【3行要約】・投資で失敗する原因は知識不足ではなく「損失回避の本能」にあり、行動経済学のプロスペクト理論によると人は損失を利益の2~2.5倍に感じてしまいます。
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『投資の解像度を上げる 超インフレ時代のお金の教科書』の頼藤太希氏は、投資理論・行動経済学・地政学・リスク管理の4つの視点で「投資の解像度」を上げることで、感情に振り回されない継続的な資産形成を目指すべきだと提言します。
・大金持ちを目指すのではなく「ベター思考」で平均点を取り続けることが、誰でも実現可能な投資成功のカギとなります。
前回の記事はこちら 投資の解像度を上げる4つの視点
小早川幸一郎氏(以下、小早川):(なぜ投資に不安を持つ人が多いのかの話を受けて)なるほどね。(投資の)解像度が低いと先が見通せなくて不安になっちゃってネガティブな行動に移る。だけど、解像度が上がれば「今はちょっと怖いけれど、でも先が明るいな」と、適切な判断ができるっていうことなんですね。
私はそんな感じのざっくりした解像度は自分自身で上げていると思っているんですけど、今回の本には「投資に必要な4つの視点」を書いていただいています。この4つの視点について、ちょっと簡単に説明していただけますか?
頼藤太希氏(以下、頼藤):投資の解像度を上げることを目的に、本書では「投資理論」「行動経済学」「地政学」「リスク管理」の4つの視点で解説しています。

投資理論というのは、投資にはテクニカル派とかファンダメンタルズ派とかインデックス派っていう3つの流派があります。これらの特徴と違いや、できる限り難しいことをせずにお金を増やすために必要な、投資の考え方をご紹介しております。
結局はインデックス派が良いんだけど、でもなんで良いのかは、やはりほかと比べないとわからない部分はあります。ただ、インデックス派がベストではないんですよ。ベターではあるけどベストではなくて、テクニカル派とかファンダメンタルズ派のほうが、短期でお金持ちになりやすかったりするんですよね。
巨大なお金持ちっていうとウォーレン・バフェットとかじゃないですか。ファンダメンタルズ派だったりするので、そういった考えも理解しておいて、それでインデックスを選択しているんだって腑に落ちていただいたほうがいいと思って入れております。
そして行動経済学は経済学と心理学を組み合わせた学問なんですけども、人は損をしたくないと思いながら、知らず知らずのうちに損する行動を取ってしまいがちなんですね。なので、そうした罠にかからないように知っておきたい投資版の行動経済学をこちらにまとめております。
複数の視点を掛け合わせて投資のリスクに備える
頼藤:そして地政学は、株式市場に大きな影響を与えます。最近だとトランプ関税とか、ウクライナとロシアの戦争とかもそうですけども、そういったものはこれから先どうなっていくのかだったりとか。
背景には宗教的な対立や外交問題もあったりしますから、そういった地理的要因に基づくリスクなんだということで地政学なんですけども、これを学んでいこうということです。
そしてリスク管理では、暴落リスクに備えるための考え方と対策法ですね。僕はオルカンに投資していますけども、オルカンというのは全世界株に分散投資をするものです。「なんで(分散して)投資するんですか」っていうと、さっきおっしゃったように、これから先も地球全体では成長していきますねと。
地球全体の人口が増えていきます。人口が増えていけば消費が拡大していきますので、消費生産のサイクルがぐるぐる回って経済が拡大する。あと、これから先はどんどんインフレになっていくところがありますから、やはり世界の株価(水準)は上がっていくだろうと思うわけですよね。
それを継続することが一番シンプルで良いことなんですけども、継続できないことが起こるよね、と。それが自分の感情とか直感によるものですから、行動経済学を学んだほうがいい。
それで、「なんで暴落が起こるんですか?」とか「これから先の世界経済って、どういうふうに進んでいくんですか?」がわからないといけないので、地政学を学んだほうがいいと思うんですよ。
そして「暴落が起こった時にどうしますか?」ということも大事です。リスク管理ということで、やはりオルカンとかS&P500に投資した先に、腑に落ちながら投資を継続できる知識が必要だなと。
そういうことで、これまでの自分の書籍とは色が違うんですけれど、今回はちょっとアカデミックな分野で書いたって感じですかね(笑)。
「大金持ちになる」という目的の本ではない
小早川:なるほどね。今お話しいただいたようなことが堅実に資産を増やす、投資を成功させる方法だということを述べられていますよね。
頼藤:大金持ちになるっていう本ではないんですよ。(いかに)投資を継続させるかという。書籍の表紙を見ると「パーマネントポートフォリオ」っていうものが出ています。世界株1本でもいいんですけど、やはりお金って使う時が来ます。

