【3行要約】 ・レオス・キャピタルワークスが手がける「ひふみ金融経済教育ラボ」が特別講座を開催し、同社代表取締役社長の藤野英人氏が高校生に向けた講演を行いました。
・藤野氏は、日本では約半数の人が自社に愛着を持たず、日常生活でも「ありがとう」を言わない文化が定着していると指摘します。
・同氏は「ありがとう」を言う回数を増やすことが、社会を変える最強の投資になると提案し、その実践を呼びかけています。
前回の記事はこちら 日本のタンス預金は100兆円規模
藤野英人氏:(日本人は投資に対して消極的という話に続けて)一方で、タンス預金。タンス預金というのはタンスの中にお金を入れている。(日本は)タンス預金だけで合計100兆円もあると言われているんですね。
預金って言うけど、別にね、タンスにお金入れてるだけなんです。これも100兆円もあってまったく使われていない。こういうことによって、結局は日本があんまり成長していないということになります。

さらに、投資をしていると上がったり下がったりはするんだけど、株って上がっていることが多いので、アメリカ人はこの20年間ぐらいで、投資することによって個人のお金が3倍ぐらいに増えているんですね。イギリスも2倍ぐらい増えています。でも、日本は4割ぐらいしか増えていないです。ちょっぴりしか増えてないんですね。
なので、アメリカとかヨーロッパの国に対して日本人が貧乏になっていったっていうのは、投資をしなかったから。投資をしなかったから、お金も増えません。あと、投資をしなかったから大きな会社が出なかったということになります。

なので、今回の授業でなぜ先生たちが私に投資の話をさせようと思ったのかは、実は投資をする、挑戦をして新しいものを切り拓いていく、お金を増やすことがとても大事だと思われたからなんだと思います。
「会社が好きじゃない」日本人が抱える問題
さらに最近、もっと問題なことがあると思っています。それは日本人のお金に対する意識です。(スライドを示して)これを見ていただくと「自分の会社、働いている会社が好きですか」というアンケートを採った時に、ザーっといろんな国の名前がありますね。
いろんなインドネシアとかインドとか中国とかタイとか、わーっとあるんですけど、日本人って下から2番目なんです。自分の会社を「好きだ」と思う人が日本は世界の中でも、すごく低い。いつも韓国と日本が下位争いをしています。会社が好きじゃないというようなことが起きているんですね。これ、けっこう恐ろしいことで。

だってだいたい50パーセントぐらいの人が自分の会社を「好き」って言ってるんだけど、会社で働いてる人の50パーセントぐらいが自分の会社「嫌いだ」とか「そんなに好きじゃない」って言ってるんですよ。そういう人が作っている会社の商品って売れると思いますか。売れないですよね。
だからなんで日本が経済的にうまくいかなかったのかっていうのは、実は「会社が好きじゃない」という社員が多すぎるというところが大きいんじゃないかなと思います。
その結果、どういうことが起きてるかっていうと、この「お金を払う人が偉いんだ」という考え方がすごく広まっていて、お金を払う人がすごく威張っているということがよく起きます。
日本人は店員に「ありがとう」を言わない
例えばコンビニエンスストア。みなさんコンビニエンスストアで物を買う時、スーパーでもいいですよ、物を買う時にお店の人に「ありがとう」と言っていますか。お店の人は「ありがとう」って言ってくれますよね。「どうもありがとうございました」。日本ってお客さん側のほうが「ありがとう」って言わない国なんです。
これは世界のどこの国に行っても、お客さんもお店の人に「ありがとう」と言います。でも、日本人はほとんど言わない。
私、この間ヨーロッパに出張して、それでたくさん飛行機に乗りました。海外に行くと、飛行機に乗る時に、機内乗務員に対してお客さんが「こんにちは」とか「おはよう」とか「今日はよろしくね」って挨拶するんですよ。
今日私、日本航空に乗って、新千歳空港に着きました。私はそのお客さんと、それからCAさんのやり取りをよく見ています。今日もほとんどのお客さんがCAさんに挨拶しなかったです。CAさんが「ようこそ、空の旅へ」って言ってる時に、なんかすごいこう、ぶーっとしながら行く人が多いんですね。挨拶しない。
じゃあそうすると、みなさんどうですか。挨拶をしてくれるのとしてくれないのと、働いていることを想像してみると、どっちがやる気が出ますか。ぶーっとかされていると、やる気が出ないですよね。だからなんで日本の会社(員)のやる気が出ないのかっていうと、やっぱり僕らに問題がある。要はお客さんに問題があるとも言えるんじゃないかなと思っています。
大学生が「働きたくない」とこぼす理由
私、大学生の子たちにいろいろ教えたりしているので、アルバイト(をしている学生)と話をすると、よく「社会人になりたくないです」って言われるんですね。「なんで」って話を聞いたら「だって、社会人になると仕事が大変です。実際に今、アルバイトで働いていても店長さんは大変なんです」「それに、お客さんがすごく厳しいです。ニコニコしてる人がいません。辛いです」って言われることがすごく多いです。

