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藤野英人講演「未来に希望を持てない社会 それがチャンス」|@北海道北広島高校(全3記事)

“ブラジャーを日本一売る母親”から学んだ仕事の本質 レオス藤野氏が語るビジネスの原点 [2/2]

就職して初めて知った母の努力

かつ、絵が上手でして。母からブラジャーを買った人の絵をさらっと描いていたんですよ。それで名前を書いて、売れた商品の名前を全部書いて。あと雑談の内容も全部、書いていたんですね。

そうすると、それをいつも見てました。手帳に書いていつも見ていて、それでお客さんがまた2回目に来た時に「スズキさん!」とか「ヤマダさん!」「タナカさん!」「サトウさん!」とか言って、お声がけができるんです。だって、記憶してるから。

そうするとうれしいじゃないですか。お客さんからすると、自分の名前を覚えてくれて、ニコニコしてくれる店員さんって感じが良いから。

ブラジャーってたくさんいろんなところで売ってるけれども、どうして私の母親が日本で一番ブラジャーを売る人になったかっていうと、私の母親から下着を買うことがとてもハッピーだったからなんですよね。そのために、うちの母は非常に努力をしていたことが後からわかりました。

でも、高校の時にはぜんぜんわかんなかったんですね。なんでかっていうと、ただうざかった。食事の時に「いや、この絵、見て。このササキさんっていう人はおもしろいのよ」とか言ってね、「趣味がこんなことで」とか言って話をしても、自分のうちの母親のお客さんなんてぜんぜん興味ないじゃないですか。

「ああ、わかった、わかった、うんうん」みたいな感じで言っていたんですけれども、今から考えてみたらたぶん僕が聞いてるか聞いてないかってあんまり関係なかったんだと思うんです。繰り返し繰り返し言うことによって、頭の中に記憶させようとしていたんじゃないかなと思いました。

それから私、就職をして思ったんです。すべての営業社員っていうのは、(お客さんの)似顔絵を書いて、名前を書いて、売れた商品を書いて記憶しているものだと思っていたんです。でも、そんな人は1人もいなかったんですね。びっくりしたんです。あぁ、うちの母は、たぶんとびきり努力をしていたんだということがわかりました。

仕事とは喜びであると学んだ

ただ、とびきり努力をしていたんだけれど、努力をしていたようにはぜんぜん見えなかったんですね。それはなんでかっていうと、たぶん仕事を楽しんでいたからですね。仕事は喜びである。実は、仕事をどうやって楽しくするのかというところが、母が日本で一番ブラジャーを売る人になった大きな背景ではないかなと思いました。私も知らず知らず、それを学んだんですね。

なので仕事をどうやって楽しくするか、どうやっておもしろくするかということを考えました。実際に自分が今、この仕事をして、日本の中でもっとも大きなファンド、1兆4,000億円ものお金をたくさんのお客さんから集めて、それをいろんな株に投資をして、それが儲かったから今の会社があるんだけれども。でも、すごく大事にしていたのは、楽しくしよう、おもしろくしよう、ワクワクするようにしようっていうことを考えていました。

なので、私はブラジャーを一番売った母親から何を学んだのかというと、仕事とは喜びであるということを学んだと思います。

じゃあ今日ね、投資の話だから、投資の本当の意味についてちょっと真面目に考えてみましょう。

日本人は投資にネガティブな印象を持っている

あなたはいくつ当てはまりますか。「日本人はお金に対して清く正しく助け合っている」「お金のことは大きな声で話せない」「預金通帳の残高が増えていくのが楽しみ」「老後資金が今から不安」「投資家というと、ちょっと汚いイメージがある、ダーティーなイメージがある」「株はゲームだ。マネーゲームだ」……ということが書いてあります。

これは日本人の多くの人がそうだと思ってることを書き上げたものなんです。なので、日本人の多くの人はお金とか投資について、このように思っています。

じゃあ、みなさんにはどんなイメージがあるんでしょうか。ということで、投資についてのイメージをアンケートでいろいろと採ってみました。そうすると、投資が嫌いな人がすごく多いんです。これは日本人の一つの特色なんですね。

