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孫正義LIVE2011(全5記事)

「ものづくり国家・日本の再生はありえない!」 孫正義氏が語る、これからの日本が唯一勝てる場所

「日本がものづくり国家として競争力を取り戻す時代は、もう来ない」。ソフトバンクの孫正義社長はこう断言します。工業生産は賃金の安い国が圧倒的に有利。これからの日本は“頭”で勝負するしかない。そんな日本の最後のチャンスが「モバイルインターネット」だそうです。

Twitterを始めて「電波の繋がらなさ」に反省した

孫正義氏:ソフトバンクの携帯電話。皆さんも使ってる人多いかもしれませんが、時々圏外になる、と。どのくらい圏外かというと、仮に自宅の数字で言いますと、98%の自宅は電波が繋がってる。でも2%のお客様は自宅で電波が繋がらない。これは我々の調査です。

docomoさんとかauさんで、だいたい99%です。ですから99%対98%ということで、我々のほうがちょっと負けてる、と。その分、iPhoneとか、AQUOSケータイとか、ホワイトプランとかいろいろなことで、まあ1%の差であればソフトバンクやってみるか、というお客さんもいるのは事実ですけれども。

まあ、今まではそれでいいと思ってました、経営的にはね。ボーダフォンジャパンを買収した時から、電波の基地局の数は倍増させたんですよ。ボーダフォンジャパンを買った時は全然ダメと思いました。でもそこから倍増させたんで、「まあいいか」と思ったんです。しかし、この3か月間、Twitterを始めてしまいました。Twitterをやっていると、生の声が、お客さんの生の声が、毎日バンバン来る。そうするといろいろなこと、いいこともたまには言うけども、それよりなにより、「電波つながらないぞ、ボケーッ!」と。「何とかしろー!」と、こういう声がいっぱい書かれる。

そうすると胸にグサッと来るわけ。iPhoneすばらしい、ソフトバンクのホワイトプランもまあいい。でも電波繋がらなきゃしょうがないだろうと言われると、「ああっ」と胸が痛むわけです。なんかこうちょっと激しそうなことをたまに言ったり、勇ましいことを言ってNTTと戦ったり。でも「繋がらないぞ」と言われると、僕も心がちょっと痛むわけ。グサーッと来るわけです。

そしたらやっぱりなんとかせにゃいかんと。銀行さんからいっぱいお金を借りてる。2兆円も借りちゃった。返すほうに優先しなきゃいけないということで、経営的にはそっちを優先してたんですけども、でも、何のためにソフトバンクを興したんだ、何のための人生だ、と。そういうことをもう1回、Twitterの皆さんの声で、目覚めさせられました。ガーンとハンマーで頭をぶち殴られた気持ちです。「電波繋がらなきゃしょうがないだろう」と言われて、ものすごく反省しました。

わしゃいかん。ちと心が濁っとった、と。2兆円借金してる、早く返さなきゃいけない。そのことにばっかり頭がいって、肝心要の、何のために事を興したか、 この事を成す、何のための人生だと思ったら、やっぱり「電波繋がらないとしゃあないだろう」と言われたら、それはもう言い訳できないということで、昨日、宣言しました。

基地局倍増作戦を敢行した

ソフトバンク電波改善宣言、ということであります。もう一度腹をくくって、もう一度自分を十字架にしばりつけて、借金も予定どおりのペースで返す。そっちも約束はやぶらない。それを満たしながらなおかつ、電波をもうちょっと繋がるようにする、と。100%というのはありえない。docomoだってauだって100%はない。ここが繋がらない、あそこが繋がららないというのは永遠の課題だ、と。だけどせめてできることをやる。わしらにできることは何やというと、基地局を倍にするということであります。

電波が繋がるように電波を発信する。携帯電話って皆さんポケットに持ってると、無線で繋がってる。電話同士が直接繋がってるんじゃないんです。皆さんが持ってる携帯電話は、自分の友達の携帯電話に電波が直接行ってるんじゃないんです。皆さんが発信すると、必ず、電波の基地局に行くんです。そして電波の基地局から交換機に行って、そこから折り返して、皆さんの友達とか家族がいるところの基地局に中継して、その基地局から皆さんの友達に繋がるんです。

携帯電話から携帯電話に直接繋がってるんじゃなくて、携帯電話で発信したら必ず、自分がいるところの最寄りの基地局に繋がって、そこから交換機までバックボーンでつながって、そして交換機のバックボーン網から、もう1回友達のいるところの近くの基地局に繋がって、そこから友達の端末に繋がる。

