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Tim Minchin UWA Address 2013(全1記事)

「夢は必要ない」「幸福を追求しない」イギリスのコメディアンが贈る人生の9つのレッスン

小さい頃から夢を持つようの言われて育ってきた人は多いかと思います。また、人生に目的を持って過ごすように教えられた人もいると思います。しかし、イギリスでコメディアンとして活躍するティム・ミンチン氏はこのような教えとは正反対のことを提唱します。彼が語る人生の9つのレッスンでは、夢を持たず、短期的な目標に集中するなど、一風変わったものがあります。しかし、その内容はきちんと考えてみれば的を射ているものが多いのです。例えば、レッスンの7つ目に語られる「自分の好きなもので自分を定義する」は否定ばかりしてしまう現代のネット社会において、とても重要なことではないでしょうか? 自身が歩んできた人生より見つけた、ティム・ミンチン氏の9つのレッスンを、自分の人生と重ね合わせながら読んでみてください。きっと新しい発見があるはずです。

イギリスのコメディアンが語る、人生の9つのレッスン

ティム・ミンチン氏:暗黒の時期、私はある会社のある会議で仕事をしました。その会社は会計ソフトを製作販売していました。自社の営業マンを励ますためにだと思いますが、1万2千ドルも支払って、インスピレーションスピーカーとして、エクストリームスポーツをする男性を招待しました。

彼はどこかの山で岩棚に挟まって手足が凍死してなくなってしまったという経験がある人でした。あれは変でした。私は、ソフトウェアの営業マンが聞くべきなのは、過度に楽観的な元登山家の話ではなく、ソフトウェアセールスで長期に成功している人の話を聞くべきであると思うのです。

あの朝そこに到着した哀れな人の中には、セールステクニックについて学べると思っていたのに、結局は自分の四肢の血流を心配しながら帰路に着く羽目になったのです。あれはインスピレーションを与えずに混乱させるものでした。

もし、山が人生のチャレンジを表していて、四肢を失うことが犠牲を表しているのであれば、ソフトウェアで働く人たちがそんなことを理解するわけがありませんよね? 彼らは美術の学位を取っていませんしね。取るべきでしたよね。美術学位は素晴らしいです。意味の無い物事の意味を見つける助けになります。

本当に意味がないということを保証しましょう。探すのをやめましょう。意義を探すことは料理本の中に韻文を探すのと同じようなことです。見つけられませんし、スフレが台無しになります。もしあなたがこの喩が嫌いなら、私の残りの話も気に入らないでしょう。

お伝えしておきますが、私は啓発を与える話し手ではありません。私は比喩的にも何でも、山で手足を無くしたことなどありません。それに絶対にキャリアアドバイスなどいたしません。なぜなら私はほとんどの人が「仕事」とみなすものを持ったことがないからです。

しかし、今まで数年にわたり大勢の人が私の話を聞いてくれるようになりましたし、それは私に思い上がりともいえる自尊心を与えてくれました。ですから今、成熟した37.9歳の人として影響を与える9つの人生のレッスンをお教えいたしましょう。

伝統的クリスマスキャロルの9つのレッスンも同じくちょっと意味不明ですが。もしかしたらいくつかのポイントは、あなたにやる気を与えるものかもしれません。必ずいくつかはつまらないと思うでしょうし、必ず1週間以内に全部忘れてしまうでしょう。

忠告しておきますが、直喩や格言が出てきて、はじめのほうはいいですが、結論がよくわからなくなるでしょう。ですからよく聞いてください、さもないと、盲人が薬局でコンタクトレンズ液を見つけようと手をたたいて反響を聞いているような、そんな迷子になってしまいますよ。私の昔の詩の先生はどこでしょうか。

夢を持たず、幸福を追求しない

では始めましょう、いきますよ。1つ目に、夢を持つ必要はありません。アメリカのタレントショーではいつも夢について語りたがります。ずっとやりたいこと、心の中に夢を持っているのは結構なことです、頑張ってください。結局夢を追う、自分の時間の中でやることです。

そしてその夢が大きければ、叶えるまでにあなたの人生のほとんどを必要とするでしょうし、そこに到達し、あなたの達成の意義のなさという深みを見つめる頃には、あなたは既に死にかけているでしょう。

ですから、意味などありません。私は夢という夢を持ったことはありませんし、情熱的に、献身的に短期の目標に没頭することを提唱します。マイクロ野心家になってください。頭を下げ、何でも自分の目の前にあるものにプライドを持って取り組んでください。