「20年後、30年後に資産が増えてたらいい」じゃなくて、その間だって同じ人生じゃないですか。投資で築いた資産を使ってもいいじゃないですか。使いやすくするためにはどうすればいいんだろうと考えた時に、変動を抑えたほうがいいと思うんですね。
極力、右肩上がりで上がっていくほうがいいんですけども、「使う時に大きく減っていないほうがいいよね」ということで、株は頻繁に暴落するのであれば、値上がりするような資産を加えてほしいというところで米国債とかゴールドを入れると、これはもちろん安定しますよねと。
別にこのパーマネントポートフォリオって僕が生み出したというよりは、米国の経済評論家が生み出したものなので、それを日本版にちょっとアレンジしたらどうかなということで最終的な結論に書いている感じですね。
良い議論を生む「叩き台」になればいい
小早川:この本の売りの1つでもありますけど、頼藤さんが考案された日本版パーマネントポートフォリオがありますよね。やはりここまで言い切ったり示していただけると、読者としては非常にありがたいと思いながら読みました。
頼藤:ありがとうございます(笑)。こういうふうに出すことでやはり賛否両論あるんですけど、何かしらの叩き台がないと良いものって生まれないじゃないですか。
それなりに自分で考えて出した結論を明示することで、次の話し合いにつながっていくと思いますし、僕は「これよりも良い方法があるんだったら教えてくれ」と思いますし(笑)。
僕が言っているのは大金持ちになる、しかも短期で儲けることではなくて、長期で堅実に増やしていく。その投資を継続する、やり方の1つの例として明示しているだけなんですよね。
だから僕に賛成してくれるのであればこのままやればいいと思いますし、「ちょっと違うんじゃないの」っていうことだとしても、この考え方は参考にはなると思うんですよね。
資産形成は足るを知ることと、使うことを意識する
小早川:最後に、頼藤さんがこの本を通して読者のみなさんや、まだ本を手に取られていない方に伝えたいことをお話しいただけますか。
頼藤:わかりました。そもそも投資をする目的ってお金を増やすことですよね。難しいことをせずに、感情に左右されずに平均点が取れる方法があれば、それでいいと思っているんですよ。

短期間で1億円とか、少ない金額で50億円、100億円っていうのではなくて、増えればいいですよね。そして誰もができる再現性があったほうがいいと思うんですよ。
投資っていうのはやはり儲かると「もっともっと儲けたい」って思ってしまうんですけども。そうじゃなくて、さっきから言っているように平均点とか、「足るを知る」ことが大事だと思うんですよね。
増えたお金を「じゃあ、それをどうするの?」っていう。築いた資産をいつ使うのかということなので、増やそう増やそうって考えるんじゃなくて、使うことも意識しながら資産形成してほしいなと思います。
絶対的な正解はないからこそ「ベター思考」が重要
頼藤:あと、パーマネントポートフォリオは1つの目安であって、絶対的な正解ではないんですよね。というか、資産運用の世界には絶対的な正解ってほぼないんですよ。でも、「こっちとこっちを比べた時には、こっちがいいかな」っていうベターな考え方はあるんです。
例えばテクニカルとファンダメンタルズとインデックスを比べた時に、「誰もができる再現性があって、堅実に増やせる方法はどれだろう。まあインデックスですよね」。こういうベター思考も考えて、投資を継続していただく。「より良いものを取り入れていこう」という考え方になったほうがいいんじゃないかなと。
「絶対にこれが正しい!」ってなってしまうと自己満足の世界になってしまい、人生って変わりませんので。そういったものを考えながら、ベター思考で実践していただけるとうれしいなと思っております。
小早川:ありがとうございます。普遍的かつ個性的な、ちょっとこれまでの投資の本にはないような本だと私も思いましたので、ぜひみなさんに手に取っていただけたらなと思っています。こちらですね。
今日は新刊『投資の解像度を上げる 超インフレ時代のお金の教科書』の著者、頼藤太希さんにお話を聞きました。頼藤さん、ありがとうございます。
頼藤:ありがとうございました。