2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
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司会:ありがとうございました。本来はもうお時間なんですが、たくさんの方が挙手してくださいましたので、あとお二人、ご質問をお受けしたいと思います。それでは、後ろから2列目のスーツの男性にマイクをお願いします。
質問者4:(スペイン語で)非常にすばらしいスピーチをありがとうございました。あなたの見方では、テレビと政治の関係についてどう思われますか? 現在、ここに多くのテレビ局が来ています。多くのジャーナリストがいます。マスコミの人がたくさんいます。
私は、日本のテレビは政治のテーマについて、深く伝えることはないというふうに思っています。
ホセ・ムヒカ氏(以下、ムヒカ):そうですね。たしかに実際、気をつけなければいけないことはあると思います。私は3日、4日ほど前から日本に滞在しています。私は日本語がわかりませんが、いろいろな絵、図案を見てきました。
それによってさまざまなコミュニケーションがなされています。全般的なかたちで唯一私がこれについて申し上げられることは、当然ながら、私たちは市場社会に住んでいます。文明とその周りには、市場の機能があります。テレビがそれらの全体的なものを示しているとも思いません。
しかしながら、「このクリームを使えばシワがなくなる」とか言って、いろいろなコマーシャル、いろいろなプロモーションをするわけです。「こういうものを買いなさい」というようなことがたくさん言われます。
なぜならば、当然、企業というのは予算を組んで、その製品を売るためのいろいろなキャンペーンしなければならないからです。でも、世界の中においては客観性があります。すなわち、客観性ある名誉ということです。
だけど、中立なんてありえないんです。誰も中立であることはありえません。なぜなら私たちは物事を見るときに、自分が考えることに基づいて、いろいろなものを見るからです。ですから、利害と社会階級があるのです。
そして、情報は人間によって作られるものです。ある意味でテレビはそういった利害関係を映し出すものかもしれません。情報は、そういった人たちによって作り上げられているからです。それは現実かもしれません。
ムヒカ:ですから、しっかり学ぶ必要があります。自分自身の考え方を、いろんな情報源を当たりながら、自分の考えを構築する必要があります。必ず疑いの目を持って、裏を取る必要があると思います。
私たちはマスコミが大きな比重を占める社会に生きています。テレビのない社会はありません。例えば、テレビに出てこないものは、まるで存在しないかのようです。見かけ上は。
しかし、テレビは世論形成に重要です。今、私は学生、大学生に向けて話しています。一般の市民、一般の市井の人々というのはわりと無邪気で、何か言われたことを鵜呑みにして信じてしまいます。
でも、みなさま方はもっと高い教養を持っている人だとすれば、さらに深い洞察をする義務があります。もっと深く考えること。ほかの人が表面的な部分しか見ていないことを、しっかりと見ていく。そういったことをみなさま方がしなければいけません。それが闘争の一部でもあると思います。
私たちは理性で考えなければいけません。しっかり物事を見なければいけません。それに基づいて、現在、社会に何が起きているのかを、深い洞察をすることによって分析し、それをほかの見えない人に伝えなければいけないと思います。
ですから、よく考えてください。そして、口を閉じないでください。ちゃんと伝える手段を、みなさんは持っているんですから。私は好きじゃないですけど、みなさんが毎日毎日使っている、こういう使える道具(注:スマートフォン)があるんですから。
もちろんバカげたことに使うこともできるでしょう。でも、非常にすばらしい高貴な大義のために、この道具を使うこともできるでしょう。
質問者4:ありがとうございました。
(会場拍手)
司会:大変貴重なご質問をありがとうございました。では、残すところ、あと1人の方、お願いします。それを決めるのは大変心苦しいんですが……。では、一番高く挙げてくださっている、セーターをお召しの方にお願いいたします。
質問者5:こんにちは。そろそろムヒカさんは日本語を聞きたいと思っていると思うので、日本語をしゃべらせてもらいます。
(会場笑)
質問者5:ムヒカさんは、この世で一番大切なものは愛だとおっしゃいました。僕も、たしかにそうだと思います。しかし、ときに愛ってものは、やっぱり愛がゆえに闘争とか貧困を生み出してしまうのかな、って僕は思ってしまいます。
例えば、ここに美しいすてきな女性がいるとします。僕は彼女を手に入れたい。でも、また違うところに、いっぱいいろんな男が狙ってるわけですよ。やっぱり僕は、「彼らをいかに倒すか」ってことを考えてしまうんですよね。
ここに僕がもしすべての人を愛したら、やっぱりここにいる男たちと彼女を一緒にシェアするのが一番いいわけなんですけど、それはできない。やっぱりここには闘争が生まれてしまう。で、僕はそのために財力をつけたり、いかに魅力的な人間になるために教養を身につけたり、そういうことを考えます。
で、やっぱりそういうことを考えると、愛がゆえに闘争が生まれるのかなって思ってしまいます。そしてまた、家族ができたとします。家族ができたら、やっぱり人間は自分の家族が一番かわいいですから、ほかの人たちより自分の家族をいい目にあわせたい。だから、おいしいご馳走をしたり、すてきな場所に連れて行ったりするわけです。
そういうことをしていると、やっぱりこういう自分の家族だけをいい目にあわすっていう気持ちが、やっぱり貧困とかを生んでしまうのかなと思ってしまいます。
そういうことを考えたら、人を愛すっていうことは難しいなと思って、また、すべての人を愛すっていうことは同時に、誰も愛してないってことになるかもしれませんし、いかに僕はここにいる人間っていうか、世界のすべての人々を愛すことができるのでしょうか?
