【3行要約】
・確定拠出年金制度において2026年4月からマッチング拠出上限が撤廃されることにより、iDeCoが不要になる人のパターンを紹介します。
・法改正により、企業の拠出額に関わらず確定拠出年金の上限まで従業員が自由に拠出できるようになり、年間2,000円のコスト負担が発生するiDeCoの必要性が低下。
・マッチング拠出可能な企業に勤める方は、商品ラインナップなどの特別な理由がない限り、マッチング拠出のみでiDeCoをやらない方が一定数出てくると予想できます。
法改正でiDeCoが“不要”になるカラクリ
井上ヨウスケ氏:ファイナンシャルプランナーの井上ヨウスケです。私的年金の法改正の施行日が決まったので、今日はそれを解説していきたいと思います。
先に内容を言ってしまうと、マッチング拠出の企業上限の撤廃が2026年の4月からと決まりました。この改正を受けて、マッチング拠出が導入されている企業の方で、今までその拠出額の上限があったから仕方なしにiDeCoを使っていた方、iDeCoを使おうと思っていた方も、この改正によってマッチング拠出のみ。
つまり、会社のDC制度だけで十分に老後の資産形成ができる可能性が出てきたので、これについて解説をしていきたいと思います。
では時間がない方もおられると思うので、まずは動画のポイントを解説していきます。まずポイントの1つ目ですが、先ほどもお伝えしたとおり、2026年の4月から企業のマッチング拠出の上限がなくなることが予定されていて、実際に2026年の4月に施行する予定だと、つい最近確定しました。
マッチング拠出ができる人はiDeCoをする理由がない
ポイントの2つ目にあるとおり、統計的に見ると、だいたい確定拠出年金制度の導入企業の約半数ぐらいがマッチング拠出を導入しているといわれているので、DC制度が導入されている企業にお勤めで、そのうち自分はマッチング拠出ができるよという方は、これだけでiDeCoのニーズがかなり減るんじゃないかなと思っています。
なぜなら、ポイント3番にも書いてあるとおり、iDeCoは最低でも年間2,000円程度のコスト負担が発生するので、よほどの理由がなければ、マッチング拠出で追加で積立をしていくほうがいいと思います。
ポイントの4番にも書いていますが、それでもという場合、商品ラインナップにはあんまり納得感がないという方はiDeCoを検討するケースがあると思いますが、おおよそこの改正がかなり大きくてですね。この改正後はマッチング拠出ができる方は、iDeCoをする理由がなくなってくるかなと思うので、このあたりの解説をしていきたいと思います。
「マッチング拠出制度における上限の撤廃」を解説
では先日公表されたものにはなるんですけれども、私的年金制度の主な改正事項の施行スケジュールを見てみます。あくまでも予定ですが、およそこのペースでいくんじゃないかなと思っています。

2026年の4月1日予定で、企業型DCの拠出限度額の拡充(マッチング拠出における加入者掛金の額の制限撤廃)があって、これが今日のテーマになるわけですね。
ちなみに、この翌年(2027年)を目指してDCとかのこの拠出限度額の引き上げとか、60歳以降も加入できるようにするよというのが、2027年からできるように今実現を目指してがんばっているみたいな感じですね。
このあたりにもちょっと触れますが、まずはこのマッチング拠出制度における上限の撤廃とは何なのか? というところから解説をしていきます。
そもそもマッチング拠出って何なの? というお話からしていきます。例えば会社に確定拠出年金制度が導入されていて、その人の背景によって上限額は若干違ったりはするんですけれども。1つの例として、マッチング拠出ができて、かつ、会社の確定拠出年金の上限額が55,000円だったというケースを想像してみましょう。
法改正後は、これまでとどう変わる?

つまりこの人は、DCに拠出できる金額の上限は55,000円なんですけれども、仮にもし会社がそのうちの15,000円しか出してくれていない状況だったとします。これは昇給していくと増えたり、いろんな条件で変わっていったりするんですけれども。もしこの15,000円だったとすると、55,000円の枠に対して15,000円しか使っていないので、残り40,000円の枠が余っているという状況なんですね。
確定拠出年金は基本的に会社がお金を出してくれて、そのお金を運用するという制度です。マッチング拠出は、自分が望むんだったら、今現在の法案としては会社拠出額と同額までという制限があるので、会社が出している分と同額までなら自分のお給料からDCにお金を出していいですよ。
iDeCoをやるのとほぼ同じようなことを、会社の確定拠出年金制度でお金を出して、自分で積み立てしたら、その分だけ所得税と住民税の所得控除を増やせますよという制度があるんですね。
ただ今までは、この会社の拠出額と同じ(額)までしかできないという制約があったんですね。この方だったら合わせても30,000円しかできないということは、残り25,000円の枠は、使えるのに使えないみたいなケースがあった。
もっと言ったら、若い時に会社拠出額が5,000円しかないですよという場合は、マッチング拠出も5,000円しかできないとなると、制度を使えるのに使い切れていないなというもどかしさがあったんですね。
2027年の4月からは拠出額の大幅アップも予定
あんまりにもマッチング拠出が少ないから、それだったらマッチングせずにiDeCoをやろうかなというケースがあったんですが、この会社拠出額を上限とするという、この上限を撤廃したので。2026年の4月からは会社が出しているお金がいくらであろうと、55,000円の枠があったら、残り部分は全部マッチング拠出でお金を出していいですよと変わるんですね。
すると老後資金としてiDeCoをやりたいというニーズは、iDeCoとほぼ同額部分をマッチング拠出することができたら、わざわざ年間2,000円のコストを払ってiDeCoをやったりしなくていいと考えられる。だからマッチング拠出ができる方は、おおよそiDeCoをせずにマッチング拠出でDCに積み立てていくのでニーズが満たせるんじゃないかなと思います。
ちなみに、2027年の4月からは拠出額の上限アップとか、iDeCoを60歳以降もできるようになるとか予定しているものの、イメージはこんな感じですね。

今、1号2号3号に分かれていて、2号が企業年金ありなしとかでややこしかったのが、すごくシンプルになりました。2号は、企業型DCを導入していようがしていなかろうが、iDeCoとDCを合わせて上限62,000円ですよと。DCがない人はもうiDeCoだけで62,000円ですよという感じなので、iDeCoとかDCの掛金の上限がかなり上がった。
このマッチングが関連するのは、ここの企業年金ありの人ですね。という人が、今だったらかなり制約があるのが、2026年の4月からは改正されて、さらに今のところ予定……というかそれを目指すという感じですが、2027年の4月からはさらに62,000円の上限になる。
ほぼほぼDCに積み立てるかiDeCoに積み立てるかという二択がある時に、商品ラインナップに文句がなければDCに積み立てていくというところで、老後への積み立てのニーズが満たせるんじゃないかなと思います。