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ハワード大学 卒業式 2016 バラク・オバマ(全2記事)

黒人の失業率は白人の2倍--オバマ大統領が人種差別をなくすために若者たちに語ったこと

2016年5月6日、オバマ大統領が全米屈指の名門黒人大学であるハワード大学で行った卒業式スピーチ。人種差別をはじめさまざまな課題と戦ってきた先人たちを振り返り、アメリカはかつてよりもいい場所になったと語りますが、まだまだ問題がたくさん残されていることにも触れました。そのなかで卒業する若者たちがなにをなすべきかについて語っています。

名門黒人大学でオバマ大統領がスピーチ

バラク・オバマ大統領:こんにちは、ハワードのみなさん。

みなさんありがとうございます。どうぞお座りください。ハワード大学の学位をとったことは重要なことです。

シスリー・タイソン(注:アメリカの女優。この日スピーカーとして登壇)は、私についてなにかいいことを言ってくれたようですね。

(会場笑)

フレデリック総長、評議員会、学部や事務局や仲間の出席者、ここにいる栄誉ある学位授与者のみなさん、今日1日をみなさんと過ごせることに感謝します。ありがとうございます。

2016年卒業生のみなさん、おめでとうございます。

(会場拍手)

4年前、みなさんがちょうど新入生だったころを振り返ると、私が大統領に再選された夜、みなさんの多くがホワイトハウスに立ち寄ってくれました。今日はあのときの恩を返すつもりでここに来ました。

みなさんの両親や、祖父母、叔父や叔母、兄弟や姉妹、すべての家族や友達がみなさんを応援し、今日この日まで助けてくれました。今日はみなさんの祝福の日なのですが、同様に、彼らにも盛大な拍手をおくりましょう。

(会場拍手)

ここで寮同士の対立を煽りたいのではなく、どの寮生がいるのかということを知りたいのですが、クアッド寮のみなさん、いますか? アネックス、ドリュー、カーヴァー、スロー、タワーズ、メリディアン(注:大学の寮の名前)。……メリディアンよ、安らかに眠れ。

(会場笑)

最初のパイオニアが、最後の人にならないように

みなさん今日とても興奮しているでしょう。少し疲れているかもしれません。何人かは徹夜をし、自分のクレジットが間違っていないか確認したでしょう。何人かはHo-Chi(注:ハワード大学内にある中華料理店)で夜2時まで起きて、そこで指にマンボソースをつけていたかもしれません。

(会場笑)

しかしながら、今日ここに来たみなさんはこの日のためによく勉強してきました。いくつかのレベルの高い授業を行ったり来たりし、グリーク・ライフ(注:大学の社交団体)に行き、クラブでは楽器を鳴らしスポーツをしてきたでしょう。

ボランティアをしていたのかもしれません。あるいは、1つ、2つ、3つの仕事を持ったかもしれません。生涯続く友情を築き、そして自分が何者であるかを正しく発見したでしょう。「ハワードの忙しさ」は、あなたの大志や目的を軌道修正したかもしれません。ハワード大学の卒業生の長い系譜に連なる一部であるということです。卒業生の何人かは今日登壇し、何人かは聴衆席に座っています。

解放黒人局が解放宣言の4年後にハワード大学を設立し、達成と責任の精神によってこの大学を定義づけました。これは南北戦争の2年後のことです。

彼らは、この大学をあるビジョンと共に設立しました。そのビジョンというのは、我々の運命を性別や宗教、人種、信条によって決められてしまわない国であるように、そして、あらゆる意味で、個人あるいは集団の夢を追求することが自由であるように、というものです。これこそが、ハワード大学をアフリカ系アメリカ人の知的な生活の中心地たらしめている精神です。

この大学は、多くのパイオニアを生み出してきました。最初の黒人の文学賞受賞者や、最初の黒人の最高裁判事です。しかしながら、この大学のミッションは、最初のパイオニアを輩出するのではなく、それが最後のものとならないようにすることにあります。

