事実よりも“自分が信じたいもの”を見る 僕は、そもそも人間は強欲なものだと思います。僕たちが強欲でなければ、これだけ社会は発展しなかったと思いますし、「もっともっと楽になりたい」とかっていう、僕らは虚栄心も含めて「名誉のため」とかっていう、何かしらの欲に駆られて時代は進んでいく。それはいいことでもあるんですけれども、本質的には強欲なんじゃないかなと思っています。
そしてその下、人間はみんな、信じたいことを望んで信じるなと思います。(ガイウス・ユリウス・)カエサルですね。2000年以上前に言われた言葉ですが、「人間は自分が信じたいと望むようなことを自分から望んで信じる」と言っているとおり、これは行動計画学では「確証バイアス」とかって言われますね。
最近のSNSを見ていたら、もうファクトなんてどうでも良さそうですよね。自分の都合がいい世界になってほしいからこそ、うそであろうとそれを望む傾向があるなと思っていて、年々この傾向は強まっているなと思います。だからこそ、「分散投資なんかしなくても大丈夫」と思いたいし、それを望んでいるんじゃないかなと。「リターンは高いほうが望ましい」というのでもつながるかなと思います。
自分を特別視してしまうバイアス そして3つ目。「人は自分が他人より優れていると思い込む傾向がある」というところで、これは「自信過剰バイアス」とか言われますが、今まで出会った人の中で、「自分より他人のほうがリスク許容度が高い」と答える人を、ほとんど見たことがないですね。
ほぼすべての人が、個別相談する時にアンケートとかを採ったりするんですけれども、だいたい「自分のほうがリスク許容度が高い」と答える方が多いです。それは本当かもしれないし、思い込みなのかもしれませんが、要は「みんなは売るけど、自分は大丈夫」というふうに回答する方が8割以上だと思っています。
でも、心理学の研究などでは、自分が自分に対して評価したものよりも、自分が「他人ってこうだよね」というふうに評価したもののほうが、自己評価としてはちょうどいいラインだと。要は他人に対して評価しているのが、ちょうど自分を説明するのに適していると言われる研究結果もあったりするので、このあたりもなかなか人間の癖の難しさだなと思います。
周りの人と同じ状態を望む心理作用 そして4つ目ですね。「人と同じであることに安心する」というのもそうかなと思います。(ホセ・)オルテガ(・イ・ガセット)の『大衆の反逆』などでは、大衆の条件の1つとして、「大衆」という言葉をオルテガは「見下した意味で使っているわけじゃない」と言っているんですけど、「人と同じであることに安心する人が、その条件の1つだ」というふうに言っていたんですけど。
僕らは、人と同じであることに安心するので、みんなが買っているものを買っていると安心できるところがありますよね。だから、分散投資する人が減れば減るほど、そのペースが加速するのは、このあたりから考えると自然かなと思います。
そして最後ですね。「多くの人は、歴史や先人の知恵を軽視する」というところですね。(ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・)ヘーゲルかな、「歴史を学んで学べるのは、人々は歴史を学ばないということだけだ」という言葉があるとおり、どうしても僕らは先人の知恵というのを大切だとは思っていながら、採用したくないという思いがあるかなと思います。
だからこそ僕は、常に同じことが繰り返されていくんだろうと思っていて、何よりも「FOMO = Fear Of Missing Out」」という、取り残される恐怖ですね。これはある種、「みんながお金持ちになっていくのに、自分だけお金持ちにならないわけにはいかない」ということですよね。
勉強している人ほど自分の無知さを自覚する 株をたくさん買うというのは、ある種、利益追求な行為だと思うんですけれども、どちらかというと「取り残される」こと自体が、自分の人生にとって損失。
それを回避するために投資をするということを考えると、「投資しないこともリスク」なんていうのは、投資を勧めるためによく使われた言葉ですが、「投資しないリスク」を回避するがゆえに、加熱しているんだろうと思えます。なので、このあたりを全般的に考えたら、分散投資というものがチンケなものになったわけではなくて、人々がチンケなものだと評価を下しているということだけだと思います。
ということで、僕自身は分散投資を実際にやっているし、僕がいろんな勉強をしていく中で感じることは、本をほとんど読まない人ほど自分は物知りだ、大丈夫と思っていて、本当に「いつ寝てるんだろう?」と思うぐらい勉強する人に限って、自分の無知を認識できているんですね。
だからこそ、レイ・ダリオなんかは本の冒頭で、「自分は知らないことばっかりだけど、それでも知っていることについては書こうと思う。でも、わずかなことしか知らないから、自分が間違っている可能性も十分ある」みたいなことを書くのは、あれだけいろんなことを調べながらも、知らないということを認識する。
それはたぶん、本をたくさん読んでいる人はなんとなくわかると思うんですけど、本を読めば、1冊読んだら1冊分の知識と、倍とか、100倍ぐらいの知らないことを知れるので、読めば読むほど「知らないな」と感じると思うんですね。
知らないからこそ、僕は分散投資をしたほうがいいと思うんですよ。人生において重要なことは、知っていることじゃなくて、知らないことですよね。知らないことが僕らの人生を左右するわけです。
不確実性の高い時代こそ、リスクを分散する 知っていることどおりに起きるんじゃなくて、知らないことが起きた時に、自分の人生がどうなるかを考えるべきだから、分散投資をする。いろんなアセットに分散するのが、やはり大切な概念だと思うので。
これだけいろんなことが起きていて、アメリカの著名な投資家とかは、アメリカの債務問題とか、ドルというもの自体(の安定性に疑問を呈している)。アメリカの覇権国家がこのまま続くのかにすら疑いの目が向けられている時代だからこそ、分散投資が重要だったりします。
周りがどうであれ、そういうふうに思っている方、「自分は何も知らないな」と思っている方は、やはりしっかりと分散投資をすることが大切だというお話でした。
個別相談サービスもやっているので、興味がある方は(動画の)概要欄をチェックしてみてください。最後までご視聴いただき、ありがとうございました。
VIDEO