日本人が投資に抱いているイメージ。1位は「損をする」。2位が「リスクが高い」。3番目が「勉強が必要だ」とか、あと「怖い」とか「大変だ」とかいろんなものがあります。投資について良いイメージを持っている人がすごく少ないんですね。

でもこれ、世界の中で日本だけなんです。アメリカも中国も韓国もフランスもドイツもインドも、実は投資について、良いイメージを持っています。

「投資とはどういうイメージですか」というと「儲かる」とか「人生にとって必要なもの」とか「挑戦しなきゃいけないもの」っていうのがたくさん出てくるんですね。だから日本人だけ投資に対して良いイメージを持っていないということが一つの事実としてあります。

世界的にも金融投資をしている人の比率が低い

その結果、どうなっているかっていうと、日本人はアメリカ人とかヨーロッパの人に比べて現預金を持っている比率が高くて、株とか投資信託というような金融商品に投資をしている人の比率が世界の中ですごく低いんです。

アメリカ人とかヨーロッパの人たちは、株とか投資信託にたくさん投資をしています。「それがどうした。別に現金で持っていればいいだろう」と思われるかもしれませんが、これはけっこう大きな違いになります。

例えば3年ぐらい前まで、みなさんが中学生とか小学校の時にコロナで大変でしたよね。「学校になかなか行けません」とか。辛い3年間が、私もそうだったし、みなさんにもあったと思います。

思い出していただきたいんだけど、みなさんワクチンを打った人が多いと思うんですね。そこで打ったワクチンはどこの国のワクチンだったかというと、アメリカで作ったワクチンをみんな打ったわけです。

じゃあ、日本でコロナのワクチンは作れなかったのか。(すぐには)作れなかったんです。なので、アメリカからワクチンを買ってきて打ちました。中国はどうだったのか。中国は作りました。ロシアはどうだったのか。作りました。イギリスも作りました。ドイツも作りました。でも、日本は作れなかったんです。

なぜ? バカだったから? 違うんです。日本のお医者さんはものすごく優秀です。みなさん医学部に狙ってる人いるかもしれませんけど、医学部は人気が高くて、偏差値が高くてなかなか入れないですよね。昔からお医者さんにはなかなかなれないんです。

日本でもトップクラスに頭の良い人がいて、論文の数も日本人のお医者さんは世界の中で負けていません。だから日本のお医者さん、頭が良いんです。

お金はあるのに、投資をしない日本

じゃあなんでアメリカにもできて、ドイツもできて、その薬を開発できなかったのかっていうと、薬に投資をする人が(海外ほど多くは)いなかったからなんです。アメリカとか中国とかロシアとかはmRNAワクチンっていうものを作ったんですけど、mRNAワクチンに対して投資をする人たちがいたんです。でも、日本は(海外ほど)投資をしなかったんです。

でも、日本はお金がすごくあるんです。個人だけで2,000兆円もあって、世界の中でもっともお金があります。お金があるんだけど、損したくない、挑戦したくないという気持ちがあるので、結果的に新しい商品とかを作ることができなかったんですよね。だから、日本が今苦しくなっている大きな理由っていうのは、実は投資をしていないせいにあります。

みなさんもChatGPTとかを使っている人いるかもしれませんが、日本がChatGPTのようなものを開発できなかったのは、バカだったからということではなくて、AIに投資する人が少なかったからです。

自動操縦の車とか、それから宇宙とか、今、世界で伸びているところに対して投資をしない、現金を抱えたままになった。そのために、投資をして挑戦して、物を作って、成功するかわからないけれども、研究して開発して戦う、売れるものを作ることをしないと、それは商品を開発できないですよね。

だから、日本がなぜ成長できなかったかっていうと、実は投資嫌い、投資をしないっていうこととすごく関係しています。

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