2024.10.10
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マララ・ユスフザイ氏 ノーベル平和賞受賞スピーチ(全1記事)
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マララ・ユスフザイ氏:もっとも慈悲深く、恵み深い神の名において。両陛下、殿下、ノルウェー・ノーベル賞委員会の名だたるみなさま、親愛なる姉妹兄弟たち。今日は私にとってとてつもなく喜ばしい日です。こんなすばらしい賞を頂けるとは、胸が詰まる思いです。
私を支持し続け、愛してくださったみなさまに感謝します。世界中からのたくさんの手紙やカードを送ってくださり、今もなお送ってくださっていることに感謝します。温かい励ましの言葉に力づけられ、そして勇気づけられています。
両親の揺るぎない愛に感謝します。自由の羽をもがず、羽ばたかせてくれた父に感謝します。
(会場拍手)
忍耐強くあること、そしていつでも真実を語ることを学ばせてくれた母に感謝します。それこそが、私たちが強く信じているイスラムの真の教えです。自分を信じること、そして勇敢であることに気付かせてくれたすばらしい先生方にも感謝いたします。
この賞をいただく、最初のパシュトゥン人であり、最初のパキスタン人であり、そして最年少であるということを誇りに思います。
(会場拍手)
それと共に、それと同時に、弟たちといまだにケンカをしているようなノーベル平和賞受賞者も私が初めてでしょう。
(会場笑)
平和で満ちあふれる世界を願っていますが、私と弟にとってはなかなか険しい道のりです。
(会場笑)
子供の権利活動家の第一人者であるカイラーシュ・サティヤールティーさん、実に私が生きてきた2倍もの年月を活動されて来た方と共にこの賞を受賞したことはとても名誉に思っています。私たち、インド人とパキスタン人が手を携え、子供の権利のために戦うが共に活動できることを誇りに思います。
(会場拍手)
親愛なる兄弟たち、姉妹たち、私の名前はパシュトゥン人のジャンヌダルク、マイワンドのマラライにちなんで名付けられました。マララという言葉には、打ちひしがれた嘆きや悲しみという意味があります。しかし、私の祖父はその名前に幸福という意味を付け加えてくれて、私をこう呼んでくれています。世界一幸せな少女、マララ、と。
私は今日、この日、解決すべき問題にみんなで共に立ち向かうことができるのは、とても幸せです。
この賞は私だけに与えられたものではありません。教育を求めながらも、忘れ去られている子供たちのためのものです。平和を求めながら、恐怖の中に立っている子供たちのためのものです。変化を求めながら、声を上げられない子供たちのためのものです。
私は子供たちの権利のためにここに立っています。子供たちの声を上げるために。子供たちを哀れむ時ではありません。哀れむ時ではないのです。これで最後にするのです。これで最後になるように、行動を起こすのです。行動を起こせば、教育の機会に恵まれない子供をこれ以上見ることはないのですから。
(会場拍手)
人々は私をさまざまな呼び方で呼びます。タリバーンに撃たれた少女と呼ぶ人もいます。自分の権利のために戦う少女だと呼ぶ人もいます。今では、ノーベル賞受賞者、と呼ぶ人もいるでしょう。弟たちはいまだに偉そうでうるさい姉ちゃん、と呼んでいますが。
(会場笑)
私からすれば、私は、すべての子供が平等に教育を受けられる姿が見たい、女性が平等の権利を受けれる姿が見たい、隅々まで平和な世界が見たいと願う、ただの熱心な、頑固ですらある、1人の人間です。
(会場拍手)
教育は人生の恩恵です。人生に必要なものです。私はそれを17年間の人生で身をもって知っています。私は、愛する故郷、スワートで、学び、新しい発見することが大好きでした。特別な時には友人と、花や模様を描く変わりに、数式や方程式をヘナで腕に装飾したものです。
私たちは、教育に飢えていたのです。未来は教室のなかにこそあったのですから。私と友人は、共に座り、学び、読んだものです。きっちりした制服を着て、目の奥に大きな夢を携えるのが大好きでした。私たちは両親に誇らしく思われたかったのです。そして、優秀な成績を取ったり、成果を残したり、という、男子にしかできないと一部の人に思われていることだって、十分できるのだということを証明したかったのです。
しかし、日々は一変しました。美しい観光地であったスワートは突如、テロリズムの舞台となったのです。400以上もの学校が破壊されたのは、私がたった10歳の時でした。女性たちは鞭で打たれ、人々は殺されたのです。私たちが抱いていた美しい夢は、悪夢へと変わったのです。