無数の学者や研究者、芸術家、リーダーたちが、ここでそのためのトレーニングを受けてきました。何世代にもわたって、多くの男女がここの中庭を歩き、我々の政府を変革する力となり、病気を治療し、そして黒人の中産階級を育て、市民権を前進させ、我々の文化を形成してきたのです。

アメリカは私が卒業した時よりもいい場所になった

すべてのアメリカ人にとっての変革の種は、ここでまかれました。私が今日お話したいのは、このことなのです。

私は、最初に大統領に選出されたときのことを思い出します。2016年卒業のみなさんのほとんどが、ちょうど高校に入ったばかりの頃です。今日、みなさんは大学を卒業します。私はよく歳をとったと冗談で言っていましたが、今や、本当に私は歳をとったということを実感しています。もうこれは冗談ではありません。

こうしてみなさんを見ていることが、ある視点をもたらしてくれます。私が今まで人生のなかでずっと見てきたものを思い出させるのです。だから、物議を醸すかもしれない言葉から始めましょう。今の政治上の修辞学や、論争は置いておいて、もう少し物議を醸すかもしれない言葉から始めましょう。つまり、こういうことです。アメリカは私が大学を卒業した時よりもいい場所になっているのです。

(会場拍手)

それは私が就任した時からたまたまよくなっただけかもしれません。

(会場笑)

しかし、これは長い物語です。そして別の演説の別の論議になるでしょう。しかし、私が思うには、1983年に私が大学を卒業した時、ニューヨーク市はアメリカでもっとも巨大な都市で、そこに私は住んでいて、10年もの間、犯罪や劣化、ほぼ破産に近い状態に耐えていたのです。

多くの都市は似たような様相でした。当時は何年間も経済的停滞にあり、外国の石油の締め付けがあり不況でした。失業率が11パーセントにも上っていました。自動車産業は海外との競争で弱体化していました。

私は服や髪型をちゃんとするところから始めました。私は自分の写真すべてを削除しようとしました。おかげで見た目はよくなったと思いました。

(会場笑)

でもそれは間違っていましたね。

私がポスト人種差別主義の世界を作ったわけではない

私が1983年に卒業してから、貧困率は下がります。学位を持ったアメリカ人の比率は増えました。犯罪率は下がりました。アメリカ国民はルネサンスのようなものを享受したのです。より多くの女性が戦力となり、そして彼女たちは多くの収入を得ました。10代の妊娠率を半分に下げました。また、アフリカ系アメリカ人のドロップアウト率を60パーセント削減し、そしてほとんどのみなさんがポケットにコンピューターを持ち、ボタンを押すだけで世界に触れることができます。

1983年、私は大学の学位を取得したアフリカ系アメリカ人の10パーセントにも満たないうちの1人でした。今日、あなたたちの世代では、学位取得は20パーセント以上に上っています。アメリカは以前よりよくなっています。世界は以前よりもよくなっています。

ベルリンでは壁が倒され、鉄のカーテンはばらばらになりました。卑劣なアパルトヘイトも終わりました。ベルファストやロンドンの若い世代も、IRAの爆弾について考えることなく育っています。

この16年の間、平等な結婚ができないような国が2ダースほどありました。世界中ではより多くの国々が民主主義の中で暮らしています。10億人の人びとが極貧からすくいあげてきました。世界中から半分以上児童死亡率を減少させました。アメリカはよくなっていますし、世界もよくなっています。そして私が思うに、民族同士の関係も私が卒業した時よりよくなっています。これが事実です。

ですから私の選挙は、ポスト人種差別主義の世界を作ったわけではない。私は誰がこの考えを普及したのかは知りませんが、少なくとも私ではないのです。しかし選挙では、次選もあったのですが、少なくとも最初の選挙においては、人々は間違ったことをしたと思ったかもしれません。