ムヒカ:もちろん、あなたの愛に対するビジョンは、非常に個人主義的な考え方だと思います。所有的な考え方だと思います。あなたは好きな女性を自分のものにしたい。手に入れたい。
……でも、彼女に聞かなければいけないんじゃないですか?(にっこりと微笑む)
あなたに征服されたいと思っているかどうか、彼女にも聞かなければいけないでしょう。
質問者5:最近、それでよくもめています(笑)。
ムヒカ:私が思うに、それはちょっと男尊女卑の考え方もあるような気がします。知性的に……。例えば男尊女卑ではなくて、女性が選ぶんですよ。ひょっとしたら気づかないかもしれませんけれども。自分だけが独立している、自分だけで決められるなんて思わないでください。
質問者5:わかりました。
(会場笑・拍手)
ムヒカ:今言っているのは冗談に聞こえるかもしれませんけど、生物科学的に考えれば、彼女も無意識かもしれません。でも、彼女が選んでるんですよ。彼女にとって、子孫を残すとしたら誰と残したほうがいいのかと。
これはバカげたことではありません。ここに(胸に手を当てながら)メカニズムとして、私たちに刻まれているんです。まるで私たち自身が自分たちを支配しているような錯覚があるかもしれませんけれども、自然としてのメカニズムに私たちは動かされているんです。ですから、自然学、生物としての本性を尊重しなければいけないと思います。
おっしゃるコンフリクト(衝突・対立)というのはわかります。でも、生きるということは、コンフリクトを持つことなんです。コンフリクトがない人間は墓場にいる人だけでしょう。生きてる人なら、誰でもコンフリクトは抱えています。
問題は、どうやってそのコンフリクトをマネジメントしていくのか。コンフリクトを持つことは避けません。ですから、みなさんは家族のために、例えば家族を守るために戦うというのは当然です。それはいいことです。
でも、だからといって、ほかの人のために何にもできない、ということではないですよね? ほかの人にも何かができたとすれば、自分と家族にとってもすごく幸せに感じるでしょう。隔離されて、社会の中で生きていくことはできません。
ムヒカ:例えば、私は私のパートナーと、一生懸命、世界を良くしようと思って戦ってきました。それで、子供を持つ時間がありませんでした。
私たちは小さな地区に住んでいます。多くの子供たちがいます。勉強する経済力がない子供たちがいっぱいいます。私たちはそういった子供たちが勉強できるように学校を建てて、国にプレゼントしました。
なぜならば、私たちは子供を作ることができなかったけれど、親がなくて勉強できない子供たちがいるわけですね。生物学的には私の子供はできなかったけれども、彼らは私にとって子供です。
私たちは、それが人間だし、私は人生を愛しているから、そういうことをしています。そういうふうに考えてみてください。自分の子供のことも。
質問者5:ありがとうございます。
(会場拍手)
司会:大変すてきなアドバイスをありがとうございました。学生のみなさんもたくさんの質問をありがとうございました。お時間の関係で当てられなかった方、本当にごめんなさい。
それでは、これをもちまして質疑応答の時間を終了いたします。ここで写真撮影の時間をほんの少しお取りしたいんですけど、よろしいでしょうか? ぜひこの機会に写真を収めたいという方は、今(カメラを)出していただきまして、その座席のまま、その場でお撮りいただければと思います。
それでは、写真撮影の時間にさせていただきます。
(会場の学生がスマートフォンを取り出し、客席からムヒカ氏を撮影する)
ムヒカ:(微笑みながら手を振る)
あの……写真を撮るよりも、もっとすごく楽しいこと、いいことってあるんじゃないですか? って思うんですけどね。
司会:すいません。日本人はどうしてもこの写真を撮るというのが大変好きなもので(笑)。その時間をちょっと設けさせていただきました。
さ、それでは、みなさま大丈夫ですか? 撮れましたか? お付き合いくださいまして、ありがとうございました。さあ、それではよろしいでしょうか?
これで本日の「世界で一番貧しい大統領、ムヒカ前大統領による講演会」終了したいと思います。ムヒカ前大統領、本当に今日はたくさんのご質問も受けてくださってありがとうございました! 盛大な拍手でお送りしたいと思います、ありがとうございました!
(会場拍手)
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