「国会議事堂襲撃事件(※ドナルド・トランプの支持者らが、「2020年のアメリカ合衆国大統領選挙で選挙不正があった」と訴え、アメリカ合衆国議会が開かれていた議事堂を襲撃した事件)」を目撃しましたね。
社会規範は失われ、選挙権は実効性を奪われ、女性の権利はないがしろにされ、書籍は発禁になり、歴史は改ざんされつつあることを、ひしひしと感じていることでしょう。
最高裁は腐敗し、「連邦政府債務上限」は人質のように利用され(※議会が連邦政府債務上限を盾にして、予算や他の法案で連邦政府に譲歩を迫る戦術を採ることがたびたび発生しており、2023年スピーチ当時も同様の審議が行われていた)、気候変動は進んでいます。LGBTQ+のコミュニティは襲撃され、冷戦は再び勃発しています。世界の主導者たちのふるまいはまるで子どもで、子どもたちは軍用ライフルの乱射で殺されています。
みなさんが、寿命が尽きるまで対処し続ける必要があるほどの膨大な過ちが、世界中で犯されています。状況を変えることなどできっこないと、残念ながら多くの人に言われるでしょう。
しかしここテネシー州にはそれに抗議する、尊敬すべき「2人のジャスティン」が身近にいるではないですか(※2023年3月、ナッシュビルの小学校での銃乱射事件を受け、テネシー州下院の会議場で銃規制強化を求めて抗議運動を行った議員のうち、若い黒人であるジャスティン・ジョーンズ議員、ジャスティン・ピアソン議員のみが除名処分となった。この事件により2人は銃規制運動のために戦う若手政治家、反骨精神のシンボルとなり、全米で大きく支持された)。
(会場歓声)
ジャスティン・ジョーンズ議員とジャスティン・J・ピアソン議員は、現状を変えることなどできないと冷笑するのは誤りだと全力で伝えてくれました。彼らの心意気は、過去に生きた多くの偉人の遺産の上に成り立っています。
私の師であるジョン・ルイス(公民権運動における非暴力のリーダー)は、まさにここナッシュビルで正義を求めて戦いました。彼の言葉は永遠に残っています。
(会場歓声)
これは断言します。他者の人生を豊かに変革するために尽力する人生は幸せです。みなさんがご自身の持つ品格、知的好奇心、創造性やガッツ、ここで得た学術知識を活用して変革を起こしてくれることを、この場の全員が期待しています。ここにいる全員が、みなさんは必ず立派で偉大な業績をなすだろうと信じて疑っていません。
それにはまず、何から始めればよいかをお伝えしましょう。毎日必ず、ひとりの人に良いことをしてあげてください。まずはここからです。たった一人を幸せにする、ここから世界の変革を始めましょう。家族でも見知らぬ人でもよいのです。
ほんの小さな思いやりは受ける側に救いになることもありますし、かける側にもそれは同じです。愛とやさしさを人にあげるだけでよいのです。
大切な友人マヤはいつも言います。「愛は障壁も対立も分断をも乗り越え、壁を通り抜けて誰かの希望となる」。愛をもってたった一歩踏み出すだけで、誰かの希望となりうるのです。
この世界で希望となるのは簡単なことではありません。どうあがいてもうまくいかない時もあるでしょう。そんな時には、古い言葉を思い出してください。「どん底には必ず神がいる」
私からさらに一言付け加えましょう。「このどん底はすでに経験済みのはず。なぜなら私たちは世界史上、類を見ないほどのタフさで柔軟に生き抜いた人々の子孫だからだ」
タフで柔軟に生きてきたのは、これまでの世代だけではありません。みなさんの世代は世界を襲ったパンデミックのロックダウンを、マスクをつけて生き抜きましたね。TSU卒業生のみなさん。みなさんはこの難しい時代を生き抜く訓練を積んできたのです。
今後、大学を卒業してもつらいことはたくさんありますが、知ったことではありません。みなさんには、大きな夢を持ち続けてもらわないと困ります。型にはまらない考え方が必要なのです。
どうか私の経験を思い出してください。TSUの一人の善き教師コックス先生が、一本の電話で突然降って沸いた思いがけないキャリアに私を導いてくれました。これは私だけのストーリーではありません。ほんの一歩ないし二歩踏み出した先に、みなさんにも大きな夢が転がっているかもしれません。
寛容な精神、高い目標、自由な考え方、野放図に広がるイマジネーションを持ち続けてください。大なり小なりを問わず、みなさんとみなさんの信念は必ず世界を変革します。
次の選択に勇気が必要になる場面もあるでしょう。ここでちょっとした秘訣をお伝えします。次の選択に悩んだ際に、私が怯まずに済んだコツです。
実は「正しい選択肢」なんてありません。次にどうしたらよいかがわかれば、それだけで十分です。怯んでしまったとしても問題ありません。私が代わりに心配してあげますから。
さてここで、ある非凡な人物の言葉を引用させてください。「選択とは、恐怖ではなく希望の反映である。選択には、恐怖ではなく希望を反映させよ」。これは、私の個人的な祈りの言葉となりました。国民のために恐怖を投げ出して見事に変革を果たした人物、ネルソン・マンデラの言葉です。彼に感謝を捧げます。
みなさん、写真をたくさん撮ってSNSに上げ、卒業証書を額装してください。ハイヒールに履きかえて、ネクタイを結んでください。…...今の人って、ハイヒール履くんですか?
「みなさんがこれから出て行く世界は絶望に満ちている」と言って送り出す気は毛頭ありませんので、そうではないことを伝えます。
世界はロシアの石油への依存から抜け出しつつあり、電気自動車が世界基準になり始めています。オゾンホールは小さくなっています。ウクライナは世界を代表して今も戦ってくれています。フィンランドはNATOに加盟しました。パンデミックは終息しつつあります。そして市井の無名の誰かが、顔も知らない誰かのために骨髄を提供しています。
アメリカは分断されつつありますが、こうした希望はこの国がまだ終わっていないことを示唆しています。可能性は無限にあります。車輪はまだ前に進めます。聖者は行進して来ます。ネルソン・マンデラが力強く訴えたように恐れず希望を持ち続ければ、喜びへとまた一歩近づくことができます。
最後に言わせてください。みなさんが受けた祈り、支払ってもらった代価は学費だけではありません。日常的に被る理不尽な暴力や差別、閉ざされた扉、水面下で受ける不条理や障壁を取り除こうと蔑視の下で尽力してくれた人々、学生生活を送る上で不自由はさせまいといくつもの仕事を掛け持ちして、少しでも楽をさせようと一生懸命やりくりをしてくれた人々の献身を忘れないでください。
今、みなさんを取り囲む家族と、この日を実現できるように尽力した過去の世代が支払った代価に対して、みなさんは応える義務があります。成長を続けて、これらの人々に報いる義務があります。ぜひそうしてください。今日勝ち取った栄冠は、多くの人が代価を支払ってくれたおかげであることを忘れないでください。これは、戴冠式です。
おめでとうございます。
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