しかしながら次選では、次第に彼らはなにを得ようとしているのかわかってきました。選挙によって、人々の姿勢というものが変化してきたことが示されたのです。最初の開会講演では、私はちょうど60年前には、私の父親はワシントンD.C.のレストランのいずれかにおいて給仕されることはなかったかもしれない、とお話しました。

次世代の500の企業と言われるなかに、黒人のCEOはいなかったのです。そして黒人の裁判官もわずかでした。ラリー・ウィルモアが先週指摘したように、多くの人々は、黒人はクォーターバックになるような道具であるとさえ考えなかったのです。かつてブルズにいたマイケル・ジョーダンは、稀有な偉大なバスケットボール選手であっただけでなく、今では彼はチームを所有しています。

私が卒業した時は、テレビで見る主な黒人の英雄はMr.Tでした。ラップやヒップホップはカウンターカルチャーで、アンダーグラウンドのものです。今や、ションダ・ライムズは、木曜夜番組を所有していますし、ビヨンセは世界を動かしています。

エンターテイナーだけでなく、プロデューサー、スタジオの責任者までいます。もはや中小企業の所長だけではなく、我々はCEOであり、我々は市長でもあり、我々は代表者でもあり、アメリカ合衆国の大統領にもなれるのです。

(会場拍手)

これまでの進歩を否定してはいけない

私は、その差別というものが存在しなくなるだろうとは言いません。人種差別主義者は存在します。不平等も存在します。ですが心配しないでください。私は差別がなくなるように努力します。

しかし、2016年卒業生のみなさんに、今どのような時代にいるかをお見せしたいのです。

もし、みなさんが歴史のなかでどの時代に生まれるか選ばなければならないとしたら、そしてその先にはなにが起こるのか知ることができないとしたら。

どんな国籍、性別、人種、あるいは貧しいか富裕か、ゲイかストレートか、あるいはどのような信条のもとに生まれるでしょうか。きっと100年前を選ぶことはありません。50年代も、60年代も、70年代も選ばないでしょう。

みなさんは今この時代を選ぶはずです。もし、存在する時代を選べるのなら、ロレイン・ハンズベリー(注:アメリカの黒人女性作家)の言葉にあるように「若く才能があり黒人である」みなさんは、今のアメリカを選ぶでしょう。

このような進歩に言及するのは重要です。というのは、どれだけ遠くから我々は来たかということを否定することは、個々人の奇跡的な達成を否定することです。すでに言及したような偉人たちだけでなく、あなた方の母親と父親、偉大な祖父母に対してもそうです。彼らは、汗水流して働き、そして苦しみ、それを乗り越え、今日の日を可能にしたのです。

私は、みなさんに自己満足させるのではなく、行動を起こさせるため、駆り立てるために言っているのです。というのは、まだやるべき仕事はたくさんありますし、旅すべき長い道のりがあります。アメリカは、みなさんが喜んで、幸福にその仕事を引き受けてくれることを望んでいます。受け取ってくれることが必要なのです。

みなさんはやるべき仕事があるでしょう。だから、今はパーティを楽しんでください。というのは、これから忙しくなるからです。

若者にはたくさんの解決すべき問題がある

我らの経済は大きな危機から回復しました。しかしながら、様々な人種の民衆がいて、いまだに傷ついている人々がいます。彼らは、灯をともすだけの稼ぎのある仕事を見つけることができず、引退した後に備えるだけのことがいまだにできません。いまだに、経済的な機会創出の場でも人種の差があります。

失業率は5パーセントほどですが、黒人はだいたい9パーセントにもなります。白人の少年少女よりも、黒人の少年少女が高校と大学を卒業する割合が低いという結果的な差もあります。ハリエット・タブマン(注:アメリカの奴隷解放運動家)は、1920年代の人ですが、いまだにジェンダーギャップがあります。黒人女性は白人男性が支払われる賃金の66パーセントしか稼げないのです。

