【3行要約】
・50代〜60代の資産運用では「増やす」より「使う」視点が重要な一方、複雑な投資を続け、認知機能低下時の資産活用に不安を抱える人も少なくありません。
・ファイナンシャルプランナーの井上ヨウスケ氏は、取り崩し期の市場変動リスクと認知症リスクから、シンプルな運用の必要性を強調します。
・50〜60代は「バランスファンド1本」に集約し自動売却設定を活用することで、将来誰でも扱える資産管理体制を段階的に構築するとよいでしょう。
50代〜60代は「バランスファンド1本」に絞るべき理由
井上ヨウスケ氏:どうも、ファイナンシャルプランナーの井上ヨウスケです。今日は「50代、60代の方向けには○○がベスト!」というお話をしたいと思います。
先に結論を言うと、バランスファンド1本にまとめるのが個人的には良いんじゃないかと思っています。その理由は、自分が認知機能が低下した時にでも、パートナーの方がちゃんと資金が使えるような対策を取りやすいというのが1つ。
あともう1つは、取り崩し運用の時点においては変動性を抑えるというのが非常に重要になってきます。そう考えると債権多めのバランスファンド1本が良いと思っているので、このあたりを解説していきたいと思います。
お金を「増やす」より「使う」ことにシフトする
では、時間がない方もおられると思うので、まずは動画のポイントを解説していきます。ポイントの1つ目ですが、今日の動画は「1円でも多くお金を増やす」というのとは別の視点で、「お金を使う」というところですね。

若いうちは投資を「お金を増やす」という点で考えていくのだと思いますが、実際使うステージになったら、しっかりと使えることが大切になってくるので、この点で今日はお話しをしていきます。
その上でポイント2にも書いてあるとおり「変動性を抑える」というところが重要になってくるので、実際のシミュレーションデータを使いながら、変動性の高さによって、いかに使い勝手の難しさがあるかというところを解説します。
そして次にポイントの3番目にも書いてあるとおり、将来自分が認知機能が低下してきて、証券会社にログインして操作をするのが難しくなった。
そうした時にパートナーの方に資金を使ってもらえるように、自動取り崩しサービスがあります。これを考えると、ある程度本数を絞っていくほうが良いと思っているので、その話をします。
そして最後にポイント4番目ですが、今現在リスク資産を中心に、例えばS&P500とかオルカンを中心に購入されている方は、徐々にバランスファンドに移行する期間を設けたらいいと思います。僕もこれを取り入れようと考えているので、このあたりを解説していきたいと思います。
米国株式オンリーで20年間運用した場合
ではまずは、米国株式オンリーで20年間運用しながら取り崩すという場合に、単純なシミュレーションツールと実際の相場環境に当てはめたら、出てくる結果がかなり変わるというところからお話ししたいと思います。
これは2000年から2019年のS&P500のシミュレーションデータを使って取り崩しシミュレーションをしているもので、実際の相場環境に当てはめたのがピンク色。グレーの黒っぽいのが単純なシミュレーションソフトから出てくる答えで、この差がかなり大きいので、ちょっと解説をしていきます。

2000年から2019年のアメリカ株というのは、みなさんご存知のとおりITバブルから始まってリーマンショックがあって、そのあと2010年ぐらいから相場は急回復していった。
この20年間のリターンを複利換算した実際の数値としては、だいたい6パーセントぐらいになるんですね。なので「アメリカに2000年から2019年の20年間投資したら、6パーセントずつ増えた」と言われるのはこの数値なんですね。
実際に2,000万円の資産を2000年の段階で持っていて、単純に6パーセントで運用できると仮定して、毎年120万円ずつ取り崩すというシミュレーションをすると、この黒っぽい数値が出てきます。
2019年の段階で1,800万円ぐらい残っていて、かつこの20年間は毎年120万円ずつ引き出せたということは、2,400万円を引き出したのにまだ1,800万円ぐらい残っているという、バラ色のシミュレーションが出てくるわけですね。
20年後の資産はこれだけ違う
でも実際は2000年から取り崩したんだったら、ITバブルとかあるわけですね。実際に各年のリターンを使って、毎年120万円ずつ取り崩したとするならば、ITバブル、そしてリーマンショックの頃にはもう500万円近くまでお金が減っていって、2017年の段階で資金が0円になって、取り崩し運用はここで終了するわけです。
ということは、単純なシミュレーションとはかなり見える景色が違うわけですね。つまり積み立て投資の時はシミュレーションで「これだけ増えるんだ、ウハウハ」で、実際そのとおりにならなくてもいいわけですけど。取り崩しというのは、資金がゼロになってしまったらちょっと意味が違いますよね。
これは何がおもろいかというと、2000年から2010年までに下げ相場がきて、そのあと上げ相場がきているのが実際の相場ですよね。じゃあ2000年から2009年までのリターンの数値と、2010年から2019年までの10年間を前後入れ替えたら、資産推移ってどうなるかというのをシミュレーションしたんですね。

するとこうなるんですよ。つまり最初に上げ相場から始まって、最後に下げ相場ですね。言ったらこっち(現実の推移)は最初に下げ相場がきて、後に上げ相場のケースです。
けど実際10年間のリターンを入れ替えてシミュレーションしたら、まず2000年から2019年まででめちゃくちゃ上げ相場がきているので。2,000万円から毎年120万円取り崩しているけど、だいたい2010年には4,500万円ぐらいまでお金が増えるんですね。
このあとITバブルがきて、そのあと回復してリーマンショックがきてっていうふうになると、同じ20年間なのに10年のデータを入れ替えただけで、20年後の資産ってまだ2,400万円ぐらい残っている。
上げ相場と下げ相場、どちらが先に来るかで結果が変わる
ということは、単純シミュレーションより良い結果になるんですね。つまり取り崩しというのは、先に上げ相場がくるのか、下げ相場がくるのかでかなり答えが変わってくるんですよ。これをいわゆるシークエンス・オブ・リターンリスク、順序リスクとかって言います。
上げ相場が先なのか、下げ相場が先なのかで資産ってだいぶ残高が変わっちゃうよね、それが1つのリスクだよねって言われているので、これを真剣に考えないといけないんですね。
で、その時によく言われることとして「定率受け取りにしたらいいですよ」というアドバイスが一般的かなと思うんですが、個人的にはお金持ちしかできないよねと思います。

なぜならば定率ということは、毎年残っている資産の4パーセントずつ受け取るということなので、「毎月10万円は資産を取り崩さないと生活できない」って言っている人が定率なんかにしてしまったら、相場が悪くなっていたら受け取れる金額が減っていくので生活できないです。
そうなってきたら、実質ほとんどの人は定額しか使えないと思うので。じゃあ定額でもある程度やっていけるように考えるべきだと思うんですね。