だから基地局を増やさないといけないわけ、基地局。これを倍増させるということであります。3年半かけて、ボーダフォンジャパン時代の基地局を倍にさせました。この倍にしたヤツを、さらにもう1回倍にするということであります。

倍増作戦。ボーダフォンジャパンを買った時から比べれば、倍増させたんですけれども、もう1回、そこから倍増させるということを昨日宣言しました。社内では経営会議や役員会議で、喧々諤々でしたよ。「社長!無謀だ!そんなに金ありません!そんなに短期間で工事できません!殿ご乱心!」とか、いろいろなことを言うわけですよ。「うるさい!黙れ!わしゃ行くぞーッ!もうわしゃ命を賭けると約束したと、Twitterで書いちゃった!」(笑)。

(会場笑)

「利益を計算したらいかん」と腹をくくった

命かける覚悟ですと、言っちゃったよ、俺は。お前らは、あーあの人はいい人でした、とそう言うつもりかと。わしゃ命かけると約束したのに、これ破るわけにはいかん。もちろん100%を約束したわけじゃないですよ。あいつ命かけると言うとったから、俺もここで便所で繋がらんぞ、と。だからあいつ命かける言うとったから命よこせと言われても、それもちょっと困る。100%を約束しているんじゃなくて。少なくとも電波を著しく改善させますと、そこだけは約束した。

著しく改善させるってどういうこっちゃ? まあわかりやすく言えば、数で言うならば、いま我々が持ってる3年半かけて作った基地局を倍にする、と。98%すでに繋がってるんですよ。98%繋がってるものを、99%にするために、あと1%ちょっと伸ばすために、倍にするというのは、本当は経営効率はむちゃくちゃ悪いわけです。ね、経営的には。普通、計算をする経営者の立場で言えば、1軒の家を繋ぐのに、300万円くらいかかったりするわけです、下手すると。どっかの山の中のちっちゃな村とかね。で、たった1人か2人のお客さんを追加で取るために300万円かけて、そこに基地局作って、あるいは500万円かけて基地局作って、その3人の家族が一生かけて払ってくれる携帯電話代って、そんなにならないわけです。

もう今ホワイトプランでだいぶ安くしちゃってる。だから計算だけで言えば、98%行ってるものをさらに倍にするというのは無謀な決意です。だけど、計算したらいかんと。腹をくくって、著しく改善させるって言ったら著しくするんだ!言い訳なしだ!と。100%にはならんけど、せめてこちらの誠意を示そう、と。電波の周波数を不利なヤツしかもらってないとか、そういう言い訳を言っちゃいかん。一切そういう言い訳を言うなと。やるんだと。著しく我々にできることを精一杯やろうよということで、決意したんです。ですからネットワーク改善宣言の第1弾、基地局倍増!第2弾。それでも繋がらないご自宅が1%くらい出る、と。

4つの「ブロードバンド改善宣言」を行った

それでも繋がらないお客様の自宅に、自宅用の小型基地局、フェムトって言うんですけど。これをタダで提供する。最後の1%のお客さんに、自宅専用の小型基地局を無償で提供します。これはブロードバンドに繋がってますからブロードバンド回線がいる、と。じゃそのブロードバンド回線もタダで提供する、と。もう言い訳なしや!ということであります。このフェムト専用の回線。ですから必ず繋がるというふうにしてしまう、ということであります。さらに、店で繋がらないぞ!、俺の会社で繋がらないない!というお客さんがいます。じゃあもうこの際だ!店も会社もタダだ!ということで、これもタダで提供する。これの回線もタダで提供する。さらに、もっと速く繋ぎたい、速度をというお客さんに。Wi-Fiのルータ、これを店と会社に提供する、タダで配る。

もうこの際、やるっと言ったらやる!ということであります。それでも100%にはならないですよ。100%にはならない。100%にはならないけど、せめて我々が示せる誠意を示そう、と。せめて我々の腹の底からの想いを提供しようじゃないか、ということです。この4つの点を、電波改善宣言ということで、昨日宣言したわけです。まさに我々がブロードバンドに参入する時に行った決意と同じ意味での決意であります。この4つのブロードバンド改善宣言、基地局倍増、自宅、店、そしてWi-Fi。こういうことであります。