あまりにも多くの黒人少年少女が、十分な資金源のない学校から牢獄へと渡されているという不公正さもあります。また、これがだんだん悪くなるという側面もあります。私が大学にいた頃は、50万のアメリカ人が獄中にいました。今日では、220万の人々がいます。黒人は6倍ほど監獄にいる割合が高いのです。

21世紀になっても、世界はみなさんを脅かすものに対して挑戦をしています。病気や内紛といった昔の災難を解決することに挑戦しているのです。テロリズムや犯罪の変化に対する新たな挑戦もあります。

このような間違いをなくしましょう。2016年の卒業生のみなさん、みなさんにはたくさんのなすべきことがあります。そして、しばしばこれらの挑戦は複雑すぎて取り組みにくいように思われるでしょう。しかし、挑戦することにおいては、みなさんの世代は、それまでの世代よりもずっといい場所からスタートできます。どのようにこれらの挑戦と出会い、どのように実行し、どのように変化を成し遂げるかは、みなさん自身にかかっています。

私の世代では、多くの世代のように、自分自身の経験に偏りすぎ、先入観のなかに包まれていて、また、自分の考え方に固執しすぎて求められるべき新たな考え方を得ることができないのです。しかしながら、我々のような、頭の固い、古い人間は、少なくとも、みなさんの旅程に役立つことをわずかながら学んでいます。私の残りの人生では、みなさんのような若いリーダーに、どのように運命をまっとうし、正義と平等と自由の支配の下で、集団の未来を変えるのかという提案をしたいのです。これは、この集団の問題ではなく、みなさんが受け継いだものへの自信のためなのです。

黒人であることに自信を持て

みなさんは黒人であることに自信を持ってください。

私がみなさんの年齢であった時代以降、この国で起こった偉大な改革の1つが、黒人でいる方法は1つではないということの実現なのです。私が十分に黒人であるかどうか、議論の両面を見る余地があるでしょう。

(会場笑)

過去2ヵ月の間に、英国の女王と、ケンドリック・ラマー(アメリカの黒人ラッパー)と大統領執務室で昼食を取りました。そこには拘束服もなくければ、リトマステストもありません。多くの人々は、ハワードがどれほど多様であるかということを知りません。みなさんがここに来たとき、みなさんの何人かは、アイオワ州から来た黒人たちのように見えたかもしれません。

(会場笑)

しかしながら、卒業生のみなさんは大都市や郊外のコミュニティーや、海を渡ってここに学びに来ています。このようなステレオタイプを打ち砕くのです。みなさんの何人かは、バイソンからの長い道のりを来ましたし、何人かは家族における最初の大学の卒業生であるでしょう。

みなさんはそれぞれ違う言葉を話しますし、違った身なりをしています。レイカーズ・ファンもいるでしょうし、セルティックスのファンもいるでしょう。

みなさんより前にこの道を通った人たちは、参考にすべきモデルになります。企業で働き、自分自身のキャリアを始めることもできますし、政界に入るのもよし、政治家たちの組織を運営するのもいいでしょう。全米図書賞を取れる本を書いてもいいですし、『ブラックパンサー(Black Panther)』の新しい連載を始めてもいい。あるいは、タネヒシ・コーテスのように、これらを両方行ってもいいでしょう。

みなさんは自分自身のやり方を創造し、自分の基準や美を設定でき、自分自身の性別を受け入れることができます。我々が失ったひとつのアイコン、プリンスを考えてみましょう。人々はプリンスがなにをしたか知りません。だけれども彼を愛しています。みなさんも彼と同じような自信を手に入れる必要があります。

私の娘が私に「お父さんはお父さんなの」とよく言います。時々、別のバリエーションもあります。「お父さんはお父さんをやるの」。

(会場笑)

というのは、みなさんが行うことはなんであれ、黒人なのです。ですから、自信を持ってほしいのです。

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