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社長、その領収書は経費で落とせます! 元国税調査官が教える「節税」の教科書(全2記事)

領収書の「上様」は認められる? 元国税調査官が教える、知ってトクする"節税"のハナシ

節税したい、けど税務調査が怖い……。もしかするとあなたも、こんなイメージだけで損をしているかもしれません。経費のグレーゾーンを上手に利用する方法を、元国税調査官で現税理士の松嶋洋氏が解説しました。

0.1%いるかいないか、珍しいタイプの国税OB税理士

主藤孝司氏(以下、主藤):みなさんこんにちは、主藤孝司です。今日ご紹介する書籍は、『社長、その領収書は経費で落とせます!』。著者の松嶋洋さんにお話をお伺いします。松嶋さん、よろしくお願いします。

松嶋洋氏(以下、松嶋):よろしくお願いします。

主藤:この本は中経出版から出版されている本ですけれども、松嶋さんは元国税調査官でいらっしゃいます。2002年に東京大学を卒業されて、東京国税局に入局。それから2011年に「松嶋洋税理士事務所」を開業されていらっしゃいます。今は税理士として活躍されている国税OB、と言ってよろしいでしょうかね?

松嶋:よろしいですね。

主藤:通常は国税OBの方って、国税を規定年数勤められて、勤務した年数でもって税理士資格を得る、という方が多いと思うんですが。

松嶋:そうですね、それがほとんどです。

主藤:ところが松嶋さんは国税OBではあるんですけども、実は年数を満たす前にご自身で試験を受けられて、見事に合格をして。

松嶋:ありがとうございます。

主藤:ということですよね。つまり何が言いたいかというと、私たちが比較的接することが多い税理士さんである、税理士試験に合格した税理士さんと同じ道を歩んでおり、なおかつ税務調査をする側だった国税にも勤められていたと。この2つをお持ちの税理士は少ないんじゃないですか?

松嶋:そうですね。私が知る限り1人か2人ぐらいですので、ほとんどいないですね。

主藤:1,000人いても1人もいない可能性もありますよね。

松嶋:大体OBが3万人ぐらいと言われているので、その中でも規定年数を勤めた方というと1000人、もうちょっと多いかもしれないですね。

主藤:何年勤めると自動的に税理士資格を与えられるんですか?

松嶋:23年です。ただプラスアルファで研修は受けないといけないんですけども、その研修もほとんど受かる研修なので、基本的には23年いれば資格はもらえますね。

主藤:松嶋さんはその23年が待てなかった?

松嶋:(笑)。まぁ、待てなかったっていうのもありますね。

主藤:ということは、やはり勤務しながら、社会人として働きながら(税理士試験の)5教科ですか、を勉強したと。

松嶋:勉強しましたね。

主藤:結構ハードだったんじゃないですか?

松嶋:そうですね、5時で終わる仕事だったんですけど、5時に終わりまして、家に帰って大体6時なんですけど。晩飯食べて風呂に入って、7時から大体12時まで勉強する。そんな生活でしたね。

主藤:1日5時間! 税務署というか国税に23年というと長いかもしれませんけども、給料ももらえるわけでして。その後税理士として開業するにしても、税理士に必要な経験を日々積む仕事ですから、わざわざ毎日5時間かけて勉強しなくても、23年間給料をもらいながら、それなりにポジションも上がるでしょうし、それでいいじゃないかっていう思いも私なんかは感じるんですけども……。

松嶋:組織の話を悪く言っては申し訳ないですけど、上に好かれないと出世しないとか、希望する仕事になかなかつけない職場でもありまして、そういうのもあって「ここは出なきゃな」っていうのはありましたね。

主藤:単に退職するのではなく資格を取って。素晴らしいですね。おそらくそういったご経験が今のお仕事に大きく生きてるんじゃないかと思うんですけれども。

松嶋:はい、非常に生きてますね。やはり調査ってそこにいる人しか知らないですから、非常に重宝がられますからね。

宛名が「上様」でも経費として認められるケース

主藤:それで今回の本ですけれども、タイトル、ちょっとセンセーショナルですよね。『社長、その領収書は経費で落とせます!』って(笑)。私も一応社長をやってますけども、「領収書が経費で落とせないかもしれないから『上様』はダメだ」とか思ったりして。あとは「前株か後株を間違えても確か経費で落ちなかったな、そこはちゃんと書いてもらう時に言わなきゃ……」とか。

会社名を一字間違えて領収書を書いてもらうとそれだけで経費が落ちないんだと思ってた時期もあって、今でもそれは高い確率でそう思っちゃったりするんですけれども、例えば今お話ししたような心配事もそうですし、そもそも領収書じゃないレシートなんてありますよね? レシートだからこれは経費で落ちないなんて思ったりするんですけど、そういう日々の細かいところをテーマにした本という理解でよろしいですか?

松嶋:もうちょっと広いテーマですね。「経費って何なの?」っていうところから本はスタートしてますけれども、実際に経費って言うと、どの先生方もさっき主藤さんがおっしゃったように「『上様』はダメだ」とか言うんですけど、根本的なところは誰にもわからない。というのも、税金の世界って非常にグレーゾーンが多いので、どうやってグレーゾーンの中で判断していくかっていうと、結局は税務調査に落ちてくる話なんですよね。

税務署がどれだけ領収書を見てるのかと言うと、基本的に彼らって支払いの事実が「確かに支払いました、事業目的です」、これがわかればいいので、たとえ上様であろうと、「上様って誰ですか?」というのはヒアリングする中でこの人ですというのがわかり、その人の調査をやってもらえばちゃんと事業として使ったということがわかりますので、それほど気にはしてないんですね。

主藤:なるほど。商売に必要な経費としてちゃんと使っているということが説明できれば、レシートでも上様でも十分だと。

松嶋:十分ですね。法律的なところですと、「上様ではダメだ」と書かれてるんですけど。実際の実務上は、上様であっても、それが誰ですかっていうのがきちんと説明できるんであれば、税務署はダメですとは言わないですね。

税務調査を恐れる必要はない

主藤:なるほど。これは誤解される前に先にお話ししておきたいと思うんですけど、これは脱税の話とは根本的に違う話ですよね?