今のままでは中国やインドと競争はできない

じゃあここまでは我々ソフトバンクの歩みであります。我々の志であります。ここからさらに、皆さんは若いですからね、ここからさらに我々ソフトバンクが何を目指すのか、ということをちょっとだけ触れたいと思います。

2つの方向性です。1つはモバイルインターネットの世界ナンバーワンの会社になりたい。そしてアジアインターネットのナンバーワンになりたい。この2つであります。そもそも、インターネット革命とはなんぞや、ということですけれども。

産業革命がありました。農耕社会から、工業社会へ。その第一次産業革命というのは、軽工業、イギリス中心に軽工業が発達しました。第二次産業革命は重工業です。これはアメリカを中心に発達しました。今はその第二次産業革命の末期です。日本が最近輝きを失っているのは、この第二次産業革命の後期・末期で、日本の存在意義が薄らいでしまったということ。つまりアメリカを中心として日本が後追いしてというのが、産業革命・工業革命という意味ではより賃金が安い、より材料が安い、中国・インドに全部移っていく。だから日本の競争力がなくなった。組み立て産業、ものづくり産業で、日本がもう一度競争力を取り戻すのは、ほぼないと、私は断言します。

皆さん、まだ20代なったばっかりですよね。皆さんにとって、これから50年人生がある。これから50年の人生で、皆さんにとってですよ、日本にとって、これから50年の人生で賭けてもいい。日本のものづくりの工業生産国家として、競争力を取り戻して、世界の1位、2位を争うような競争力を取り戻すという時代がもう1度来るか? 輝かしい日本のエレクトロニクス産業、ものづくり産業、自動車産業、そういうことで日本がもう一度輝ける時代が来るか? 私に言わせれば、ありえない、と断言しておきたいと思います。

一部ではありますよ。一部の会社。一部のセグメントではある。でも大きな山で見ると、大きなものさしで見れば、賃金の安い中国、インド。国内の市場のボリュームが大きい彼らと、どうやって彼らと競争できるんだ。少なくとも今のままの日本の延長線ではない。なんか大きな革命がおきれば話は別ですけどね。今のままではおそらくないだろう。私は少なくともそう思う、ということです。

「モバイル」という最後の仕切り直しがある

日本が唯一復活できる可能性があるもの。何か? それは筋肉じゃないんです。人口の数じゃないんです。「頭」で勝負するところです。人間の数ではかなわないわけですよ。筋肉でもかなわない。賃金でもかなわない。すると頭で勝負するしかない。これなら唯一、日本の最後のチャンスがあるということ。

そのITの第一次革命は、アメリカでした。でも産業革命も第一次革命はイギリスというフェーズがあったように、第二次革命はアメリカに移った。IT革命では第一次IT革命はアメリカですけども、第二次革命として、アジア中心のIT革命というふうになりえる。PC中心からモバイル中心にということでもう一度スタートラインに並びなおすというチャンスがある。この2つの面でチャンス到来ということであります。

アジアを制するものが世界を制する、と。モバイルを制するものがインターネットを制する。もう1回だけ、最後のスタートラインの仕切りなおしというものがある。だから私はモバイルインターネットということを言ってるわけです。

我々のグループはモバイルインターネットナンバーワンを目指そう。なぜモバイルインターネットかということですけれども。この10年間で、モバイルインターネット、携帯電話の通信速度、これが750倍になった。携帯電話に入ってるCPUの演算処理速度、これが500倍になった。

成熟産業は”輝かしい大きな成長”は見込めない

ものすごい勢いでまだまだ進化しているんです。ものすごい勢いで成長しているんです。逆に言うと、産業革命の後期にある、末期にある分野、代表的な例が自動車です。自動車はこの10年間で、エンジンの速度が何倍になったのか。1.1倍ですよ。たった0.1倍しか伸びてない。つまり成熟産業なんです。完全なる成熟産業。

だからアメリカの自動車会社が、3大自動車会社が全部おかしくなった。あれほど栄えてたアメリカの自動車会社が、全滅状態になったということ。ついこのあいだトヨタがぶっちぎりで世界最大の自動車産業、最大の利益を出して、日本でも最大の利益を出して、これからトヨタの天下がずっと続くと、多くの人が思った。でも、大赤字に転落した。今から復活してくるとは思いますけども、復活はするでしょうけども、輝かしい大きな成長がこれからどれほど見込めるのかということでいえば、若干クエスチョンマークということ。なぜなら成熟産業だからです。

