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河合敬一・Google Maps for Business(全2記事)

流されてしまった思い出を残したい--Googleマップの「タイムマシン機能」は震災後の日本で始まった

2014年に公開された新バージョンのグーグルマップ。その中には「タイムマシン機能」「3D地図モード」など、全く新しい新機能が加わった。ビジネスを含めた日常のシーンで、このテクノロジーはどのように活用されていくのか? Google・河合敬一氏が解説する。

世界中を3Dで楽しめる新グーグルマップ

河合敬一氏:そして、もう一つ私どもが近年取り組んでいるのは、より豊かな地図をつくりたいということです。

先ほど少し申し上げたストリートビューのように、現実は三次元なのだから、地図を二次元の紙に押し込めていたのをそのままオンラインに持ってきたのではつまらない。ぜひ三次元の世界を三次元で再現するような、そんな地図をつくれないか? そんな取り組みをしています。

今年の前半に皆様のところにお届けをしました全く新しいグーグルマップ、お使いいただいたことはあるでしょうか? 実はあれには、3Dの地図のモードが入っています。簡単にビデオにまとめていますので、どんなことができるのか少しご覧いただきたいと思います。ビデオになっています、どうぞ。

(ビデオ開始)

(ビデオ了)

河合:今ご覧いただいたのは、実際に撮影した映像ではなくて、撮影した写真をもとにしてつくった世界の3Dのモデルから起こした映像です。

夕焼けとか太陽の位置などは少し特別にやり直しましたが、それ以外は全て皆さんのコンピュータでグーグルマップをお使いいただくと、今と同じ画像をご覧いただけます。

グランドキャニオンであったり、アフリカの砂漠であったり、あるいは東京の3Dのビューであったり、多くの方は空からご覧になるのですが、実は傾けるボタンをご存じない方が多いですけれども、右側にちょっと傾けるボタンがありまして、あれを押していただくと、3Dで街が立ち上がってきます。まさに三次元の地球を三次元で再現したい、という新たな地図への試みです。

これだけ大量の世界中のデータを、そのまま手で一つ一つビルを描いていたのでは到底追いつきません。これにはやはりクラウドの大きなコンピュータの力が後ろで働いています。ご覧いただいているのはワイヤーフレームと私どもは呼んでいますけれども、これを自動でつくっている、街の3Dのモデルを自動で一度につくっているところの途中の画像です。

どうやっているかというと、人間は目が二つあってそれのおかげで立体で見えます。それと同じで、これはどうやってつくるかというと、飛行機を街の上に飛ばします。2回ぐらいちょっとずらして飛ぶんです。そうすると、二つの目で上から見ているのと同じなので、下のビルが立体を持って見えてくるようになるわけです。

そういうふうに、重ね合わせのあるように飛行機で何度も写真を撮って、その出てきた大量の画像をコンピュータ、クラウドで、3Dで人間の目で立体で見るのと同じように二つの目で見たかのように計算をさせますと、このように地上の3Dのビルが立ち上がってくるわけです。山、谷も全く同じようなつくり方でつくっています。

グランドキャニオンのあの崖下までの切り立った壁も、空から写真を撮って立体視をすることによって高さがわかってくる。それによってあの美しい三次元の画像がつくられているわけです。まだまだ対象は多くないですけれども、都市も拡大をしています。日本でも東京と千葉県、そういった首都圏と仙台と、幾つかの都市でご覧いただけるようになっています。

懐かしい街並みを見渡せるタイムマシン機能

そこまでが三次元の取り組みで、私どもが次に取り組みたいと思っているのが、時間の概念を何とか地図に入れていきたいと思っております。街、そして人の営みというのは大きく変わっていきます。この10年でも私どもの街、自分たちの周りは随分たくさん変わりました。これに気づかされたのはやはり震災がきっかけで、私どもは今年ストリートビューのタイムマシンという機能を出しました。

過去に戻ってストリートビューの画像がご覧いただけるようになる機能です。私どもも気づかなかったのですけれども、震災のときに最初に何を言われたかというと、おうちを流された方がたくさんいらっしゃる。おうちを流されてしまうと何が流されるかというと、実際の家だけではなくて、そこの中にあった、例えばアルバムだったり、思い出の品だったり、思い出が流されてしまうのですね。

そのときに私どもが最初に言われたのは、ストリートビューが私の家が映っている最後の写真なので、ぜひそれを残しておいてほしい。ボランティアの方が避難所を回ってストリートビューの写真を配っていらしたのだそうです。