教育は権利ではなく、犯罪となりました。少女たちは学校へ行かなくなりました。私の世界が突如として変わってしまった時、わたしのなかでなにを優先すべきか、ということも変わりました。私には2つの選択肢がありました。沈黙を守り、殺されるのを待つか、声を上げて殺されるか、です。私は声を上げる方を選びました。
(会場拍手)
無慈悲な殺戮とイスラムの名を汚す行為、私たちの権利を否定するテロリストの権利侵害を、ただ黙って見ていることは私たちにはできませんでした。
私たちは声を上げ、彼らに語りかけたのです。聖典コーランでアラーの神がおっしゃったことがわからないのか、と。人1人殺めることは人類すべてを殺めるに値する、という教えを。ムハンマド、平和を共にする慈悲深い予言者が、自分も人も傷つけていはいけないと説いているのを知らないのですか、と。そして、コーランの最初にある、「読め」という意味の「イラク」という言葉を知らないのですか、と。
2012年に、テロリストはここにいる私の友人と私を制止する為にスクールバスを襲いました。しかし、彼らの思想や銃弾は勝利しませんでした。私たちは生き延びたのですから。その日から私たちの叫びはさらに大きくなっていったのです。
(会場拍手)
私が自分の話をするのは、珍しい話だからではありません。たくさんの少女たちが抱えているのと同じ話だからです。
今日、私はここにパキスタンから、ナイジェリアから、シリアから“姉妹”を連れて来ました。今日お話した話は彼女たちの話でもあるのです。勇敢なる姉妹、シャジアとカイナートはあの日、スクールバスでテロリストに撃たれましたが、学ぶことは止めませんでした。勇敢なるカイナート・スームロは深刻な虐待と暴力を受け、兄弟を殺されながらも、テロリストに屈服しませんでした。
マララ基金活動を通じて知り合った姉妹もここに来ています。シリアの勇敢な姉妹である、メゾンは難民としてヨルダンで暮らし、難民キャンプを行き来し、少年少女に学ぶことのすばらしさを教えています。ナイジェリア北部出身のアミナはボコ・ハラムの脅威にさらされています。少女は学校へ行きたいと望んだだけで、脅され、付きまとわれ、誘拐すらされるのです。
私は一少女としてここに立っています。一少女として、です。5フィート2インチ(約158センチ)の1人の人間として、ハイヒール込みでいいとおっしゃってくださるなら、ですが(笑)。ハイヒールなしではたった5フィート(152センチ)なので。
私の声は私だけの思いではありません。私は1人で声を上げているのではありません。私は1人ではありません。私はマララですが、シャジアでもあります。私はカイナートです。私はカイナート・スームロ。私は、スームロ。私は、メゾン。私は、アミナ。私は教育に恵まれない、6,600万の少女たちです。そして今日、私は自分自身の声を上げているのではありません。6,600万の少女たちの声を上げているのです。
(会場拍手)
私に、なぜ少女たちが学校へ行く必要があるのか、と聞く人がいます。なぜ学校へ行くことがそんなに重要なことなのか、と。私にとっては、なぜ彼女たちが学校へ行かなくていいのか、ということのほうが重要なことです。学校へ行く権利がないのか、と言うことのほうが。
親愛なる兄弟姉妹たち。この世界の半分はめまぐるしい発展と発達を遂げています。しかし、何百万もの人々が戦争や貧困や権利侵害に苦しむ国が、まだまだたくさんあるのです。
争いのなかで罪のない人々が命を落とし、子供たちが孤児になっているのを目にします。シリアやガザ、イラクではたくさんの人々が難民になっています。アフガニスタンでは自爆テロと爆撃により多くの家族が命を失っています。
アフリカの子供たちの多くは、貧しさの故に教育にまで手が回りません。ナイジェリアの少女たちは学校に行く自由がありません。
カイラーシュ・サティヤールティーさんがおっしゃったように、多くのパキスタンやインドのような国の子供たちは、社会的に禁じられている、もしくは児童婚や児童労働を強いられているため、教育の権利が奪われているのです。
大胆で、自信に満ち、医者になることを夢見た私と同じ歳の学友が居ました。しかし、彼女の夢は夢と散ったのです。12歳の年に、彼女は結婚させられたからです。彼女はすぐに子供を身ごもったのですが、その時彼女はまだたった14歳の子供だったのです。彼女はいい医者になれたはずです。でも、なれなかった。彼女が女の子だったからです。