結果がどうなるかなんて誰にもわかりません。気を付けていなければいけないのは、きっと次に自分の周囲に現れるであろう価値のある目標です。だから長期の夢には気をつけなければいけないのです。自分から遠すぎるものに焦点を合わせていると、目の前の小さなものが見えませんよね? よし! アドバイスの比喩です、どんどんいきますよ。

2番目に、幸福を追求しないこと。幸福とはオーガズムのようなもので、考えすぎていると過ぎ去ってしまいます。忙しくあり、他人を喜ばせることに集中していれば、副作用として自分も少し幸福になれるのです。私たちは常に満足するように進化してきませんでした。満足ヒト属は自分の子孫を残す前に食べられてしまうのです。

自分の幸運を自覚する

3番目に、すべては運です。あなたはここにいられて幸運なのです。あなたが生まれたことは計り知れないほどラッキーですし、大学に行くようにと励ましてくれた良い家族に育てられたことは、ものすごくラッキーです。

または、もしかしたらひどい家族に生まれたかもしれませんし、それは不幸なことですから私も同情しますが、それでもラッキーです。子供の時ひどい環境にいながら、結果的に大学を卒業するという決定をできた、そんな脳を形成するDNAを持って生まれたので、ラッキーです。自分の靴ひもを引っ張りながらもここまでよくやりました。

しかしあなたはラッキーなのです。あなたは自分を引っ張るための「くつわ」を作ったりしませんでした。それらはあなたの靴ひもですらありません。私は、何であれあいまいな目標を達成するために頑張ったかもしれませんが、UWA(the University of Western Australia)にいる間、レクチャーに出席せずにハンバーガーをたくさん食べないという制御をする「くつわ」以上に自分を制御するものは作りませんでした。

自分の成功の原因が自分自身にあるとか、失敗が他の人のせいであるとすることができないことを理解するのは、人を謙遜にさせますし、同情心を育ててくれます。同情は直観ですが、知的観点から育てることもできます。

運動をして、鬱を吹き飛ばす

4番目は、運動です。不健康そうな、青白い、哲学科の卒業生で、デカルト曲線のように眉を吊り上げながら、人間の集団が自分たちの存在のミニチュアの交通整理コーンの間を蛇行している様子を見ている人たちにはすみませんが、あなたは間違っています。そして彼らが正しいのです。

まあ、あなたは半分正しいと言えるかもしれません。あなたは考えるがゆえにあなたなのであり、ジョギングをするゆえに眠るのであり、それゆえにあなたは存在主義の苦悩に圧倒されないのです。あなたはなれないものにはなれないし、そうなりたくもないでしょう。

スポーツをしましょう。ヨガをし、鉄分を摂取し、走る、または何であれ自分の体を管理するのです。それは必要事項となるでしょう。この集団の中のほとんどの人は100歳近くまで生きるでしょうし、一番貧しい人でさえ、歴史上ほとんどの人たちが夢見ることもできなかったほどの豊かさのレベルに届くことができるでしょう。

そしてこの、目の前から続く、長く豊かな人生は、あなたを鬱にするでしょう。しかし、失望はしないでください。鬱と運動には相互性があるのです。走るのです! 私の美しい知識人たちよ、走るのです。

自分の意見にこそ、冷酷に

5番目に、自分の意見に冷酷であれ。ある有名な名言はこう断言しました。意見とはケツの穴のようなもので、誰しもが持っていると。これは素晴らしい知識ですが、私はこの点を付け加えたいと思います。

意見はあなたのケツの穴とは違って、定期的に、そして徹底的に吟味しなければならないのです。私は以前ここで吟味していましたよ。──これは復讐です。私たちは注意深く考えなければなりませんし、他の人のアイディアについてだけではなく、自分自身の信念にも冷酷でなければなりません。

それをベランダに持って行って、クリケットのバットで打ってしまってください。知的に厳密でありましょう。自分の先入観や偏見、そして特権を見分けましょう。ほとんどの社会は、微妙な違いを認めることに失敗することにより存続しているのです。

私たちには、間違った対立のものを作り出し、1つのポイントを2つの全く異なる仮定を用いて言い争うという傾向があります。ちょうど2人のテニス選手が試合に勝とうとして、別々のテニスコートの端から見事なショットを決めているかのようです。

ところで、目の前に科学と美術の卒業生がいますが、美術と科学が不調和だという間違った考えをしないでください。それは近年のばかげた有害な考え方です。美しいアートを作り出したり、美しい文章を書くのに科学から離れたりしなくてもいいのです。

証拠がほしいのでしたら、―トゥウェイン、ダグラス・アダムス、ヴォネガット、マックエワン、サガンそしてシェイクスピア、ディケンスなどをみてください。詩人になるために迷信深くなる必要もありません。

この惑星の美を気に掛けているからと、GMテクノロジーを嫌わなくてもいいのです。同情を促進するために魂を主張しなくてもよいのです。科学とは知識体系でも信念体系でもありません。それは単に、観察を通しての、人間の増加する知識の理解を説明する専門用語にすぎません。科学はすばらしい! 