成熟した産業は賃金の安い国、資源の安い国に、しかも国内のユーザー、消費者をたくさん持ってる国に需要が移ってしまう。そういう意味で厳しいということ。

これから「モバイルインターネット」の時代が来る

だけど、モバイルインターネットの世界は、まだ始まったばかりです。この中でiPhone使ってる人、手を挙げてくれますか?おー、すごいね。8割5分だね。この中でTwitter使ってる人、手を挙げてくれますか?あーすごいわ、98%ぐらい。すごい。

僕がすごいと思うのはね、Yahoo! JAPANを始めて、1年後のこういう新卒の説明会で、同じように聞いたんです。Yahoo! JAPANを始めて1年目、まだ日本の消費者のほとんどが使ってない時。この学生の皆さんに聞いたら、98%くらいの人がYahoo! JAPANを使ってるって手を挙げました。

日本でまだ8割以上の人がiPhone使ってる状態じゃない。98%の人がTwitter使ってる状態にはまだほど遠い。でもここにいる感度ビンビンの皆さんは98%がTwitterを使ってる。しかも8割以上、8割5分くらいの人がiPhoneを使ってる。それだけ感度の高い人たちが今日、集まってる。うれしいね。僕はうれしいです。まさに皆さんはわかってる。本能でわかってる。世の人々よりも先にわかってるということであります。

ということで、世界の携帯電話のユーザーは7億人から、この10年間で50億人に増えたんです。さらに広がります。で、モバイルインターネットが世界のユーザーが続々とこれから増えてくる。

そしてインターネット企業が、つまりこれからは電話の会社を中心とした携帯ではなくて、インターネットの会社を中心としたモバイルインターネットの時代になる。携帯電話は電話会社がほとんど始めました。インターネット会社が携帯電話の会社を買収してやったというのは、おそらく我が社が初めてだろうと思います。でもこれからは違うんです。携帯電話が音声を中心とした携帯「電話」と言われる時代から、携帯「インターネット」と呼ばれる時代、モバイルインターネットという言われる時代になる。ますますiPhoneは強くなる。もちろんiPhone以外にもAndroidのスマートフォンも続々と出てくる。こういう時代がくる、と。日本でも今iPhoneが売れまくってます。

Twitterはソフトバンクの理念に似ている

Twitterでも、私は人々に多くの人々に聞きました。

30年後の教育はどうあるべきですか? と聞いたら一瞬で、1時間で230件の意見が寄せられた。そういう時代が来る。

人間の脳を、人々の知恵と知識を集めて、人類の社会の発展に、幸せに貢献する。それがソフトバンクの理念ですけども。志ですけども。まさにTwitterがその状態だ。私がTwitterに熱くなるのは、そういう理由です。Twitterだけに限りません。Twitterは先進的な事例ということであります。人々の脳と脳を合わせたような、知恵と知識を集めて、人々がより幸せになれる、そういう社会がやってきた。それに我々は貢献したい。「やりましょう」リストも、昨日発表しました。

私がすぐTwitterでいろいろな人からリクエストが来ると、「やりましょう! 」と景気良く言っちゃうんで、社員が右往左往しておりますが(笑)。

言ったことをちゃんと果たさないといけないんで、工程表を作って、「やりましょう」リスト、「できました」リスト、「検討します」リストと3つに分けて、見やすくした。これからどんどんと経営の意思決定の速度を速くする。経営意思決定をするのに消費者の皆さん、ユーザーの皆さんと直接対話できるような状況に持っていきたい。さらに、今日も流していますが、Ustreamで、文字だけじゃなくてリアルタイムの動画で世界中の人々と情報共有して、世界中の人々がTwitterで文字で意見を双方向で寄せられる、と。

人と人が繋がる。人と人の心が繋がるということであります。決算発表会もこないだやりました。これも初めてUstreamで流しました。なんと決算発表の間だけで、1万500件ものツイートが来た。1回の決算発表で、リアルタイムに。これはすごいこと。ありえない。流れてくるツイートの状態が、映画でありましたね。緑色の文字がダーッと流れてくる「マトリックス」、あの状態。動体視力を求められる感じで。すごい勢いで流れました。そういう時代がやってきたということ。

ライブの中継も配信され、あらゆるニュース、スポーツ、コンテンツが流れている。まさにモバイルインターネットの時代がこれからやってくる。それが1点目でした。

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