2024.10.10
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Chimamanda Ngozi Adichie - World Humanitarian Day 2016(全1記事)
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チママンダ・アディーチェ氏:みなさん、こんばんは。ここに立てて光栄です。
1967年、大体50年ほど前に、私の両親はナイジェリア東部にあるNsukkaという大学街に住んでいました。2人の子供と家、車、友人を持ち、落ち着いた生活を送っていました。
ナイジェリアとビアフラの間で争いが起こりました。数日後には、両親は砲撃や爆撃の音を耳にするようになり、とても恐ろしく、とても近くで聞こえたために、そこから逃げる前に荷物をまとめる時間はほとんどありませんでした。ほとんどの持ち物を置いて逃げてきたのです。
そしてすでに大混雑している街にたどり着きました。落ち着ける場所はありませんでした。難民キャンプでさえもういっぱいだったのです。
父は必死でした。空爆の可能性もあったので、屋外にいたくなかったのです。父はその街の出身者で、エマニュエル・エジークという男性と知り合いでした。エマニュエルはたくさんの人や親戚、家が奪われてしまった人たちでいっぱいの窮屈な家に住んでいました。
父はエマニュエルの家に住まわせてもらうことは難しいとわかっていました。すでに広がっているものをまたそれ以上に広げるのはとても難しいことでした。それでも父はエマニュエルの家のドアを叩きました。エマニュエルは、絶望して暗い表情をし、震えている小さな2人の娘と両親を見てこう言いました。「部屋を用意するよ」と。
私はその時のことを時々考えます。もしあの優しさに出会えなければ、両親は戦争を生き延びられただろうかと考えるのです。
3年間、両親は難民でした。そしてエマニュエルだけではなく、たくさんのおもいやりあふれる人たちの素晴らしい勇気や責任感に助けられたのです。
しかし、両親は単なる難民ではありませんでした。誰も単なる難民ではないのです。誰もそんな単純な存在にはなり得ないのです。けれど、最近の公共の講演などでは、人々を簡単に表現しています。難民とか移民とかそういった言葉で表そうとします。私たちが彼らにそういった名称を与えることは、人間性を奪っているということなのです。人間性の剥奪は馬鹿げています。そして無意識なのです。私にも数年前に起こりました。
私はアメリカからメキシコへ行きました。その時も今と同様に、アメリカの政治情勢は厳しく、移民に対する話し合いが行われ、移民はメキシコ人の代名詞のように扱われることもありました。メキシコ人はみんなネガティヴな見方で表現されていました。メキシコ人が国境で逮捕されたり、何か盗んだり、医療制度でお金を巻き上げたり、病気を持ち込んだりしていると言われていました。
グアダラジャラという美しい街での最初の日に、私は散歩をしていました。そして、仕事や学校に行く人々、笑っている人々、市場で商品を売ったり買ったりしている人々を見ていました。
私は驚いたのです。そして恥ずかしく思いました。アメリカのメディアのメキシコに対する視野の狭い報道に完全に浸かりきっていたと気づいたのです。彼らにも人間らしい生活があることを忘れていました。あの時ほど自分を恥じたことはありません。
私の母国の言葉では、Loveはifunanyaと言い、文学的な翻訳をすると、「見ること」と訳します。今日はこのことをお伝えしたいと思います。今こそが新しい物語を始める時なのです。話しかける相手を本当に理解するという物語です。
違うお話をさせてください。そのお話を違うように話させてください。地球上の人間の活動は新しいものではないと思い出させてください。人間の歴史は活動と混合の話なのです。
私たちは単なる骨と肉ではないと思い出させてください。私たちには感情があるのです。私たちは価値あるものにするために、願いを共有するのです。問題に対する願いです。尊厳は食べ物と同じくらい重要であると覚えさせてください。
困っている人について話す時、彼らがなにを必要としているかだけではなく、彼らがなにを愛しているのかを話させてください。そして、彼らがなにについて怒っているのか、なにが彼らの自尊心を傷つけているのか、なにが彼らを笑顔にするのかということも。
そうすることで、違いはあっても、私たちも彼らも同じなのだということを思い出すことができるでしょう。自分たち自身が同じ状況にいたら、ということをもっと想像しやすくなるでしょう。
私たちは人間らしさを測ることなどできません。私たちの人間らしさとは自分たちのなかで育っていくものです。それが、例え不公平が個人的にはなんの影響も及ぼさないような時でも、その不公平に対して声をあげる力となるのです。周りの人々がよりよくなるならば、私たちもよくなるのだと気づかせてくれるのです。
エマニュエルがしてくれたことと同じで、彼の小さな家が親戚でいっぱいになっているのに、私の両親を迎え入れ、「部屋を用意するよ」と言ってくれたような行動につながるのです。
私はすべての国境を開放してほしいなどという単純なことを要求しているのではありません。それは非現実的です。全員にとって十分なスペースはないでしょう。でももっと行動するための余地はあります。関わり合う余地もあります。約束されてきたことと、達成されたことを繋ぐ余地があります。
エマニュエルはもう部屋はないと両親に言うこともできたでしょう。そう言えるだけの理由が彼にはあったはずです。でも彼は受け入れるほうを選んでくれました。彼がそうした理由は、思いやりでしょう。私たちは人々に場所を与えることができます。そして、今日、世界は苦痛によって恐怖を与えられています。人々に場所を与えることは実現可能なだけではなく、道徳的義務なのです。私たちの時代の道徳的義務なのです。
サミュエル・コールリッジの詩でこのスピーチを終わりにしたいと思います。
「希望なき労働はザルに入れた蜜。目的なき希望は長続きしない」。
ありがとうございました。
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