2024.12.19
システムの穴を運用でカバーしようとしてミス多発… バグが大量発生、決算が合わない状態から業務効率化を実現するまで
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アルフレッド・リン氏(以下、アルフレッド):ヨーロッパからの収益は全体の何パーセントでしょうか?
ブライアン・チェスキー氏(以下、ブライアン):50%以上です。
アルフレッド:順調ですね。Zapposでは文化とブランドは同じコインの表と裏だと表現しています。Airbnbは素晴らしい文化とブランドの確立に成功していますね。ブランディングについて少しお話を聞かせてください。シリコンバレーでブランディングや文化の話をすると、ビジネスライクではない、ソフトだと思われがちですが。
ブライアン:はい。先ほどもサム・アルトマンとこの話をしていました。シリコンバレーではカルチャーやブランディングについて語られることが稀です。
仰る通りでブランディングと文化は同じコインの表裏です。原則や信念に代表する企業文化とは内部の人間が長期的に力を合わせ、足並みを揃えて目標を達成する為に必要です。
ブランドとは外部の人から見たその会社に対して誰もが抱くイメージです。会社のミッションをクリアにすることが文化、そしてブランディングにとって最も重要なことだと考えます。
そしてブランドのイメージは、外部の人からみたその会社の中で働く人々にかかっていると思います。中で働く人々が会社のミッションを信じて情熱的に仕事をすれば、情熱的なカスタマーがついてくる会社になるはずです。
Zapposも強い文化性を持っていますね。Googleも彼らのユニークな文化をとても大切にしています。だからといって良い文化と悪い文化があるという話をしているのではありません。
その文化が確立しているかしていないかが重要です。他の誰かが良い文化とみなすからといって、それが皆さんにも同じように当てはまるとは限りません。
ブライアン:ブランディングもとても大切です。ブランディングとはその会社とその会社の顧客の関係性です。会社内部の文化が確立すれば、自然とブランディングに繋がります。多くの人がブランディングにおいて、何を売るかにフォーカスして話をします。
Appleであれば、「私達はより速いコンピューターやより大きな液晶画面を売っています」と宣伝するようなものですね。1997年にスティーブ・ジョブズが重要な話をしていました、「ビットやバイトの話をするのは勝つ為の方法ではない。会社が何を大切にしているかを話すことが勝者のすることだ。私達が最も大切にしていて、信じて疑わないことは情熱的な人々が世界を変えるということだ」と。
これがAppleのThink Different キャンペーンです。Appleが世界的に成功をしたのは、彼らの信念を強く打ち出したからです。Appleのコンピューターを買って使うということは、そのカスタマーもまた彼らの信念に共感しているからです。
ディープな信念が会社になければ、ただツールを提供するだけの会社になってしまいます。そしてただのツールに付加価値がつくことはなく、最安値で取引されます。
生徒:初期段階で外部にどのように企業文化やコアな信念を伝えていくのですか?
ブライアン:最初、私達Airbnbはホテルに変わる滞在先を安値で探すことが出来るツールですよ、というメッセージを世に送っていました。
「もうホテルの時代は終わりだ! Airbnbで宿泊費を節約!」と打ち出していましたから。これはもうかなり昔の話になりますが。ある時点で、これでは可能性を自ら狭めているようなものだと気が付きました。
そして「人間らしい旅行を」と謳い文句を変えました。そう長くこのコピーは使いませんでしたが、ポイントは皆が同じようなパッケージ旅行をする必要はないと言いたかったのです。
旅行をしてもよそ者扱いされて、その土地で孤立することなく旅をして欲しい、大昔の村のように、誰もが旅人を喜んで受け入れるような、旅先で現地の人と旅行者の心の触れ合い、交流が起こるような旅にしてほしいと。どれだけ皆さんが人生で成功したとしても、旅に出ると自分はそんなに大した人間だと思われていないんだ、と実感するものです。
よくある形式のホテルに泊まり、更にそこでは大抵何かしら問題が起きる。それとは逆に、旅に出て現地の人に歓迎してもらえるような、特別扱いしてもらえるような世界にしたい。創業当初はたくさんの場所で何回も私達の会社の創業逸話を話して周りました。
CEOの仕事はなんですか? と先日聞かれました。たくさんありますが、重要な仕事はビジョンを明確に表現することです。ビジョンを明確に表現するには、戦略を立てて企業文化にマッチする人材を見つけて雇う必要があります。
正しいビジョンと良い戦略、そしてビジョンに一緒に向かって行ける人が来てくれれば会社は成り立ちます。CEOの仕事はビジョンを表現していくことの繰り返しです。新しく人を雇う時、投資家と話す時、PRのインタビューに応える時、学校でこのように講義をする時、どんな時も信念に基づき行動します。これを何度も何度もいかなる時も繰り返しすることで、どんどんと信念や文化は浸透していきます。
生徒: Airbnbのホストにはどのように文化を浸透させるのですか?