もちろん良い職場もあるし、良いお客さんもいるから、全部が全部そうじゃないけれども、じゃあなんでそんなことが起きたのか、っていうところが問題だろうと思っています。
投資嫌いの背景には労働嫌いがあると思っています。それはなんでかっていうと、私が「株式投資って良いことだよ。会社を応援することによって世の中を良くすることだよ」って言ったって「仕事が嫌い、会社が嫌い」ということだったら、投資が良いことだと思えないじゃない。
この投資嫌いの背景っていうのが、すごく根深くてですね。「投資することがギャンブルだと思える」ってことだけじゃなくて、そもそも「働くことが嫌だ」っていう人たちがすごく増えてるんじゃないかなと思います。
社会を変える第一歩は「ありがとう」から
じゃあ、こんな社会をやめるにはどうしたらいいか。簡単だと思うんですね。今日来た理由の一つは、ここにあります。何かっていうと「『ありがとう』と言おう」なんですね。
約束しますけど、(今は)2025年6月26日です。今、私の話を聞いているみなさん。あと10年後の2035年6月26日、あと10年間で約束したいことがあるのは、ぜひ、「ありがとう」の数を、昨日までよりも3倍ぐらい言ってみてください。

自分の親とか学校の先生とかそれから部活の仲間とか塾の仲間とか、もうとにかく会った人、全部です。駅員さんとか、とにかく「ありがとう」、コンビニの店員さんとか「ありがとう」を3倍ぐらい言うと。これだけでみなさんの人生はめちゃくちゃに良くなります。めちゃくちゃに良くなります。
これ、僕、いろんなところで講演して言ってるんですけれども、100パーセント良くなります。たったそれだけのことで。めちゃくちゃ簡単じゃないですか。ありがとうって言うのに偏差値いらないでしょ。「いや、俺、偏差値70になってないから『ありがとう』って言えないんだ」とか、ないでしょ。
「ありがとう」は別に偏差値とかは関係ない。体力も、お金も関係ない。「僕、『ありがとう』っていうほどまだお金持ってないんだよ」とかいうことないじゃないですか。「ありがとう」って1円もかからないんですよ。
「ありがとう」は最強の投資
すごいのは、税金もかからないですよね。「ありがとう」って言ったら消費税がかかることもない。でも「ありがとう」っていうのが最強なのはなんでかって言うと、みなさん「ありがとう」って言われたらうれしくありません?
「この間、塾の勉強を手伝ってくれてありがとう」とか「部活の時にさ、用具入れを手伝ってくれて本当にうれしかった、ありがとう」って言われると、めちゃくちゃうれしくありません?
「いつもそばにいてくれてありがとう」とか言われると、みなさんうれしいじゃないですか。実は、みなさんが一番言われてうれしい言葉は「ありがとう」なんですよ。
ということは「ありがとう」をめちゃくちゃ言うと人に好かれるし、人に愛される人になるんです。人に好かれて人に愛されていれば、もう絶対に良い人生が待ってるんですね。
なのでこれから10年後ですね、みなさん「ありがとう」って言って。もし「でも、『ありがとう』ってあれから言い続けたんだけど、僕の人生、私の人生は失敗ばかり、どん底になってしまった。藤野さん、なんとか責任とってください」ということだったら……。
投資とは未来からお返しをいただくこと
私、たぶん10年後はまだ生きてると思うので。FacebookとかXとかみなさんの好きな方法で連絡いただいて「私『ありがとう』って10年言ったんだけれど、うまくいかなかったからなんとかしてくれ」って言ったら、なんとかしてあげます。少なくとも東京か札幌か、どこか一番おいしいお店でみなさんにご馳走しますので。これ、約束しますので、ぜひ。
もう、失敗はありませんから。うまくいかなくったって10年後にめちゃくちゃご馳走がもらえる。でも、たぶんうまくいくと思うので、ぜひ「ありがとう」って今の3倍ぐらい言うようにしてください。
「ありがとう」の投資で良い社会を作ろうというふうに思ってるんですけど「ありがとう」の投資なんですね。投資というのは、エネルギーを投入して未来からお返しをいただくことなんです。
「ありがとう」って言う。すばらしいのは、1円もかからない。リスクがない。僕は58歳。58年間生きてて「ありがとう」って言ったら「お前『ありがとう』って言った? 許せん! 許せない! 怒った!」みたいな人、1人もいないんです。リスク0です。
「ありがとう」って言うと、喜んでもらえて、リスク0。だからぜひ「ありがとう」っていうふうに言ってください。未来からお返しをいただくことです。