松嶋:もちろんです。

主藤:あくまで今の話は節税でも何でもなく、そもそもちゃんとした経費であるからちゃんと計上しようよ、っていう話。

松嶋:そうですね、はい。

主藤:実はこの本に書いてあるんですけれども、今お話ししている脱税でも節税でもない、真っ当な経費。その経費が、実はどこまでが認められるのかプロでもわからないと。

松嶋:わからないですね。

主藤:これ、わからないんですね?

松嶋:はい。非常に曖昧な書き方がされているっていうのがまず1つと、経費って一言で言っても非常にケースバイケースでいろんな経費がありますので、じゃあそのいろんな経費を曖昧な条文で見ていくとなると、やっぱりそれは多数決じゃないですけど、「なるよ」「ならないよ」っていう人が出てきますから、それがグレーゾーンと言われる所以なんですけど、ケースバイケースで見ていくしかないんです。

主藤:なるほど。グレーゾーンであって、プロでもどこまでが経費かどうかわからないと。これは節税以前の根本的な話だと思うんですけれども、その白黒がつく唯一、ではないですけど、唯一に近い場面が税務調査。

松嶋:税務調査ですね。

主藤:しかもその時の経費の認められ方は、納税者の言い分の方が通りやすいと?

松嶋:通りやすいですね。

主藤:これは(世間は)逆だと思ってますよ、私もそういう認識だったんですけど。納税者側、つまり企業側なり経営者側の言い分の方が通りやすい?

松嶋:通りやすいです。

主藤:これ、なぜこうなっちゃってるんでしょうね?

松嶋:簡単に言うと、税務署の税務調査って何を見つけるかというと、不正取引を見つけたいんですね。もしくは、誰が見てもこれはダメですという真っ黒なもの。その2つを見つけるんですけれども、経費というのはグレーになりますので、グレーって決め手がないので、交渉せざるを得ないんです。その交渉道具として、「経費は認めるけども、真っ黒なのは認めなさい」とかですね。

本にも書きましたけど結局のところ、税務調査の決着というのは納税者の方の反省を促すという仕組みになっていますので、真っ黒でも納税者が認めない限りは税務調査では決着がつかない話になるので、基本的な話でいきますと、そうなると真っ黒なものについては反省しますと。でも経費っていうのはグレーなものですので、今回は見逃しますとかですね。そういう落とし方になるんですよね。

主藤:でもその、今回は見逃しますというか、お咎めしませんっていうことは、それは経費としてちゃんと認められたという証でもある?

松嶋:証っていうわけでもないですね。ただし結果として税金の世界って時効もありますので、再調査がなければそのまま終わっちゃうっていうのが結果になります。

主藤:なるほど。そういう実務上の現場で当たり前に行われていることをちゃんと理解した上で、経営者なり経理担当の方は日々の経理事務をしたほうがお得だと。

松嶋:お得ですね。ただしやっぱりどうしても、本にも書きましたけれども、税務署と戦って負けるということも当然あるわけですので、リスクも取らなきゃいけない。そういうところも含めて相互判断する必要があるかなと思いますね。

税務調査に入られる確率は非常に低い

主藤:当然リスクはあるという話ですけども、そのリスクの話になった場合、どの分野でもそうだと思うんですけど確率論になると思うんですね。例えば私は毎月のように飛行機に乗ってますけども、飛行機事故はゼロじゃないわけですよね。当然覚悟して乗ってるわけですけれども、まぁ普通は落ちないだろうと。実際に交通事故の件数よりも航空機事故のほうがはるかに少ないですからね。

それと同じように、確率論を考えてリスクを取るということを考えた時に、書籍に書いてあって私も目からうろこだったんですけれど、そもそも税務調査に入られる確率が非常に低いと。

松嶋:低いですね。

主藤:だったらこれは十分にリスクを取るに値するんじゃないか、という話ですね。

松嶋:確率論の話で言うと、全然調査に入らないわけじゃないんですけれども、非常に確率が低いわけなので、まぁちょっとこれ危ないんじゃないかって思うものについては経費として落とすための反論を用意しておく。加えて確率が低いので、杞憂に終わることが多いっていう話ですよね。

主藤:そうですね。繰り返しますけども、節税でもなく脱税でもなく、普通にちゃんと事業の経費として使ったものはちゃんと計上しましょうと。その真っ当に事業に必要だから使った経費すら、何らかの一方的な思い込みで計上していない経営者が多いという。

松嶋:非常に多いですね。

主藤:もったいないですよね。

松嶋:もったいないですね。と言うのは、いちばんの原因は私たち税理士にもあると思っていて。税理士ってリスクがある以上はやっぱり勧められないんですよね。仮に、「大丈夫です」って先生が言うので経費にしたのにダメだとなっちゃうと、これは税理士に責任があるって話になるので。税理士としては多少なりともリスクがあるものについては「難しいです」みたいな話をして、計上しないほうがいいんじゃないかというような話になりますよ。

あともう1点は、経営者の方も非常に税務署を怖がっていて、戦おうとか交渉しようという意図があんまりないんですよね。そうなると、リスクがあるのであればやめようかっていうので、本来であれば落ちるものを落としてないみたいな形になってますね。

※続きはこちら!【経営者必読】これが税務官の”弱点”だ! 元国税調査官が伝授する、節税のマル秘交渉テクニック

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