ブライアン:とても良い質問ですね。それに対しては、上手くやってはいるものの、まだ改善の余地があると言っておきましょう。最初に始めた時、Craigslistのクレッグの知恵を借りました。
そこで、誰でもAirbnbを利用出来るようにすべきだと話はまとまりました。私達はあらゆる場所で起業理念を説いていましたので、多くのホストが私達のミッションに賛同してくれました。
しかしAirbnbのホストの中には、自宅を貸してお金を稼ぐことが出来ることだけに魅力を感じる人がいたのも事実です。そして全ての人が私達の文化にマッチするわけでもなく、実際に文化にマッチしないホストの多くが問題を起こしています。
初期はホストも私達の文化にマッチした人々でなければならないとまでは考えが及ばなかったので、良い教訓となっています。私達は実際にホストに会いに行き、私達の信念にマッチしたホストを引き寄せるようになりました。
Airbnbのホストはビジネスパートナーであり、彼らも私達の原則やミッション、私達の持つ価値観に共感していなければならないことに気が付きました。現在では「スーパー・ホスト・プログラム」という研修を用意しています。これを受けたホストには、宿泊客を優先的に紹介します。
そしてホストを集めてコンベンションをして、ここでも私達の目指すところを話して理解してもらうようにしています。質問に対する答えですが、まだまだ始まったばかりですが、一歩ずつ全体に浸透させることが出来るように努めています。
生徒:Airbnbはオープンソースコミュニティに素晴らしい貢献をしたと思いますが、それがAirbnbの文化や価値観に影響するところがあれば教えてください。
ブライアン:私達は全体的にとてもオープンな文化を持っています。人々が自分の資源を分け与える世界をつくることが出来ると信じていますし、コミュニティや業界の絆を深める為に助け合いの精神が大切だと思っています。
オープンソースな文化とエンジニアリングについてですが、どんな会社も競合から自分の会社を守る為の壁が必要だと思います。
テクノロジーを守りたいとも思いますが、同じテクノロジーをコミュニティに与えたいとも思っています。なので、私達が競合と差別化するのは最高のユーザーエクスペリエンスを提供することです。
皆さんに良い体験をしてもらうことが大切なので、テクノロジーのほうはシェア出来るようにオープンにしました。
私達がそれをするように言ったわけではなく、私達のビジョンをシェアする私達のエンジニアがそうすることを決めたのです。
生徒:先ほどお金がなかったという話をされましたが、どのようにユーザーを集めたのですか?
ブライアン:これは文化についての質問ではないですがお答えします。今までもらった中で最高のアドバイスはYコンビネータでポール・グラハムから教わった言葉、「何百万人の人にまぁまぁだと思って使われるよりも、百人の人に愛されることだ」です。
何百万人の人が皆さんのアプリを、まぁ使えるな、という程度で使っているとする。この何百万人を皆さんの大ファンにするのはとても難しいことです。しかし百人の人に愛されれば、その百人それぞれが彼らの知人百人に私達のプロダクトを勧めてくれます。
素晴らしいスターやプロダクトはどれも最初の百人に愛されるところから始まります。ポールは更に、「まずは百人の人に愛されること。そしてスケールしないことをすること」と言いました。
何百万人ものユーザー全てに直接会うことは出来ませんが、百人であれば全員に直接会うことが可能です。
このアドバイスを受け、私達はユーザーに直接会いました。
ジョン、ネイトと私はニューヨークやデンバー市内のホストの家に実際に泊まったりしながら皆さんと直接お会いしました。このようにユーザーと時間を共有することで、私達のビジョンにより共感してくれるのです。
例えば、あるひとりの人の願望をすべて叶える為に仕事をするとする、そして1人の人をハッピーにするのはそんなに難しいことではありません。
他の大勢をハッピーにすることと、1人を完全にハッピーにすること、両方を同時進行しようとすると失敗します。なので私達は1軒1軒ホストの家を周り、その1人1人をハッピーに出来るようにしました。
ブライアン:ホストはプロの写真家に自宅撮影を無料で依頼することができます。世界中の5000人のプロの写真家と連携し、これまで何千とホストの自宅写真を撮ってきました。これは世界で唯一のプロの写真家のオンデマンドネットワークだと思います。
プロの写真家に依頼出来るようになったのは、ある日ジョーと私があるホストの家に滞在している時、彼女の家は素晴らしいのに写真写りが全く良くなかったことがきっかけです。
昔の話で高性能カメラ付きiPhoneもなかったですし、彼女は機械に弱かったので。「オンラインでワンクリックでプロの写真家がコンコン、とドアをノックして自宅に写真を撮りに来てくれるサービスがあったらどうかな? しかも翌日」と聞くと、彼女は「それは素晴らしいアイディアね」と言いました。そこで私は翌日彼女のドアをコンコンとノックして「ほら、写真撮りに来たよ!」と言いました。
(会場笑)
そして彼女の家の写真を撮りました。その後、このボタンワンクリックでプロの写真家がお宅にお邪魔してお部屋の写真を撮らせて頂きます、と載せました。
誰かがそれをクリックすると私の携帯にアラートが届くように設定しておきました。アラートが鳴るたびに雪の中を人々の自宅を訪問し、写真を撮って周りました。
2009年の1月のことです。まずは自分で出来る範囲で始めました。写真撮影のプログラムを新しくつくって、とネイトの手を煩わせたくなかったので。そして次のステップではインターン生が登録写真家をマネージするようになり、そのインターンを後にフルタイムで雇い、他のインターン達をマネージするマネージャーとしてアサインし、その他インターン達が写真家達をマネージするという状況になりました。
写真家がたくさん集まり、すべてを管理できなくなってきた頃に始めてツールをつくりました。ツールをつくる前の経験からどんなサービスが求められているかが分かっていたことが良かったです。
生徒:Airbnbは現在ではテクノロジー会社ではなくマーケティング会社と捉えられることが多いのでは?