それでたくさんの方から残してほしいというお声をいただいたので、そういうことであればということで、今年グーグルマップの中で、私どもが撮れているのは当然2007年ぐらいまでしか戻れないのですけれども、それまでの7年間ストリートビューが積み重なってきた部分に関してはご覧いただけるような、そんな機能を日本発で、世界中でご覧いただけるようになりました。

日本の東日本の大震災も大きかったですけれども、ニュージーランドもちょうど東日本大震災の1カ月前にクライストチャーチで大地震がありまして、そちらでも大変ご好評をいただきました。

世界中の変わりいく街並み、それはもっと個人的な、例えば、私のおばあちゃんが亡くなる前にいつも玄関のポーチに座っていた、それがいつでもストリートビューで戻ると会えるので嬉しい、そういったようなお話まで、時間と、そして街の移りいく流れというのは、やはりとても思い出、個人の思いに近いものなのですね。私どももこれで初めて知りました。そのような時間の軸というのも地図に加えていきたいなと思っているわけです。

地図、そしてストリートビュー、そして三次元の写真、

そしてその上にさまざまなデータを重ねることで、グーグルマップは皆様のお役に立ちたいと願って開発を進めているわけです。

グーグルマップ活用でコスト削減を実現する海外企業

私どもはそのようにずっとイノベーションを続けているわけですけれども、ここになって近年それを普段、自分たちが個人で使っているものをもっとビジネスでも使えないか?

先ほどお話しもありました。そのような形でビジネスにご活用していただいているケースがたくさんあります。ここから少しギアを変えて、3つの事例を皆様にお話ししたいと思います。

3つの課題を、グーグルマップという一つの解決策で皆解決をされました。

Ergon Energyという、オーストラリアで最大の電力会社さんの話が最初の事例です。私どもも最近まで知らなかったのですが、電力会社さんというのは山を越えたり、いろいろなところに電線を張っていらっしゃるわけです。例えばこの会社さんですと、15万キロに及んで電力の送電網があるわけです。

何が困るかというと実は木が伸びてきますよね。だんだんと周りに生えている、森を通している送電線の。そうすると、それがあまり伸びてしまうと電線を切ってしまうわけです。ということで、どこにどんな植生があって、どんなふうに伸びているのか、どこの木を切ったらいいのかということをわかるために、大変多額の、監視のための投資をされていたわけです。

これが、グーグルマップを使うことによって5年で60億円削減されました。そんなケースが一つあります。

また、もう一つは、

これはイギリスのSutton & East Surrey Watarという水道会社さんのケースです。

水道会社さんは、当然メンテナンスのために現場の作業員の方がたくさんいらっしゃって、それが一日、朝、全員事務所に来て、では何とかさん、今日はここに行ってください、今日は何とかさん、ここに行ってください、終わったらこっちをやってください。そういうような朝礼をして、みんな散って、また戻ってきて、時間が空いたからもう1個行こうかということをやっていらっしゃるのですが。

これもグーグルマップを使って大きな効率化を成し遂げられました。地図の上に情報を重ねてくると見えてくることがあるわけです。

それがErgon Energyさんですと、

15万キロの送電網をグーグルマップの上にお書きになって、そしてまた、ご自身で飛ばしているヘリコプターとか小型機の写真を上からばーっと、これもまた膨大なデータになるわけですけれども、これを以前はスプレッドシートに手で落としていたわけです。

これをそのまま地図の上に、ご自分で撮った写真をグーグルのクラウドに預けていただいて、それを重ねて、その上に送電網のネットワークを書くことによって、今ここが危ない等、去年と今と比べるとここが伸びてきているから、ここを先にやっておいたほうがいいねと、地図で見れば一目瞭然なわけです。それを実現されることによって、何と5年間で50億円ものコスト削減を実現された、そんなような事例です。

使い慣れたサービスだから出来ること

また、Ergon Energyさんの次の事例、水道会社の皆さんもモバイルでそれをご覧いただけるようにしたというところが大きな強みです。

当然ながら、実際の植生を見て木のところに行く。そうすると、どこだっけ? ということになるわけです。それをグーグルマップで、GPSでぱっと今の場所がわかって見れると、その木だねということがすぐわかるようになるわけです。その場でお使いいただけるというのが地図にとっては大変重要なことですので、企業でもモバイルテクノロジーを活用いただけるようになっています。