美術と科学は、更に知識がコミュニケーションをとるにあたり、相互に助け合わなくはなりません。多くのオーストラリア人、私たちの新しい首相や私の遠い親戚のニック・ミンチンは人類科学の世界的温暖化は論議を呼ぶものであり、私たちがコミュニケーションをとるのに失敗した程度の尺度となると信じています。実際に30%もの人が怒っているのが更なる証拠です。怒りが実際に科学より政治とかかわっていることが絶望的です。

自分の好きなことで自分を定義する

6番目は、先生になれ! お願いです、お願いですから先生になってください。教師とは世界でもっとも立派で重要な人たちです。ずっとやらなくても結構です。もし自分がどのように素晴らしい先生になるのか疑わしいのであれば、20代のうちだけでも先生になりましょう。小学校の先生になりましょう。あなたが貧しいならなおのことです。私たちは更に小学校の先生たちを必要としています。

もし先生でなくても、なってください。あなたのアイディアを分かち合ってください。自分の教育を無駄にしないでください。学んだことを喜び、広めるのです。

7番目は、自分が好きなものによって自分を定義しなさい。最近少し自分が行う傾向に気が付きました。誰かが私にどんな音楽が好きか尋ねてきたら、私は「ラジオは聞きません。ポップソングの歌詞が気に障るからです」と答え、誰かが私に好きな食べ物は何か尋ねてきたら、私は「トリュフオイルは使われすぎだし、ちょっと気に障る」と答えるのです。

オンラインではいつも人々がサブカルチャーの一部であるために、コールドプレイやフットボール、フェミニスト、自由党を嫌いでなければならないという考え方が見受けられます。私たちには何かに反対することにより自分を定義するという傾向があるのです。

私はコメディアンとしてそれで生計を立てています。しかし、自分が大好きなものに対する情熱を表現してみてください。自分が尊敬する人に対する称賛を寛大に表現しましょう。感謝のカードを送ったり、スタンディングオベーションを捧げたりしましょう。反対するのではなく賛成派になりましょう。

8番目に、自分より力がない人を尊重しましょう。私は過去に、自分のエージェンシーやプロデューサーを決めるに当たり、重要な決定を下さなければなりませんでした。自分たちがミーティングをするレストランで働くウェイトスタッフをどう扱うかに基づいて、この大きな決定をしました。あなたがその場で一番重要な人物だって、私には関係ありません。私はあなたが、一番弱い人をどう扱うかに基づいてジャッジします。分かったか!

残りの人生に焦らず、自分の学びたいことを学ぶ

遂に9番目。焦らないこと。残りの人生で何をするのか知る必要はありません。私は座って1日中ただ待っていれば良いと言っているのではありません。しかし同時にパニックに陥る必要もありません。

私の知人で、20代ですでに自分のキャリア街道を理解していた人たちは今頃中年の危機を迎えています。この取りとめのない話の初めの方、その長さは既に3分半もありましたけど、私が既にお話しいたしましたが、人生には意味がありません。

それはふざけている訳でも、根拠のない主張でもありません。138億年の無誘導の出来事を考えれば、次に起こるかもしれない状況の意義を知ろうとすることは、私からしてみれば、ばかげたことに思えるのです。宇宙が人類に対して目的があるという考えは人類に託せばよいのです。

とは言いましても、私は虚無主義者ではありません。皮肉屋でもありません。実際私はどちらかといえばロマンチストですが、そんな私がロマンスに関するアイディアを言うならば、あなたはもうすぐ死にます。

人生は時には長く感じ、辛く、本当に疲れます。あなたはときどきうれしくなり、ときどき悲しくなり、そして歳を取り、やがて死ぬのです。この空虚な存在に対してとれる、唯一の賢明な方法は、それを埋める(フィル)ことです。切り身(フィレ)にするのではありません。埋めるのです。

私の意見ですが、私の気が変わるまでですが、人生は学習で埋めるのが一番だと思います。できるだけの事を、できるだけたくさん学ぶのです。自分がすることが何であれ、プライドを持ってください。同情心を持ってください。アイディアを分かち合ってください。走ってください。熱心であってください。

愛、旅行、ワイン、セックス、芸術、子供、与えること、そして山登りがあります。既にご存知でしょう。この1つのあなたの意義のない人生に、1つのとてつもなく興奮するようなことがあるのです。

グッドラック、そして聞いてくれてありがとう。

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