ブライアン:良い質問です。
アルフレッド:現在も特権技術を持っていますか?
ブライアン:はい。
アルフレッド:他と差別化できる要素はありますか?
ブライアン:はい。
アルフレッド:ネットワーク効果はありますか?
ブライアン:はい。
アルフレッド:プライシングの力は?
ブライアン:はい。
アルフレッド:良いブランドになっていると思いますか?
ブライアン:そう思います。
アルフレッド:独占企業ですか?
ブライアン:その質問にはお答えできません(笑)。
(会場笑)
アルフレッド:ネットワーク効果がある会社は進みが早いです。人はあなたはラッキーだと言うのでは?
ブライアン:セコイヤ・キャピタルのドゥ・レオニーに言われたことがあります、「あなたの仕事は最悪ですね」と。どういうことだ?! と思いました。彼のポートフォリオの中で、私は最悪だと彼は言いました。
彼はこう言いました、「君のところはテクノロジー会社だろ?」。私、「もちろんです」。彼、「つまり他の会社と同じような問題を抱えている。しかし、190か国に展開しているのだから、どのように国際化するかをしっかり考えるべきだ。すべての国で人を雇うべきでは?」。
Airbnbは北朝鮮、イラン、シリア、キューバを除く世界の全ての国で展開しています。私達はただ世界中から支払を受けるペイメント会社となっていました。
カリフォルニア州でビジネライセンスを取らなくてはならなかったり、シリアスなリスクと欠落がありました。彼は言いました、「大抵の場合こうなると会社は潰れるよ。信頼と安全を考えなさい」。
私達には425,000人の人が見知らぬ他人の家に泊まっている。テキサス出身の女性が中東の国に1人で滞在する状況を考えてみるべきで、その逆も然り。
文化や言葉の違いにより、お互いを理解出来ずに問題に発展するかもしれない。425,000人の人を心配するということは、大体オークランド市長が責任を持つ市民の数と同じ位です。
そして規制の問題。私達は30,000の都市で展開しています。どの街にもその街のルールや法律があります。しかも、このようなテクノロジーが生まれる前に制定された法律なので、柔軟性のない法律が問題となることもある。
そしてサーチ、検索結果の問題。Googleは優れたサーチ能力を保持していますね、何かキーワードを打ち込めばしっかりと求めている答えを出してくれる。しかしAirbnbではその人が気に入る検索結果はひとつかふたつしかないはずです。
パリには40,000のホストがいます。誰もが気に入る最高のパリの滞在先など存在しません。その人が求める条件の部屋を検索でパッとだすことができるテクノロジーが必要です。Facebookはデジタルプロダクトで、彼らのプロダクトはデジタルウェブサイトです。私達のプロダクトはカスタマーの現実世界での宿泊体験です。
オンラインプロダクトであるだけでなく、オフラインのプロダクトでもあるのです。つまり私達は世界規模のテクノロジーと、デザインと、ブランドである必要があります。
だって、私達は人の家に泊まっても危険ではないですよ、その土地の為に役立っているんですよと政府にも理解してもらいたいですし、人々に私達のアイディアがクレイジーではないと理解してもらう為には安全と信頼のレベルを世界トップクラスにしておく必要があります。今の話は文化にはまったく関係ありません。Airbnbがマーケティング会社だと思ったことはありません。
アルフレッド:ありがとうございました
ブライアン:ありがとうございました。
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