またそうしたような使い方を伺ったので、私どもはグーグルマップの上で使える、グーグルコーディネートというシステムをつくりました。

これはそれぞれのたくさんに散らばっていらっしゃる現場の作業員さんが、今どちらにいらっしゃって何をしていらっしゃるかが一元的に管理できる、そんなような仕組みです。これをご活用いただいて、先ほど申し上げた水道会社さんは、朝会社に来ることをやめました。

朝、起きて携帯を開くと、きょうはここに行ってこれをやってきてねということが入っているわけです。代わりに、会社にわざわざ行って、そこから向かうことなく、時間も短縮できて、かつ、たまたま早く終わったのでまたどこか行こうかというのもリアルタイムで、その場でオーダーが受けられるようになり、そのおかげで大変な効率化を実現されたというケースです。

またこれがグーグルマップという使い慣れた道具でできる、

これがまた、ご好評いただいている一つの理由なのかなと思います。全く違うシステムだとまた一つ覚えなければいけない。でも皆さん、グーグルマップだったらわかる、グーグルマップだったら使ったことがある、あるいは地図の上にぱっと書いてあるのであれば、難しいことを見なくても、見て自分がどこにいて、どこに行かなければならないかはすぐわかるよと。

そういうわけで、使い慣れたツールの上に、皆様がお持ちの情報をクラウドに乗せて、重ねて、それによって意思決定が早くなる、それによって効率化できる、そういうような使い方がどんどん広がっています。

ソフトバンクが導入した、グーグルマップを用いた営業の効率化

最後にご紹介する事例はソフトバンク様が今まさに取り組んでいらっしゃる地図とさまざまなグーグル、そして自社で開発されている営業系のシステムとの組み合わせで、リアルタイムに営業現場の効率化を図っていらっしゃる、

そんなような取り組みをされていらっしゃるそうです。大変先進的な取り組みかと思います。ぜひ私どもも使いたいというような、羨ましいような、すばらしいシステムをおつくりになっていらっしゃると伺いましたので、そのビデオをご覧いただければと思います。

(ビデオ上映)

男性1(イソノ):営業のイソノです。きょうは今月の最終日なので、1件でも多く申込書をいただいてくるよう、部長から指示がありました。

あ、そろそろ出発する時間のようです。

商談が早く終わったのでもう1件アポを入れたい。そんなときでも新しいSFAなら大丈夫。今いる場所とSFAの案件情報で連携させ、今、訪問すべき企業を自動で表示してくれます。G社にアポを取ってみようと思います。

商談はうまくいったのですが、申込書は横浜本社まで取りに行くように言われてしまいました。私は次のアポがあるので、すぐに取りに行けません。横浜にいるメンバーがいないか確認してみます。

新しいSFAならチームメンバーのいる場所と状況が一目でわかります。

タムラさんなら空いていそうです。

イソノ:……お疲れさま。G社の横浜本社に申込書を取りに行ってほしいのだけど、大丈夫かな?

女性1(タムラ):もう帰るところだったので、大丈夫です。

イソノ:ありがとう。よろしく。

タムラ:新人営業のタムラです。突然、先輩に言われて、知らないお客様を訪問することになったのですが、新しいSFAなら大丈夫。お客様の企業情報や案件の情報、訪問の経路まで自動で教えてくれます。

よし、頑張ろう!

先ほど訪問が完了。無事に申込書をいただけました。早速SFAに登録します。新しいSFAならGPSで今いる場所を判断し、自動的に案件情報を表示、スマホで結果を入力するだけで報告は完了です。

男性2(カワモト):部長のカワモトです。

新しいSFAは、顧客の売上や営業状況が見える化できるので戦略が立てやすくなりました。メンバーの状況もリアルタイムにわかるので、フォローもアドバイスもスピーディーに行えます。

新人のタムラが横浜で申込書を受領したようです。二人がうまく連携できたおかげです。

これで目標を100パーセント達成。きょうの打ち上げではおいしいビールが飲めそうです。

(ビデオ了)

河合:さまざまな取組みが今まさに始まっており、そしてさまざまな課題を地図、あるいは見えるようにすることによって解決しよう、そんな動きが進んでいます。

地図の進化もまだまだここからだと思います。大きなコンピューティングの力、ネットワークの力と、そして、見えるようになることの強み、これを私どもは引き続きイノベーションを続けてまいりたいと思います。皆様のお手伝いを少しでもしたいと思って努力を続けてまいりたいと思います。今日はお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。

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