私がノーベル賞の賞金をマララ基金に寄付した理由が、この話にあります。女の子たちに質の高い教育の機会を与えるためにです。世界中あらゆるところ、どこにいる女の子にでもです。そして、彼女たちの声をとどろかせるためにです。まずはパキスタンに学校を設立する所から、とくに、私の故郷であるスワートとシャングラに学校を設立したいと心に決めています。
(会場拍手)
私の地元には女の子が通える中学校がないのです。中学校設立は、私の願いであり、私の公言していることであり、私の挑戦です。学校ができれば、私の友人や姉妹がそこに通え、質の高い教育を受けることが出来ます。夢を叶える機会を手にすることができるのです。
これは私の出発点ですが、私の終着点ではありません。すべての子供たちが、すべての子供たちを学校で目にすることができるようになるまで、終わることはありません。
親愛なる兄弟、姉妹、かつて、マーチン・ルーサー・キング牧師、やネルソン・マンデラ大統領、マザー・テレサ、アウン・サン・スーチーのような、変革をもたらしたすばらしい人々はこの舞台に立ってきました。カイラーシュ・サティヤールティーさんと私が踏み出した第一歩も、新たな変革をもたらす第一歩、永続的な変革をもたらす第一歩となることを願って止みません。
(会場拍手)
私の大きな望みは、教育の権利についての戦いがこれで最後になることです。もうこれで終わりにしましょう。私たちはすでにできることは始めているのですから、そろそろ躍進するのです。
世界の指導者たちに教育の重要さを語るときではありません。とっくに知っているでしょうから。指導者たちの子供たちはみないい学校へ行っているのですから。自分たちの子供だけでなく、世界中の子供たちのために行動を起こしてもらうのです。世界中の子供たちの教育のために一致団結し、最優先事項として考えてもらうのです。
15年前、世界の指導者たちはミレニアム開発目標(MDGs)として、世界的な最終目標を掲げました。それに従い、さまざまな進歩が見られました。カイラーシュ・サティヤールティーさんがおっしゃったように、学校に行けない子供の数は半減しました。しかし、世界は初等教育にしか着目していませんし、まだまだ目が行き届いてはいないのです。
2015年に国連で世界中の代表が次なる目標、持続可能な開発目標を掲げるために一堂に会する機会があります。そこで次世代のための世界規模での目標を掲げるでしょう。
世界は基本教育のみの教育でよしとはしません。もうしないのです。なぜ指導者たちは発展途上国の子供の教育が、基本教育で十分とするのでしょうか。自分たちの子供たちが同時期に代数や数学、科学や生物の宿題をこなしているというのに。
指導者たちはすべての子供たちに質の高い初等教育と中等教育の恩恵が、無償で与えられるように働きかけなくてはいけません。
(会場拍手)
実行不可能だとか、お金がかかるだとか、難しすぎるだとか言う人もいるでしょう。もしくは、不可能だとすら。しかし、世界が考えるときが来ているのです。
親愛なる兄弟、姉妹、いわゆる大人の世界では理解できることなのでしょうが、私たち子供にはできないことがあります。なぜ強い力を持つ国は戦争をいとも簡単に生み出すのに、平和は生み出せないのでしょうか。
(会場拍手)
いとも簡単に銃を与えるのに、本を与えられないのでしょうか。戦車はいとも簡単に作ってしまうのに、なぜ学校は建てられないのでしょうか。
私たちは今を生きています。私たちは不可能はないということを信じています。45年前に月に到達した私たちは、火星に到達しようとしています。この21世紀に、私たちはすべての子供に質の高い教育を授ける手はずを整えられるようにならなければいけないでしょう。
親愛なる兄弟、姉妹、子どもたち、待っているだけではなにも変わりません。働きかけるのです。政治家や世界の指導者たちだけでなく、私たちみんなが貢献するのです。あなた、私、私たちが。それが私たちに課せられた課題なのですから。
最初で最後の世代になりましょう。空っぽの教室を目にした、最後の世代となりましょう。幼少期を奪われ、可能性を無駄にされた最後の世代に。
少年少女工場で幼少期を過ごした最後の時代、強制的に児童婚させられた最後の時代に、子供が戦争で命を失う最後の時代に。学校の外で子どもを見る、最後の時代に。私たちで終わらせましょう。ここから共に終わらせて行きましょう。今日、ここから、ちょうど今から。今から終わらせましょう。
ありがとうございました。
(会場拍手)
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